musasabi journal

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415号 2019/1/20
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
お正月なんてあっと言う間でしたね。それより関東地方で困るのは乾燥です。とにかく雨とか雪なるものがほぼゼロの状態が12月半ばから続いている。おかげでむささびなんか体中が乾燥して痒くて仕方ないわけ。雪は勘弁してほしいけど、この際少しくらいお湿りがあってもよろしいかもね。

目次

1)MJスライドショー:笑う動物・笑える動物
2)現代版「日英同盟」がメイさんを救う?
3)労働党とBREXIT
4)世界で一番民主的な国は?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)MJスライドショー:笑う動物・笑える動物

プロの写真家にとって動物ほど格好の被写体はないのでは?うちで一緒に暮らしているワンちゃんたちを見るとそう思います。「飾る」とか「ふりをする」ということがない。いつも地のままであるわけです。ただそれをカメラできっちり捉えることはとても難しい。ましてや野生動物ともなると・・・今回はそのような動物たちのちょっとした仕草を捉えた写真でスライドショーを作ってみました。

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2)現代版「日英同盟」がメイさんを救う?

1月10日に安倍首相がロンドンでメイ首相と会談したことについて、1月10日付のThe Economistが
  • Anglo-Japanese links strengthen as Britain seeks to cement friendships beyond Europe 英国がヨーロッパの外に友好関係を求める中で日英の連携が強くなっている
という記事を掲載しています。



安倍さんが持参した「おみやげ」(gifts)の一つが、メイさんが進めていた「ソフトBREXIT」に対する支持表明だったのですが、安倍さんは「合意なき離脱を避けることは全世界(whole world)が望んでいることだ」と明言したのですよね。それだけではない。安倍さんは、かつて英国内で流行した狂牛病を理由に20年以上も続けてきた英国産の牛肉や羊肉の輸入禁止を解除するとも伝えた。おかげで英国の畜産農家にはこれからの5年間で1億2000万ポンドの収入が発生することになるのだそうです。

ただ、The Economistが強調する最大のおみやげは日英間の軍事協力の強化なのだそうです。メイさんは日本が掲げる「自由で開かれたインド・太平洋」(free and open Indo-Pacific)構想を後押しすることを明らかにしている。事実、4年ほど前から英国は日本の自衛隊との共同訓練のためにジェット戦闘機を派遣するなどして中国を意識した軍事協力に参加している。また英国海軍のフリゲート艦「モントローズ」(HMS Montrose)が間もなく(shortly)日本へ向かうことになっているのですが、英海軍が軍艦を日本へ派遣するのはこの1年間で4隻目である、と。これら軍艦の派遣は単に共同軍事訓練のみならず、軍事面における技術協力という意味も大きい、とThe Economistは強調している。


HMS Montrose

The Economistはまた英国側の政府関係者のコメントとして、いずれは日英間の正式な軍事同盟の締結にまで繋がる可能性があることを伝えている。日英軍事同盟と言えば、20世紀初頭の日英同盟(Anglo-Japanese Alliance)を想起させるけれど
  • 日英同盟の締結によって、英国はそれまでの80年におよぶ「素晴らしき孤立(splendid isolation)」と呼ばれた非同盟政策に終止符を打った。メイ首相がいま期待するのは安倍首相が彼女自身の孤立状態を緩和してくれることだろう。That pact ended 80 years of splendid isolation for Britain. Mrs May must hope that Mr Abe might at least ease her own.
とThe Economistは言っている。

▼安倍さんの訪英について、日本のメディアがどのように伝えているのかを知りたいと思ってネットを探っていたら、韓国・中央日報日本語版の『21世紀の日英同盟』というコラムに出会いました。次のような書き出しです。
  • 1万キロメートル離れた2つの島国が経済だけでなく安保分野まで緊密な協力を約束したことはただならない。
▼The Economistも同じようなことを言っているのですが、コラムは1902年(明治35年)の日英同盟にかなり詳しく触れながら、当時の日本が如何に英国との同盟によってアジア大陸における自らの勢力を拡張することができたかを語る一方で、この同盟が日本による朝鮮支配を確かなものとしたというわけで「国外の事情に疎かった朝鮮は日清戦争(1895年)以降ロシアに頼って亡国となった」と書いている。

