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美耶子の言い分 どうでも英和辞書 green alliance
2011年2月27日
あっと言う間に2月が終わりですが、埼玉県では今年も梅の花が満開です。このむささびジャーナルをニュージーランドでお受け取りを頂いている方には申し上げる言葉がありません。
目次

1)「日本の過去にメディアは沈黙」という報道は間違い?
2)インターンシップ制度の功罪
3)結婚奨励策の評判
4)カダフィと英国の深い縁
5)民主化とは欧米化のこと?
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声

1)「日本の過去にメディアは沈黙」という報道は間違い?

東京・新宿の旧陸軍軍医学校跡地で発見された大量の人骨について、厚生労働省が発掘調査を始めた・・・というニュースについて、The Economistの2月24日号がDigging up Japan's past(日本の過去を掘り起こす)という記事を掲載しています。「日本の過去」とは、これらの人骨が細菌兵器を開発していたとされる旧陸軍731部隊による人体実験の証拠なのではないかとされていることに関係しています。

このことについては、日本の新聞や放送メディアのサイトにも出ているのですが、The Economistの記事はBarely a word about it has appeared in the national press(日本の新聞にはほとんど一言も報道されていない)と言っています。

The Economistの記事によると、これから発掘されるであろう人骨は日本が戦争中に行った虐殺行為の証拠となるものであるが、日本はこれまでその種の行為については一切認めておらず、今回の調査についても厚労省は「何も新しいものは出ないだろう」と言っているとしている。しかし厚労省の言うことが間違っていて外国人の人骨や遺留品が発掘されるかもしれない。そうなると硫黄島での日本兵の遺骨収集には並々ならぬ意欲を見せている菅首相としては、こちらの遺骨についても誤りを認めなければ、国際的に「ダンブルスタンダード」という非難を浴びることになるだろうとして、

いまのところ報道関係が沈黙しているところを見ると、日本人全体としてまだ贖罪の気持ちに欠けるということである。At the moment, the press silence suggests that the Japanese in general still lack an appetite for atonement.

という文章で記事を締めくくっています。この記事には読者からのコメントが4件掲載されています。うち3つは「日本は自分の過去についてまともな謝罪をしていない」というニュアンスのものであり、日本人からのものと思われる1件は、それに対する反論でした。

▼日本のメディが沈黙しているとThe Economistは言うけれど、私が調べた範囲では、朝日・毎日・日経・東京(中日)のサイトではすべて報道されていました。読売と産経については、私の探し方が悪いせいなのかどうか分かりませんが見つからなかった。放送では少なくともNHK、フジ、TBSのサイトには掲載されている。The Economistが期待するほどの議論が巻き起こっていないということかもしれないけれど、Barely a word about it has appeared...というのは明らかに誇張です。ちなみに英国の主要メディアはほぼすべて報道していました。

▼事実と違う誇張は本当に良くないのですが、いつも言うとおりThe Economistの記事には、それに対する読者のコメントを掲載する欄がかならず用意されている。今回の場合は、The Economistの記事が間違っているのではないかという投書が掲載されています。それによって雑誌全体に広がりが出ているのです。日本のメディアのサイトもこの点だけはマネしてほしいものです。

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2)インターンシップ制度の功罪


英国統計局(Office for National Statistics: ONS)が最近発表した数字によると、昨年10月~12月の3ヶ月間で失業者が4万4000人増えて、約250万人に達したのだそうです。特に厳しいのが若年層(16~24才)の状況で、前月比6万6000人増で96万5000人となっています。英国全体の失業率は7.9%ですが、若年層では20.5%にまで上っています。5人に一人が失業というわけです。

最近、日本でも若者の就職活動の一つとしてインターンシップというのが珍しくなくなっていますよね。知らなかったのですが、英国では中小企業におけるインターンシップ奨励策として、インターンとして働く大学新卒者の給料の半分を政府が負担するという制度があったのですね。といっても昔からあるというものではなく、昨年(2010年)2月から始まったものなのですが、この3月いっぱいで打ち切りの予定とされています。

