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むささびの鳴き声
072「辞めるな、小沢さん」が67%

いまから10日ほど前(2010年2月5日)TBSラジオの『アクセス』という視聴者参加ディスカッション番組を聴いていたら、不起訴になった民主党の小沢さんが幹事長の職を続けると言ったことで、「小沢さんの続投を支持するか?」というテーマで議論していました。この番組のサイトを見ると、視聴者からのアンケートが掲載されています。それによると「続投を支持」という人は398人(67%)、「支持しない」が133人(22%)、「どちらでもない」が64人(10%)となっています。圧倒的に「辞めるな、小沢さん」という意見が多いわけです。

この番組が放送される数日前に毎日新聞が行った世論調査では75%の人が「小沢は辞めるべし」という意見であったと報告されています。さらに新聞の社説は全て「小沢は検察的には不起訴であっても、政治的責任をとって辞めるべし」というニュアンスの主張であったのですね。

いまから一年前、2009年3月のむささびジャーナル159号に『新聞は「辞めろ」、ラジオは「辞めるな」という小沢さん 』という記事が載っています。あのときは西松建設という会社にからんだ問題があって、民主党代表である小沢さんの公設秘書という人が逮捕・起訴されたことが問題になっていた。あのときも新聞の社説はすべて「小沢、辞めろ」であったのに対して、『アクセス』のリスナーのアンケートでは380人(60%)が「辞めるな」、184人(28%)が「辞めろ」だった。あのときの読売新聞の世論調査では68%が「辞めろ」、28%が「辞めなくていい」だった。

要するにあの時と今回、まったく同じことが起こっているのですね。新聞は「辞めろ」と言い、『アクセス』は「辞めるな」というわけです。ちなみに一昨日(2月12日)の『アクセス』では、「政権交代から半年。鳩山内閣の支持率は急落。この結果は妥当だと思いますか?」というテーマでディスカッションをしておりました。アンケートの結果は「妥当だ:216人(45%)」、「妥当ではない:157人(32%)」、「どちらとも言えない:104人(22%)」というぐあいに民主党政権に比較的辛い結果になっている。朝日新聞の世論調査では、支持が41%で、不支持が45%だから、『アクセス』の結果とそれほど違わない。

政権に対する評価では、大して変わらないのに、小沢さんのことになると『アクセス』リスナーのアンケートと新聞社の世論調査がこうも違うのはなぜなのでしょうか?『アクセス』の場合は、リスナー自らが自分の意見を言いたくて電話やメールでディスカッションに参加している。新聞社の調査の場合は、おそらくいきなり新聞社から電話がかかってきて意見を聞かれるのではありませんかね。前者が能動的意見、後者は受動的意見ということです。

次に言えると思うのは、新聞社や放送局の調査は、どちらかというと固定電話の世界、『アクセス・アンケート』は携帯電話とインターネットの世界に生きる人々の意見が反映されているということ。前者よりも後者の方が若い。

決定的に違うのは調査そのものの影響力ですよね。新聞社という新聞社、放送局(TBSも含む)という放送局が、同じような世論調査結果を発表する。本当に笑ってしまうくらい似ています。その結果に触れる人の数たるや『アクセス』などものの数ではない。そしてそれぞれが、自分の意見が多数の場合には安心感を持ち、そうでない場合は、自分が間違っているのだろうか?と不安感や孤立感を覚えたりする。こうして主要メディアの言う「世論」が「本当の世論」になっていく。

昔はインターネット世論なんて存在していなかったから、「メディアの世論=本当の世論」であったし、おそらくいまでもその事情はそれほど劇的に変わっていない。ただ「劇的」ではないけれど「着実に」変わりつつあることは間違いないと(私は)思います。少なくとも私自身が変わってしまったことは間違いない。なぜ変わってしまったのかというと、新聞や放送の世界では見たことも聞いたこともないようなジャーナリストや専門家の意見がネットの世界にあって、しかもそれが非常に面白い(思考を刺激する)からです。

かつて田中角栄という政治家がいて、その金権ぶりを暴いたジャーナリストは文句なしに偉大なのだと思っていた。彼が書いた本を読んでもいないのに、です。ロッキード事件、リクルート事件、佐川急便事件等々、これまで何十年とカネと政治が問題になってきて、その度ごとにメディアによる「汚い政治家追放」キャンペーンが行われてきました。そしていま、小沢さんです。新聞やテレビの間では過去と同じように「カネに汚い政治家は追放すべき」という論調になっているけれど、ネットメディアの間ではまるで違う意見もある。はっきり言って後者の方が(私には)はるかに納得のいく記事が多い。「政治家の面の皮」というエッセイもその一つです。
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