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2010年10月10日 |
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199回目のむささびジャーナルです。よろしくお願いします。関東地方は、なにやら、あっという間に寒いような日が続くようになりました。8月中旬の英国がこのような気温であったことを憶えています。たいしたことではないかもしれないけれど、今日は2010年10月10日です。10/10/10と書く人もいます。 |
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目次
1)世界の大学ランキング
2)移民制限政策に科学者らが反対
3)外人スーパーリッチがロンドンの景気を支える?
4)「尖閣」で分かる中国の弱さ
5)左に舵を切った?労働党
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声
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1)世界の大学ランキング |
大学教育に関する専門誌、Times Higher Education(THE)による世界の大学比較ランキング(2010年)によると、大学教育に関する限りアメリカがダントツ、英国は第2位なのだそうです。このランキングは世界の大学を「授業(teaching)」「研究(research)」「スタッフ」「学生の国際性(student mix)」などの観点から分析して順位付けしています。
THEによるランキングのトップ10は次のとおりです。
1 - Harvard University
2 - California Institute of Technology
3 - Massachusetts Institute of Technology
4 - Stanford University
5 - Princeton University
6 - University of Cambridge
6 - University of Oxford
8 - University of California, Berkeley
9 - Imperial College London
10 - Yale University |
つまりトップ10のうちの7大学はアメリカで、残りの3つは英国ということです。またベスト200のリストを見るとアメリカが72大学でトップ、英国は29大学で第2位となっていて、以下ドイツ(14)、オランダ(10)、カナダ(9)などがきて、アジアでは中国が6大学で第8位、日本は6大学で第10位などとなっています。詳しくはここをクリックすると見ることができます。
大学のランキングについては、別の機関によるものもあるのですね。例えばQSという機関がまとめたランキングによると、トップはケンブリッジで、ハーバードは2位となっている。
▼いずれにしてもこれらの大学はその国における知的エリートが学ぶ場所であって、私には関係のない世界なのですが、それでもTimes Higher
Educationの評価基準の中で気になったのはstudent mixという部分です。外国の学生をどの程度受け入れているのかということについての評価です。トップのハーバード大学は72.4ポイントなのですが、オックスフォード(77.2)とケンブリッジ(77.7)を下回っている。この点で東京大学(26位)や京都大学(57位)は18.4ポイントとなっていて、香港大学(91.4)や北京大学(68.6)などに比べると格段の低さであります。 |
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2)移民制限政策に科学者らが反対 |
今年のノーベル物理学賞が英国マンチェスター大学のAndre Geim、Konstantin Novoselovという二人の博士に贈られることになったことはご存じですよね。10月6日付のThe Timesのサイトに、英国のノーベル賞受賞者が、政府が進めしようとしている移民政策を改めるように呼びかけているという記事が出ています。主として科学関係の受賞者によるアピールなのですが、呼びかけ人の中にはGeim、Novoselov博士の名前も入っている。
英国の連立政権が推進している移民対策の重点はEU諸国以外からの移民の数に上限を設けようというもので、暫定的な措置として、EU以外からの移民に発給する仕事ビザを24,100件にすることを決めており、来年の4月からは最終的な数字を設定することになっています。
実はEU以外からの移民制限は5月の選挙における保守党のマニフェストに入っていた政策なのだそうです。尤もこの制限については例外があって、スポーツ選手についてはこれを適用しないことになっているのですが、これはサッカーのプレミア・リーグでプレーする選手を意識しての例外措置なのだそうです。
ノーベル賞受賞者がこの政策に反対しているのは、このような制限を設けられてしまうと、外国の有能な科学者や若い学者が英国の大学で活躍することができなくなってしまい、それは英国にとってマイナスであるということです。連立政権のビンス・ケーブル産業大臣もこの政策には疑問を呈しており、英国産業連盟(CBI)も批判的です。
ノーベル賞受賞者は政府に対する公開書簡を発表しているのですが、それによると、現在の英国の大学における研究者の10人に一人はEUの外から来ており、国際的な協力関係が重要な科学研究の分野でこのような制限を設けることは賢明でないと主張しています。The
Timesによると今回受賞の二人の博士はロシア生まれであり、いまの政府が進めているビザ制限があったら英国の大学で研究することはなかったであろうとのことです。
政府はプレミア・リーグのサッカー選手については例外を認めることが適切だと言っている。同じことを科学者やエンジニアに適用しないのだとすると、国としての優先事項の反映としては実に嘆かわしい。The government has seen fit to introduce an exception to the rules for Premier League footballers. It is a sad reflection of our priorities as a nation if we cannot afford the same recognition for elite scientists and engineers. |
というのが彼らの主張です。
▼日本人も今年はノーベル賞を受けていたようですが、この記事は最初の「大学ランキング」における日本の大学の評価と併せて読むべきなのかもしれない。日本の大学ではどの程度の外国人が研究の場を与えられているのでしょうか?
