musasabi journal

home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第45号 2004年11月14日 
前号で中馬さんという元朝日新聞のジャーナリストが書いた『新聞は生き残れるか』という本に絡んで新聞のことを少しだけ書かせてもらいました。私、実は生まれてこの方、自宅では朝日新聞以外に読んだことがないのです。新聞と言えば朝日、という環境で育ってきました。その私が現在のマスコミでどうしても好きになれないものが二つあり、そのうちの一つが朝日新聞の一面の下にある『天声人語』というコラムです。何故好きになれないのかというと、「個人の感じたことを書いているのに匿名」という部分であります。詳しくはちょっと長めの編集後記に書いておきます。ところで私が好きでないもののもう一つは何かお分かりで?それも編集後記に書いておきます。

目次

@イングリッシュオークの周辺:北海道・余市町
Aブッシュ再選と英米関係
Bクリントンを殴ったのは誰か?
Cケリー敗北でガックリするヘルシンキのアメリカ人
D短信
E編集後記


@イングリッシュオークの周辺:北海道・余市町
私、9月の末に北海道の余市町というところへ行ってきました。私がまだ英国大使館というところにいたときに日英グリーン同盟なる企画をやった。その時に参加して英国生まれのオークの木を植えてくれた町です。北海道は生まれて3度目。余市旅行については別のところ掲載します。ここをクリック。

Aブッシュ再選と英米関係
ブッシュ大統領が再選されたことについて、英国のガーディアン紙のジャッキー・アシュレイというコラムニストが「トニー・ブレアはヨーロッパかアメリカかの選択を避けることはできなくなった」と言う記事を掲載しています。11月4日だから選挙の翌日ですね。ガーディアンという新聞が(昔でいうと)左派なので、ブッシュ大統領には極めて批判的な内容です。

アメリカは「神に選ばれし国」?

ブッシュはキリスト教原理主義者であり、アメリカが「神に選ばれし国」だと考えているネココンを代表している。アメリカは宗教社会、欧州は非宗教社会、ヨーロッパが福祉国家にこだわっている一方でアメリカはそれから離れよう・離れようと努力している。それ以外に死刑や環境問題(京都議定書)など「アメリカと英国はそこに暮らす人々が二本足で英語を喋る以外に何の共通性もない」としています。

この人によると今回の米大統領選挙については、「英国では誰もがケリーの勝ちを期待した」とのこと。ブッシュの勝ちによって英国における「ヨーロッパ主義」が力を増し、労働党と自民党の議員が欧州憲章とユーロを支持する方向に走るのだそうです。

ブレアさんにとってブッシュの勝利は「個人的」には嬉しいかもしれないが、党内の反ブッシュ勢力(党員・国会議員・閣僚など)を怒らせるわけにもいかない。 ブレアはアメリカに影響を与えたか? かつてブレアの報道官をしていたキャンベルという人は、「ブレア首相は中東和平、京都議定書などについて、ブッシュへの影響力を大いに駆使するべきだ」と語っているそうです。が、この筆者によると「ブレアがアメリカの外交政策に影響を与えたことは一度もないし、これからはもっと影響力が少なくなる」とのことです。

ブレアこそ真のネオコン・・・

ところで11月11日付のThe Economistにブレアとブッシュの関係についての分析記事が出ていました。「ブレアはブッシュのプードル犬ではない。実はもっと悪い」というイントロで始まる記事です。

要点だけ言うと「ブレアがイラク戦争を支持するのは、彼がブッシュのご機嫌取り(プードル犬)だからではなく、心底イラク戦争を正しいと信じているからなのだ」ということになる。 この記事によると最近、ロンドンを訪問したアメリカの「ネオコン」と呼ばれる人物がブレアを称して「彼こそ真のネオコンだ」と絶賛したそうなのです。

The Economistによるとネオコン的外交政策のポイントとして次のようなことが挙げられるそうです。

@民主主義国家同士は戦争をしないものである
A 世界中に民主主義国家を増やすことは富める国にとって利益であるばかりでなく、道徳上の義務でもある

The Economistによるとネオコンと呼ばれる人たちは、単に自らの価値観を「守る」だけでなくこれを世界中に広めなければならないと考えているそうで、「世界中に民主主義を広めるにあたって武力行使も辞さない」という態度を取っている。ブレアもまさにこの考え方をとっており、彼がロンドンよりもワシントンの方が居心地がいいと考えても不思議は無い(とThe Economistは言っています)。

