musasabi journal

home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第39号 2004年8月22日
早いものですね、もう8月下旬です。今日は非常に涼しくて「もう秋?」という風情であります。こうなると妙にあの酷暑が懐かしくなったりして。オリンピックの中継をラジオで聴いたことあります?北島という人が二つめの金メダルをとったときの中継は笑えました。最後の15mくらいアナウンサーは「キタジマ!キタジマ!キタジマ!キタジマ!キタジマ!キタジマ!キタジマ!キタジマ!」という具合でなんだかさっぱり分りませんでした。というわけ(全然関係ありませんが)今回もお邪魔します。内容は下記のとおりです。

目次

@正義の味方、トニー・ブレア!?
A社会的良心派チョコレートの将来
Bマスター由の<アメリカの小中学生100人に聞きました>
C短信
D編集後記


@正義の味方、トニー・ブレア!?
前号のむささびジャーナルの「バトラー報告書」についての記事の中で「そもそもブレアは、何故そのようないい加減な情報に基づいて、イラク攻撃に踏み切ってしまったのでしょうか?ブッシュの場合は、9・11のあとの全国的ヒステリアということがあったのだろうと思うのですが、ロンドンがオサマ・ビン・ラディンに攻撃されたわけでもないのに、何故ああまでしてアメリカと一緒に行動しようとしたのでしょうか?」と書きました。

アメリカ人に比べれば熱狂的宗教心とか愛国心なども薄い(と私などが思っていた)英国人であるブレアが、ブッシュと行動をともにすることになったのか?このあたりのことについて、From Tony Blairという本の著者であるPhilip Stephensという人が1月26日付けのFinancial Timesに投稿した記事を読むとほんの少しだけ分かります。 一言でいうと「正義感」のなせる業であるということのようです。

ブレアにとってサダム・フセインという危険な人物をやっつけることは「道徳的に正しい」ことであり、大量破壊兵器の存在がきわめてあやしくなった現在でも「サダムを倒して、イラクの人達を彼のような独裁者から解放したことは絶対に間違っていない」と言い張っている。

Philip Stephensという人は、どちらかというとブレアに好意的な人なのですが、彼によるとブレアは宗教心の非常に厚い人で、自身は熱心なキリスト教徒(ブッシュも同じ)であるが、ユダヤ教にもイスラム教にも「好意的」(ブッシュと違う)であるそうです。ブレアによると「キリスト教徒もイスラム教徒もユダヤ教徒も、すべてアブラハムの子供ではないか」ということになるらしい。 詳しいことはFrom Tony Blairという本を買って読んでもらうとして、ブレアにしてみれば、サダムという悪漢を退治するためには、イラク人が少々死ぬことになっても、それはしゃあないということなのでしょうね。好き好んで殺したわけでなし・・・。

しかしある人の「正義感」のために死んでしまう人からすると、たまらないですよね。ヘンな言い方になりますが「熱狂的アメリカ主義」のブッシュよりも、ブレアのような「正義の味方」の方が確信犯だけに始末が悪いのでは? で、次なる疑問は、何故そのようなブレアを英国の人々は支持したのか、ということです。少なくともイラク攻撃に際して彼が国会で行った「名演説」は国民によって大いに称賛された。とても宗教的ストイシズムのようなものとは縁遠い人々だと思っていただけに、これもまた謎です。

このあたりは英国人に直接聞いてみるっきゃない。ただ答は案外簡単で、英国人が私の考えるほどには「無宗教的」ではないということかもしれませんね。 それはともかくブレアという人は、将来歴史家がどのような評価をくだす首相なのでしょう?サッチャーについては「いろいろあったにせよ結局偉かった・・・」というのが(英国でも)一般的です。しかしブレアについては、どうもよく分からない。というわけで私が最近買ったブレア本はAnthony Seldonという人が書いたBLAIRという本。発行元はFree Press。ハードカバーで700ページもあるのでちょっとウンザリです。

実は同じ著者が編集したThe Blair Effectsという本(発行・Little, Brown and Company)の方が本格的にブレアという人の政策を分析している。ただこの本は2年ほど前に出たもので、もっぱら第一期のブレア政権について語っているのでイラクの問題などについては触れられていない。

back to top

A社会的良心派チョコレートの将来

2002年の数字ですが、英国人一人当たりのチョコレートの年間消費量は約8・3kg。と言ってもピンと来ないですよね。EU平均で5.5kg、日本の場合は1・8kg。要するに日本人の4倍以上のチョコレートを食べているわけです。 私もよく知りませんが、英国におけるチョコレートの大手はというとNestle, Cadbury, Masterfoodsの3社。これらの企業だけで殆どマーケットを満たしており、しかも市場規模もこれ以上は大きくならないだろうという飽和状態。従って大手3社も新商品の開発というよりも、これまでの売れ筋ブランドをより強く推して行こうという、どちらかというと保守の姿勢に入っている。

