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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第29号 2004年3月21日
まさかこのまま春になるのではなかろう、と思っていたら案の定でした。私が暮す町だけのことかもしれませんが、ついに3月20日(土曜日)に雪が降りました。昨年12月以来です。おそらくこの冬の降りおさめかもしれない。ということはこの冬も随分短いものであったということです。というわけでむささびジャーナルの29号です。メニューは次のとおりです。

目次

@同性結婚のどこが悪いの?
A「国際社会」の定義
Bマスター由の<カウンセリング心理学と政治>
CむささびJの<しらけギャグ第2弾>
DむささびMの<ユニークな発想を失ってほしくない>
E短信
F編集後記



1)同性結婚のどこが悪いの?
私がたびたび引き合いに出すThe Economistという雑誌は英国生まれかもしれませんが、殆ど国際誌と同じようなものです。であるからしてこの雑誌が「英国人」の意見を反映しているとは言えないのですが、それでも英国のインテリが作っていることは間違いない。そのインテリぶりを嫌う人もいる。 で、最近 (2月28日) 号に大変興味深い記事が出ていました。見出しはThe case for gay marriage・・・つまり「同性結婚を認めよう」というニュアンスの論説記事。

きっかけはアメリカのブッシュ大統領が同性結婚を禁止する旨の努力をすることを明らかにしたことにある。熱狂的かつ素朴なるキリスト教徒であるブッシュ大統領が同性結婚を認めないというのは分かりますが、保守的であると私が思っていたThe Economistがこれを認めようというのは意外な感じがしたのです。

その言い分を紹介すると、一つには結婚という「個人の行為」に政府が何だかんだと文句をつけるのはおかしいということ。これは「小さな政府」という考え方を推進するこの雑誌の意見とは一致するし、ある意味「自然」であるとも言えます。 次なる根拠として「誰の迷惑になるものでもないのに禁止するのは不当である。同性結婚だろうが異性結婚だろうが同じように認めるべきである」というわけ。The Economistによると1960年代のアメリカのある州では黒人と白人が結婚することが違法とされていたという例を挙げて、いわゆる「世間の多数」の考え方が極めてうつろいやすいものであることを指摘しています。

で、一番面白い考え方だと(私が思ったのは)、ブッシュ大統領の持論である「同性結婚は結婚という大切な社会の伝統(social institution)をダメにする」ということへのThe Economistなりの反論。つまり「異性結婚というこれまでの伝統に従って結婚したカプルが最近離婚するケースが極めて多い。つまりカプルが結婚を真面目に考えていない。そこへ行くと同性結婚のカプルは真面目であり、彼らの結婚は「社会に安定をもたらしもする」と主張しています。

同性結婚に反対する根拠として宗教的な理由を挙げる向きもあるのですが、個人のレベルで宗教を理由に同性結婚に反対するのはいいとしても、それを国家が強制するのはおかしいとして「現にアメリカ憲法は国家が宗教に介入することは強く戒めているではないか」と主張しています。 説得力あるなあ・・・理屈では。でもどこか「ゲイていどのことで騒ぐでない・・・」という、どこか普通の人間を見おろす(見下すではないにしても)イヤらしいインテリという気がしないでもない。これ、ひがみなんですよね、多分。

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2)「国際社会」の定義
私、実は気になっていることがあります。それは「国際社会」という言葉についてなのですが、何故か英語ではinternational communityと言って、international societyという風には余り言わない。Communityというのが「共同体」というニュアンスであるのに対してSocietyは単に沢山の「人間の集り」ということを意味するのでしょうか?つまり日本語の「国際社会」はむしろ「国際共同体」と訳した方が正確ということなのか・・・?

かつてサッチャーさんが首相であった頃に「この世の中には”社会”などというものは存在しない(There is no such thing as society)」という発言をして話題になったことがあります。実は彼女はそのあとに続けて「この世の中にあるのはコミュニティであり、家族だけなのである」と言ったのですが、マスコミはその部分を報道しなかったと、彼女は自伝の中で文句を言っています。

で、サッチャーさんにとってcommunityとsocietyはどう違うのかといいうと、前者が普通の人々が生活をしている生身の集合体であるのに対して、societyは「インテリが作り上げた抽象的な概念」であると主張しています。インテリ嫌いのサッチャーさんらしい言葉です。

ところで、ブレア首相もcommunityという言葉を非常に頻繁に使います。彼がその言葉を使う場合、私が気になる(もっとはっきり言うと好きでない)のは、彼が自分の頭で描いた「共同体」というものをそのまま他者に押し付けるようなニュアンスが感じられるということであります。沢山の人々と沢山の国々が押し合いへし合いしながら存在しているこの地球に「共同体」(構成員が同じような考え方とか生き方とか理想とかを共有している集まり)などというものが本当に存在するものなのか?ひょっとすると共同体としての「国際社会」というのはブレア首相が勝手でっち上げたものなのではないか?サダム・フセインが悪者であるというのも、それはブレア(やブッシュ)の価値基準からすると「悪者」なのであって「国際社会」とかいうものがそのように考えているということではないのではないか?

