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 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
570号 2024/12/29

上の写真(2024年8月撮影)は北海道・余市町の公園に立っているオーク(ナラ)の木です。英国生まれで、約20年前(2002年)に苗木として植えられた頃は背丈1メートル弱というものだったのですが、22年後にはここまで大きくなって町民と暮らしています。

目次

1)スライドショー:ノーベル賞の平和メッセージ
2)英国人と新年の誓い
3)再掲載:根付くか、「社会派企業群」
4)リタは何を考えていたのか?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声

1)スライドショー: ノーベル賞の平和メッセージ


今年(2024年)のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協または被団協:Japan Confederation of A- and H-Bomb Sufferers Organizations)に与えられ、授賞式が12月10日、オスロで行われましたよね。

むささびは知らなかったのですが、この様子が世界的な写真家たちの組織であるMagnum所属のアントワン・ダガタ(Antoine D'agata)というフランスの写真家によって撮影され後日その写真展が開催されたのだそうです。ダガタは1961年生まれで、昔から世界中を旅して回る写真家として知られています。

今回のスライドショーはダガダによって撮影され、ノーベル平和賞受賞を記念する写真展で紹介された日本被団協のメンバーをモデルにした作品だけを紹介しています。この写真展は "A Message to Humanity:人類へのメッセージ"というタイトルが付けられています。スライドショーはMagnumのサイトから拝借したものばかりであり、殆どが日本被団協のメンバーのポートレートから成り立っていますが、例外として厳島に生きている鹿の写真もはいっています。これは被団協のメンバーを取材するために過去において広島を訪問したダガダによって撮影されたものです。

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2)英国人と新年の誓い


あなたは「新年の誓い」というのをやります?今年(来年)こそタバコを止めよう・毎日ウォーキングをしよう・日記をつけよう etc というあれ。むささびはその手のことをやったことがないけれど、英国では案外一般的にやるんですね。世論調査機関のYouGovのサイト見ていたら "What New Year’s resolutions are Britons making for 2025?" というわけで、いろんな人がいろんなことを誓っておりました。

YouGov情報によると英国人の27%が2025年に向けて、いろいろ誓っているのですが、ちょっと意外な気がするのは年齢の低い人びとの方が高齢者よりもこれをやる傾向が強く、18~24才の半数以上(52%)が何らかの誓いをしているのに対して55才以上となるとこれが16%へと下落する。

で、彼らは何を誓うのか?一番多いのは自分自身の経済状態を向上させようとするものなのですが、最も多い(21%)のは "to save more or spend less" --「貯蓄を増やすか無駄遣いを止めるか」というもの。どこか悲しいな。「もっと儲けよう:to earn more」とか「投資を増やそう:to start or increase investments]などは4%にとどまっている。
金銭についての「誓い」に次いで一般的なのが「健康」です。「運動したい:to get fit or exercise more (17%)」「体重を減らしたい:to lose weight (16%)」などですが、わずか2%とはいえ「節酒」「禁煙」が2%となっている。

▼7年前の2017年、YouGovではその年の「誓い」がどの程度の期間守られたのかを1年がかりで調査したのが上のグラフです。1月の時点で71%が「全て守った」と言っているのですが、12月になるとこれが27%へと下落、反対にすでに1月の時点で22%が「守らなかった」と言っており、これが12月には64%と跳ね上がっている。
 
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3)再掲載:根付くか、「社会派企業群」


20年ほど前の2005年12月に発行されたむささびジャーナル73号が「社会派企業群」という社会現象について語っています。企業ではあるけれど、利潤追求を第一義とせず、「世の中のためになることをやるが、少しはお金も儲ける」…当時のThe Economist誌がこの現象について語っているのですが、NPOが当たり前のようになっている2024年の現在にも通じる活動であるようにも思えます。

社会派企業のこれから

むささびジャーナル第73号(2005年12月11日) 

Social enterpriseというビジネス概念が英国で市民権を持ちつつある、とThe Economistの2005年11月26日号が伝えています。上手い日本語の訳語がむささびには分からないので、この際「社会派企業」とやってみました。企業ではあるけれど、利潤追求を第一義とせず、「世の中のためになることをやるが、少しはお金も儲ける」活動ということです。NPOと似ていますね。

具体例を挙げると、難民支援などで知られるOxfamというNPOがやっているCafedirectというコーヒー販売ビジネスは、生産国に対して公平(フェア)な料金を払って輸入されているもので、英国内ではベストセラーのブランドの一つとなっているそうです。

またテレビの料理番組で人気の若手シェフが経営しているFifteenというレストランの場合、もとホームレスだったり、麻薬に溺れていた若者たちに料理を用意させているのですが、メインコースが24ポンド(殆ど5000円)というお値段にも拘わらず結構受けているのだとか。

こうしたSocial enterpriseの場合、たいてい社員=オーナー・経営者であることが多いのですが、英国内に約15000社あると推定されているのだそうです。政府もこれらを奨励するべくFuturebuildersという機関を設けて、有望なところにお金の貸し出しを始めています。最初に貸し出しを行った対象はTreeHouse Trustという自閉症児のための学校だった。


またイチバンの成功例としては、ロンドン郊外のグリニッジにあるGreenwich Leisure Limited (GLL)という会社だそうで、業務は区立のレジャー施設の管理・運営。グリニッジの区当局からの委託事業で、区の予算削減対策の一環として管理を任されてのだとか。GLLはもともと低所得者でも使える「労働者クラブ」のようなものとして始まった活動であったのだそうです。

The EconomistはSocial enterpriseという発想は、労働党政府のみならず保守党にもウケがいいと言っています。労働党にとってはコストのかかる公共サービスをアウトソーシングを進めながらも、保守党風「民営化路線」というイメージを与えなくてすむ。また保守党から見ると「小規模ビジネスの振興」という保守派の理念に合致するし「小さな政府」を維持しながら公共サービスの向上も図れるという利点もあるというわけです。

というわけで、Social enterpriseは、大きな産業セクターにはならないとしても、消えることもない(they are here to stay)というのがThe Economistの見方です。 

▼大々的なブームにはならないにしても消えてしまうこともない…何やら現代にも充分通じるような「生き方」のように思いません?

