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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第31号 2004年4月18日
春ですねぇ。ウチの近所の丘の緑が本当にさわやかになりました。先日ロシアの人と話をしていたら、あちらでは常緑樹というのが殆どないので、冬になると木の葉がみんな落ちてしまって実に寂しい風景になる。が、その分、春の訪れは本当に嬉しいのだそうです。で(全然関係ありませんが)毎度お騒がせをいたします。31号のメニューは次のとおりです。ちょっとかっこ悪いのですが、自分の主観的なものをトップにしてしまいました。皆様のご意見など伺えれば有難いと思います。

目次

@むささびJの<イラク人質事件と「自己責任」>
Aサッチャー時代の子供たちが今・・
B汝の敵を知れ:A・サンプソンの対テロ見解
Cマスター由の<ルーキーリーグで僕が子供たちから「学んだこと」>
D短信
E編集後記


1)むささびJの<イラク人質事件と「自己責任」>
前々から考えているのですが「世間をお騒がせして申し訳ございません」という日本語を英語では何というのでしょうか?「申し訳ございません」はI apologiseとかI regretでいい。私の持っている和英辞書によると「世間」はworldとなっている。で「世間を騒がせる」はto make a noise in the world, to create a sensation, to make a splashなどとなっています。となると「世間を・・・」はI apologise that I have made a noise in the world…かな!?で、何を言いたいのかというと、あのイラクの人質事件は本当にあれほど大騒ぎするようなことだったのか・・・という私の疑問について一言、と思ったのですが、それをやると余りにも長くなるので、ここをクリックしてください。

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2)サッチャー時代の子供たちが今・・・
最近あちら(英国)のメディアのサイトを見ていたら、教職員組合の大会のレポ−トがいろいろと掲載されていました。「いろいろ」というのは(私も詳しくは知りませんが)、英国には先生の組合が幾つかあって、今ごろがちょうど「大会」の時期なのでしょう。 特に私の興味を惹かれたのは4月13日付のDaily TelegraphのThatcher parents blamed for rude pupilsという見出しの記事でした。見出しから察するに「昨今、生徒の行いが悪いのはサッチャー時代の親たちに責任がある」というものだろうと思ったら、やっぱりそうでした。
全国女性教師組合という組織のPat Lerewという委員長が大会の演説で主張したもので、それによると「サッチャー時代(80年代)に子供だった人たちが今、20代の後半から30代の親になっている。その親たちが育てた子供が、学校でいじめや暴力を繰り返している。それはサッチャー時代のものの考え方に問題があったから」ということです。

小学校の教師歴30年という彼女によると、サッチャーの時代は「自分さえよければ結構・世の中金が全て・金にならないものは価値がない」という思想が席捲した時代であったわけです。その時代、教師は能無し(useless)の見本のように言われ、メディアからも政治家からもバカにされた存在とされた。現在の親はそういう時代に育った人だけに、現在の子供たちは教師を尊敬せず、教室でもおよそ言う事を聞かないのだそうです。私語は多いし、宿題はやってこないし・・・で教師が注意すると、親が乗り込んできて「ウチの子は悪くない!」とやるのだそうです。

全国教師・講師組合によると2002年から2003年にかけて、生徒が教師に対して暴力を振るった「深刻な暴力事件」が全国で112件(殆どが中学)あったとのことです。 別の教員組合の大会では、ブレア政府が推進している、学校運営に企業競争のやり方を採り入れるという方針について「学校はスーパーマーケットではない」という反発が上がったそうです。

サッチャー政権の頃(だったと記憶していますが)全国共通テストなるものが実施されるようになったのですが、英国の場合、その結果が新聞紙上などで公表される。つまり「いい学校」「ダメ学校」のランク付けがなされるわけ。テストそのものには反対しないけれど、ランク付けは廃止すべきというのが教師たちの意見。 これらの大会での報告を聞く限りにおいて、英国の教育は「殆ど希望なし」のようにも見えますが、それはおそらく日本も同じことか、英国よりもさらに深刻かもしれない。

ただ全国教師・講師組合のJudith Rowleyというリーダーは、そのような状況にあっても「教師としての誇りを持とう」と呼びかけ「教師になった当座の理想を忘れないようにしよう」と強調しています。彼女は教育について「単なる収入を得るための仕事ではない。人生そのものであり、人間としての我々の一部だ」(Teaching is not just a job. It’s something we live. It’s a part of what we are as people)とコメントしています。

