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むささびの鳴き声 美耶子のコラム どうでも英和辞書 green alliance
2009年6月21日
昨日、テレビを見ていたら、ボストン・レッドソックスの松坂がまたまた打たれていました。それもこれもあのWBCが悪い!?とかなんとか言っているうちに6月も半ばを過ぎてしまいました。165回目のむささびジャーナルです。よろしく。

目次
1)ロンドン五輪へ、日本から高速鉄道
2)国の指導者:若ければいいってもんじゃない
3)国民一人当たりの負担に見る軍事大国
4)迷惑メール62兆通の環境被害
5)「子供なんか欲しくない」はタブー?
6)アフリカ支援には正確なデータを
7)どうでも英和辞書
8)むささびの鳴き声

1)ロンドン五輪へ、日本から高速鉄道

6月18日付のThe Guardianのサイトを見ていたら、今月末から日本製の高速鉄道がロンドンのSt Pancras駅からKentにあるAshford InternationalEbbsfleetという駅の間を走り始めるという記事が出ていました。

時速140マイル(約220キロ)で、これまで1時間半かかったルートが37分で行けるようになる。このルートはロンドン五輪(2012年)の際にロンドンからストラトフォードにあるスタジアムを結ぶ高速鉄道としての役割が大きいのだそうです。

6月29日から制限付きで走りはじめ、12月13日から通勤電車として正式運航の運びなのですが、Guardianによると運賃はSt Pancras=Ebbsfleet間の約40分間の距離を往復で24.30ポンド(約3900円)で、いまよりも34%高くなる。1週間の定期(travelcard)を買うと、いまより20%増の113.40ポンド(約18000円)になるのだそうです。ちょっと高いのでは?という声もあるらしけれどLord Adonis運輸大臣は

高速鉄道のインフラはタダでできるものではない。建設費も相当なものなのだ。通勤時間が画期的に短縮されるのだから、国民的な合意は得られるだろうし、利用者もそれなりの負担をするのは当然だ。High-speed rail infrastructure does not come for free. It is very expensive to build. The public will understand that in order to get state-of-the-art infrastructure that transforms their journey times, it is right that they should make a contribution.

と主張しております。

▼ポンドと円の国内における購買力を考えないと、「往復24.30ポンド(約3900円)」というのが高いのか安いのか分からないけれど、私が暮らしている町から都心まで、特急に乗ると約40分です。往復とも特急に乗ると全部で1720円です。旅行者として英国に行ったとすると、この「新幹線」に乗るのはビビるな。

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2)国の指導者:若ければいいってもんじゃない

北朝鮮の金正日総書記の後継者としてKim Jong Un(金正雲)という人が指名されたという報道がありましたよね。年齢は25才(26才という説もある)ということで、もしこの人が本当に総書記に就任すると世界でも最も若い指導者ということになる。

The Economistによると、世界の「若き指導者」のトップ5は、

金正雲 次期北朝鮮総書記? 25才
Andry Rajoelina マダガスカル大統領 34才
Roosevelt Skerrit ドミニカ国首相 36才
Nikola Gruevski マケドニア首相 38才
Joseph Kabila コンゴ民主共和国 38才

このうち最初の二人は選挙で選ばれた指導者ではない。現職最年少のアフリカ・マダカスカルのAndry Rajoelinaは今年、軍事クーデターで大統領になりはしたものの、BBCのサイトによると、未だ国際的に認知されていない。このリストには入っていないけれど、注目されるのがパキスタン人民党のBilawal Bhutto Zardari委員長は、1988年生まれだから今年21才。暗殺されたブット元首相の息子で、次期首相と目されている。そうなると就任時期にもよるけれど、この人が最年少の指導者ってことになる可能性もある。

現職の主なる指導者の年齢はというと、ブラウン英国首相は1951年生まれだから首相就任時(2007年)は56才、オバマさんは46才、サルコジさんは52才で大統領になっています。麻生太郎は昭和15年生まれだから今年で68才、鳩山由紀夫さんは1947年生まれだから、今年首相になると62才で就任ということになる。それで思い出したけれど、英国・保守党のキャメロン党首もたぶん来年には首相になるとされている。つまり44才で首相になるということで、これはブレアさんと同じ年です。サッチャーさん(1925年生まれ)は54才、ジョン・メージャー(1953年生まれ)は47才で、それぞれ首相になったわけです。

▼若い指導者についてのThe Economistの記事の見出しはWho's your daddy?(キミのお父さん、だれ?)となっています。20代で指導者なんてのは、本人の希望でないことは間違いない。いずれも周囲に担ぎあげられたものだから、国の指導者たるもの若ければいいってものではない。ただ40代というのが世界の常識であるように見えることを考えると、日本の指導者はちょっと年齢がいきすぎているかも?

