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むささびの鳴き声 | 美耶子の言い分 | どうでも英和辞書 | green alliance | |
2009年6月7日 | ||||
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目次 1)地方選挙で惨敗、メタメタの労働党政権 2)英国流「辞表の書き方」!? 3)間もなく100万語に達する英単語 4)フィンランド人は無口癖とアメリカ人 5)検察を怒らせるのはメディアの世界のタブー? 6)どうでも英和辞書 7)むささびの鳴き声 |
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1)地方選挙で惨敗、メタメタの労働党政権 | ||||
6月4日、英国(イングランド)の34の地方議会の選挙が行われたのですがブラウン労働党は完敗だった。34議会のうち30議会で結果が明らかになっている現在、とにかく34議会のうち29議会で保守党が多数党になってしまった。地方議会議員の数についていうと、保守党が285人増の1530人なのだから、地方議会はほとんど保守党の天下みたいなものですね。労働党は329人減の179人で中央では第三政党の自民党の484人にも及ばない。 ブラウンさんも「この選挙は労働党にとって苦しい敗北(painful defeat)に終わった」とコメントしていますが、これほどひどい負けとは思っていなかったかもしれない。Staffordshire、Derbyshire、Nottinghamshire、Lancashireなど、30年以上も労働党が多数を占めてきた議会が保守党の天下になってしまった。 以前にも申し上げたとおり、英国では来年6月までに総選挙が行われることになっています。これに関連して面白いと思うのは、英国の場合(たぶんアメリカもそうだと思いますが)、世論調査なるものがしょっちゅう行われていて、いま現在どの政党がリードしているのかがいつも分かるようになっていることです。英国における主なる世論調査機関としては、(私の知る限りでは)Ipsos MORI、YouGov、ICMなどがあります。 で、Ipsos MORIという世論調査機関が最近(5月29日〜31日)、約1000人を対象に行った調査によると、政権党である労働党の支持率は18%、野党の保守党支持が40%、自由民主党が18%というわけで、ブラウン率いる労働党は保守党に対して22%も水をあけられています。 興味深いのは、これらの主要政党以外の政党への支持率が合計で24%もあることで、内訳はスコットランドならびにウェールズ党が4%、緑の党が6%、英国独立党(United Kingdom Independence Party: UKIP)が7%、英国愛国党が4%、その他が3%という具合です。これらの党を支持するという人は4月に行われた調査に比べると倍増しているのだそうです。いわゆる「経費スキャンダル」のお陰で、主要政党の議員に対する幻滅感が広がっているということです。 経費スキャンダルがブラウン政権に与えているマイナスもかなりなもので、いまの政府に「満足している」という人は4月の23%からさらにダウンして18%にまで落ち込み、「不満である」という人は70%からさらに増えて77%にまでなっている。「満足」から「不満」を引いた数字のことを世論調査の専門用語で「純粋支持率(net rating)」というらしいのですが、ブラウン政権の場合はこれがマイナス59。昨年7月にも同じ数字を記録しているのですが、現政権に対する純粋支持率としてはメージャー政権のときに記録した1996年8月以来の悪い数字だそうです。 首相としてのゴードン・ブラウンに対する支持率は26%で前月比で7%減、不支持率は69%だから10人のうち7人が「不満」ということになる。野党・保守党のデイビッド・キャメロン党首の人気度は51%が「満足」で35%が「不満」というわけで、いずれもブラウンよりは上。ただキャメロンさんでさえも4月に比べるとほんのわずかとはいえ「不満」が増えている。これはどう見ても「経費スキャンダル」のせいとしか言いようがない。 back to top |
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2)英国流「辞表の書き方」!? | ||||
経費スキャンダルでメタメタのブラウン政権に追い打ちをかけるかのように、対ヨーロッパ関係担当のCaroline Flintという女性大臣が辞表を提出した、というニュースが6月5日付のBBCのサイトに出ていました。辞任の理由は「女のアタシをお飾り扱いして、バカにしている」というもの。いずれにしても、「ブラウンさんとは、やってらんない」ということです。英国ではよくあることですが、彼女がブラウンさんに提出した辞表そのものがメディアを通じて公表されており、BBCのサイトにもそれが掲載されている。この際そのまま紹介します。英国流の「辞表の書き方」講座!?日本語は私の訳です。間違ってはいない(と思う)けれど、あまり上手い日本語でないことはご勘弁を。
