@身障者、老人にも「死ぬ権利」を
最近、不治の脳退化症におかされた英国の主婦(46才)が、夫に連れられてスイスの病院へ行きそこで「安楽死」を遂げたことがきっかけで、英国ではこの問題(安楽死)を巡っていろいろと議論が行われています。12月5日付けのObserverがある世論調査結果として伝えるところによると、身障者の5分の4が安楽死の合法化を望んでいるとのことで、同紙はこれを「安楽死に対する極めて大きな態度の変化」(a huge change in British attitudes to mercy killing)であると伝えています。
今回の調査は2000人の身障者を対象に行われたもので、回答の80%が、不治の病に冒された人間が自ら命を絶つことを許す法案に賛成すると答えたそうです。 英国ではこれまで身障者の権利保護団体は安楽死の合法化は身障者の人権侵害につながるとして反対するのが一般的であったのですが、今回の調査では身障者の77%が現在の自殺に関する法律が「身障者を差別している」と言っています。
英国の法律では自殺しようとすること自体は禁止されていない(1961年まではこれも禁止されていた)のですが、自殺幇助は罰せられる。身障者の場合は障害ゆえに自ら命を絶つことが出来ないということもあるのだから、幇助が合法と認められない限り「自殺もできない」ということで「差別だ」というわけです。
英国尊厳死協会(Voluntary Euthanasia Society)は今回の調査結果について「身障者や老人が生きるか死ぬかの選択権を要求していることのあらわれだ」としています。 一方、安楽死に反対するPro-Life Allianceというグループは、安楽死の発想は「自殺しようとして橋の欄干に立っている人を後ろから押すようなものだ」として「考えなければいけないのは不治の病人が余命をどのように過ごすべきかであって、どうやったら楽に死なせるかではない」と主張しています。
それぞれのグループのウェブサイトは下記のとおりです。
安楽死賛成
Dignity in Dying
安楽死反対
Pro-Life Alliance
この問題は簡単に結論など出せるものでないことは言うまでもありません。最近、日本記者クラブで高齢化社会について会見したフィンランドの社会福祉大臣は「尊厳死をどのように考えるのか」という質問に対して「わが国では禁止されています」と妙にきっぱり言っておりました。
何を根拠に自殺を否定できるのか・・・この問題、理屈では片付きませんよね。死ぬのもそうだけれど、生きることも理屈じゃないもんね。好き好んでこの世に生まれてきたのではないのだから・・・。生きているというのは殆ど意地みたいなものですね。ご意見ありましたらお聞かせください。
A問題児をなくすためのクスリ!?
知らなかったのですが、いわゆる「問題児」(学校でのこと)の「治療薬」なんてのがあるんですね。英国ではかなり一般的に使われているようで、2000年で40万件だったのが、2002年には70万件に増えているそうです。中でも一般的なのがRitalinというクスリだそうで、英国の子供たちの0.3%が使っているとか。
もっと凄いのがアメリカで、6-7%が使っているそうです。 このことはThe Economist誌12月4日号に掲載されているのですが、その記事の趣旨はこのクスリにあるのではなく、英国における「問題児」について伝えることにあります。学校で「問題児」とされる存在はかなりひどいらしく、教師が辞めていく最大の理由の一つに挙げられています。
ただ最近わずかとはいえこれが減少傾向にあるらしい。その理由としてThe Economist誌は二つ挙げており、その一つがRitalinの普及にあるとしています。もう一つの理由として挙げられるのが(信じられないでしょうが)「子育て」への政府の介入だそうです。
最近政府が発表したスキームによると、例えば無責任とされる両親には「両親のための学級」があるし、トラブルだらけの家庭から子供を救う手立てとして朝食を学校で食べるBreakfast Clubや日本でいう放課後の「部活」の奨励もある。
Ritalinだの政府の援助のお陰でいわゆる「問題児」の数はほんの少しとはいえ減少しているのだそうです。ただそれはあくまでも「ほんの少し」という程度のこと。「行儀の悪い子供を直ぐに治せるアイデアなどない。しかし時間をかければうまくいくかも・・・」(There are no quick fixes to bad behaviour. But there may be slow ones.)というのが同誌の結論。