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3)国民一人当たりの負担に見る軍事大国


ストックホルムの国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute:SIPRI)によると、2008年の中国の軍事費が850億ドルで、アメリカに次いで世界第2位になった、ということは日本でも報じられています。軍事費という点での大国トップ10は下記のとおりです。

アメリカ 6070億ドル
中国 840億9000万ドル
フランス 650億7000万ドル
英国 650億3000万ドル
ロシア 580億6000万ドル
ドイツ 460億8000万ドル
日本 460億3000万ドル
イタリア 400億6000万ドル
サウジアラビア 380億2000万ドル
インド 300億ドル

確かに中国はアメリカの次に来る軍事大国と言えるのかもしれないけれど、第1位のアメリカの軍事費たるや6070億ドルなのだから、かなりの差をつけられての第2位であります。世界の軍事費の総額は1兆4600億ドル、アメリカ一国だけで世界の軍事費の40%以上を使っているというのだから、とてつもない軍事大国ですよね。

ところで各国の軍事費をそれぞれの人口比で考えると、かなり違う図が見えてくるというのが、6月8日付のThe Economistの記事です。それによると、一番はイスラエルで国民一人当たりの軍事費は約2300ドルで、第2位のアメリカよりも300ドルほど多い。この計算でトップ5は次のとおりです。

 
軍事費総額
国民一人当たりの負担額
イスラエル
162億ドル
2300ドル
アメリカ
6070億ドル
2000ドル
オマーン
45億ドル
1700ドル
シンガポール
75億ドル
1700ドル
クエート
47億ドル
1600ドル

The Economistのリストにはトップ15の国が掲載されているのですが、オマーン、クエート以外にもサウジアラビアとバーレーンの中東の国が入っています。英国は国民一人当たり約1100ドル(軍事費の総額:653億ドル)で第9位。ちょっと意外なのはノルウェー(7位)とデンマーク(12位)と北欧の国が入っていること。中国もロシアも日本も入っていません。


4)迷惑メール62兆通の環境被害

一度、むささびジャーナルで迷惑メール(spam)のルーツについてお話したことがある(と記憶している)けれど、6月15日付のThe Economist(電子版)によると、昨年(2008年)1年間に世界中で送られた迷惑メール(unsolicited e-mails)の数は62兆通なんだそうですね。62,000,000,000,000通と言っても何のことだかよく分からないけれど、これだけの数のメールを送受信・処理・遮断するために使われる電力は330億キロワット時で、1年間に平均的アメリカ家庭150万世帯が消費する電力であり、310万台のクルマが消費するガソリンの量(約75億7100万リットル)にあたるものだそうであります。別のサイトによると、これだけのガソリンを使うと、車で地球を160万周するのと同じ量のCO2が排出されるのだとか。

これらの数字は、コンピュータのウィルス退治で知られるMcAfeeがコンサルタントに依頼して、日本を含む世界11カ国を調査した結果判明したものなのですが、面白いと思うのは、これらのエネルギーの浪費は、迷惑メールの送り手というよりも受け手側の行動によるところが圧倒的に多いということであります。送り手が迷惑メールを送付するために使うエネルギー(受信する人のアドレスを見つけ出し、メールを作成・送付し、これをサーバー上に保管するのに使うエネルギーは、330億キロワット時の2%以下。むしろ受け手の側がクリックしてこれを見たり、削除したりするという行動によって使うエネルギーの方が大きいのだそうです。

昨年11月8日にMcColoと呼ばれるアメリカの迷惑メール配信サービスをプロバイダーが切断してみたところ迷惑メール数が7割も減ったのだそうです。McColoはその後別のところでサービスを再開したらしいのですが、11月8日の切断によって減らされた迷惑メールの数はクルマを220万台減らしたのと同じエネルギー節約につながったのだそうです。