▼この人、1961年生まれだから48歳。ブラウンとは約10才違う。選挙区はヨークシャーです。どちらかというと労働党の地盤ですね。1997年に下院議員に当選。つまりブレア政権が誕生したときに議員になったということです。彼女の立場はMinister of State for Europe。外務大臣のもとで欧州を担当する「大臣」であったわけですが、Ministerは日本でいうと副大臣みたいなものです。いわゆる「閣僚」ではないけれど、欧州との関係を担当するのだから、かなり重要な役割であることは間違いない。 ▼彼女は「女性も大臣にしております」というPRのために起用された、と怒っております。ブラウンさんの態度が気に入らないというわけですね。腹にすえかねての辞任です。このような辞表そのものが公表されるというのは何やらドライでよろしいんじゃありませんか?ブレアさんが首相のときも同じことがありましたね。 ▼辞表はDear Gordonという書き出しです。ファーストネームを使っている。ブレアさんが首相であったときにも閣僚が辞任したことがあったけれど、そのときもDear Tonyという書き出しだった。informal(形式ばらない)な内閣(モダンな内閣)であることを強調したくて、ブラウンさんが「おれのことはゴードンって呼んでくれや」というお達しを出したのでしょう。 ▼上げ足をとるようで悪いけど、英国の場合、「形式ばらない」ことが形式になったりするのですよね。ある英国の組織で、トップのことをスタッフ全員がファーストネームで呼んでいるところがあります。いくら呼び方がinformalだったとしても、所詮は上役なのであって、お昼にラーメンでも食いに行こうなどと誘うわけにはいかない。だったら普段から他人行儀の方が自然でいいんでない? ▼日本語でこれをやったらサマにならないでしょうね。麻生内閣の閣僚が辞表を書くのに「信愛なる太郎へ」というのはどうも・・・しっかり者の母親が東京にいる息子に手紙でも書いてるみたいだな。
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3)間もなく100万語に達する英単語 | ||||
ひと月ほど前のDaily Telegraphによると、2009年6月10日午前10時22分になると、英語が100万語に到達するのだそうです。これはアメリカ・テキサス州のオースティンにあるGlobal Language Monitor(GLM)という言語学者のグループが予想しているらしい。このグループは世界の言語における新語の誕生を徹底追及しているらしいのですが、彼らの研究によると現在、英語は特にアジアにおいて第二言語として浸透しつつあるところから、98分に一語の割で新しい英語が生まれている。これはシェイクスピアの時代以来のペースであるとのことであります。 GLMがやっているのは、新聞や放送のみならずネットの世界で使われている英語を追及しているもので、CNNだのBBCだのと言った世界中の放送局やメディアの世界で2万5000回以上使われた英語を「英語」として勘定すると、そうなるのだとか。尤もGLMの主席言語アナリストのPaul Payackによると、
なのだそうです。例えば「新米」のことを意味するネット言語にnoobというのがあるし、環境にやさしい企業活動のことを意味する言葉であるgreenwashing、不況下のファッションはchiconomicsというぐあい。私(むささび)は全く聞いたことがない。 英語辞書の決定版というと1888年に出版されたOxford English Dictinary(OED)ですが、現在この辞書に載っているのは約60万語、アメリカのMerriam-Websterは45万語だそうです。 GLMの予測についてThe Economist誌は、例えば動詞のwrite(書く)はそれだけで一語と計算しているのかwrites, wrote, writtenも入れて4語としているのかがはっきりしないということなどからして「あまり意味がない(largely meaningless)」としながらも、英語という言語が貿易の世界で使われて、常に外国語を吸収しながら発達してきた言語であることを示していると言っています。 知らなかったのですが、shampooだのbungalowはもともとインド語だったのだそうですね。tsunamiは日本語だし、jihad(イスラム聖戦)はアラビア語。でもいまでは英語としても扱われていますよね。GLMのサイトによると2008年12月30日現在で英語の単語数は999,824だそうです。
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4)フィンランド人は無口癖とアメリカ人 | ||||
月17日付のフィンランドの日刊紙、Helsingin Sanomat(英文版)にちょっと面白い記事が出ておりました。見出しは「フィンランド人:沈黙の名人(Finns - masters of silence)」というもので、イントロは「フィンランド人の多くが恥をかく現象にも、アメリカ人の学者はいい点を見ている」(American academic sees positive sides to phenomenon that embarrasses many Finns)となっております。 この記事を書いたのはフィンランド人の記者なのですが、どうやらフィンランドの人々は、自分たちが静かである(silent)であるということでかっこ悪い思いをすることが多いらしい。この場合のsilentという英語は、「静けさ」というよりも「無口」という日本語の方が適切かもしれない。 例えば、あるフィンランドの女性がアメリカの友人とアメリカでドライブ旅行をしたときのこと。アパラチア山脈の近くを通過したのですが、フィンランドの女性は景色の美しさに黙って見とれてしまった。