▼中央日報のコラムニストによると、現在世界では、中国やロシアのような「大陸勢力」の膨張に対抗して米・日・豪・印・英などをつなぐ「海洋勢力大連合」が構想されており、20世紀初頭と同様に国際勢力の均衡に「途方もない変化が起きている」としたうえで「問題は今も昔も韓国は国際情勢が何も分かっていないという点だ」と嘆いています。

▼現在の韓国政権の外交視野が朝鮮半島だけにとらわれ過ぎており、同盟国である日本とは「不倶戴天の敵」になろうとしている、というわけで、コラムニストは「民主主義と市場経済という価値を共有する国々と絆を強化することが最善だ」と言っている。そして「国際情勢に疎くて亡国となった1世紀前の愚かさを繰り返すことはできない」と警告しています。「1世紀前の愚かさ」とは、日本による自国の植民地化を許してしまった日韓併合(1910年)のことを言っているのでしょう。

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3)労働党とBREXIT


英国下院が、メイ政権が提案したEU離脱に関する合意案を大差(432対202票)で否決した直後に労働党がメイ内閣への不信任案を提出、これが否決された。つまり首相としてのメイさんはとりあえず生き残ったわけですが、それでもこれから何がどうなるのかさっぱり分からないというのが現状であるわけですよね。

コービンは何を想うのか?

そんな中で、むささびが気にするのがBREXITに対する労働党、特にジェレミー・コービン党首の姿勢です。2016年に国民投票が行われとき、労働党の公式見解としては「残留」支持だったけれど、党首・コービンの態度ははっきりしていなかった。どこか離脱に傾きがちな姿勢でさえあったわけです。なぜなのだろうと思っていたら、12月31日付のLondon Review of Books (LRB) のサイトに
という見出しの記事が出ていた。書いたのはバーナード・ポーター(Bernard Porter)という英国の歴史家で、特に大英帝国時代の歴史に強いらしい(むささびは知らないけれど)。現在は英国ではなくスウェーデンに住んでいる。


コービン(69才)が労働党の議員になったのは1983年というから、議員歴30年を超えている。党首に就任したのは2015年、党内でも最左派に属する政治家で、鉄道・エネルギー・水道などの再国営化を訴えたりしている。彼が党首になる以前の労働党は、トニー・ブレアやゴードン・ブラウンのような「右派」が主導権を握っており、特に北イングランドを中心とする草の根労働党員の間では不満が高まっていた。4人が立候補した2015年の党首選では圧倒的な人気で最左派のコービンが選ばれた(むささびジャーナル327号)。

労働党は欧州懐疑論だった

バーナード・ポーターによると、コービンという人は政治家になって以来ずっと「欧州懐疑論者」(Euroscepticism)という立場を貫いている。ただ、欧州懐疑論者ではあるけれど、右翼的・ナショナリスト的な反欧州(anti-Europe)というわけではない。コービンがEUに代表されるヨーロッパに対して抱いている猜疑心は、それが「グローバル資本主義勢力に乗っ取られてしまっている」(taken over by global capitalism)ということに起因する。

実は欧州懐疑論という姿勢はかつての労働党も持っていた姿勢なのですね。英国がEUの前身であるEECに加盟したのは1973年のことですが、加盟2年後の1975年に、このまま加盟を続けるかどうかを問う国民投票が実施されている。結果は「加盟を続ける」が全体の67.23%(票数は約1700万)で「離脱すべし」(33%:850万票)に圧勝したのですが、労働党支持者に限ると加盟継続を支持したのは6割をちょっと超えた程度で、保守党支持者(ほぼ9割が加盟継続を支持)における支持率とは比較にならないほど低かった。議員ではなかったけれど、党員ではあったコービンはこの時は「離脱」に投票している。

EEC残留をめぐる1975年の国民投票

当時の労働党は現在のそれに比べれば社会民主主義の英国建設を目指す左派勢力が主流だったのですが、その彼らの眼から見るとEECはソ連に対抗して自由主義経済の原則を掲げる「金持ちクラブ」という印象であり、労働党が推進する社会民主主義路線とは全く違っていた。現に75年に保守党党首に就任したばかりだったサッチャーさんは加盟継続支持者だった。