▼英国の場合、受賞者は外国人でも研究は英国の大学で行われたものです。が、日本人の受賞者の場合、国籍や出身は日本かもしれないけれど、行われた研究そのものはアメリカの大学であったりするケースが多いのでは?「国」としてどちらかが喜ばしいかというと、前者に決まっていますよね。日本の大学で研究した外国人が受賞する方が喜ばしいということです。
▼移民制限をプレミア・リーグに適用してしまうと国民的な反発間違いなしということですね。サッカーも科学技術も外国人抜きにはあり得ないということです。全く同じことが言えるのは日本の相撲界でしょうね。 |
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3)外人スーパーリッチがロンドンの景気を支える?
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Voice of Americaのサイト(8月19日)がSuper Wealthy Foreigners Boost London Economyという記事を掲載しています。超金持ちの外国人がロンドンの経済を繁栄させている・・・というわけですが、金融危機以来静かであった外国のお金持ちがロンドンの不動産を買いあさっており、不動産価格が値上がりしているというレポートです。
ロンドンの中でも最もプレスティージが高いのはOne Hyde Parkという住宅街開発だとのことで、テラス付き高級住宅を2億2200万ドル(約180億円)で購入した人がいる。誰なのかは明かされていないけれど、噂では石油の値上がりでもうけた中東もしくはナイジェリアのお金持ちらしいとVOAでは言っています。窓という窓はすべて防弾ガラスで毒ガス攻撃に備えて空気清浄システムまで装備している。中にはpanic
roomなるものがあるのですが、これは「警備に敏感な外人バイヤー」(security-conscious foreign buyers)のために特別に作られたものなのだとか。でもpanic
roomとくると、パニックに陥る仕掛けがしてある部屋のように響きますね。
この種の高級不動産を扱う業者によると、ロシア、中東にまじって最近では中国のお金持ちもロンドンに出没しているのだそうです。「不動産一件のために5000万~8000万ポンドを払うというマジメな照会もあります」(We've had some serious enquiries, literally 50 or 80 million pounds sterling for a single property)とのこと。
VOAの記事の中に次のようなくだりがありました。
Regent Street is one of London's most famous shopping districts and owners
Crown Estates have put it up for sale. Total price is estimated at $2.5
billion. |
どう読んでもロンドンのショッピング街であるRegent Streetそのものが、持ち主であるCrown Estatesによって売りに出されており、価格は25億ドルと見積もられている・・・・・・としか理解できないですよね。VOAによると「カタールの王室を含めたsovereign wealth fundsが興味を示している(It's reported that various sovereign wealth funds - including the Qatari royal family - have been eyeing the deal」とのことです。
で、VOAのレポートは次のような言葉で終わっています。
For most people in Britain, the long struggle out of recession goes on, with high unemployment and slow growth. They can only look on with envy as the super-rich return to London ready to spend some serious money.殆どの英国人にとって、失業率は高く、経済成長も遅いということで、不況脱出長い戦いが続いている。彼らは外国人のスーパーリッチがロンドンに戻ってきてお金を使おうとしているのを羨望の眼差しで見守るしかないようだ。 |
▼Regent Streetは東京の銀座みたいな街ですよね。あのショッピング街全部が不動産として売りに出されていて、その価格が25億ドル・・・これ、私の誤解でしょうか?円に直すと2000億円以下。いまの日本企業にはムリとしても、中国や中東の超金持ちなら買えてしまうのでは? |
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4)「尖閣」で分かる中国の弱さ |
9月27日付のFinancial TimesのサイトにJonathan Holslagという人がChina's muscle-flexing
