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むささびの鳴き声 |
091 「日本の過去にメディアは沈黙」という報道は間違い? |
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東京・新宿の旧陸軍軍医学校跡地で発見された大量の人骨について、厚生労働省が発掘調査を始めた・・・というニュースについて、The Economistの2月24日号がDigging up Japan's past(日本の過去を掘り起こす)という記事を掲載しています。「日本の過去」とは、これらの人骨が細菌兵器を開発していたとされる旧陸軍731部隊による人体実験の証拠なのではないかとされていることに関係しています。 このことについては、日本の新聞や放送メディアのサイトにも出ているのですが、The Economistの記事はBarely a word about it has appeared in the national press(日本の新聞にはほとんど一言も報道されていない)と言っています。 The Economistの記事によると、これから発掘されるであろう人骨は日本が戦争中に行った虐殺行為の証拠となるものであるが、日本はこれまでその種の行為については一切認めておらず、今回の調査についても厚労省は「何も新しいものは出ないだろう」と言っているとしている。しかし厚労省の言うことが間違っていて外国人の人骨や遺留品が発掘されるかもしれない。そうなると硫黄島での日本兵の遺骨収集には並々ならぬ意欲を見せている菅首相としては、こちらの遺骨についても誤りを認めなければ、国際的に「ダンブルスタンダード」という非難を浴びることになるだろうとして、
という文章で記事を締めくくっています。この記事には読者からのコメントが4件掲載されています。うち3つは「日本は自分の過去についてまともな謝罪をしていない」というニュアンスのものであり、日本人からのものと思われる1件は、それに対する反論でした。 日本のメディが沈黙しているとThe Economistは言うけれど、私が調べた範囲では、朝日・毎日・日経・東京(中日)のサイトではすべて報道されていました。読売と産経については、私の探し方が悪いせいなのかどうか分かりませんが見つからなかった。放送では少なくともNHK、フジ、TBSのサイトには掲載されている。The Economistが期待するほどの議論が巻き起こっていないということかもしれないけれど、Barely a word about it has appeared...というのは明らかに誇張です。ちなみに英国の主要メディアはほぼすべて報道していました。 事実と違う誇張は本当に良くないのですが、いつも言うとおりThe Economistの記事には、それに対する読者のコメントを掲載する欄がかならず用意されている。今回の場合は、The Economistの記事が間違っているのではないかという投書が掲載されています。それによって雑誌全体に広がりが出ているのです。日本のメディアのサイトもこの点だけはマネしてほしいものです。[2011/2/27]
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