このスキームによって雇われた有給インターンの数は8500人、中小企業連盟(Federation of Small Businesses : FSB)ではこれを今後も続けて欲しいと政府に要望しているのですが、5000人の有給インターンを援助するために政府が支出する必要があるのは800万ポンドだそうです。

若い人は英国経済のこれからを担う人たちであり、その世代の失業者が100万人達しようとしている。この重要な分野に対して政府が投資するときが来ている。若者たちが失業手当の行列に並ぶ風景など見ることのないように。
The UK's young people are the future of the economy, yet we are seeing youth unemployment approaching one million. It is time that the government invested into this vital sector so that we don't see a generation of youngsters consigned to the dole queue.

とFSBのJohn Walker会長は言っています。インターンという形であれ、有給で雇われるのだから、その分だけ失業手当をもらう若者の数が減るし、インターンの結果として職に就けた人たちからは税収も見込めるのだから、差し引き政府の得ではないかとも・・・。

BBC News Magazineのサイトに出ていた記事によると、もともとアメリカ生まれの慣習であるインターンなるものが英国で出始めたのは30年くらい前のことなのだそうです。それがいまや大卒者の履歴書記入の項目として欠かせない経験になっている。雇う側からすると、新入社員とはいえ職場というものを経験していることは歓迎なのだから、インターンシップという制度も歓迎です。2009年夏の卒業生のうち約22%がインターンとして働いた経験のある企業に就職しているという数字もある。

が、批判もある。必ずしも有給とは限らないので、結局経営者がタダで労働力を手に入れるだけの制度であるという批判です。それだけではない。無給でインターンができるような若者は大体において恵まれた家庭の子息が多いので、この制度そのものが恵まれた階級の若者だけを職場に送り込むシステムになってしまっている部分もあるというわけです。


▼ちなみに最近のThe Economist誌のサイトに、今年の夏のインターン募集の告知が出ています。「希望者は600語程度の長さの原稿を提出すること」と書いてあった。有給とも無給とも書いてありません。

▼インターンシップとは直接関係ないけれど、NHKのラジオで、就職活動(就活というのだそうですね)をやっている学生へのアドバイスをおくるという番組をやっていました。「就活」という言葉には「仕事を探している」というよりも「世の中における自分の居場所を探している」という雰囲気があるような気がしてならない。NHKの番組も、作っている人たちはそのつもりではないのかもしれないけれど、私などには世の中に受け容れられる無難人間になることを勧めているように思えます。


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3)結婚奨励策の評判


YouGovという世論調査機関が結婚についてのアンケート調査を行ったところ、半数を超える英国人がこれを大切であると答えているという結果が出ています。次の二つのうちどちらがアナタの考え方に近いか?という質問をしています。

1) 結婚は子供の養育のために最善のバックグラウンドであり、ひいては社会の安定にもつながるものである。従って税制や家族手当てのような方法で政府が結婚を支援することは正しい。
Marriage is the best background for bringing up children and leads to a stable society and it is right that government should support marriage through the tax and benefit syste
2) 政府が特定の家族形態を支援するのはおかしい。未婚の人々や片親家庭を差別待遇するような政策は行うべきではない。
It is not the place for government to support any particular type of family, and government should not be discriminating against unmarried people or single parent families

で、結果としては1)の考え方を支持する意見が53%、2)が正しいとする意見が38%ということになったわけです。意見の分かれ方は年齢によって違う部分があります。60才以上の世代は1)に賛成が63%、2)に賛成が29%というわけで、政策としての結婚支援を正しいとしているのに対して、25~39才という結婚真っただ中という年齢層になると1)に賛成は43%で、2)の45%をわずかながら下回ります。

以前にも紹介しましたが、キャメロン首相は結婚支援に熱心であったのですが、最近かつてほどには熱を入れていないということで、保守党右派から批判されたりしています。これはキャメロンが心変わりしたのではなくて、連立の相手である自民党(Lib-Dem)の考え方が保守党ほどには結婚にこだわっていないということが理由になっています。