is a sign of weakness(中国のごり押しは弱さのしるしだ)というタイトルのエッセイを寄稿しています。もちろんこの「ごり押し」は尖閣諸島の問題に絡んで日本に対して示している強硬姿勢のことです。この人はブリュッセル現代研究所(Brussels
Institute of Contemporary Studies)というthink-tankの研究者で、最近では中国とインドの関係を語るChina
and India: Prospects for Peaceという本の著者として知られています。
Financial Timesの記事については、むささびジャーナルの読者の中にはすでにお読みになった方もおいでかもしれません。それとこのむささびジャーナルが出るころに、中国との問題がどのようになっているかは分からないのですが、未だお読みでない方で興味がおありの場合はここをクリックすると原文が出ています。
Holslagによると、領有権をめぐる中国の強硬姿勢は経済的な必要性(as a consequence of economic needs)の結果として出てきている。今回の場合、中国の漁船は危険を覚悟であえて問題になっている海域へ入り込むという行為にでたわけですが、それはとりもなおさずblue fin tunaと呼ばれるマグロが漁獲量が減ってきていることが背景になっている。
同じことがエネルギー資源についてもいえる。東シナ海や南シナ海における海底油田めぐって中国が極めて強硬な態度を示しているのも経済成長の必要性に駆られてのことであるし、実は水資源についても、ヒマラヤ山脈から流れ出る水をめぐってインドとの対立が避けられないような情勢にある。中国とインドの間では水資源の共同所有(water-sharing
agreement)という合意があるが、中国はBrahmaputraという川の上流にダムや灌漑貯水池の建設を続けており、これが将来インドとの紛争の種になりかねない、とHolslagは指摘しています。
Holslagはまた、最近になって中国の指導部や専門家が、国の発展と海外における経済権益の保護のために人民解放軍の装備の充実を求めているという動きがあるらしいのですが、隣国にとっては中国の軍事外交が地域の安定に寄与するものなのか、それとも中国の影響力を増強するだけが目的なのかが大きな疑問(open question)になっている、と言っています。
これと似たような不安が中国の経済ナショナリズムに対しても存在している。いまから10数年前の1990年代の末ごろの中国の経済成長はもっぱら外国企業に依存したものであったわけですが、それでは不安であるということで中国政府は国内市場を保護しながら、自国の産業育成政策を追求した。しかしそれらの国営産業が生産過剰に陥るとともに外国の消費市場に依存するようになる。そこで中国政府は、中国企業をグローバルな市場におけるチャンピオンに育てるべく、彼らを支援するような貿易政策をとるようになった。
中国のこのようなやり方には先進工業国が不公正であるとして、中国を地域における組織の枠組みの中にはめ込もうと試みているし、発展途上国も中国のごり押しに警戒心を強めており、中央アジアの国々は中国との自由貿易ゾーンを拒否し、南東アジアの国々は中国に対して貿易面でのさらなる譲歩を要求している。というわけで、Jonathan Holslagによると
中国はますます「わなにかかった巨人」のように見える。China looks increasingly like a trapped giant. |
のだそうです。
過去30年間、中国は国際社会の一部になることで指導的な地位を確保しようとしてきたけれど、相変わらず輸出頼りの製造産業と固定資産への投資という中国の経済モデルが持続性を失っている、とHolslagは見ている。さらに問題なのは、 調和のとれた発展を目指してきた温家宝や胡錦濤が、野心満々の新興財閥と共産主義的愛国主義者の間に挟まれて身動きがとれなくなっていることで、彼らの指導力は弱く、国際的な交渉でも妥協ができない状態にあるということです。
Jonathan Holslagのエッセイは次のように締めくくられています。ちょっと長いのですが、そのまま紹介します。
自己主張の発露というものはこれまでにも見たことがある。しかし(尖閣諸島をめぐる)今回の出来事は、中国内部の変遷における行き詰まりがもたらしたものなのである。この行き詰まり状態は、うまく管理しないと国内不安定に繋がる「愛国心」の高まりを見ることになる。中国は、他の国々が自らの未来に対して自信を失いながらも強くならなければならない圧力に迫られている時期にごり押しをしているのである。そのような状況下では、不信感が自己中心的な狂信を生み、穏健派の指導者の立場を弱め、攻撃に対する相互の恐怖心を生み、(現在の)パワーバランスの中で、地球規模での対立へと向かうような思想を強めることになることは避けられないだろう。