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むささびの鳴き声 |
088 中東の民主化運動 |
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エジプトが揺れていますね。1月28日付のBBCのサイトにFrank Gardnerという安全保障担当の記者の記事が出ています。それによると、軍隊の動きが決定的な要因(deciding factor)になるとのことです。エジプトでは軍隊・軍人はイスラエルとの戦争(1967年〜1973年)でも国を守った愛国者として国民的な尊敬を集めているのだそうです。その数は約34万人、Mohammad Tantawiという元帥の指揮下にある。この元帥はアメリカ寄りとされている。ムバラク大統領自身が軍人上がりであり、いまのところ軍はムバラクを支持しているとされている。 一方、デモの取り締まりにあたる警官隊は内務省管轄で、その数は国境警備隊も入れて約33万人なのですが、給料も低く、教育程度も劣る人たちであり、現在のムバラク政権の初期には待遇改善を求めて暴動まで起こしたことがあるのだそうです。そのときは軍隊によって鎮圧された。今回も実弾発射などで死者が多数でている責任は警官隊にありということで、政府の要請で軍隊が出動した際には、彼らが警官隊をコントロールしてくれるのではないかということで市民から歓迎されていた、とBBCは伝えています。 ただ中東問題ならこの人、と言われるThe Independent紙のRobert Fisk記者がカイロから伝える記事(1月28日付)によると、エジプトでは警官こそが特別な存在であり、国の祝日として「警官の日」(National Police Day:1月25日)というのがあるくらいなのですね。1952年1月25日、スエズ動乱として知られる英国との紛争の中で、英国軍がIsmailiaという運河の町にある警察署を襲い、50人のエジプト警官を殺害、これが全国的な反英暴動のきっかけとなった。Robert Fiskは、今回のデモには「ある種のエジプト民族主義」(a kind of Egyptian nationalism)が垣間見えると言っています。 それにしても、チュニジアから始まった中東諸国の民主化運動の報道に接すると、結局のところ上から抑えるという形での国の統治は長続きしないということを表しているように思えますね。欧米vs中東を支配者vs被支配者という図式で見ると、後者(中東諸国)に理があるように思うけれど、後者自身の民主化は、結局欧米をモデルにしたものになるのではないかと思ったりもする。 そのように考えると、たとえば最近の中国も結局のところ欧米が歩いてきた道をたどっているということになるのかもしれない。アメリカが世界の覇権を握っていた時代は過ぎ去ったのかもしれないけれど、それにとって代わるとされている国々もアメリカ的なもののやり方を取り入れながら進んでいるということです。[2011/1/30]
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