それでは1)と2)についての政党支持者別の数字はどうなっているのかというと


1)に賛成: 保守党70% 労働党40% 自民党49%
2)に賛成: 保守党21% 労働党53% 自民党43%

となる。保守党支持者が明らかに結婚支援政策に賛成で、労働党支持者は「未婚の人々や片親家庭を差別するな」という方が多い。どちらかというと「進歩的」な人々というわけですね。

▼同じテーマで日本でアンケートをしたらどのような結果になったでしょうか?自民党と民主党の支持者の間で違いは出るのでしょうか?英国の政治がかつてほどには左右がはっきりしなくなっていることは間違いないのですが、私の見るところによると、日本の場合はなんだかさっぱり分からない。自民と民主の違いが分からないだけではなくて、両党の支持者がどのような人たちなのかも分からない。

▼この話題についてはThe Economistの政治コラム、Bagehotが「結婚を奨励する税制や結婚支援手当のようなものを創設したからといって、結婚が増えるとは思えない」と言っています。結婚する男女は政府からの手当が欲しくて結婚するのではないからです。言えてる。

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4)カダフィと英国の深い縁

リビアにおける反政府デモを武力で押さえつけようというカダフィ政府のやり方が国際的に問題になっていますが、カダフィ大佐による独裁を許してきた国として英国の名前が挙がっています。特に7年前の2004年、当時のブレア首相がリビアを訪問、カダフィ大佐と「歴史的な握手」をしたことが問題になっており、駐英アメリカ大使がBBCのラジオ番組で

彼(カダフィ)と交渉することで国際舞台における彼の立場や能力を強化することで、彼があたかも善良なる市民であるかのように見せてしまうのは間違いだ。
To deal with him, to give him greater stature, greater ability on the world front to look like he is a good citizen is a mistake.

と発言しているのは、この首相訪問のことを指しているものとされている。このときカダフィ大佐が国際的テロ活動への支援を止めると同時に大量破壊兵器の開発も行わないと約束したことで、9・11テロ以後、ブッシュ米大統領とともにアルカイダのようなテロ組織との戦いを進めていたブレア首相は、カダフィ大佐が対テロ戦争における味方になったことで大いに気をよくして次のようなコメントまで残しています。

両国間の信頼関係確立には時間がかかるだろう。しかしその兆しはかつてないほどに芽生えてきている。中東や世界の安全保障、英国の安全にとっても両国間の信頼関係確立によってもたらされる報いは素晴らしいものがある。
Trust on both sides will take time to establish. But the signs are better than they have been for many years. And the future prize in terms of security not just of this region but the wider world - indeed our own country - is great.

尤も2004年の訪問でブレアが気を良くしたのは、カダフィ大佐がテロ支援を止めると約束したことだけではない。この訪問によって英国・オランダ系の石油会社、シェルがリビア沖でのガス田開発権を獲得したのですが、これは5億5000万ポンド相当のビジネスとされている。英国とリビアの交渉には常にテロがらみの利権がつきまとうらしく、2007年にロッカビー事件のリビア人犯人が、不治の病を理由にスコットランドの刑務所からリビアに引き渡された際にもBPによる石油開発権の獲得が理由とされたりしている。このときもアメリカは怒っていたのですが、英国政府は「スコットランドが決めたことだから」と説明しました。

ところでカダフィ大佐と親交を重ねていたのはブレア政府だけではないようで、The Economistのブログによると、あのLondon School of Economics(LES)まで、カダフィ国際慈善・開発基金(Gaddafi International Charity and Development Foundation)という機関から150万ポンドの寄付を受けていた。そればかりではない、大佐の息子のSaif al-Islam Qaddafi氏は2008年にLESから博士号を授与されている。この人の博士号論文のポイントについては本人が次のように説明しているのだそうです。