The Economistはさらに、こうしたブレアのネオコン的思想が労働党内部に恐怖を呼び起こしていると言っています。

ブレアが何故かくも熱心にブッシュのイラク戦争に肩入れするのか。不思議に思っていたのですが、アメリカのネオコンと呼ばれる人たちによって疑問が解消しましたね。ブレア自身がネオコンなのであって、これは9・11のテロ以前からそうだったということ。 しかしそうなるとブレアはネオコンの本家であるアメリカでは受けるかもしれないけれど、殆ど無宗教社会である英国では受けないかもしれないですね。これまではネオコンというよりも「正義を追求する理念と確信の政治家」と見られて受けていたのですが・・・。

ところでこのThe Economistの記事はブレアさんを語るうえで非常に面白いです。原文をお読みになりたい方はお知らせください。

Bクリントンを殴ったのは誰か?
最近目にしたジョークを紹介します。場面は電車の中、登場人物はビル・クリントン(元アメリカ大統領)、金髪の超美人、おばあさん、そしてジョージ・ブッシュの4人です。で、電車がトンネルに入る(電車の中が暗くなる)、またトンネルを出て来る。車内が明るくなって、見るとビル・クリントンの頬が痣(あざ)で赤くなっている。誰かにひっぱたかれた・・・というわけで、その時に4人が頭の中で考えたことは次のとおりです(それがジョーク)。

(1) The blonde thought, "That rascal Clinton wanted to touch me and by mistake he must have put his hand on that old lady, who in turn must have slapped his face."

(2) The old lady thought, "That dirty old Bill Clinton laid his hands on the blonde and she smacked him."

(3) Bill Clinton thought, "George put his hand on that blonde and by mistake she slapped me."

(4) George Bush thought, "I hope there's another tunnel soon so I can smack Clinton again."


Cケリー敗北でガックリするヘルシンキのアメリカ人
「ブッシュが大統領でいる限りアメリカには帰らないわ」と息巻いているのは27才のサラ。「今日は葬式だ」とガックリきているのが69才のオリ。いずれもヘルシンキにあるフィンランド・アメリカ協会のメンバー。これを伝えるのがフィンランドの日刊紙、Helsingin Sanomat。

アメリカ大統領選挙の日、同紙の記者がこの協会に取材に行ったときの印象としては「ヘルシンキにいるアメリカ人はケリー敗北に失望」だそうです。 インタビューに応えたどのアメリカ人も名前を掲載されるのを嫌がったので、ファーストネームで言うと、リサのコメントは「外国にいるアメリカ人は誰もがケリーを支持したわ。彼が勝てばブッシュの外交政策が変わると思っているから。私らはアメリカにいるアメリカ人たちのように"恐怖心"からブッシュに投票するって気にはならない」というもの。

彼女が"恐怖心"に言及する理由は、ヘルシンキのアメリカ大使館が在フィンランド・アメリカ人に対して"なるべく目立たないように行動するように"とお達しをだしていたことによる(とこの新聞は伝えています)。目だってテロの対象にならないようにということらしい。 サラによると、時たまフィンランド人の酔っ払いに「お前らアメリカ人が世界を悪くしている」とののしられたりするらしい。「それもすべてブッシュのせい」というのがサラの意見。

彼女はまた「私がアメリカを出たのは、ブッシュのような価値観に指導されたアメリカがイヤになったから。それなのにフィンランド人にまるで私がアメリカの価値観を代表しているみたいに思われて・・・」と言っております。

彼女によると、反米感情をむき出しにするフィンランド人は少なく、ただ彼女がアメリカンだと分かると「急に態度がよそよそしくなる」(they suddenly look chilling)なのだそうであります。「私の英語がアメリカンだから、バスの中では携帯を使わないようにしている」のだとか。

ペンティーラ(男性)はブッシュの勝利を必ずしも悪いものと考えておらず「ブッシュが世の中メチャクチャにしたのだから、責任をとらせるべきだ。でもとれっこない。そうすれば4 年後の選挙は民主党が勝つ」とかなり気の長いことを言っている。

その一方で、Helsingin Sanomatはフィンランドの大統領と首相がブッシュ大統領宛てに祝福のメッセージを発表したというニュースも伝えています。

D短信
メール離婚の合法性

インド北部の地方紙Hindustan Timesによると、この地方のイスラム聖職者たちが、ある夫婦の離婚をめぐってもめているらしい。この夫婦、1998年に結婚したのですが、結婚後1ヶ月でダンナさんの方がアメリカへ移住した。渡米にあたって彼は奥さんに「20日後にアメリカへ呼び寄せるから」と約束した。しかるに6年経っても音沙汰なし。
で、最近急にtalaqというメッセージをメールで送ってきた。これ、アラビア語で「汝を離婚する」という意味なのだそうです。 ということでこの離婚宣言が有効かどうかで、地元のイスラム教の聖職者の間で意見が分かれているのだそうです。