ただ迷惑メールによるエネルギーの浪費は、普通のメールよりは少ないのだそうで、私が誰かにメールを送ることで排出される二酸化炭素は4グラムなのに対して迷惑メールの場合は0.3グラム。何故かというと、普通のメールの場合は送るにあたってコンピュータに文字を打ち込んだりという手間がかかり、それなりにエネルギーも使用するのに対して、迷惑メールの場合はすべてが自動的に行われるので一通・一通に要するエネルギーも少ないからです。

個人的なメールに比べると、「迷惑」の場合は送付する相手がメチャクチャに多いので、全体としてのエネルギー消費量もすごいことになってしまうわけです。The Economistによると、現在世界中で送付されるメールの8割が迷惑メールなのだそうです。

▼The Economistの記事のもとになったMcAfeeによる調査結果はここをクリックすると見ることができます。それによると、世界中のパソコンの「受信ボックス」(inbox)がMcAfeeのような迷惑メール振り分けフィルターで保護されたとすると迷惑メールによるエネルギーの浪費の7割以上を減らすことができる(could reduce today’s spam energy by 75 percent)とのことです。これはひょっとしてMcAfeeのPRかも?

▼McAfeeによると、メール利用による二酸化炭素の排出量は、インターネットの発達度合やメールの利用者数に関係するので国によって違う。例えばアメリカ人一人当たりのメールがらみの排出量はスペイン人のそれの38倍だそうです。それにしても出回っているメールの8割が「迷惑」というのはすごい数字ですが、それは実感でもありますよね。

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5)「子供なんか欲しくない」のはタブー?


英国の日曜紙、The Observerの6月14日付のサイトに、あるアメリカの女優が「子供がいなくて幸せ」(happy to be childless)と発言したことを取り上げた記事が掲載されています。記事を書いたのはPolly Vernonという女性記者で、この記者は、いまの世の中で、「子供がいなくて幸せだ」と言うためには「根性がいる」(It takes guts to say: 'I don't want children')というわけで、女優の根性を大いに誉めたたえております。

女優さんは36才になるCameron Diazという人で、Cosmopolitanという雑誌とのインタビューの中で「女が子供をいらないと言うことはタブーになっている」として

女性たちは変人扱いされることが怖くて子供がいらないとは言えないでいる。私の女友だちでは子供がいない人の方が多いのよ。はっきり言って、地球上にはたくさん人間がいるのだから、これ以上子供はいらないのよ。I think women are afraid to say that they don't want children because they're going to get shunned ... I have more girlfriends who don't have kids than those that do. And honestly, we don't need any more kids. We have plenty of people on this planet.

と発言したのだそうです。この女性記者も別の雑誌に、子供を欲しいとは思わないという趣旨のエッセイを載せたことがあるらしいのですが、そのときにはそのような考え方があたかも犯罪であるかのように見られるものとは知らなかった。

子供が欲しいと思う人たちも現に子供がいる人たちも、私自身が子供を欲しくないと思うことは受け入れてくれるものと思っていた。私が拒否しているのは自分の(想像上の)子供であって、彼らの子供ではないのだ。I thought that people who want - or have - children, would accept that I do not, just as I accept their choice. After all, it's my (notional) babies I am rejecting, not theirs.

彼女はエッセイの中で、子供がいないことのいい点について、旅行ができる、好きなだけ眠れる、読みたい本が読める等々の事柄を挙げて説明したのですが、それに対して「自分勝手(selfish)」、「女らしくない(un-sisterly」)、「不自然(unnatural)」、「悪者(evil)」など、ありとあらゆる罵声を浴びせる手紙やメールをもらってしまった。で、彼女はいまや「赤ん坊嫌いのジャーナリスト(baby-hating journalist Polly Vernon)というレッテルを貼られてしまったと言っています。

子供を欲しくないと思うことが悪いことのように言われるのは実にナンセンスであるというわけで、実は現代は子供なし社会になりつつあるとして、ヨーロッパの出生率は下がり続けていること、英国では大学出で年齢が35歳という女性の40%が子供がおらず、そのうち少なくとも30%がこれからも生む気はないと答えていることなどは「誰でも知っている」として、次のように締めくくっています。

子供がいないということは、これから多くの人々にとって生活のあり方になるだろう。子供を持たないということを「失敗」ではなく、選択肢(ちゃんとした選択肢)として考え始めるべきなのだ。もちろんタブーであってはならない。Childlessness is going to be a feature in many of our lives; we need to start seeing it as a choice, a valid option, rather than a failing. We certainly need it not to be taboo.