この論文の目的は、より民主的で道徳的正当性を有した世界統治の制度を開発するための集団的マネジメントの概念を追求することにある。それは個人の権利を認めるとともに、市民社会の組織(CSOs)に力を与えることによって、現在の制度では十分に代表されているとはいえない人々に対してより強い発言権を与えることにある。
The core aim of the thesis, then, is to explore the potential for the concept of Collective Management to develop a more democratic, morally justified system of global governance that recognises the rights of individuals…and is particularly focused on empowering civil society organizations (CSOs) to give a stronger voice to those currently under-represented in the existing system

ということであります。

▼なんだかよく分からないけれど、要するにNPOやNGOのような組織の言うことにもっと光を当てるべきだ、と言っているようではある。確かこの人は、カダフィの後継者として最近、「反政府デモは断固鎮圧する」と発言していたのではなかったですかね。いくらなんでも卒論で言っていることと余りにも違いすぎる。

▼ウィキペディアによると、現在のカダフィ大佐を事実上の元首とするリビア・アラブ共和国が成立したのは1969年のことで、英国とも国交があったけれど、1984年にロンドンにあるリビア大使館付近で英国の婦人警官がリビアのテロリストによって殺されたことで国交が断絶、4年後の1988年にはスコットランドのロッカビー上空でパンナム機がリビアのテロリストにより爆破された。婦人警官殺害についてリビアが責任を認めたことで英国との国交が回復したのは、ブレア政権になってからの1999年のことです。

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5)民主化とは欧米化のこと?


エジプトを始めとする中東諸国で起こっている民主化運動に触発されたかのような動きが中国でも見え始めているという報道がありますが、2月17日付のThe Economistにはそれを予想したようなコラムが掲載されています。"The wind that will not subside"(風はおさまらない)というタイトルでイントロは次のようになっています。

Hearing Egyptian echoes, China’s autocrats cling to the hope that they are different
エジプトから響いてくるエコーを耳にして、中国の権力者たちは、自分たちは違うのだという希望にしがみついている。

中国の指導者が「われわれは大丈夫」と考えている(かもしれない)理由が三つある、とThe Economistは言います。第一は30年間におよぶ驚異的な経済成長によって国民生活が良くなっていること。アメリカの世論調査機関が中国人を対象に行った調査によると、87%の中国国民が「現状に満足している」(satisfied with the way things were going)というわけです。反政府デモなど起きる余地がないということです。

二番目の理由は、仮に中国人が国の現状に不満であったとしても、エジプトのムバラク、リビアのカダフィのように、怒りと憎しみの対象になるような個人がいないということです。中国もエジプトも独裁政権なのですが、中国の場合は共産党という組織の独裁であって個人的なものではないので怒りがぶつけにくい。

三番目として、国内警備体制と軍隊が共産党にしっかり掌握されていること(the efficiency of its extensive internal-security apparatus and armed forces, which are subordinate to the Communist Party)がある。暴走や造反もないであろうということです。

というわけで中国の指導層は「ウチは大丈夫」と思っているかもしれないのですが、エジプトにおける反政府デモが1989年の天安門事件を想起させる部分はいろいろある。デモの規模の大きさと場所(いずれも首都の中心部にある広場で起こっている)、参加者の間の連帯感などに加えて、軍隊が民衆の側につくと参加者が信じていたこともそうだし、政府支持の私服警官による乱暴も同じ・・・というわけです。

もちろん違いもある。天安門事件のときはメールだのツイッターなんてものはなかった。中国政府がインターネットの監視にかなりのエネルギーを費やしていることは事実ではあるけれど、ネットの世界を国家が監視できる範囲には限界というものがある。中国では物質的に豊かな中産階級が育ってきており、この階層の人々はときとして政治変革の先頭に立つし、大学卒は就職難というわけで、両者ともにネット時代の担い手世代です。というわけで、


中東からのニュースをフィルターにかけようという中国政府の努力は部分的にしか成功しなかった。中東のニュースは彼ら(中国の権力者)の気分を逆なでするようなものかもしれない。中国国民がそれらの報道を忌まわしい過去を想起させるものではなく、希望に満ちた未来への展望を開くものとしてとらえるかもしれないからである。
Their efforts to filter news from the Middle East were only partially successful. That may be why they find the news is so unsettling - because the Chinese people might see it not as a recollection of a nightmarish past, but as a vision of a hopeful future.