労働者の権利とBREXIT

つまり(バーナード・ポーターによると)筋金入りの社会民主主義者であるコービンが目指しているのは、産業の再国有化などを通じて社会民主主義の英国を作ることにあり、具体的には「職場の確保」や「賃金の改善」のような「労働者の権利」を守ることなのである、と。この点、ドイツのメルケルなどが主流の現在のEUは「社会主義のヨーロッパ」建設に向かっているとは思えない。そんなEUに加盟を続けることにそれほど熱心になることはできない。かと言って、かつての大英帝国復活を望んでいるかに見える、時代錯誤の「強硬BREXIT」を支持するわけではない。むしろ労働者の生活を守るという見方からすれば、メイさんが推しているソフト路線(離脱はするけれど、単一市場や関税同盟へのアクセスは続ける)がコービンに近いかもしれない。

ただバーナード・ポーターに言わせれば、コービンが左派路線にこだわるとしても、EUに加盟を続けながらこれを社会民主主義的に改革すればいいし、EUの政治家の中には社会民主主義者はたくさんいるではないかということで、コービンのこだわりがよく分からない。


muddle、いつまで?


労働党政権の樹立を目指すコービンにとってもう一つ気になるのが、2016年の国民投票ではBREXITに投票したと言われるイングランド北部における労働者階級の存在です(むささびジャーナル349参照)。彼らは自分たちが世の中から忘れられたと思い込んでおり、そのような世の中に対する怒りの表現として「離脱」に投票した人間も多いと言われている。「ヨーロッパ好きなんてエリート人間に決まっている」という発想です。コービンの労働党が「残留支持」を強く打ち出すと、北イングランドの労働党支持者の反感を買ってしまうかもしれない・・・。

BREXITをめぐる労働党の現在の姿勢を "muddle" と表現する人がいる。「どうしていいか分からずにウロウロしている」という意味です。今の労働党は正にウロウロ状態であると言えます。

メイ政権が提案した合意案が大差で否決された直後に、コービンはメイ内閣不信任案を提出したけれどこれは325対306で否決された。合意案については反対に回った北アイルランドの民主連合党(DUP)の10議員が不信任案についてはメイさんの支持に回ったからです。彼らが労働党に賛成していたら今ごろは総選挙ということになっていたかもしれないのですが、そうなるとBREXITの善し悪しだけを問う選挙にならざるを得ない。で、労働党の姿勢は?と問われると、これもはっきりしない。はっきりしているのは、強硬離脱(no-deal BREXIT)には反対だということです。それをやると経済が混乱して労働者の生活に影響が出るからというわけです。

▼資本主義的グローバリズムの象徴ともいえるEUに対する社会主義者、コービンのジレンマは痛いほど分かりますね。EUに対する疑いの気持ちを口にすると「極右か」と言われてしまう。現代のいわゆる「リベラル」を象徴するのは、メディアでいうとThe Economistであり、日本経済新聞であり、グループでいうとダボス会議であり、人物でいうとビル・ゲイツ、ヒラリー・クリントン、スティーブ・ジョブズのような存在です。インターネット時代の合理主義や「小さな政府」を良しとする人たちです。

▼いちいち調べたわけではないけれど、どれもBREXITにもトランプにも反対だけど、大きな政府による社会福祉、産業の再国有化などにも疑問の眼を向ける。つまり自由主義体制が抱える格差とか環境破壊のような問題は、人間の理性や善意などによって解決できる、それより人間の自由意思を縛ることの方が害が大きいと考える人びとです。コービンの3代前の党首だったトニー・ブレアはBREXIT反対キャンペーンの中心メンバーです。しかしイラク戦争を仕掛け、内戦初期のころシリア爆撃を主張したのもブレアたちであり、The Economistです。

▼ソ連の崩壊後、「社会主義的」と目される政策やシステムはいずれも「役立たず」とされてしまった感があるけれど、必ずしも悪いことだけではないんでない?とむささびは(多少おっかなびっくりですが)言いたいわけよね。ウロウロするコービンの言葉にも少しは耳を傾けるべきなのではないかってことです。トランプやシンゾーのような国家主義人間をのさばらせておくわけにはいかないということです。

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4)世界で一番民主的な国は?