このエッセイについては、読者からの書き込み投書が250件以上もあり、女性とおぼしき読者から「よくぞ言ってくれた」という類の投書がかなりの数でありました。「子供がいない女性に対して厳しく当たる人たちは、その女性が自分と同じようにひどい目にあっていないことが癪に障るのよ(those that are bitter at other childless women are merely bitter because that woman hasn't suffered the misery they have)というのが典型的なものです。

が、そうでない意見もある。男性とおぼしき読者は「ちょっとおおげさなんじゃない?(Are you not overstating your case?)」として、37才の女性ジャーナリストに子供がいないということなど珍しくもなんともないし、誰もアンタの私生活などに興味はない。「実際には何も問題がないのに勝手にもめごとをでっちあげているのでは?(I think you are making up a conflict where there is, in fact, none) と申しております。

▼はっきりしていることは、The Observerのような新聞のサイトを読む人の多くは「インテリ」と呼ばれる人々であるということですね。つまり「女の幸せは家庭を持って子供を育てること」というような伝統的な考え方をしない人たちであるということです。この記事を読んで、私も「おおげさに騒ぎすぎるんでない?」と考えてしまった。

▼この人自身が子供を持とうが持つまいが、この人の勝手です。そんなことより、この人は、人類というものが生まれてこの方ず〜っと子供を生み続けてきたということ、この人自身もその一部であるということについてはどのように思っているのかをぜひ聞いてみたい。そっちの議論をするのが「高級紙」ってものなのではありませんか?

▼そういえば、かつて日本には「女は産む機械だ」と発言して問題になった大臣がおりましたね。

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6)アフリカ支援に必要なのは正確な数字だ

5月24日付のFinancial Timesのサイトが、アフリカについてのデータが当てにならないという趣旨の記事を掲載しています。この記事は、FTのMichael Holman前アフリカ担当部長とヨハネスブルグにあるBrenthurst Foundation財団のDr Greg Mills理事の二人の名前で書かれており、正確な統計に基づかないアフリカ援助の問題点を指摘している。

例えば国際救済委員会(International Rescue Committee:IRC)が昨年(2008年)1月に発表した「コンゴ共和国では、1998年以来、戦争による死者が540万人」という数字。これは本当に正しいのか?Andre LambertとLouis Lohle-Tartというベルギー人の国勢調査員は、1998年にEUからの要請でコンゴ共和国の人口調査をしたことがある人たちなのですが、彼らによると戦争による死者数は約20万人なのだそうです。彼らによると、「防げたかもしれない病気による死者は数百万にのぼるかもしれないが、それは1970年代からの数字の合計であり、コンゴがMobutu Sese Sekoのような独裁者に支配されていた時代も含めてのことだ」とのことです。

またユニセフなどは、「アフリカでは1年間に400万人の5歳以下の子どもたちが防げたかもしれない病気で死んでいる」とか「マラリアによる死者は年間約100万」と言っているけれど、それは正しい数字なのかというと実は良く分からないのだそうです。証拠がないのです。

にもかかわらずこれらの数字の多くが信頼できるものとされているのは、情報源が国連であったり世界銀行であったりするからで、ソマリアのような破たん国家における幼児死亡率など実際に分からない。でも世銀は2000〜2005年における子供の死者数は1000人あたり133人としている。

実際、アフリカについての統計ほどあてにならないものはない。数字は統計担当者がヤマカンで考えたものであったり、政治家の利益に沿うものであったり、国連の推定であったり、NGOの資金集めやロビイストたちの問題意識から生まれた産物なのだ。In fact, barely an African statistic is not tainted: the product of a statistician’s sucked thumb, a politician’s self-interest, UN guesswork, a non-governmental organisation’s fundraising drive or a lobbyist’s agenda. It is difficult--nay, impossible--to generate an accurate figure for growth when the informal sector accounts for the bulk of African economic activity and output.