とThe Economistのコラムは言っています。

思い起こしてみると、1989年に天安門事件が起こった後に東欧における社会主義の崩壊と民主化が始まったわけですが、そのころは中国もいずれは東欧と同じ道を歩むことになるだろうと言われたものです。が、30年後のいま、国際社会において中国が占める重要度が増すにつれて、「北京流の考え方(Beijing consensus)」が欧米にも行き渡るようになっている。Beijing consensusとは「自由よりも経済成長が大切」(rapid economic growth matters more than freedom)という考え方です。つまり「自由とパンを比べればパンの方が大事」ということであり、欧米の識者の間でもこれに同調する人たちが出てきている、とThe Economistのコラムは言っています。

また中国政府は事あるごとに「中国には中国のやり方があるのであって欧米のやり方は中国では通用しない」と主張している。しかし中国を引っ張っている共産党の起源はマルクス・レーニン主義であり西欧の思想である。いまの中国に欠けているのは「人気のない政府は革命を経ずに追い出す能力」(ability to get rid of unpopular governments without a revolution)という本質的に西洋的な要素である、とThe Economistは指摘しています。


▼The Economistのこの記事に関しては、上に紹介した最後の2つのパラグラフの部分が私にとっては最も興味深いものでありました。まず「自由よりも経済成長が大切」という考え方。これは北京五輪の前にチベットで騒乱が起こり、欧米諸国から中国政府が非難されたときに中国の人たちが主張したことです。自由だの独立だのというのは空腹に比較すればたいたことではない、というわけで、高速道路や交通機関が充実して「チベット人の生活はよくなっているではないか。だから文句を言うな」ということです。かなり粗雑ではあるけれど、経済が全てを決するというマルクス主義の考え方であると言って言えないことはない。

▼次に面白いと思うのは「欧米のやり方は中国では通用しない」という中国の主張です。要するに「何から何まで欧米に指図される理由はない」ということなのでしょうが、中国の経済成長は自国の市場を外国に開放するという、根本的にはアメリカ流のやり方の成果であるとは言えないのでしょうか?もちろんそれぞれの国にはそれなりの社会的な歴史があるのだから、一切合財同じということはないけれど、日本も含めて実践されている「人気のない政府は革命(暴力)を経ずに追い出す」というやり方(民主主義)そのものを「欧米流だから我々には適さない」と言って否定することができるのか?

▼というわけで、エジプトでムバラク追放を叫んだ人たちが究極的に望んでいるのは、表現・報道の自由とか民主的な選挙であって、その意味では「欧米化」なのではないかと私は思っているわけです。


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6)どうでも英和辞書

A~Zの総合索引はこちら

Dear...:親愛なる・・・

英語の世界のことですが、手紙の書き出しに使う言葉といえば普通は"Dear..."ですよね。あるアメリカ下院議員の広報担当が、議員の記者会見にジャーナリストを呼ぶためのメールの書き出しに使ったのは"Hey, folks," だったそうで、これが結構受けてしまったのだそうです。「ねえ、みんな、ウチの大将が会見やっから、集まってちょうよ!」ってなもんですな。いまやコミュニケーションは携帯も含めてe-mailの時代ですが、Wall Street Journalによると仕事上のメールの書き出しの世界からDear...という言葉が死に絶えつつあるんだそうです。それにとって代わりつつあるのがHello、Hi、Hey etcなんだとか。会ったこともない相手に、しかもビジネス上のメールを送るのに、ですよ。