The Economistグループの研究機関であるEconomist Intelligence Unit (EIU) が毎年発表する世界民主主義指数(Democracy Index)の2018年版が発表されています。世界の167か国における民主主義の浸透状況を報告しているのですが、「公明な選挙による複数政党の政治」、 「機能する政府」、 「国民による政治参加」、 「民主的な政治文化」、「市民的自由」の5つのカテゴリーにおける進み具合いを10点満点で指数化している。EIUはまた調査対象となっている国を完全民主主義(full democracy)、欠陥民主主義(flawed democracy)、混合体制(hybrid regimes)、独裁体制(authoritarian regimes)という4つのカテゴリーに分類している。それぞれのカテゴリーに属する国の数は次のようになっている。


完全民主主義(full democracy):政治的・社会的な自由や3権分立、報道の自由などが確保されている。ノルウェー、アイスランド、スウェーデンを筆頭に20か国がこのグループに入るけれど、そのうち欧州でない国はニュージーランド(4位)、カナダ(6位)、オーストラリア(9位)など6か国だけ。特に北欧諸国はすべてトップ10に入っている。ドイツは13位、英国は14位。EIUでは「完全な民主主義体制」を享受しているのは世界の人口の4.5%だけだと言っている。

欠陥民主主義(flawed democracy):政治的・社会的な自由が確保され、公正な選挙が実施され、報道の自由なども確保されてはいるが、統治機能に問題があり、市民による政治参加意識も弱いとされる。全部で53か国あるうちのトップは韓国、2位が日本、3位はチリなどとなっており、アメリカ、フランス、ベルギーなどもこのグループに入っている。

混合体制(hybrid regimes):選挙の公正性が疑わしく、反政府勢力に対する弾圧が激しい。汚職もかなり普通に行われ、司法の独立や報道の自由も確保されていない。アルバニア、パキスタン、イラク、ウクライナ、トルコ、タイなどまで全部で39か国ある。

独裁体制(authoritarian regimes):複数政党による二元的な政治体制が欠如し、報道機関は国家が管理、司法の独立も存在しない。53か国がこの範疇にはいる。中国(全体の130位)、ロシア(144位)、サウジアラビア(159位)で全体の最下位(167位)は北朝鮮、最下位から2番目にはシリアが来ている。

完全民主主義 欠陥民主主義 混合体制  独裁政府
1 Norway
2 Iceland
3 Sweden
4 New Zealand
5 Denmark
6= Canada
6= Ireland
8 Finland
9 Australia
10 Switzerland
11 Netherlands
12 Luxembourg
13 Germany
14 UK
15 Uruguay
16 Austria
17 Mauritius
18 Malta
19 Spain
20 Costa Rica

21 S. Korea
22 Japan
23= Chile
23= Estonia
25 USA
26 Cabo Verde
27 Portugal
28 Botswana
29 France
30 Israel
31 Belgium
32 Taiwan
33 Italy
34 Czech Rep
35 Cyprus
36= Slovenia
36= Lithuania
38 Latvia
39 Greece
40 S. Africa
41 India
42 Timor-Leste
43 T. & Tobago
44 Slovakia
45 Panama
46 Bulgaria
47= Argentina
47= Jamaica
49 Suriname
50 Brazil
51 Colombia
52 Malaysia
53 Philippines
54= Poland
54= Guyana
56 Lesotho
57= Ghana
57= Hungary
59 Peru
60 Croatia
61 Dominican Republic
62 Mongolia
63= Serbia
63= Tunisia
65 Indonesia
66= Singapore
66= Romania
68 Ecuador
69 Namibia
70 Paraguay
71= Sri Lanka
71= Mexico
73= Hong Kong
73= Senegal
75 Pap.N.Guinea
76 Albania
77 El Salvador
78 Macedonia
79= Moldova
79= Fiji
81= Montenegro
81= Benin
83 Bolivia
84 Ukraine
85 Honduras
86 Zambia
87 Guatemala
88 Bangladesh
89 Georgia
90 Malawi
91= Tanzania
91= Mali
93 Liberia
94 Bhutan
95 Madagascar
96 Uganda
97 Nepal
98= Kenya
98= Kyrgyz Republic
100 Morocco
101 Bosnia & H.
102 Haiti
103 Armenia
104 Burkina Faso
105 Sierra Leone
106= Lebanon
106= Thailand
108 Nigeria
109 Palestine
110 Turkey
111 Gambia
112 Pakistan
113 Ivory Coast
114
Iraq
115 Jordan
116= Mozambique
116= Kuwait
118 Myanmar
119 Mauritania
120 Niger
121 Comoros
122 Nicaragua
123 Angola
124 Gabon
125 Cambodia
126 Algeria
127 Egypt
128= Ethiopia
128= Rwanda
130 China
131 Congo
132 Cameroon
133 Qatar
134= Zimbabwe
134= Venezuela
136 Guinea
137 Belarus
138 Togo
139 Vietnam
140 Oman
141 Swaziland
142 Cuba
143 Afghanistan
144= Kazakhstan
144= Russia
146 Djibouti
147 U.A. Emirates
148 Bahrain
149 Azerbaijan
150 Iran
151= Eritrea
151= Laos
153 Burundi
154 Libya
155 Sudan
156 Uzbekistan
157 Guinea-Bissau
158 Yemen
159= Saudi Arabia
159= Tajikistan
161 Eq. Guinea
162 Turkmenistan
163 Chad
164 Central African Rep
165 D Rep. Congo
166 Syria
167
North Korea