というわけで、アフリカ支援のための国際的な援助計画を進めるにあたって、アフリカの諸政府における統計局に対して資金提供をすることで正確な数字を出せるようにすることが最初のステップであるべきだとしている。筆者によると、アフリカ諸国の多くが内戦を経て独立を果たしたあと、政府の統計部門の充実が独立直後の混乱期に無視されてしまう傾向にあるのだそうです。

筆者は、アフリカ諸国の政府の統計局を充実させると同時に民間部門との協力で、Africa Commercial Indicator(アフリカ商業指標)というような新しい指数を作るべきだとも言っている。この指数は、アフリカの貧困の度合をビジネスの面で表すもので、例えば地元の企業によるビール、ソフトドリンク、砂糖、塩、電気、セメントなどの商品の販売・購入額や輸出の数量や金額などを含めたものにするべきだということです。

アフリカ問題を解決するためには、熱意と同時に正確な統計が必要だ。客観的に集められ、責任をもって使われる統計である。それなしにアフリカの危機に対処しようとすることは、アフリカ大陸を羅針盤なしに進むようなものだ。Accurate statistics, objectively gathered and responsibly used, are as essential as compassion in tackling Africa’s plight. Tracking its crisis without reliable data is like exploring the continent without a compass.

FTの記事はここをクリックすると読むことができます。

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7)どうでも英和辞書
A〜Zの総合索引はこちら

values:価値観

value(価値)という言葉が複数形(values)になると「価値観」という意味になる・・・と英和辞書には出ています。「道義・慣習などの価値基準」とも書いてある。オバマ大統領が中東訪問に先立ってBBCとのインタビューに応じて彼なりの中東政策について話をしました。インタビューのことを伝えるBBCのサイトの書き出しは

US President Barack Obama has told the BBC that the US cannot impose its values on other countries. アメリカのオバマ大統領は、アメリカはその価値観を他国に押し付けることはできないと語った。

となっている。オバマさんは、アメリカの価値観を押し付けることはしないけれど、法の支配、言論と宗教の自由などは「万国共通の価値観」(universal values)であるとも述べたのだそうです。

「価値観」って何ですか?私の解釈によれば、人間が生きていくうえで、何を大切だと思い、何をそれほど大切でないと思うのかについての基準のようなものであります。つまり極めて個人的なものなのではないかということです。例えば「世の中、金がすべて」というようなことです。法の支配などは「制度」のことであって、私の考える「価値観」というものとは別物という気がする。

安倍さんが首相であったころ「価値観外交」という言葉が流行ったのを憶えています?私の感覚からすると、「価値観」と外交なんて絶対に結びつかないと思う。それにしても安倍さんの価値観とジョージ・ブッシュやトニー・ブレアの価値観が同じであるとは到底考えられない、と思ったことを記憶しています。


inclusive:開放的な

むささびジャーナル164号で紹介したとおり、ブラウン政権の欧州担当大臣、Caroline Flintが辞職したときの辞表の中で、ブラウン内閣が開放的でないという趣旨の批判をしたときに使ったのがinclusive government(開放的な政府)という言葉だったですね。女性を閉め出してしている、というので怒って辞めてしまったわけです。

inclusiveinclude(含む・含める)という言葉の形容詞ですが、さまざまに異なる意見の人々を「包み込む余裕のある」という意味にも使えます。つまりinclusive governmentというのは、いろいろな人に門戸を開放している政府ということですね。openと似てはいるけれど、この場合はドアを開けてあるという意味で、入るかどうかは皆さん次第。inclusiveな態度はもう少し積極的です。

1997年にブレアの労働党政権が誕生した当初、何かにつけて言っていたのがinclusive societyを作ろうということだった。あのときに言っていたのは、社会的な弱者(身体障害者とか)も参加する社会の建設ということだったと思うのですが、inclusive societyを理念として掲げるということは、その当時の英国がどちらかというとexclusive societyであった(とブレアさんたちは考えていた)ということですね。exclusiveは排他的ということです。


agony aunt:人生相談コラムニスト

agonyは「苦痛」とか「苦しみ」とかいう意味ですよね。agony auntが人生相談の先生という意味になるのは、きっと苦しいときに知恵を貸してくれるのが「叔母さん」だからでしょうね。手持ちの辞書によるとこれはBritish Englishで、米語ではadvice columnistというのだそうです。米語の方が分かりやすい。

Daily Mail紙にZelda West-Meadsというagony auntがいるのですが、そのコラムを読んでみたら、自分の夫にネットを通じて付き合っている女性がいることが分かった奥さんからの相談というのが載っておりましたね。