We have seen outbursts of assertiveness before, but this episode is the product of a bottleneck in China's domestic transition, which, if not managed well, could lead to a return of destabilising patriotism. China flexes its muscle at a moment when other powers feel less confident about their future and are under pressure to stand strong. In such a climate, distrust could turn into a self-fulfilling prophesy, because it weakens the position of moderate leaders, stirs mutual fear of aggression and, above all, strengthens the belief that shifts in the balance of power inevitably lead to greater global rivalry. |
なおFinancial TimesのサイトにはDavid Pillilng記者のA recipe for trouble in China’s backyardというエッセイも掲載されています。「日本が尖閣の問題で中国に対して立ち上がれるかどうかをアジアの小さな国々が固唾をのんで見守っている」という趣旨のメッセージです。
▼Jonathan Holslagのエッセイの結論部分の中で、私が「なるほど」と感心してしまったのは「他の国々が自らの未来に対して自信を失いながらも・・・」という部分です。日本は自民党の支配を脱却したと思ったら、民主党もダメという幻滅感に打ちしおれているし、オバマのアメリカも似たような雰囲気でいる。英国はというと、保守党も労働党もダメという幻滅感が「保守・自民連立」を生み出したし、野党の労働党も一時はブームであった新労働党(New Labour)に対する幻滅感を味わっている。先進国と言われる国々がどこも自信喪失状態にあるところへ中国が一見自信満々で要求を突きつけている・・・それが現状なのでしょうね。
▼中国は尖閣諸島、ロシアは北方領土に関連して対日強硬路線をとっているように見えるけれど、本当は国内矛盾を外国を敵にすることで愛国心のようなものを演出して乗り切ろうとしているのかもしれないですよね。このような隣国と付き合っていくのは、ため息が出るような話ですが、静かに自己主張するっきゃないのでは?この件については、自民党の河野太郎さんのサイトにも「日中漁業協定」というエッセイが出ています。 |
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5)左に舵を切った?労働党 |
前回のむささびジャーナルでもお伝えしたとおり、英国労働党の新党首にエド・ミリバンドが就任しました。ブレアが党首になった1994年以来続いてきた中道右派の流れを組むといわれた兄のデイビッド・ミリバンドを破っての就任です。英国内では、ほぼ予想されたとおりThe
TimesやDaily Telegraphのような保守と見なされる新聞からは「昔の英国、ストライキばかりやっていた英国に戻るのか」という批判的な意見が出されているし、Guardianなどは「New
Labourとの縁切り」を歓迎するようなコメントが掲載されています。
エド・ミリバンドの下で労働党はどこへ行くのか?英国における主要3政党のうち2つが連立を組んで政権を担当している現在、唯一の野党とも言える労働党がどのような進路をとるのかは気になります。アメリカのネットメディアの代表格であるHuffington PostのサイトにMichael Carmichaelという政治評論家が「反逆児、エド・ミリバンドが新労働党時代を終わらせた」(Insurgent Ed Miliband Ends the New Labour Era)というエッセイを寄稿しています。アメリカの民主党と英国の労働党を対比させながら語っていて非常に分かりやすい。
ブレア率いる労働党が政権についたのは1997年のことですが、その4年前の1993年にアメリカでビル・クリントンの民主党政権が誕生しています。クリントンの民主党はNew Democratと呼ばれたのですが、別の言い方をすると「民主党のレーガン化」(to Reaganize the Democratic Party)、すなわちクリントンは民主党をフランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディのリベラリズムではなく、右寄りリベラリズムへと傾斜させたということです。なぜそうしたのか?1981年~1989年のレーガン政権、1989年~1993年のブッシュ(パパの方)政権と12年にわたって共和党政権が続いており、民主党幹部の間ではそれまでの左翼的リベラリズムが国民の意識から乖離しているという危機感があった。その担い手となったのがクリントンであったわけです。
