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日英グリーン同盟
長野県信濃町

アファンの森の姉妹提携

長野から信越本線に乗って新潟方面に向って5つめにあるのが黒姫。駅から車で15分ほど行ったところにCWニコルさんの「アファンの森」があります。約4万坪だそうです。彼の生まれ故郷であるウェールズにもアファンと名の付いた森があります。

CWニコルさんは日英グリーン同盟にとって一番強い味方でした。この企画を提案してはみたものの、「イングリッシュオークはどうやって入手するのか?」「本当に日本で育つのか?」等など、私には分からないことだらけで途方に暮れていたのですが、ニコルさんの仲間の紹介で様々な人々に会って意見を聞くことができた。東京・小石川の植物園の先生、環境教育推進のNPO、自然保護組織の人々などです。

グリーン同盟は環境に悪影響?

その仲間たちに紹介されて会いに行ったある自然保護団体の人に「日英グリーン同盟は、若い人々と一緒に環境問題を考えることをテーマにしていながら、イングリッシュオークという外来種を日本国内に植えようとしている。それは日本の土着の自然に悪影響を与えかねない。そのあたりの整合性をどのように説明するのか」と言われた時には焦りました。そのようなことは考えてもいなかったのだから。「その問題はまでは考えておりませんでした」と正直に認めるしかありませんでした。

「外来種」って何?

気になった私は早速ニコル宛てに手紙を書いて、外来種云々の問題について彼がどのように思うのかを聞いてみた。間髪を入れずに返事がきて「お金さえあれば5万本のイングリッシュオークを日本に植えたいくらいだ」とのことでありました。「外来種って何なんだ?日本に外来でない樹木なんてあるのか!?」というわけでかなりお怒りのようでありました。 ちなみに日英グリーン同盟は、この外来種の問題に関係して国会でも取り上げられてしまったようで、衆議院の環境委員会(だったと思うのですが)でのことで、農水省のお役人が答弁して「植樹場所がいずれも管理された場所であり、しかも植えるのがそれぞれに一本なのだから環境に悪影響を及ぼすとは考えにくい」とのことでありました。外来種の問題については別の環境保護団体からも懸念を表明するお手紙を頂きました。その中にはメキシコ産のコスモスが日本に移植されて日本の環境を破壊しているという趣旨のことが書いてありました。

私が読んだ本によるとイングリッシュオークは、もともとヨーロッパ大陸にしか生えていなかったのが、ドングリが風で運ばれたり、鳥や人間が運んできたりして英国にも生えるようになったと書いてありました。ニコルではないけれど「外来種」って何なのでしょうか?例えば北海道で拾ったドングリを埼玉県に植えるのは「外来種の移植」にあたるのでしょうか?もし外来種を植えるのが悪いことであるのなら、何故樹木の輸出入が許されているのか?私がこの企画を説明した植物園の先生や専門家たちは何故この問題について何も指摘さえしなかったのか?

日英グリーン同盟に関連してニコルには夢がありました。それは黒姫にある自分の森と生まれ故郷であるウェールズにあるアファンの森の間で「姉妹森関係」なるものを確立することでした。その夢はまず2002年8月25日に黒姫のアファンにウェールズのアファンからの代表者を招いて調印式が行われたことで50%は実現、そして今年(2003年)7月、今度はウェールズのアファンの森で同じようなセレモニーが行われて100%実現しました。

赤鬼の目に涙!?

黒姫の式典にはゴマソール駐日英国大使が、ウェールズのそれには駐英日本大使がそれぞれ出席、もちろんニコルは両方に参加した。彼は普段から赤い顔をしており「黒姫の赤鬼」とか「ケルトの赤鬼」と自称しているようですが、黒姫の式典はウェールズの国歌を直立不動の姿勢で聴きながら泣いていました。「赤鬼の眼に涙」でありました。 日英グリーン同盟のイングリッシュオークは黒姫高原にある童話館という博物館前の広場に植えられました。ニコルご推薦の植樹場所で、どこかウェールズの優しいグリーンの高原を想わせる景色の中に立っています。冬はスキー場になるというところだけに、オークも雪の中で過ごすのでしょうが、春から秋にかけては緑一色の広大な景色の中に立っています。

イングリッシュオークの寿命は長いもので400年くらいと言われています。黒姫のオークがそれまで生きているのかどうか分からない。せめて30年―40年は生きて貰いたいものです。あの赤鬼にも、英国大使にも、信濃町の町長さんにもそれを見ることは出来ないでしょう。ひょっとするとそのオークから落ちたドングリから新しいオークの芽が出たりしているかもしれない。「外来種」の繁殖です!でもそのオークの氏素性を知っているのはオーク本人だけ・・・ということを考えるのは、あの環境保護の専門家に申し訳ないけど、楽しいことなのであります。


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