という風潮に「情けない」と憤慨しているのが、英国の「エチケット評論家」(そんな人、いるんですね)のJean Broke-Smithさんであります。会ったこともない人から"Hi Jean"という書き出しのメールが来るのにはウンザリするのだそうで、 仕事上の手紙の書き出しといえば"Dear..."に決まっておる、というわけです。そういえばあちらからもらうメールは見ず知らずの人から来る場合、Hello...が多いように思えますね。

Broke-Smithさんによると、書き出しも情けないけれど、 メールの締めくくりの言葉も「なっとらん」らしいです。イチバン許せないのが"cheers"だそうですが、ビジネスのメールには "love"も"best wishes"のダメ。"Regards,"に決まっている。中にはBRと書く人もいるんだとか。Best regardsの省略形だそうですが、そんなもの省略するな!というわけです。ごもっともです。

日本語のメールの場合もいろいろですね。「春海様」「春海二郎様」「春海さま」等々。「様」と「さま」って何か違いがあるんですかね。そう言えば、それまで会ったことがない人から最近もらった仕事上のメール(bcc)の書き出しが

「立春とは名のみの寒さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか」

となっていたのですが、メールの書き出しとしては何だかそぐわない。なぜそぐわないと感じるのだろう、と考えてみたのですが、おそらくメールによるメッセージが手紙と違って「形式的」とか「ていねい」ということと一致しないと(自分が)考えているということなのでしょうね。

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7)むささびの鳴き声

▼このむささびジャーナルをお送りするころに菅政権がどうなっているのか分かりませんが、どのメディアも「民主党にはウンザリだ」というニュアンスの記事やコラムで埋め尽くされているように見える。内閣支持率なるものも20%以下であり、小沢さんがらみで党内からも造反者が出たりして、「いま選挙をやったら民主党の惨敗でしょう」という評論家もいる。

▼でも菅さんは辞めない。メディア主宰の世論調査など大してあてにならないと思っているからです。「たとえ支持率が1%になっても辞めない」と言っているくらいなのだから。支持率が低いことなど気にする必要はないという点では私も賛成であるし、いま選挙をやったとしても、評論家が言うように惨敗などしないと思います。むしろわずかの差かもしれないけれど勝つ可能性の方が高いはずです。

▼なぜそうなのか?代わりがいないからです・・・というのは正確な言い方ではない。「代わりがいない」という雰囲気をメディアが作りだしているからです。何度も言うようですが、メディアは現在首相の座についている人や政策を、ほとんどどうでもいいような理由でズタズタにこき下ろすことはするけれど、それにとって代わる可能性や能力のあるかもしれない人と政策については全く報道しないからです。

▼私のいわゆる「どうでもいい理由」には「カネと政治」も入ります。鳩山さんが首相を辞めざるを得なかったのは、お母さんから何億円だかのおカネをもらったとかいうことが理由であって、彼の政策が間違っていたからではない。菅さんが民主党の代表選挙で「わずかの差」で小沢さんに勝ったのも「カネと政治」という、全くどうでもいいようなことが理由です。

▼テレビのニュースを見ていたら、小沢支持者とされる人が政務官という職を辞したことについて「国民のことはそっちのけで、党内でゴタゴタしている」というので、キャスターと呼ばれる人が「民主党政府は末期的症状」と言って怒っていた。私、それを聴きながら「おかしなことを言うなぁ」と思いましたね。政務官を辞めた人も、その行動をけしからんと非難する人も、それぞれに自分の言動は「国民のために正しい」と思っているわけでしょう。それを「国民のことを考えていない」なんて、どうして言えるのでしょうか?

▼「民主党政府は末期的症状」というのであれば、彼らが推進しようとしている政策そのものがお粗末で日本のためにならない、にもかかわらずそれを推進しようとしている・・・それを批判して欲しい。民主党のゴタゴタぶりなんて、むしろオープンに揉めているのだから結構なんじゃありませんか?

▼私の意見(いつでも変わり得る)はというと、①TPP賛成、②消費税値上げ賛成、③小沢さんの党員資格停止は大反対であります。このうち①と②は大して分からないけど一応賛成。③は非常に明確にそのように思っております。

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