しばらくするとそのアメリカ人がクルマをとめて怒ったような口調で発したのが「何が不満なのさ(Now, you tell me what’s bothering you!)」という言葉だった。そのアメリカ人は、フィンランド人のsilenceを不満のしるしと解釈してしまったというわけです。 Michael Berryというアメリカ人は、30年以上もフィンランドで暮らしているらしいのですが、彼によると、フィンランドの沈黙を不満の表れと解釈するアメリカ人は「沈黙不快帝国主義」(imperialism of discomfort with silence)に毒されているのだそうです。この種の帝国主義者たちには「沈黙=不愉快」という思い込みがある、とBerryさんは言っている。 フィンランド人はまず、コミュニケーションというものをを「お喋り対無口」(talk vs. silent)という尺度でしか見ない帝国主義者の見方を拒否しなければならない。BerryさんはTurku School of Economicsという大学で国際コミュニケーションを教えているのでありますが、そこでも外国人(フィンランド人以外の人々)はフィンランド人の静けさを引っ込み思案(negative shyness)をとらえる傾向がある。 Berryさんによると、フィンランドの人々自身にもsilentをネガティブに考えてしまう傾向があるが、それは「思慮深い」(thoughtful)ということであって、必ずしもネガティブに考える必要はない。外国人と一緒にいるフィンランド人の多くが最初は無口ではあるが、喋る必要のあるときは喋るのだから、フィンランド人の無口は「積極的かつ前向き」(active and positive sense)な無口と捉えられるべきであるというわけです。 Berryさんは長年フィンランドで暮しているうちに、フィンランド人の無口を楽しむことができるようになったとして、「フィンランド人は、無口と饒舌の両方を楽しめることを有難いを思わなければいけない」(You Finns are lucky because you are able to enjoy both silence and speech)と申しております。
ただフィンランド人にもいろいろあって、スウェーデン語を話すフィンランド人や南カレリア地方のフィンランド人は、どちらかというと陽気(cheerful & jovial)なのだそうで、Berryさんの見るところによると、cheerful & jovialなフィンランド人は、silentなフィンランド人と一緒にいると居心地が悪い(feel awkward)なのだそうです。 Helsingin Sanomatの記事を書いたAntti Tiainenという記者は、Berryさんの見方について「黙って考えてみよう」(Let us reflect on that in silence)と言っております。 back to top |
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5)検察を怒らせるのはメディアの世界のタブー? | ||||
5月29日付のNew York Times (Asia) のサイトにMartin Facklerという記者の書いたIn Reporting a Scandal, the Media Are Accused of Just Listeningという記事が出ておりました。見出しを訳すと「スキャンダル報道の中でメディアはただ聞くだけと批判されている」となる。これだけでは何のことか分からないかもしれないけれど、次の書き出しを読むとよく分かります。
Fackler記者は、日本がようやく二大政党制のもとで政府を変えるチャンスに恵まれているにもかかわらず人々はそのことを知らないでいるという日本の学者や元検事らの意見を紹介しています。「マスメディアは何が問題であるのかを知らせていない(The mass media are failing to tell the people what is at stake)」(京都大学・中西輝政教授)というわけです。 この記者によると、報道が小沢氏に対して厳しくて検察に対しては好意的であることは日本のジャーナリストも認めているけれど、記者たちが単に検察の言いなりになっているという意見に対しては否定的であるのだそうで、このことについてNew York Timesが新聞社に質問したところ、次のような回答が文書で寄せられたそうです。
IHTはさらに上智大学でジャーナリズムを教えるYasuhiko Tajima教授の
という意見も紹介しています。 この記者によると、政権に近すぎるということでメディアが批判されるのは日本に限ったことではないけれど、日本では問題がより眼に見えない形で定着している(more entrenched)のだそうで、その例として日本の「いわゆる記者クラブ(so-called press clubs)」のことを挙げている。このクラブを通じてメディアと政府省庁の親しい繋がり(cozy ties with government agencies)が保たれていると言っています。 Fackler記者はまた、最近東京新聞が西松建設からお金を受け取っていた自民党の議員についての調査報道的な記事を掲載したということで、3週間にわたって「検事とハナシをするのを禁止された」(banned from talking with Tokyo prosecutors)と伝え、この新聞の記者の「検察を怒らせることは最後に残されたメディア・タブーの一つ」(Crossing the prosecutors is one of the last media taboos)という言葉を紹介しています。 今回の西松建設報道について、なぜメディアは小沢のことばかり詳しく報道するのかについて、Fackler記者は次のように結論づけています。