一時、ダメな国の見本のように言われた英国が、サッチャー首相によって経済が甦り、復活したとして、彼女のリーダーシップを称える声が日本では(英国でもそうですが)聞かれます。が、サッチャーの英国病治療の結果として殆ど永遠に失われてしまったもの、つまり英国病とは別の意味で「ダメな国」になってしまったという側面もあるのではないか?と私などは疑っています。

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3)汝の敵を知れ:A・サンプソンの対テロ見解
前号のむささびジャーナルでも紹介したAnatomy of Britainの著者であり私が勝手に「英国の良心」と思い込んでいるアンソニー・サンプソンが、3月21日付けのObserver紙で「汝の敵を知れ(Know thine enemy)」というタイトルのエッセイを書いています。この場合の「敵」とはオサマ・ビン・ラディンのようなテロリストのことであり、彼の意見は「テロとの戦いは軍事力では勝てず、穏健グループを敵に回さない政治力のみが頼りである」ということになります。

これまでにも英国はIRAを始めとする様々なテロリズムの脅威を経験してきていますが「テロリストに過剰反応して、さらなるテロを生むということを避けてきたのが英国の伝統である」として、現在の英国はテロとの闘いで「クールさ」を失っているのが極めて危険であるとしています。 そもそもビン・ラディンらのテロリストが望んでいるのは、彼らの敵が過剰に反応してくれて、本来はテロとは無関係な「穏健派」と目される人々までが彼らを支持する側に回ってくれることなのである、というのがサンプソンの言い分。

「ビン・ラディンが願っているのは、西側の”十字軍”に対して聖戦を挑み、アメリカを自分の祖国であるサウジアラビアから追放し、ピューリタン的宗教社会を実現すること。そのためには世界中の注目を集めるパブリシティが必要で、9月11日以来のテロ活動も全てはそのためのものであった」というわけ。 ブッシュが「対テロ戦争」をやってくれたお陰で、穏健なイスラム世界まで敵に回してしまって、ビン・ラディンは正に彼の望むパブリシティを獲得するのに成功しているというわけです。

1年前に始まったイラク戦争は、ビン・ラディンらにとっては「お誂え向きの」展開になっているというわけです。 9・11以来の様々な展開の中で「テロリストに挑発されない」と言う伝統的な英国の知恵が全く生かされていないというわけで「現在の英国の安全にとって最大の政治的課題は国内で増加するイスラム人口を如何にして政治に巻き込むかにある」とサンプソンは主張しています。「イスラム国会議員の声がイラク問題についての政府の議論や決定に全く反映されていない。何故ならブレアが彼らの声を無視しているからだ」と政府を批判しています。

最近の世論調査ではイスラム系の英国人は反労働党に回っており、来年行われる総選挙でも大半は棄権するのではないかとされているそうです。 英国は自らの歴史的経験に学ぶべきであり、間違ってもテロリストの策戦に乗ってしまって敵を増やすようなことをしてはならない・・・とういのがサンプソンの主張です。サンプソンの記事をお読みになりたい方はここをクリック。

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4)マスター由の<ルーキーリーグで子供たちから「学んだこと」>
去年の夏、僕は生まれて初めてここワシントン州で野球を「教える」経験をしました。僕がコーチを務めたのは8−9歳の子供たちからなる「ルーキーリーグ」。このルーキーリーグでは、子供たちは人間が投げる球ではなく、ピッチングマシンのボールを打ちます。プルマンのルーキーリーグは、だいたい7−8チームからなり、それぞれのチームに1人か2人コーチがつきます。コーチは市のレクリエーション課がボランティアを募り、だいたい学生か地元の人たちが引き受けます。

ルーキーリーグでは、シーズンが始まる前にまず「スキルテスト」、すなわちルーキーリーグに参加する子供たちの野球の技術がどのくらいのものかを見るテストのようなものを行ないます。スキルテストの後コーチたちが集まって、それぞれのチームの組み合わせを決める「ドラフト会議」を行います。1チームにつき9人の子供たちが割り当てられます。

いろいろな小学校から集まっているので、違う小学校に通う子供たちが一緒のチームでプレーすることもあるし、男女混合のチームができることもあります。チームが決まったら、その次の週から早速シーズンが始まります。5月中旬から6月下旬までの約6週間、集まるのは週2回、それも午後の6時から7時までという短時間です。