英国の労働党は1906年に誕生するのですが、戦後のクレメント・アトリーを経てマイケル・フット(1980年~1983年)あたりまでは、労働組合に大きく依存した社会主義的な考え方の党首が主流だった。それが1993年に就任したニール・キノックの時代にやや中道路線をとるようになった。理由はアメリカと同じです。サッチャー・レーガン時代にあって、いわゆる左派路線を続けていることが難しかった。1994年にブレア党首が生まれてからは、いわゆる「第三の道」を歩む党となった。ブレアのいうNew LabourとはアメリカのNew Democratと同じです。
ただ、Carmichaelによると、ブレアのNew Labourにとってジョージ・ブッシュがアメリカの大統領に選ばれたあたりが転機となり、アメリカの召使(vassal)となってイラク戦争に加担するようになって、進歩的な政党としてのNew Labourは終わった。「ブレアは理論ではますますネオコンに傾斜していった」(Blair became ever more thoroughly indoctrinated with neoconservatism)というわけです。
労働党はブラウンの時代になってもブレアの影に支配されていたような部分があるのですが、Carmichaelは、今年5月の選挙によってブレアのNew Labourという政治思考の時代は完全に終わったのだ(formal end of New Labour)としており、エド・ミリバンドによって25年ぶりに左に舵を切った。今回の党首選挙では、ブレアは左寄り路線は労働党にとって悲劇であると主張していたのですが、ブレアを継ぐはずのデイビッド・ミリバンドまでが、ブレアに対して「公に自分を支持するような発言は止めてほしい」と言ったりしていたわけです。
労働党が、40才という若いエド・ミリバンドを指導者に選んだということは、英国にも進歩的な運動が息づいているということを示しており、それは2008年、アメリカでバラク・オバマがヒラリー・クリントを破ったのと同じである。The
election of 40-year-old Ed Miliband to lead the UK's Labour Party proves
the existence of a vibrant progressive movement in Britain that mirrors
Barack Obama's victory over Hillary Clinton in 2008. |
というのがMichael Carmichaelの結論です。
▼Michael Carmichaelのエッセイはここをクリックすると読むことができますが、エド・ミリバンドの勝利が、Carmichaelが言うほど労働党の「ブレア離れ」や「左傾斜」を象徴しているのか?ちょっと疑問です。勝ったと言っても本当の僅差の勝利だったのですからね。ただ、Carmichaelが今回の党首選挙を2008年のアメリカにおける民主党大会でオバマがヒラリー・クリントンを破って大統領候補に選ばれたときと対比させているのは当たっている。
▼エド・ミリバンドは主要労働組合の組合員の支持によって勝利したとされています。現在の保守・自民連立政権による財政引き締めによって職場を奪われかねないという労働組合の危機意識のようなものに支えられたということです。
▼いずれにしても、労働党や英国という国にとって、ブレアという首相が何者であったのかを総括しておく必要があることは間違いない。ブレアさんは、イラク戦争への加担ということで否定されている部分が大きいけれど、2003年当座、英国人は彼の言うことを支持していたのですからね。
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6)どうでも英和辞書 |
lady:レディ
久しぶりにサッチャー語録から。
Being powerful is like being a lady. If you have to tell people you are,
you aren't. 力があるということはレディであるようなもの。口に出して言わなければならないようではレディとはいえない。 |
日本にもこの種の言葉はありますね。「能ある鷹は爪を隠す」ってなもんで、本当にアタマのいい人はそれを見せない。淑女は自分を淑女だなどというものではない。言っちまったらおしまいってわけです。そのとおりです。でも、サッチャーさんのもっと有名な言葉として
You turn if you want to. The lady's not for turning! |
というのがある。彼女が首相になった翌年、1980年の保守党大会で言い放ったもので、「引き返したいのならどうぞ。でもレディは引き返したりしませんから!」という意味です。サッチャー首相は就任以来、財政引き締めの非常に厳しい経済政策を遂行しており、お陰で失業率が高くなり、国民的な批判が高まっていた。党内からも路線変更を求める声が出ていた。党内からの批判に対して強気のサッチャーさんが、自分の経済政策は絶対に変更しないことを明言した際に「レディ(the
lady)」という言葉を使ったわけです。おそらく「引き返すなんて、レディじゃないってこと!」という意味でしょうね。
milk-and-water:中身のない
