musasabi journal
 

green alliance essays locations
green alliance
日英グリーン同盟
東京都板橋区

自律した市民に見守られて
東京都板橋区は人口が50万で東京23区の中でも7番目に大きい。ちなみにフィンランドの首都であるヘルシンキの人口が大体50万です。高島平の巨大な高層住宅は板橋区にあります。その近くにある中学校には日英グリーン同盟のイングリッシュオークが植えられています。

超大都会の中のポケットパーク

実は板橋区にはもう1ヵ所イングリッシュオークが植わっている場所があります。都営地下鉄三田線の志村三丁目の駅(と言っても東京以外の人にはピンときませんよね)から歩いて約10分のところにある城山おおぞら広場。都心とは思えないような木立の中に417世帯が暮らす巨大なマンションがあって、あたかもそれに付属するかのように存在しているポケットパークが城山おおぞら広場です。そこにハーブガーデンがあり、その入口にイングリッシュオークが立っている。

城山おおぞら広場は、人口1000万という超大都会の真ん中にある「区立」の公園なのですが、これを管理しているのは付近の住民です。元は草ぼうぼうの単なる空き地であったところを住民が区役所と掛け合って自分たちの手で公園にしてしまった。普通、この手の公園はお役所が殆ど住民の意向とは殆ど関係のないところで作って管理するものですが、おおぞら広場の場合は住民の意向に応えるかたちで場所を提供したものです。

はーべすとくらぶ

板橋区には公園の管理を区役所ではなくて住民が行う「公園の里親制度」というのがあっておおぞら広場もその一つなのだそうです。これも元はといえば収入減もあって役所が昔のようなサービス提供ができなくなったので、地元の住民にやってもらうことになったということですね。「管理」と言っても落ちているゴミを拾ったり、雑草を抜いたりという程度のことなのですが、ハーブガーデンを管理しているのは「はーべすとくらぶ」という、これも有志の集まり。ハーベストというからharvest(収穫)という意味かと思ったらこれが違うのです。「ハーブ」と「ベスト」を一緒にした造語なのだそうです。「最高のハーブ」というわけです。

ボランティアリズムの時代が来る

「これからはボランティアとかNPOの役割がますます大きくなります」と強調するのは松島議員。国も地方も政府の財政は完全な破産状態なので、お役所にこれまでのようなサービスを期待することができず、地域の面倒は住民自らが見なければならないというのが外的要因。 さらに「これから団塊の世代が定年を迎える。職場を離れた彼らが"生きがい"のようなものを求めた時に初めて自分が"地域"にいることに気が付きます。自分のいるべき場所をコミュニティに求めることになる」というわけです。

しかも彼らはパソコンのような技術も身に付けているし、海外経験も長かったりする。「かつての村社会(日本は巨大な村社会であると松島さんは言います)において長(おさ)の言うことに黙々と従ってきた人たちとは違う自己というか自我のようなものを備えている人たちです。"煩わしい近所づきあい"とは違う態度で地域と接触することを望むはずです」。「そうですか・・・?」と疑いの眼差しの私。群れるのは面倒じゃありませんかね。「人間は適度に群れたがる存在なのですよ」。

適度に群れたがる!?

なるほど「適度に群れたがる」とはうまいこと言う。このあたりのところを「はーべすとくらぶ」のメンバー二人に確かめてみたのですが、二人とも私の言う「近所づきあいの煩わしさ」のようなものは全く感じないとのことです。つまり義務感というものが希薄なんだそうです、この活動には。「やりたい人が、やりたい時に、やれるだけのことをする。それでうまく行くんです」と松島さんはおっしゃる。

自律した市民社会・・・

松島さんによると「5年で日本は変わる」のだそうであります。「自立した市民」でなく「自律した市民」の時代が来るとのことです。「自律」と「自立」の違いについてはじっくり話をする必要がありますね。 考えてみると、私がいろいろな人とボチボチやっている「グリーン同盟の会」なる活動も「適度に群れたがる」人間のやりそうなことなのかもしれません。一応、皆さんにイングリッシュオークの育ち具合を記録する写真を送ってくれるようにお願いしているわけですが、これは義務ではないし、商売でもない。お金を払うわけではないのだから。だいいち言い出した私自身が途中で投げ出さないという保障は全くない。でも写真をちゃんと送ってくれる人がいる。

季節感豊かなオーク

「はーべすとくらぶ」の会員である二つの家族の方も「毎年一度、この木の前で家族の記念写真を撮る」という企画をやってくれるそうであります。 西欧のように教会というものが存在して、それがコミュニティの中核になっているということがない日本で、松島さんの言うような「自律した個人による成熟社会」が実現するのか?そのような私の疑問とは全く関係なく、2002年6月に植えられたイングリッシュオークはすくすくと育っているようです。

「はーべすとくらぶ」の竹田さんは「イギリスの木なのに、日本の四季を日本人に実感させる。秋から冬にかけて、枯れたのかと思わせるほどさびしい姿になり、春からどんどんと緑の葉を伸ばしていくさまは躍動感すら覚えます」とコメントしています。松島さんは「年月をかけて同じ木を育てている仲間が日本全国にいると考えることだけでも楽しいじゃありませんか」と言います。賛成です。
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16年は短くない!?
Is sixteen years short or long?
「志村おおぞら広場」にイングリッシュ・オークが植えられたのは2002年3月20日、背丈は1メートルを少し超える程度だったはず(写真左)。16年後の2018年、かなりの大きさに育っているようです(写真右)。人間の方はというと、まあ、それなりに育ったというか、年とったというか・・・。