Breakfast Clubだの部活だの・・・気持ち悪いですね。日本でいうとリトルリーグというのもやめて欲しい。日曜日なんかに近所のグラウンドでユニフォーム姿の子供ら野球をやっている。それを両親が傍で見物したり、激励したりしている風景が見られます。この親たちは何を考えているのでしょうか?よほどヒマなんでしょうね。
B短信
空港で離婚
サウジアラビアのal-Yaumという新聞によると、ビシャという町の空港で、自分たちの乗るはずの飛行機が、あろうことか13時間も遅れたことに腹を立てた男が自分の妻に「ウチへ帰ろう」と言ったのに対して、妻の方は何が何でもこの飛行機に乗るのだというわけで、さらに待つことを主張した。で何が起こったかというと、その男が妻を離婚してしまったというわけです。サウジでは、男が言い出す離婚はその場で成立するのですが、女性がダンナを離婚したいと思う場合は法的に争わなければならないです。
▼離婚は乱暴だけど・・・この男の気持ちは分かります。でも朝9時から夜の11時まで待たせる方もよくないな、これは。
シベリア2000キロを一人で歩いたネコ
夏の休暇で一緒に旅行したネコが迷子になり、3ヶ月後に飼い主のところへ帰ってきた・・・どうってことないニュースを配信したのがロシアのレグナム通信。どうってことないと思ったのですが、このネコ、シベリア2000キロを一人で旅して来たとなると、やはりニュースかなと思ったりします。Olenyok(と言ってもどこにあるのか・・・?)在住のある家族が東ロシアYakutskというところへネコを連れて旅行したのですが、滞在先でどこかへ行ってしまった。諦めてOlenyokへ帰ってきた。
で、3ヶ月後の最近になってこのネコが帰ってきたというわけですが、シベリアの森、川、湖などを渡らないと帰れないはずの道のり。「尻尾は何かに噛まれているし、ツメは殆どなくなっていました。疲れ切った様子で、帰宅以来、外出はしたがらないし、いつも安全な隠れ場所を探しているみたい」というのが家族の観察です。 2000キロってのはきつい。
▼ネコって道がわかるのでしょうか?
靴を片方ずつ売る商売が大当たり
イタリアのミラノで靴をペアでなく一つずつ売る商売が当っているらしい。何だそりゃ?と思いますよね、普通。Simone CassolaとJack
Rayという二人の若者が始めたもので、mix and matchのアイデアがバカ受けなのだとか。サッカーの試合を見たあとで二人で話しをしているうちに「人間、右足と左足が少しだけ違っている」という話題になった。「だったら違う色の靴を履いたっていいのでは?」ということで設立したのが「自由中毒」という名前の会社。「人は左右違う靴を履く自由を与えられるべきである」という何だかわからないスローガンで商売を始めたら案外当ってしまったというわけ。こうなると手袋だのソックスだのペアで身に付けるものなら何にでも通用するかもしれないというわけで、次なるヒットを狙っているのだそうです。
▼でも・・・左右色違いの靴下とか手袋なんて落ち着かないことおびただしいのでは?と考えるようではイタリアン・ファッションは分からないってことですよね。
C編集後記
●ウチに柴犬が4匹いるのはご存知で?家の中で我々と暮している。もう14歳だから人間でいうとかなりの年齢らしいですね。そのうちの一匹(ウチでは「一人と言え」と教えられていますが)がかなり耄碌していて、目が見えない・耳が聞こえないということで、ただじっと寝ています。時たま起き上がって急に遠吠えを始めたり、夜中に泣き出したり・・・というわけで母親(つまり私の奥さん)の手を煩わせております。
●しかし殆ど羨ましいとさえ思えるのは、この犬も全く悪びれることなく、それなりに自分のペースで生きているということです。彼らの世界には自殺という発想はないだろうな。でも飼い主が苦しむ犬を見かねて「安楽死」というのはあるのでしょうね。彼らの感覚としては「苦しいからもう死なせてください」というのはない。
●というわけで「安楽死」などという問題を考えるとつい文章が長くなります。いつものことながら12月はあっという間に過ぎ去ります。年内にあと一回だけお付き合いください。