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6)どうでも英和辞書 | ||||
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advice:助言、アドバイス インドのカシミール地方に伝わることわざに
というのがあるんだそうですね。ネットで調べたのですが、これが何を意味するのかという説明が出ていない。おそらく「大切なものを無駄にする」というようなことなのであろうと推察しております。だとすると、所変われば、で面白い。日本語だと「猫に小判」でしょうね。価値が分からないってこと。ところで「むささび」はリスの一種であることはご存じですよね。英語ではflying squirrel(飛ぶリス)と言います。 claim:請求する、主張する
という記事がDaily Telegraphのサイトに出ておりました。いわゆる「経費スキャンダル(expense scandal)」の一環でありますが、この記事に出てくるclaimという言葉は「カタカナ英語」の例の一つですね。「クレームがつく」という言い方をするけれど、意味するところは「不満を述べる」というようなことですよね。 でもclaimにはそういう意味は全くない。お金を請求するという意味で使われることもあるけれど、もっと一般的だと思うのは「主張」の方かもしれない。This car is claimed by the company to be the fastest in the world(同社によるとこのクルマは世界最速である)というようなケースです。 ところで、教会での寄付金を経費で請求した議員は、もちろん断られたのですが、これを伝えるDaily Telegraphによると、インドへ出張した議員が現地でカーペットを購入、これを経費としてclaimしたなどという例もあるそうです。 それにしてもどういう経緯でclaimが「クレーム」になってしまったんですかね。 「和製英語」を集めたウェブサイトにいろいろ出ておりますが、
というのを「彼はホール・イン・ワンを入れたと苦情を言った」と解釈して訳が分からなくなるケースがあるのだそうです。「おれ、幽霊を見たんだ。ほ、ホントなんだよ。見たんだってば!」というのは He claimed that he had seen a ghost last night, saying, "I did see it. I mean it!!". ということになる。 First Past the Post (FPTP):小選挙区制 競馬をご覧になる人ならお分かりですが、直線コースに入って何頭も馬がゴール目指して駆け込んでくる。そして最後にゴールの標識のところを通り過ぎる。当たり前ですが、標識を最初に通過した馬が勝ち。FPTPのPastはpassed(「通過する」の過去形)の意味。なぜpassedがPastになるのか分からないけれど、発音的には全く同じですね。Postは標識ということです。 というわけでFPTPは、一つの選挙区に何人の候補者が立っていても、一番たくさん票を獲得した人が勝ち、すなわち小選挙区制ということです。 19世紀の初めから英国の選挙はこのシステムで行われています。例えばA党の候補者が10万票、B党の候補者が9万9000票、C党のそれが9万8000票獲得したとすると、B党+C党の得票数は19万7000票。これは19万7000人の人がA党を支持しなかったともいえる。なのにその選挙区からロンドンの議会に行くのはA党の政治家ということになる。 労働党と保守党という2大政党が政権を争っている間は、選択がはっきりしており、勝ち負けがはっきりするから政治的な安定という意味ではFPTPは悪いシステムではない。しかし最近では労働・保守以外にも政党が市民権を得てきており、特に第三政党といわれる自由民主党(Liberal Democrats)を支持する人も相当数いる。 また最近では「経費スキャンダル」のお陰で2大政党の議員に対する不信感が高まっていることもあって、選挙制度も変えようという動きもあります。 1997年の選挙はブレアさん率いる労働党が「圧勝」したように言われているけれど、実際の得票数は投票総数の43.2%、保守党は30.7%、自由民主党は16.8%だった。保守党と自民党を合わせると47.5%で、労働党を上回る。にもかかわらず議会(659議席)で得た議席数は、労働党が全議席数の63.6%(419議席)だった。保守党は25.1%の165議席。可哀そうなのは自民党で、得票数はほぼ17%だったのに議席数はたったの7%の46議席だけだった。 FPTPの良し悪しについては、いろいろなサイトに出ていますが、ここをクリックすると分かりやすい説明が出ています。 back to top |
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7)むささびの鳴き声 | ||||
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