10月3日付のFinancial Timesのサイトによると、デイビッド・キャメロンという人の思想はmilk-and-water new Conservatismであると批判されているのだそうです。誰が批判しているのかというと、保守党内でも右派と呼ばれる人たちです。「中身のない新保守主義」ということになるのですが、キャメロンのいわゆる「新保守主義」は「弱者に優しい」保守主義で、労働党的でmilk-and-waterであるというわけです。右派の方々に言わせると、もっと労働党の違いを鮮明にすべきであるというわけですね。milk-and-waterは別の言い方をすると、wishy-washyとかnamby-pambyとなるのですが、いずれも「優柔不断」とか「はっきりしない」という意味になる。milk-and-waterは要するに「水で薄めた牛乳」ということなのでしょうね。
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7)むささびの鳴き声 |
▼この際、日記のつもりで記録しておくと、民主党の小沢一郎さんの資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で検察当局が不起訴としたことについて、「東京第5検察審査会」というところが2010年10月4日(月曜日)、検察の不起訴は間違っているという議決をしたということがテレビで大きく報道されていました。つまり「検察が起訴しないのなら我々がやる・・・」というわけです。
▼検察審査会って何なの?と思ってネットを調べたら「裁判所」という政府のサイトに次のように説明されていました。
選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が,検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を裁判にかけなかったことのよしあしを審査しています。
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▼ごく普通のおっさん、おばはん、お兄さん、お姉さんがくじ引きで選ばれて、検察官の決定について審査するわけですね。「小沢氏の刑事責任が、国民の判断で問われる異例の事態である」とネットニュースが報じています。検察審査員なるものがどのようなときに「審査」を始めるのだろう?と思ったら、同じサイトに「犯罪の被害にあった人や犯罪を告訴・告発した人から申立てがあったときに審査を始めます。申立てがなくても,新聞記事などをきっかけに審査を始めることもあります」と説明されていました。
▼小沢さんの場合、誰かが申し立てをしたから検察審査会が始まったのかどうかは分からないけれど、「新聞記事などをきっかけに審査を始める」こともあるというのは本当に気になりますね。この件についての新聞の社説を見ると「小沢氏は自ら身を引け」(毎日新聞)、「小沢氏起訴へ―自ら議員辞職の決断を」(朝日新聞)、「検察審再議決 小沢氏"起訴"の結論は重い」(読売新聞)というぐあいに、起訴=有罪で固まってしまっています。くじ引きで検察審査会なるものに参加した人たちのアタマは、このようなメディアの論調に大いに影響を受けているのだから、最初から結論は決まっていたようなものですね。選挙で選ばれた政治家が、くじ引きで選ばれた、たった11人によって活動を停止されてしまうというのだからおかしなハナシであります。
▼「小沢氏の刑事責任が、国民の判断で問われる異例の事態」と伝えるメディアの人々のアタマの中は「メディアの声=国民の声」という図式で占領されてしまっているように見えるけれど、私(むささび)をその「国民の声」の中に入れないでください。お願いします。
▼スーパーの駐車場でいつも驚くのは、よくぞこれだけ違う種類のクルマがあるものだということです。英国のスーパーの駐車場の場合、クルマの種類もさまざまですが、日本と決定的に違うのはメーカーもさまざまであるということです。日本車はいうまでもなく、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカ、スペイン、韓国、インド・・・まるでクルマのオリンピックです。そのうちどれが外国からの輸入車なのか、どれが英国内で生産されたものなのかは専門家でないと分からない。日本の場合、道路を走っているのは圧倒的に日本車ですよね。
▼南アフリカの動物園で飼われていたチンパンジーのチャーリーがこのほど死亡したのですが、年齢は52才で平均的チンパンジーよりも10年ほど長生きしたのだそうです。泣かせるのは、どうやらチャーリーがタバコ大好きチンパンジーであったということであります。動物園に来た客が差し入れた火のついたタバコを吸ったことが病みつきとなり、愛煙チャーリーで有名になってしまった。動物園の係員によると、客がタバコを吸うのを見つけるとおねだりをしたりしたので、客も面白がってあげているうちにヘビースモーカーに。吸っているところを係員に見つかると、ニヤリと笑ってきまり悪そうな顔で吸いがらをすてるのが常であったのだそうです。
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