尤も保守的なのはこれら大手で、中には新商品で市場に登場している企業もある。例えばGreen & Blackというメーカーの場合、遺伝子食品と無縁の「有機チョコ」なる高価商品で成功しており、売り上げ2340万ポンドは5年間で5倍という伸びだそうです。

もう一つ健闘しているのが、Fairtrade Foundationという組織による商品。この組織は、どちらかというと先進国のメーカーによって搾取されてきた原料(ココア)生産国を守るべく、フェアな価格で原料を買い付けて「良心的」な商品の生産で知られるようになったとか。この組織のチョコレートは生協はもとより殆どのスーパーにも置かれているそうです。98年から2003年までの間に売り上げを何と12倍にも伸ばしている。

但しこれらの「社会派」チョコ・メーカーが主流になることはない、というのが業界の専門家の意見。GMなしチョコは味の点で普通の消費者にはなかなか売れないし、良心的チョコは価格競争力の点で無理。これからのチョコ市場はやはり大手3社の市場であり続けるのですが、売り上げは少しずつとはいえ減っていくだろう・・・とThe Economistが伝えています。

ちなみに先進国の中でチョコ好きの本場は英国とドイツが同じような消費量で並び、次いでベルギー、アメリカ、フランス、イタリアと来て、日本とスペインが殆ど同量で最下位となっています。

back to top

Bマスター由の<アメリカの小中学生100人に聞きました>
今年の6月下旬から7月末までの5週間、ここワシントン州立大学で行われたナショナル・ユース・スポーツ・プログラム(NYSP)にアルコール・麻薬のクラスの講師として招かれ(というよりは自分を売り込み)、地元の少年少女たちに接する機会がありました。NYSPとは、毎年夏休みに地元の小中学生(年齢は10歳から16歳)を対象に行われるスポーツキャンプです。

キャンプとはいっても、テントを張って泊まり込むキャンプではなく、日中だけ大学の施設の一部を開放して、子供たちにスポーツや水泳、あるいは学習活動を楽しんでもらおうというものです。 当大学のNYSPの責任者に「今年のアルコール・麻薬のクラスは、できるだけ遊びながら学べるような内容にしてほしい」という要請を受けました。

そこで僕は、アメリカで親しまれているクイズ番組のゲームを授業で行い、子供たち自身にクイズを実際に解くことによってアルコール・麻薬について学んでもらうことにしました。これなら、子供たちも授業を受けているという感じではなく、むしろゲーム感覚で楽しみながら学べるのではと思ったのですが、どうやらこの試みは成功だったようで、子供たちにも好評でした。 ところで、アメリカのクイズ番組の中に「Family Feud」と呼ばれているものがあります。これは、日本でも何年か前まで放送された「クイズ100人に聞きました」のアメリカ版です。

僕のクラスでは、大体1クラス20-30人の子供たちを2つの「大家族」に分け、「アルコール中毒にかかっている人を見たらしなくてはいけないことは何ですか?答えは4つ!」「麻薬が体によくない理由とは何でしょうか?答えは8つ!」といったような形で子供たちに質問していきました。また、実際に子供たちを対象にアルコール・麻薬への意識調査を行って、それをクイズの問題にするのも面白いと思い、NYSPの第1週目に子供たちからアンケートをとりました。アンケート調査の問題は次の通りです。
  • @パーティーで、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
    Aデートで、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
    B退屈な時、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
    C週末に、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
    D雨の日に、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
    E機嫌の悪い時、アルコール・麻薬をやる代わりにできることは?
この問題を解くことによって、子供たちに「アルコールや麻薬を使用しなくても楽しむことができるんだ」ということを考えてもらおうというのもこれらの質問の趣旨でした。

@については「食べる」「ダンスをする」「ゲームをする」「友達とおしゃべりする」といった答えがいずれも20%前後を占めました。 Aについては「レストランで食事をする」「映画を見る」といった答えが圧倒的(それぞれ30-40%)でした。ただ、この質問は10歳の子供にはピンとこなかったかもしれません。