イチバン多い意見は「メールが本人のものであることを証明しなければ無効」というもので、例えばダンナが電話をかけて「あれは本当に私からの離婚メールである」と言えばいいというわけ。「離婚宣言は手書きの手紙によるべきだ。そうすれば本人の筆跡かどうかわかる」という意見もある。いずれにしてもメールで離婚は無理というのが一致した意見。

▼このダンナに勝ち目はないですよね。メールで離婚できるのなら、このアタイだって・・・というのは冗談、ジョーダンだっつうの!ぶたないで!!お願い!!!

ペットに人名をつけると罰金

ペットに人間の名前をつけると罰金刑に・・・という妙な法案がブラジルで成立しかかっているそうです。この法案を提出した国会議員「イヌやネコと自分の名前が同じであることは、人間としては恥ずかしい(embarrassing)」と主張しています。

実はこの法案、議会の投票では通ってしまったそうで、あとはコミュニティ委員会なるものが承認すれば本当に法律になってしまう。ブラジルにおける典型的な人名ってどんなのでしょうか?ロベルトとか?歌手でセルジオ・メンデスってのもいたっけ。

▼私、このニュースを見て笑えなかったです。というのは私の名前(ジロー)がついたイヌが結構いるんです。「ジロー、お坐り!!」なんてのを聞くと余りいい気持ちしない。小泉さんにはこの気持ち、分からないでしょうね?ジュンイチロウなんてややこしい名前のイヌだのネコだのって聞いたことないし・・・。

キスは時間の無駄?

テレビのニュースなどを見ていると、ロシアでは男同士が抱き合ってキスするシーンをよく見ますね。正直言って私、気持ち悪いなと思っていたのであります。然るにモスクワ付近の地方紙(だと思う)Moskovsky Komsomoletによると、最近になって地方議会の議員さんたちにキス禁止令なるものが出されたそうです。「挨拶するなら握手にしろ」というのであります。何故かというと「伝統的なロシア・キスによる挨拶は時間がかかりすぎてムダである」ということらしい。

確かに握手だけなら2秒もかからないかもしれないけれど、念入りにキスなどしていると5秒くらいかかってしまうかもしれない。「キスを廃止すれば時間の節約ができて会議が年間すくなくとも10件はできる」と当局では言っています。

▼本当にそんなに時間節約ができるんですかぁ!?多分イチバンいいのは小泉さんがよくやっている、右手を挙げて「ヨッ!」だけ。1秒もかからないのでは?でもこんなお達しを出している方がよほど時間の無駄遣いなのでは?

編集後記
▼天声人語のことですよね。例えば11月1日付けの記事。イラクで殺された香田さんという青年のことについて書いてあるのですが、次のような文章が気に障るのです、私は。
  • なぜ危険なイラクへ行ったのか、と問いただしたくなるような気持ちにもさせられた。
  • (香田さんの言葉に)意外なほど心の奥深くを揺さぶられた。
▼いずれも筆者の感情とか心の動きについて書いてあるのに、記事が匿名なのが気に障るのですよ。書いた人の名前も分からないし、男女別も分からない。日本語は主語を使わないことが多い。だからいちいち「私は」と言う必要はないけれど、自分の感覚を発露するのならせめて名前だけでも名乗った方がいいのでは?この記事に反論したり、賛成したりしたくても名前がないのでどうしようもない。なにやら朝日新聞というビルの中に身を隠しながら話をされているような気持ちの悪さを持ってしまうのです。

▼確か中馬さんも『新聞は生き残れるか』の中で、新聞と読者の「パートナーシップが大切」というようなことを書いておられたと思います。しかしこの記事は(私から見ると)読者を見下げているとしか思えない。

▼ところで11月1日付けの記事については、匿名性も気に入らないけれど、書いてある中身にも納得いかないのですが、それは別の機会にやらせてもらいます。

▼最後に私が『天声人語』以上に嫌いなのは、NHKの『プロジェクトX』とか言う番組。あれには虫唾が走る・・・けどこれについても別の機会にってことで。失礼します。

←前の号 次の号→


message to musasabi journal