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4)リタは何を考えていたのか?


本号の「表紙」に使われているオークの木ですが、余市町が英国大使館主催の日英グリーン同盟という植樹活動に参加したことが直接の存在理由です。ではなぜ余市町がこの企画に参加することになったのか?それは直接的にはニッカウヰスキーというお酒メーカーが余市に工場を有していたことに関係がある。

余市はスコットランドにあるイースト・ダンバートンシャーという町と姉妹都市関係を結んでいるのですが、その理由はニッカウヰスキー創設者である竹鶴政孝という人の存在と関係がある。

明治27年(1894年)に広島の作り酒屋の三男に生まれた竹鶴は大阪高等工業(現在の阪大)の醸造科に進んだことが、洋酒の世界に入り込むきっかけとなった。世の中には「凝り性」という人がいます。英語で言うとエキセントリック。思い込んだらもうたまらない、他人が何と言おうとやってしまう。竹鶴政孝という人もエキセントリックの見本のような性格であったらしく、学校卒業後に摂津酒造という洋酒メーカーに「押しかけ就職」。そこでウィスキーの勉強のためにスコットランドへ留学するという幸運を得た。

その留学先がイースト・ダンバートンシャーという町であり、そこで出会ったのがリタという女性であり、1920年にスコットランドで結婚した。余市にあるウイスキー博物館の資料を読むと二人は「周囲の反対に合いながら」結婚したのですが、立ち会ったのはリタの妹と幼友達の二人だけであったとされています。この場合の「周囲」というのはリタの家族のことなのでしょうが、何故反対したのでしょうか?多分その頃のスコットランドでは娘が東洋人と一緒になるなんてとんでもないことだったのでしょうね。でもリタという女性が周囲に反対されながらも竹鶴との結婚を押し通したのは何故だったんでありましょう?竹鶴という人がよほど気に入ったんでしょうか!?


余市川
竹鶴が余市町に「自分の理想とするウィスキーを作るために」工場を作ったのが結婚14年目の1934年のことです。なぜ余市を選んだのかというと「余市川の清冽な水、澄んだ空気、夏でも気温があがらない」という気象条件に加えて、近くにはウィスキー造りには欠かせないビート(草木が堆積して出来る泥炭)もあるということがあったそうです。竹鶴がモルトウィスキーの製造を始めたのが1936年、念願の第1号ウィスキーを発売したのは4年後の1940年だった。1940年といえば太平洋戦争が始まる前年です。その頃奥さんのリタは余市にいたのでしょうか?竹鶴が死去したのは1979年、リタはその17年前の1962年(昭和36年)に余市で亡くなっています。
 
▼余市へはむささびもたった一度だけ訪問したことがあります。ここをクリックするとその際に駅前旅館のご主人と交わした会話が出ています。

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5)どうでも英和辞書

 <A-Zの総合索引はこちら>

life: 命・生活・寿命・生涯 etc

"life" という言葉にはいろいろな(しかし似通った)意味があるけれど、この言葉を使った慣用句 (idiom) にも実にいろいろあるようです。

1. That’s life:I miss the bus, but that’s life.
運が悪い(と思って諦める)

2. A dog’s life: He leads a dog’s life at work.
職場では苦労している

3. Life of the party: She’s always the life of the party.
一緒にいて楽しい人間

4. Life in the fast lane: He lives life in the fast lane.
忙しくて危機に満ちた生活

5. A matter of life and death: This decision is a matter of life and death.
生きるか死ぬか問題

等など…。ここをクリックするといろいろ出ているようです。

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2002年9月7日

6)むささびの鳴き声


2002年9月7日
▼本号の「表紙」として使わせてもらった北海道・余市町の広場に立っているイングリッシュ・オークの大木ですが、上の写真はそのオークが2002年9月7日に子どもたちよって植えられたときの記念写真です。写真の下にある2002年9月7日という文字をクリックしてもらうと、そのオークのこれまでの成長ぶりが写真で示されていることがお分かりいただけると思います。

▼セレモニーに使われている英国と日本の国旗が交差する部分が、植えられたオークの苗木の背丈ですから、せいぜい子どもたちと似たような高さということになります。「22年」という時の流れを見せつけられます。これらは日本国中の200か所を超える町や村に植えられましたが、その後どうなっているのか…?ここをクリックすると植樹された町や村のリストが分かります。ちなみにむささびが暮らしている埼玉県飯能市名栗に植えられたオークはまだ生きています。

▼オークの木が余市町に植えられた2002年というのは、どんな年だったのでしょうか?気になってネットを調べてみたら「国内10大ニュース」のトップとして、小泉純一郎首相が日本の首相として初めて北朝鮮を訪問、平壌で金正日総書記と会談したことが挙げられています。2002年9月17日のことだった。余市にオークが植えられたのは10日前の9月7日だった。

▼今日は2024年12月29日、今年も終りなのですね。どうでもいいことかもしれないけれど、むささびジャーナルの第1号が発行されたのが2003年2月23日。余市にオークが植えられた約5年後だったんですね。この写真に写っている子どもたちは幼稚園の生徒だったらしいけれど、あれから22年、いま何才?

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