065 British EnglishとAmerican English |
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私、その昔、東京の英国大使館というところで仕事していたとき、仕事柄日本のジャーナリストという人と話をする 機会が数多くありました。大体が国際ニュースを仕事にしている人たちです。 大使館の英国人スタッフと私の二人で、彼らと食事をすると、殆ど必ずと言っていいほど話題に上るのがAmerican EnglishとBritish Englishのことだった。元ニューヨーク特派員が、「先日、英国人と話をしていたら、アンタの英 語はAmericanだと言われましてねえ・・・」と言って口をすぼめてうれしそうに笑ったりするわけです。 大体において「地下鉄」はアメリカではsubwayだが、英国ではundergroundだとかいうような他愛のないことなのだけれど 、ものごとを素直にとらない習慣が身についてしまっている私はというと、その種の話を嬉しげに語る人が本当に言いたいのは、「自分は英語が上手だ」ということと、「いまやAmerican Englishの時代だ」ということなの ではないかと考えてゲンナリしながら、それでも感心したような顔をして付き合っておりましたね。Britishだろう がAmericanだろうが、英語は英語なのだから「どっちゃでもええやんけ」と思っていたのですよ。 尤も「どっちゃでもええ」などと考えるのは、英語を母国語としない私だけで、当のアメリカ人や英国人はそれなりに こだわる部分もあるようではある。アメリカ大使館の外交官と話をしていたら、彼は英国留学の経験があるとのこと だったけれどI refused to use British English(英国英語は絶対に使わなかったぜ)と、自慢げに言っていたし、国 際会議などがある場合、英国プレスセンターを設置するときは「センター」は絶対にcentreであってcenterなどはとん でもないハナシだった。 Sir Ernest Gowersという人が書いたThe Complete Plain Wordsという本は、60年も前の1948年に出されたもので、 英国人が主として英国人向けに正しい英語の使い方を書いたものです。お読みなった方もいると思うし、この種の本 ではクラシックの部類に入るかもしれない。1948年といえば、第二次世界戦争が終わって3年目のことなのですが、 この本の中でSir Ernestは既に、英語におけるアメリカの影響について次ぎのように書いています。
この本が書かれたのは、終戦直後で、英国人が厳しい生活を余儀なくされる一方で、アメリカの観光客がたくさん英国に やってきたし、アメリカの兵隊も多数滞在している時代だった。つまりSir Ernestにしても、英語におけるアメリカ の影響を結構気にしていたってことですよね。で、アメリカ英語の襲来にもかかわらず「不屈の魂」をもってこれに対 抗しているBritish Englishとして、次の4つを挙げています。
Sir Ernestによると、gasolineは略してgasということが多く、気体のガスと間違えやすい。だからBritish English の方が「はっきりしていて(unambiguous)よろしいということになる。しかし、英国でもガソリンのことをgasという人が増えているのは嘆かわしいと言っています。尤も「歩道」については、アメリカ式のsidewalkの方がはっきりしていていいと認 めたりしている。
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