7年前にも同じようなことがあり、そのときはダンナの方が女性と家を出て行ったけれど3か月して戻って来た。それなのに、それなのに、性懲りもなくまたやっているというわけですが、今回の相談でちょっと可笑しいのは、ダンナの方が「この女のところへ行くということは、90%ない」(He has said he is 90 per cent sure he will not go to this other woman)と言い張っているらしいことですね。ダンナさんがいつも言うのは"he will never find anyone better than me"ということ。つまり「世の中でお前ほどいいヤツはいない」ってことですな。だのに何故こんなことを繰り返すの?というのが「相談」であります。

それに対するZeldaのアドバイスは「きっとほかの女性と付き合っていても見つからないと思ったんでしょう」(Maybe he thought he could have an affair and not be caught out)というわけで、

  • このような男というのは、彼らなりのやり方で奥さんを愛しているのかもしれないけれど、いつもいつも彼らの手前勝手な欲望が先に来てしまうのよね。In their way they may love their wives, but their own selfish desires take precedence time and time again.

とアドバイスしています。要するに「ダンナの女癖は、ぜったい直らないのだから、別れてしまいなさい」と言っているんでしょう。これ以上はここをクリックしてお読みください。アホらしくて付き合ってらんないもんな。

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8)むささびの鳴き声


▼要するにあれは何だったんですかね。鳩山邦夫という人が日本郵政の西川善文社長をクビにするのだ、と息巻いた挙句に自分が総務大臣をクビになってしまったという、あれです。鳩山さんによると、西川社長が率いる日本郵政ではとても許せないような不正が行われており、これを見逃すことは彼の正義感が許さないとのことだったですよね。

▼で、「ビジネスの世界のことに政治家が介入すべきではない」というわけで、麻生さんが鳩山さんをクビにしてしまった。そうしたら、今度は麻生さんの世論調査における人気度が下落した。「鳩山さんを辞めさせるなんてけしからん」ということですね。

▼6月16日のYahooニュースを見ていたら「産経新聞配信」の記事として、西川社長が「失礼なことをいうな!!」と怒ったという見出しがあったので、何事かと思ってあけてみたら、新しく総務大臣になった佐藤勉という人と会談をしたあと記者団との立ち話インタビューに応じた西川社長が記者からの質問に対して怒りを表したらしい。

▼記者の一人が、「世論調査によると西川さんは辞任すべきという声が圧倒的に高いのだから辞める気はないのか?」という趣旨の質問をしたところ、西川さんが「けじめはつけます」と答えた。「つまり辞めるってことですか?」というような質問があったのですが、西川さんが「少しうつむいた」らしい。それを見て記者が「うなずかれたということでいいか」と問いただしたところ、西川さんは質問した記者をにらんで「失礼なことをいうな!!何がうなずいたんだ!!」と怒声を浴びせた、と産経配信の記事は言っています。

▼くどいようですが、もう一回確認するとですね、西川さんをクビにしようとした鳩山さんがクビになり、鳩山さんをクビにした麻生さんがクビになろうとしている。そしてメディアのいう「世論」は西川さんもクビにしろと言っている。ついでと言っては何ですが、民主党の鳩山さんも「政権をとったら西川さんには辞めてもらう」と言っている。

▼鳩山邦夫さんの「正義感」も、麻生さんの「ビジネスの世界のことは」も、鳩山由紀夫さんの「辞めていただく」も、西川さんの「続投が私の責務」も、それぞれの背後にいろいろと「真相」があるのだから言葉どおりに受け取るわけにはいかないかもしれない。でも私には、彼らの言葉を語る以外に語りようがない。はっきり言って、いろいろある発言の中で、私がイチバン納得行ったのは、党首討論会における麻生さんの「ビジネスの世界のことはビジネスマンに任せよう」という言葉でありますね。

▼イチバンどうでもいいのは、西川さんとのインタビューで記者が持ち出した世論調査の結果というヤツでしょうね。「昨日、今日あたりの世論調査で、西川社長の続投に関して否定的な意見が大勢をしめる結果がでているが」という記者の言葉に対して「よく読んでいませんからわかりません」と西川さんは答えています。企業の経営者が、自分が率いる会社経営について「世論」の言うとおりにして失敗しても、世論は責任なんかとってくれませんからね。

▼というわけで、このすったもんだでイチバン得したのは、「正義の味方」を貫いた鳩山邦夫さん。イチバン損したのは「正義の味方」をクビにした麻生さんですね。この人(麻生さん)は企業経営者だったのですよね。それにしてはドジなんじゃありません?

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