1)Anthony Sampsonの新作、間もなく発刊
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私、かつて英国大使館というところで働いていました。が、あそこで働き始めるについて、英国と何らかの関係があったのかというと、これが全くのゼロ。関係なし、関心なしという状態でありました。そういう状態であったので、自分でも少しはこの国のことを知りたいと思って読んだ本の中でも、やはり抜群の面白さであったのがAnthony Sampsonというジャーナリストが書いたAnatomy of Britainという本でした。
1962年に1号が出たのですが、非常に評判が良かったので、続けて同じタイトルながら内容が違うものを何度か出してきた。一番最近のものが1992年のEssential Anatomy of Britainというものでした。 で、どうやら彼の最新作が間もなく出版されるようです。
Anatomyは解剖という意味ですからAnatomy of Britainは「英国の解剖」ということになる。彼が英国という国を「解剖」するにあたって常に基本にするのが、いろいろな分野における影響力を持っていると目される人たちとのインタビューを基にして書くということ。彼のテーマは常に「英国を支配しているのは誰なのか」ということにあり、それを通じて現代の英国を分析しようとしています。
最新作は未だ発売されていないようですが、最近のObserver紙にそのさわりが紹介されていました。最新作ではブレア政権下における英国の分析が中心になっています。 「さわり」といっても相当な長さなのですが、Sampsonの見るブレア政治のポイント(と私が思う部分)だけ紹介してみましょう。
トニー・ブレアが首相になった時に誓ったのが英国の近代化であり、民主化ということだったのですが、著者に言わせると様々な部分でブレアの意図しなかった結果(unintended consequences)が出ている。貴族はますます金持ちになり、いわゆる名門「パブリックスクール」(古い英国の支配層を代表するものと言われる)出身者がますます世の中で幅をきかせるようになっており、公教育はますます質が落ちている。さらにブレア政権になってから政策決定が首相官邸や首相を取り巻く「アドバイザー」によって行われるようになり、その分だけかつての「体制」とされたWhitehall(ロンドンの官庁街)のお役人の影響力が相対的に下がっているそうです。
ロンドンの人口は710万(2001年の調査)ですが、そのうち白人・英国人は430万。残りはインド系の約44万を筆頭に、アフリカ系(38万)、カリブ海(35万)など等となっています。ロンドンは世界一のコスモポリタン都市となっています。
Anatomy of Britainの最新作のさわりの中でも私が最も興味を引かれてしまったのは、現代の英国がかつてのそれとは比較にならないほど多様化しており、多様化した国をまとめていくために強い指導力が求めれられ、それが政府の中央集権化につながっているという部分です。
Sampsonによると、最近の英国(この場合はイングランドのこと)からは、かつての「イングリッシュ・ジェントルマン」の徳目とされた「控えめ」は消えてしまい、押しの強さが幅をきかせるようになったそうです。I’ve nothing much, really(私なんか本当に何もやっていませんから)という控えめなことを言おうものなら、字句どおり取られてしまって「あいつは何もしていないのだ」とされてしまうとか。英国は過去40年間で「名誉」だの「家柄」だのでではなくて「金が中心の社会になった」というのが著者の言葉です。
いずれにしてもこの最新作は、英国のことを知りたいと思っている人(私もその一人)にとっては必読の書であることは間違いありません。Amazon.comでお求めの方のためにいうとタイトルはWho runs this place?です。
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2)イラク:ブレア首相はいつ「アメリカの意図」を知ったのか?