というわけで、かなり古いなのですが、2003年のイラク戦争が起こる直前にフランスのLe Monde diplomatiqueという雑誌(?)に掲載されたちょっと面白い論文を紹介させてください。と言ってもここに掲載するとちょっと長すぎるので、別のコーナーに掲載しておきましたのでお読みください。

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3)マスター由の<カウンセリング心理学と政治>
カウンセリング心理学をアメリカで勉強し始めてから約5年になろうとしますが、少なくともこの業界に身をおく人たちに限って言えば、ブッシュ大統領および共和党を支持するという人たちにおよそ会ったことがありません。僕がこの業界でこれまで会ったことのある人たちというのはだいたい次の2つのタイプに分けられます。

@「ブッシュはアホだ」と言う人、または
A政治、社会、国際問題そのものについてあまり話をしない人。

@について言うと、カウンセリング心理学界も含めてアメリカでは一般的に「ブッシュはアホだ」という人たちというのはだいたい女性、少数民族、ゲイ、貧困層の人たちです。アメリカの心理学界では最近「マルチカルチュラリズム」すなわち女性、少数民族、ゲイ、貧困層といった社会的に「圧迫」されている人たちの権利を尊重しよう、あるいはそういった人種、性、ライフスタイルの違いというのをどんどん積極的に受け入れていこうという動きがあります。

カウンセリングでも、いわゆる保守的な人たちによく見られる少数民族やゲイ、女性に対する「弾圧的」なアプローチはタブーとされつつあります。 そんな流れがあるために、どちらかというとそういったグループの人たちに「弾圧的」「冷たい」とされている共和党のブッシュは、カウンセリング心理学の業界の人たちからみれば「アホ」なのかもしれません。

一方Aのタイプの人たちですが、おそらくそういったことについて話したり学んだりするだけの時間および興味がない人たちだと思います。1年前に僕が大学院で受講したクラスでは授業の始めに必ず教授が、今世界で何か面白いことが起こっていないかどうか学生たちに尋ねたのですが、大体返事は全員「……(無言)」でした。そんな時その教授は「なるほど、勉強が忙しすぎて社会の出来事など構っていられないのね」と苦笑していました。

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4)むささびJの<しらけギャグ:第2弾>
一度、むささびジャーナルで、英語のジョークを日本語に直してご紹介したことがありますね。あの時はシラケただけだったのですが、性懲りもなく第2弾をお送りします。前回に比べて短いのが取り得。亀に殴られたカタツムリが交番に駆け込んだ、という話です。
  • A snail goes to the police station. He's terribly beaten up. The policeman asks who did it. "A tortoise," says the snail. "Can you describe the tortoise?" the cop asks. "How big was he? What colour?" "I don't know," says the snail, "It all happened so fast."
カタツムリが交番にやってきた。見るとメチャクチャに殴られている。「誰にやられたんだ?」と警官。「亀にやられました」とカタツムリ。「どんな亀だったんだ?大きさは?色は?」と警官が尋ねる。で、カタツムリが答える「分かりません。何せあっという間のことだったんで・・・」

つまらない?そんなことないと思うのでありますが。昔、今古亭志ん生という噺家がいたのですが、彼のジョークで私が大好きであったものの一つが、衝立(ついたて)をテーマにした「ツイタテ15日」というものでした。分かります?わっかんねぇか!?

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5)むささびMの<ユニークな発想を失ってほしくない>

ユニークな人と変人の区別は何なのだろう。39年間殆ど切れ間なく家庭教師を続けて来たことで、思えばいろいろな子供達(と言っても小学生から高校生までと年齢の幅があるのだが)と出会ってきた。それだけでなく家庭教師は学校の教師と違って、本人又はその親が望みさえすれば、一人の子供と何年にも渡って付き合うことができるという素晴しい経験を与えて貰える。

現に私の場合、幼稚園の年長の時から高校3年までのナント13年間、一人の子供の「お供をさせてもらった」最長記録を持っている。 この間に出来てくる子供達との人間関係は、学校の教師とは違うような気がする。後で振り返って考えると、まさに「お供をさせてもらった」という感覚なのである。その意味では「親」の立場により近い感覚かもしれない。

つい最近中学生の英語(5人のグループ)をやっている時に感じたことがある。中学2年の英語の教科書に出て来る文で、Do you think she plays softball tennis?というのがあり、この際練習にDo you think . . . . . . . . . . ?という文をいろいろ自由に作ってもらおうと思った。「・・・・・・だと思うか?」という意味の文は日常でもよく使う筈だし、例文を出すのには苦労しないだろう、いろんな文を出してくれるといいな、と思っていた。

しかし、一人がDo you think the sky is blue?というと二人目からはもうその二番煎じを平気で使ってしまうのだ。Do you think apples are red?という調子だ。私は変人でない程度のユニークな人間、つまり少数派を応援したくなるタイプなので少しガッカリしていたのであるが、嬉しいことに5人のうちの最後の1人が私を喜ばせてくれた。彼は「英語でどう言えばいいか分からないんだけど、、、」と言うので「日本語でもいいよ」と私が言うと、こう言ったのである。「あなたは宇宙人はいると思いますか?」と!!!

