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むささびの鳴き声
097 「心のケア」番組への疑問

NHKの朝の情報番組のようなものを見ていたら「いま求められる こころのケア」というテーマで専門家を呼んで話を聞くという特集をやっていました。東日本大震災に関連した「こころのケア」について知っておこうというのが番組の意図で「広範囲に広がる心の傷とどう向き合い、心のケアのために何が必要なのか、考えました」というわけです。子供の心のケアについて、例えば余震が来たような場合に「大人は子供が"怖い"と思っていることを受け止め、"大丈夫だよ”と何度でも声に出して伝えましょう。また普段以上にスキンシップを大切にし、悲惨な映像は見せないようにしましょう」とのことでした。

非常に正直に言って、私はテレビ番組などで「心のケア」を取り上げるのは好きでありません。だからこの番組も見ることを止めたわけです。なぜ私はこの話題を取り上げる報道を嫌うのだろうか?「こころのケア」など必要ないと考えているのだろうかと自分を疑ったりもするのですが・・・。

この番組を被災者が見たらどのように感じるのでしょうか?スクリーンが自分に向かって「あなたにはこころのケアが必要です」と言っている。カメラに向かってしゃべるキャスター、相槌を打つゲストと呼ばれる人たち、それからこの道の専門家、スタジオにいる人は誰も被災者ではなく「心の傷」などとは全く無縁・・・そのあたりに私の違和感の原因があるのかもしれません。

例えば上に挙げた「親の不安は子供に伝わるから"大丈夫だよ"と何度でも声に出して伝えてスキンシップを大切にしよう」というコメントを子供たちが聴いたとしたら、「母ちゃんがダイジョウブと言ってもホントは母ちゃんも怖いんだ。でも"こころのケア"のために強がりを言っているのだ。ホントはダイジョウブでもなんでもないのだ」と思いますよね。つまりこの番組でのディスカッションは心のケアなど必要ない人たちによるいわば「楽屋話」なのではありませんか?

人間には手足、眼鼻だけでなく「こころ」というものもあるのだから、それがケアの対象になること自体を否定する気にはならないのですが、手に負った傷の治療とはやはりちょっと違うんじゃありません?つまり楽屋裏など見せてはいけないものなのではありませんか?

と、以上のようなことを考えていたら、知り合いからメールが入りました。その人によると、震災この方日本中が鬱状態で、「なぜかあまり仕事がはかどらない」と言う人が多いのだそうであります。鬱というのは心が晴れず、気持ちが沈んでしまう状態のことを言うのですよね。あのような地震・津波・原発事故が重なれば、鬱にならない方が不思議ってものですよね。

そのメールを読んで思ったことなのですが、日本中が鬱状態だとすると、「心のケア」の番組をやっていた、あのNHKの人たちも実は「心のケア」が必要な鬱状態かもしれないってことです。ひょっとすると、彼らもまたそれを抱えながら放送という仕事をしているのかもしれない。

私の友人は「こんなときは春海さんのように俗界から離れ、草木の手入れにいそしむのが正解です」と言っていたのでありますが、私がその友人に言ったのは、「俗界から離れて草木の手入れにいそしむ」生活をしても鬱状態からは抜け出せないってことです。我慢するっきゃないということです。あえて解決策があるとすれば「時の経過」なのではないか、と想像しています。[2011/5/8]

▼上の記事については、アメリカで「心のケア」をやっている専門家からコメントがありました。ここに載っています

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