間もなく発売されるアメリカの雑誌Vanity Fairの5月号に2001年の9月11日の同時多発テロから9日後夕食を共にしたブレア首相とブッシュ大統領の会話の内容が掲載されるそうです。その夕食でブッシュ大統領はサダム・フセインの打倒・除去のための戦争を支持するようブレア首相に迫ったそうです。それを報じたのは4月4日つけのObserver紙で、ブレア首相はそれに対して国際テロのそもそもの目的であるタリバンとアルカイーダとの戦いから目をそらせるべきではないと主張したのだそうです。
この夕食会に同席していた英国のクリストファー・マイヤー前駐米大使の証言によると、ブッシュ氏に慎重さを求めるブレア首相に対して、ブッシュ大統領は次のように発言したのだそうです。
- I agree with you, Tony. We must deal with this first. But when we have
dealt with Afghanistan, we must come back to Iraq…(あんたの言うことは分かるよ、トニー。それを先にやらなければならないのは確かではある。けれどアフガニスタンが終わったから次はイラクに帰って来なければいけないよ)
もしこれが事実だとすると、アフガニスタン攻撃の時点でブレアは、次はイラクだということを知っていたということになります。だとするとブレアにとって困るのは、彼は「(英国がアメリカのイラク戦争を支援することは)2003年3月の戦争開始直前まで決定されなかったのだ」と主張していることと矛盾します。そこで「アンタはいつの時点でアメリカの戦争を支持することに決めたのか」とブレアに迫ることも考えられる、とObserverは伝えています。
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3)短信
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ひげ禁止令!?
中央アジアの国、トルクメニスタンでは長髪・あごひげ・口ひげを禁止する法律が成立したそうです。この法律を発表した同国のニヤゾフ大統領は、長髪やひげは国のイメージを損ねるし、そもそも不衛生だ」と言っています。この法律は外人にも適用されるそうで空港や国境地帯に床屋が置かれるのだそうです。これを伝える英国の通信社PAの記事によるとニヤゾフという人は1985年以来大統領の地位にあるのですが、ひげ禁止以外にもヘンな法律を作った実績があるそうで、例えば何故かバレエはダメというのもあるし、トルクメニスタン女性と結婚する男は税金を払わなければならないというのも。
後者については女性がインターネット・デートの結婚相談所を通じて相手を見つけ、結婚して国を出て行ってしまうというのを防止しようというものだとか。にもかかわらずトルクメニスタン女性と結婚しようという外人の中には25,000ポンド(殆ど500万円)の税金プラス花嫁の家族に純金の指輪を10個贈呈するように命令された例もあるそうです。確かに妙な法律ですな。
夜光虫の研究
夜光虫が身体から光を放つのは求愛のしるしではなく、敵から身を守るための行為なのである、という「だから何だっての?」と言いたくなるような研究結果を発表したのがオランダのアントワープ大学のラファエル・コックという科学者。とにかく彼の長年の実験によるならば、虫を食べて生きているはずのカエルでさえも夜光虫が光るとこれを食するのを拒否したのだとか。
彼の研究チームはさらに夜光虫が交尾をするにあたっては例外なく風上に向かって飛ぶのだそうです。で、「それは夜光虫が交尾相手を魅了するのは匂いであって風体ではないことの証拠である」のだとか。「この発見で明らかなように、夜光虫は化学的なシグナルによってのみパートナーを見つけるのである」とコック教授は申しているのであります。だから何なのさ、先生!?
虎も殺した130才!?
スカイニュースの報道によるとサウジアラビアで130才になる男性が最近ついに死去したのだそうです。アルアスマリという名前の男性で、メッカへの巡礼歴3回(全て徒歩)を誇っていたらしい。食べ物は自分で育てたもの以外いっさい口にしなかったのが長寿の秘密だったとか。クツははかず、車で旅行したことは一回もなし。死ぬまでに何度結婚したかについては「よく分かっていない」が、孫が60人いたことは確かなのだそうです。息子のアブダラさんは「オヤジは強くて勇敢だった。トラを殺したことだってあったのだ」と言っております。ウーン、だから何なの!?
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4)マスター由のフロム・ザ・ウェスト:オレ流で行かせろ!