Bは「テレビを見る」が24%、「遊ぶ」が19%、「テレビゲーム」が17%、意外にも(?)「本を読む」という子供たちが14%もいました。 Cでは「スポーツをする」が圧倒的に多く(27%)、このほか「遊ぶ」(20%)「映画を見る」(14%)といった答えが最もポピュラーでした。スポーツをするという答えがポピュラーだったのは、スポーツキャンプだったということを考えれば当然かもしれません。

Dは「遊ぶ」が24%、以下「テレビを見る」(22%)「テレビゲーム」(17%)「本を読む」(16%)と続きます。 Eは「寝る」が27%と多く、あとは「テレビを見る」(15%)「遊ぶ」(12%)という答えが目立ちました。

NYSPは、どちらかというと貧困な家庭の子供たちを対象にして行われるものなのですが、この調査結果を見る限りでは非常に常識的な答えが多かったという印象を受けます。 さて、もしこの調査を日本の子供たちを対象に行ったらいったいどんな結果になるか、日米文化の違いと心理学が専門の(?)僕は非常に興味があります。もし日本の読者の方でこの調査に興味のある方はむささびジャーナルにご一報下さい!

back to top



C短信
ニンジャ強盗!? 

ノルウェーのアレンダールという町があるらしいのですが、その町のガソリンスタンドに忍者の格好で強盗に入った男がいたそうです。ナイフで店員を脅して強盗できたお金がたったの1000円にも満たない。で、もう少し増やそうと考えたのが、新聞社に強盗の情報をタレこんで情報提供料を貰おうという「画期的な」アイデア。早速電話をして「アタシ、たった今、近くのスタンドに強盗がはいるのを見たんです。忍者の格好をしていました。刀を背中にしょって、頭巾をかぶって・・・そうナイフも持っておりました・・・」と微にいり、細にいり説明したあとで警察に出頭して、目撃者のふりをして情報提供しようとしたのですが、そこにくだんのスタンドの強盗事件を目撃した客と鉢合わせ、その場で通報されてアウト。何もわざわざニンジャの格好までしなくてもいいと思うけどな。

ビールマニア、ついに40万本! 

クロアチアの新聞、Jutarnji Listが伝えるところによると、Sutinaという町に住むカンバーさん(61歳・男性)は、過去ほぼ50年間にわたってビールを一日15パイント(約8リットル)も飲み続けているそうで、先ごろ40万本目のビールを飲み干すところが地元の新聞に掲載されたらしい。で、このほどビール会社のコマーシャルに起用されることになった。「今、交渉中だからビール会社の名前はいえないな」とのことですが、自宅の冷蔵庫には少なくとも20種類のビールが常に用意されているのだそうです。現在のところ一日30本を飲み干すとのことです。つまり三日で90本。一月で900本!?ビールの量もさることながら、空き瓶回収が大変ですな。

世界で最後のファミリーネーム 

ロンドンに住んでいるマイク・ピンベリー(Mike Pimbury)は今年で73歳になりますが、これまで結婚もせず子供も作らずの生活を送ってきた。不吉なことを言って申し訳ないけれど、彼が死ぬと世界中でPimburyというファミリーネームを持った人はいなくなるのだそうです。ピンベリーさんは約2年ほど前から自分の家の系図調べを行ってきたのですが、その道の専門家(genealogistというのだそうです)が過去300年におよぶ人名調べを行った結果、Pimburyはこの人っきゃないという結果であったのです。「自分が最後のPimburyとなるのは構わないが、この世から同じ名前がなくなると考えるとちょっと寂しい」とコメントしています。唯一の慰めはというと、Laurie Leeという作家の書いた小説にMrs Pimburyという人物が登場するということで自分が死んでもこの主人公の名前は永遠に残るということで「納得?」しているそうです。名前で思い出したけれど、最近、人名に使ってはいけない漢字いろいろというのが新聞に出ておりましたね。きたないけど「糞」もその一つ。確かにいくら何でも「小泉糞一郎」じゃ首相は無理です。

back to top


D編集後記

●オリンピックといえば何故かくも世界中がきりきりするか実に不思議ですよね。たかが運動会だし、日本人が金メダルをとったからって私の生活が楽になるわけじゃなし・・・●というようなことは多分世界中の誰もが感じながらそれでも自国の選手を応援したりするのですよね。何故なのか?●というわけで情けないと思うのは野球ですね。なんでオーストラリアに負けなアカンのや、ドアホ!

back to top

←前の号 次の号→


message to musasabi journal