ちなみに上記のうちトップのノルウェーの指数は10点満点の9.87、英国は8.53、韓国は8、日本は7.99、アメリカ7.96などときて、「独裁国家」とされる中国は3.32、ロシアが2.94、最下位の北朝鮮は1.08などとなっています。

▼韓国と日本が1位と2位を分け合っている "flawed democracy" の日本語訳は「欠陥民主主義」という直訳より「不完全民主主義」とでも言った方が分かりやすいかもしれないですね。いずれにしても総合指数では韓国が8.00で日本が7.99というわけで、殆ど変らない。要素を仔細に比較すると、韓国が日本より点数が高いのは「選挙と政治の二元性」(韓国9.17 v 日本8.75)、「市民の政治参加」(7.22 v 6.67)で、反対に日本の方が高いのは「政府機能」(8.21 v 7.86)、「市民的自由」(8.82 v 8.24)、同じなのは「政治文化」(両方とも7.5)となっている。

▼ここでいう「市民的自由」(civil liberties)とは、基本的人権、表現・報道の自由、宗教・信条の自由のように「リベラル・デモクラシー」に欠かせない諸々の自由のことなのですが、トップのノルウェーの場合の「市民的自由」の指数は9.71だから日本や韓国よりも1点は高い。また「政治文化」(political culture)とは、自国の政治に対する姿勢のことで「従順」(obedient)や「おとなしい」(docile)という姿勢が勝っている(とEIUが思う)国の指数は低くなっている。この分野のノルウェーの指数は10.00(満点)、日本と韓国はともに7.50となっています。

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5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 

subtext:隠れた意味

"subtext"という言葉を辞書で引くと"hidden or less obvious meaning"という説明が出ていました。物事を言葉で伝えるときにそのまま言うとモノに角が立つということってありますよね。「ね、アタシの提案、受け入れられますよね?」と聞かれて「ま、ダメだろな」などと答えるのではなくて「ちょっと微妙かもね」と言ったりする、あれ。英国人が使う英語にはこの種のいやらしい表現が多い。例えば・・・:
  • I hear what you say:議論をしていてむささびが自分の意見を開陳すると度々言われたのがこの言葉。直訳すると「あんたの言っていることは聞こえている」ですよね。しかし実際の意味は「アンタの意見には反対だし、これ以上話したくない」(I disagree and do not want to discuss it further)ということ。
  • With the greatest respect:キミの意見には最大の敬意を払うけれど・・・と思いがちだけど実際には「あんたアホか」(You are an idiot)と言われているだけ。
  • You must come for dinner:夕食へのお誘いというわけですが、ある調査によると、この言葉を聞いてそのように受け取ったのはアメリカ人で41%、英国人では34%だった。英国人がこの言葉を使ったらそれは「誘っているのではない、ちょっとお世辞を言っただけ」(It's not an invitation. I'm just being polite)という意味らしい。
これ以外には"quite good" (a bit disappointing:ちょっとがっかりだ)、"very interesting" (clearly nonsense:実にくだらない)、"I'm sure it's my fault" (It's your fault:お前のミスだ)などがあるそうであります。日本語の「前向きに検討」「きわめて遺憾」「世間をお騒がせして」などもそれですよね。国籍を問わず、本当にいやらしいよね。
 