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前回の「フロム・ザ・ウェスト」を読んだ方の中にはおそらく「おや?」と思われた方がおそらく多いのではないかと思います。5回目までは、自分のペンネームやコラムのタイトル、あるいは風変わりな犬との出会いのことなど、良い言い方をすれば個性的な、悪い言い方をするならば個人的な内容のものばかりだったのが、6回目にはいきなり「ブッシュ大統領」「政治」とはいったい「マスター由」に何が起こったのだろう、と思っている方もいるでしょう。 実はこれ「むささびジャーナル編集部からの圧力」だったのです。編集長からの直々の要請で、僕のコラムに「もう少し社会的なアングルを加えてほしい」とのことでした。
「社会的なアングル」の例として、例えば今年はアメリカでは大統領選挙の年だが、ワシントン州の田舎の人たちはいったいブッシュ大統領をどう思っているのか、といったことを伝えてほしいとのことでした。 この要請に対して僕は正直「困ったなあ」と思ってしまいました。
この場を借りて白状しますが、僕は政治や社会問題なんて興味もないし、そんなことに構っている時間や余裕などほとんどありません。それこそ毎日毎日を生き延びることが精一杯の大学院生です。何しろ最近まで「ハワード・ディーン?誰?それ」と言っていた僕ですから。そんな僕に社会的なことをコラムに書けなんて、新庄にキャッチャーをやれと言うようなもんだ、とボヤいたものでした。
それでも、むささびジャーナルのコラムニストという名誉な仕事を失うのを恐れた僕は「分かりました、何とかやってみます」と返事をし、前回のコラムを何とか書き上げました。はっきり言って自分で書いていてもあまり面白いとは思えないコラムでしたが、まあ読者の皆さんに喜んでもらえるなら、と思いつつ書いていました。
そんな時編集長からまたメールを頂きました。何と僕のコラムに関するファンレターが届いたとのこと。一つは編集長から「頼まれもしないのに」書いた僕のプロフィールに関する反応、もう一つは「ラストネーム」に関するコラムに対する反応でした。正直言って本当にうれしかったです。ファンレターを送って下さった方にはこの場を借りて心から御礼申し上げます。
ファンレターに勇気付けられた僕はつい調子にのって(?)編集長宛にメールを出し、今後のフロム・ザ・ウェストは中日の落合監督のように「オレ流」でやらせてほしい、と直談判しました。その熱意(?)が通ったのか、編集長も僕の「オレ流」を認めてくれました。やっぱりキャッチャーの新庄よりもセンターを守る新庄を見るほうが楽しいということでしょう。ということで、今後とも「オレ流コラム」をよろしく!
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5)トイレの中にて:ギャグの英語講座第3弾
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過去2回の「むささびジャーナル」で英語のジョークを紹介、私の翻訳をつけてシラケてしまったことがあったのを覚えていますか?そこで最近目にとまったジョークをまた紹介します。ただ今度は翻訳をつけるなどという無粋な真似はやめておきます。場面設定だけ説明しておくと、ある男性が公衆トイレに入ってきたと想像してください。二つあるトイレの一つが塞がっていたので、もう一つのトイレに入ってしゃがんだところ、となりのトイレから声が聞えてきた・・・。
- A man walks into a public toilet where he finds two cubicles. One is already occupied so he enters the other one, closes the door and sits down.
A voice then comes from the cubicle next to him: "Good-day, mate, how are you going?"
Thinking this a bit strange but not wanting to be rude, the guy replies: "Yeh, not too bad, thanks."
After a short pause, he hears the voice again: "So, what are you up to, mate?"
Again answering reluctantly but unsure what to say, he replies: "Um, I'm just having a quick poo. How about yourself?"
He then hears the voice for the third time: "Sorry, mate, I'll have to call you back - I've got some idiot next to me answering all my questions."
というわけでした。
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6)編集後記
マスター由なる人物にも困ったものです。「編集長も僕の”オレ流”を認めてくれました」などと言っていますが、認めたつもりなどありません。仕方ないから溜息まじりに諦めただけです●くどいようですが、アンソニー・サンプソンの新刊は一読に値します、英国に興味をお持ちの方なら。もちろん私も買うつもりです●むささびジャーナルは私が個人的に存じ上げている人にのみお送りしているのですが過去1年以上にわたってむささびジャーナルを送らせてもらうことを黙って許して頂いた皆様に心より感謝申し上げます。中にはコメントまでくれた人もいます。本当に有難うございました。どこまで続くのか・・・30号まで来たとなると、50をめざしてみたいですね(申し訳ないけど)。
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