彼は英語のスペルはなかなか正確に覚えられないし、読む時にも以前読み慣れてしまった単語の残像音(?こんな言葉ないかもしれないが)が邪魔をしてしまうのか、”. . . more popular than. . . “という文を読んだ後に”…the most popular . . .in the world”を読むとつい、”. . .the most popular than. . . “と言ってしまうようなところがあるのだが、言葉を自分の気持ちと密着させて使おうとするところがユニークで素晴しい。これはある意味とても大切な「言葉のセンス」なのではないかと思う。

聞けば彼は学校でやや「いじめられっこ」なのだそうである。いじめられやすい理由が彼のユニークさ(多数派と少し違うところ)によるものでないことを祈るが、彼のユニークな発想は今のまま失わないでいてもらいたい。

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6)短信
禁煙をギブアップ  
英国のリーズ大学(学生数約33、000)がキャンパス内にあるパブでの喫煙禁止を実施したところ顧客が激減、禁煙をギブアップしてしまったそうです。この大学には何とバーが5軒とナイトクラブが3軒あっていずれも学生組合が経営しているのですが禁煙方針を2週間試したところ利益が26000ポンド(約500万円)も落ちてしまった。例えばOld Barという人気パブの場合、36%も売り上げが落ちたのだそうです。確かに36%はきつい。学生組合の関係者は「タバコが吸いたければ市内のバーに行けばいくらでも吸えるのだから、キャンパスのパブで禁煙にしてもそれほどの影響はないはずと思っていたのですが・・・」とショックを隠しきれない様子でコメントしていたそうです。

宝くじ当選者の悩み?  
ドイツのドルトムンドという町のサラリーマンが600万ポンド(1億2000万円)相当の宝くじに当っていながら、3ヶ月もの間お金を取りに来なかったことが話題になっています。普通このような場合は、本人が当ったことに気がつかないでいたというのが多いのですが、この場合は違う。当ったのは分かっていたのですが、お金を貰うべきか否か「じっくり考えたかった」というのが理由だそうです。宝くじを運営しているWestLottoという会社の広報担当は、この人について「極めてクールな感じだった」とコメントしているのですが、実はこの人、お金を引き取りに来た時もまだ迷っていたそうで「チャリティにでも使えばよろしいのでは?」というWestLottoのスタッフからのアドバイスにようやくお金を引き取ることにしたのだそうです。I needed some time to think things through in peaceというのがこの人の気持ちであったらしいのですが、3ヶ月も迷いぬいたとは、苦しかったでしょうね。

サーフィンの連続日数最長記録  
28年間(10,407日)、ただの一日も休まずにサーフィンを続けた人(男性・55歳)がアメリカのカリフォルニア州にいます。これを始めたのが1976年2月29日、日曜日のこと。お分かりですね、この年のこの日の次にうるう年で2月29日が日曜日というのは、28年後の2004年2月29日というわけで、それまでは毎日サーフィンをやり続けると宣言してしまったというわけ。とにかく一日も休まずに続けたということは、結婚式の日も、一人娘が生まれた日もひたすらサーフィン・サーフィン。サーフィンは午前中にやるので仕事も給料の安い夜勤で我慢。もちろん海外旅行もなし。前人未到のこの記録を作ったこの人のコメントはというと「こうなるとサーフィンをやらないで日を過ごす方が難しい。休暇をとりたい気もするけれど・・・やめるのは難しいな」というもの。だから最初からやらなきゃよかったんだ、というのは私(春海)のコメントです。
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7)編集後記
奥さんと二人で六本木というところへ行ってイラン料理なるものを食べたのです。結構いけますね。で、そのレストランを出て歩いていたら、すごい人の群れが横断歩道を渡ってこちらに向かって歩いてくる●殆どが私みたいな年格好の男女であったのですが、ひょっとすると何かのデモ隊なのかと思ってよく見ると、リーダーとおぼしき人が数人いて、その人たちが小さな旗を持っていたのであります。その旗には「XX市あるく会」と書いてあった。XXの名前を言うのは止めにしておきましょう●多分100人はいたと思います。大きなお世話かもしれませんが、六本木なんかを歩いて何が面白いのでしょうか?どうもワカラナイ、あの集団趣味が。

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