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6)むささびの鳴き声 
▼2番目の安倍首相訪英についての記事に対するむささびのコメント欄で、韓国・中央日報日本語版に出ていたコラムのことを紹介しましたが、中央日報についてはもう一つ、前の国連事務総長・潘基文氏とのインタビュー記事も読みでがありました。<危機の韓国外交、元老に問う>という見出しなのですが、テーマは「韓日外交」です。潘基文氏のメッセージは「歴史を前面に出せば何もできない」というもので、徴用工問題などをめぐって「歴史問題」を持ち出す(かのように見える)現在の韓国政権の対日姿勢を批判している。詳しくは原文をお読みなることをお勧めしますが、インタビューの中で彼が言った言葉を一つだけ紹介します。北朝鮮問題に関連して、日本も国際的、経済的に役割が生まれるのだから(韓国としても)その時に備えても常に良好な関係を保っておくべきなのに(日本の)「国民感情がとても良くない」としたうえで次のように語っている。
  • 先月、日本で高位官僚や政財界関係者に会ったが、雰囲気がひどく冷笑的で驚いた。以前は慰安婦などのイシューを話す時、日本が守勢的な立場だったのに、最近は『われわれにも言うべきことがある』というふうに出てくる。韓日関係は今が最悪だ。
▼従軍慰安婦の問題を持ち出しても、最近の日本人は「申し訳ないことした」というような態度はとらなくなったというわけです。これ、実は日本だけのことではない(とむささびは思っている)。アメリカではトランプ支持者、英国では強硬EU離脱論者から似たような言葉が発せられる。アメリカ人は自分たちの国に人種差別が存在すること、英国人は自分たちがかつて世界の国々を植民地にして現地の人びとを搾取したということ・・・などを指摘されるとかつてはどこか申し訳なさそうな顔をしたのですが、最近では「なんで私たちは英国人であることを恥じなければならないのか?」(Why should we feel guilty about being British?)と開き直るようになっている。

▼自国に対して批判的な態度をとることを「自虐的」と呼んで罵倒・嘲笑するのは世界的な傾向であるわけですが、この種の「他虐人間」に共通しているのが「自分たちがバカにされている」という劣等感です。そして「この世は強い者勝ち」というわけで自分たちをバカにする(と彼らが思いこんでいる)人間を攻撃しまくることで辛うじて生きていることができる。その代表格が、現在の日本の首相であるというわけです。中央日報はその人間について「海洋勢力大連合構想を推進している」として「韓国は国際情勢が何も分かっていない」と嘆いている。あの人がやっているのは単に「強い者につく」ということだけですから、大して気にする必要はありません。

▼最初に書いた中央日報が掲載した潘基文氏とのインタビューに関連してもう一つ。1月24日号の週刊文春に掲載された『飯島勲の激辛インテリジェンス』という記事は、「韓国との断交検討も選択肢」という見出しがついている。反日政策を次々と繰り出す韓国のような国を考え直させるには「政官民が一体となって、断交の検討も一つの選択肢だ」というわけで次のように言っている。
  • 韓国くらいの規模の途上国なら世界にたくさんあるんで、外交・経済・スポーツ・文化のどんな交流にも支障なんかないぜ。
▼飯島勲という人は「特命担当内閣参与」という立場にある人なのだそうです。この「激辛インテリジェンス」と中央日報の「潘基文インタビュー」との余りの違いに心底恥ずかしくなりました。一方が「日本との関係は大事にしなければ」と言っているのに対して、もう一方は「韓国人なんてどうってことないぜ」とうそぶいている。どちらが活字にする言葉としてまともか?中央日報と週刊文春では高級紙と大衆紙のようなもので性格が違うから・・・というだけの説明では(むささびに関する限り)全く納得いかない。いずれにしても週刊文春の編集長さんは、読者に受けると思ってこの記事を載せたのですよね。日本人の多くが、雑誌作りのプロにそのように思われているということです。そんな国なのですね、日本は。

▼「内閣参与」というのはウィキペディアによると「(首相)の“相談役”的な立場の非常勤の国家公務員」なのだそうですね。「非常勤の国家公務員」って何?まさか税金から給与のようなものが払われたりしていないでしょうね。いずれにしても、こんな人が「首相の相談役」をやっているような国なのですね、日本は。4つ目に紹介した「民主主義指数」のランキングで韓国は21位、日本は22位です。何かというとランキングを気にするのはおかしいし、この調査そのものを絶対視する気はないけれど、韓国がこの「内閣参与」が言うように「世界にたくさんある途上国」なのだとしたら、日本は何なのさ、と聞いてみたい。

▼ジャーナリストの大熊由紀子さんから紹介されたワセダクロニクルという新聞サイトに出ている『製薬会社と医師』というデータベースは衝撃的です。製薬会社が医師や大学教授などに払っている金銭のデータです。「医師の名前を記入すると、どの製薬会社からいくら受領しているか調べられる」とのことです。製薬会社から年間1000万円貰っている大学教授もいるのだとか。

▼本日はかなり暖かいようで、高齢者には助かります。お元気で!

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