いわゆるユニフォームというものはなく、帽子だけが統一されます。メジャーリーグのチームの帽子が子供たちに与えられ、チーム名もそれによって決まります。敵味方を見分けるだけのために、リバーシブルのジャージーだけが貸し出されます。バットやヘルメット、キャッチャーのマスクなどは市が貸し出します(バットは1チーム1、2本)。試合が終わった後は対戦チームの子供たちとハイタッチをするのが習慣です。

先日の「編集後記」で「日本のリトルリーグと子供たちの野球離れ」について編集長が言及しておりましたが、ここアメリカでコーチとしてルーキーリーグの子供たちと関わってみて、何となく編集長の言うこともうなずけるような気がしました。

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5)短信

スイス版・困った老人
スイスのベルンを走る高速道路で、あろうことか逆方向に走っていたクルマを運転していた老人が、パトカーを見つけて「皆、逆方向に走っているようだ。注意した方がいい」と訴えたのだそうです。86才になる年金暮らしのおじいさんだったそうで、直ちに警察のクルマに乗せられて家まで送り届けられたとか。警察ではこの老人に免許書を返却すべきかどうか、未だ決めかねているそうです。

時速3300キロのスピード違反!? ブリュッセル付近の高速道路を走っていた人がスピード違反のチケットを送付された。よく見ると、自分が何と時速2100マイル(約3300キロ)で走ったことになっていたそうです。その人が運転していたのはミニだった。時速2100マイルということはマッハ3にあたる超音速なのだとか。どうやら付近に設置されていた速度違反監視のためのレーダーが間違って付近を飛んでいた飛行機の速度を捕らえたもので、しかもそれが機械の不良で間違った記録であったとのこと。違反チケットを発行した警察は平謝りで、一刻も早くレーダーを直すことを約束したそうです。

ワニ退治は目に一発かませれば・・・
オーストラリアのクイーンズランドにあるマーガレット湾で泳いでいた11才の少女が、ワニに噛み付かれたという事件があったのですが、それを救ったのがプロのワニ狩人、レイ・ターナー氏(57才)。腕に噛み付かれた少女の叫び声を聞きつけるや、自分のボートからワニの背中に飛び乗った。で、何をしたかというとワニの左目に指を突っ込んだのだそうです。そしたらワニはそそくさと逃げていったのだとか。「本当は右目にも一発くれてやりたかったけど、ミスってしまって・・・」というターナー氏によると、ワニは目がイチバンのウィークスポットなのだとか。

ちょっと変わった銀行訴訟 
チリの首都サンチアゴで起こったちょっとややこしい銀行訴訟が起こっているそうです。この町にある銀行で9000ポンドを引きおろしたイザベル・バロスさんという女性、帰宅途中に二人組みのひったくりに遭いそのお金をそっくり取られてしまった。バロスさんの主張によると、銀行で順番を待っていたところ、窓口の銀行職員が「エー、9000ポンドをお待ちのご婦人はいらっしゃいますか?(Who is the lady for the 9,000 pounds?)」と大声で叫んだ。のみならず彼女の目の前で大きな声で9000ポンドのキャッシュを数えた。ひったくり泥棒の二人は銀行でこのやり取りを聞いて、彼女がそれだけのお金を持っていることを知ったから、ひったくりをした・・・だから、大声で金額を叫んだばかりか、キャッシュの勘定まで大きな声でやってしまった・・・だからこれは銀行に責任が・・・というのがバロスさんの言い分。ただ銀行サイドはこれを否定しており、裁判ではキャッシュ係が大声で叫んだことはないことを実証するために、防犯カメラのテープを裁判所に提出するとしています。(ちなみにこのニュースはチリの通信社発のものを英国の通信社が流したので、金額もポンドになっています)。

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6)編集後記
●前回のむささびジャーナルで夜光虫についてのニュースを載せました。「夜光虫が身体から光を放つのは求愛のしるしではなく、敵から身を守るための行為なのである」というオランダの学者の発見についてのもので、私(春海)の率直な感想として「だから何だっての?」というコメントを付けました。●それに対して、そのようなコメントを付けるのがむささびの浅はかなところである、という、これも実に率直なご意見がありました。有難いじゃありませんか。●そのご指摘によるならば「生態の基本の交尾が性ホルモンのフェロモンなど化学物質よるという事実が色々利用できるのです。例えば既にそれを逆手に取った害虫駆除(ペスト・コントロール)や香水等にも!もうある人は、この成果利用の次のことを考えているかも!」なのだそうです。●そんなこと、わっかんないもんな、言ってくれなきゃ!

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