1)イングリッシュオークの周辺:愛知県美浜町
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久しぶりにこのシリーズを復活します。2002年に行われた「日英グリーン同盟」と言う企画で植えられたイングリッシュオークが植えられた場所を紹介するものです。美浜町は知多半島の突端にあります。町内の丘にのぼると三河湾に建設中の中部国際空港が見える。名古屋から電車で約40分のこの町は、日本人として初めて英国の土を踏んだ「音吉」という船乗りがの生まれ故郷です。英国生まれの小さな樹木を植えるのに十分な理由です。詳しくはここをクリックしてお読みください。
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2)オーク大使の最後のメッセージ
先日、日本記者クラブが、ゴマソール駐日英国大使の昼食会をやりました。私も当然(つまり日本記者クラブで仕事をさせてもらっているという意味)参加しました。ゴマソール大使は私が30年も前に英国大使館というところで働くことになった時の私の初めてのボス(広報副部長)でありました。で、2002年の末に退職する時も(直接ではないにしても)彼が私のボスであった・・・外交官は大体において4年くらいの周期で任地を離れると思うのですが、私にとっては英国大使館という職場における最初と最後の年にゴマソール氏が東京にいたということは非常に嬉しい偶然でありました。
で、昼食会ですが、大使が約50分スピーチをした中で特に私の記憶に残っている部分を二つだけお知らせしておきます。一つは彼が経済部長さんとして日本に勤務していた頃の思い出話なのですが、外国からの輸入も絡んで、酒税が大きな問題になっていた時、彼は英国(ウイスキーの輸出国)を代表して日本政府の関係者に会いに行くことがしばしばあった。その際にこの問題を担当していた(自民党の)先生方の殆どが日本国内でお酒の生産にかかわっていた人たちであったそうです。
もう一つは中国と日本のこと。EUを推進しているのがフランスとドイツの「連合」(一般名詞として使っています)であるならば、これからアジアを先導していくのが日本と中国というわけ。フランスとドイツが「仲良く」団結している裏にはドイツによる「過去の清算」がある。で、日本と中国が団結するためには、日本が日本の「過去」を清算する必要がある・・・というのがゴマソール大使の発言であったわけですが、彼のメッセージは「これからのアジアは中国ヌキには考えられず、その中国とうまくやっていかない限り、日本の将来もない」ということだったのだろうと思います。
2002年にオークの木を植えるという企画(日英グリーン同盟)があった時には、日本中のあちこちに出かけて植樹式に参加してくれました。これからも何度も日本に来ることがあると思いますが、自分が植えたオークのその後を見に行くというのも楽しみかもしれないですね。
その昔、アーネト・サトウという英国の外交官がいて、現在の英国大使館の付近に桜の木を植えたという史実があるとのことで、その記念碑のようなものがあります。サトウが桜の大使ならゴマソールさんはオークの大使と言えるかもしれません。Good-bye, boss!
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3)ブッシュに肩入れして損した?
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先日BBC World Service(テレビ)のインタビューを見ていたら、ブレア派の労働党議員が、イラク戦争に英国が参加したことの善し悪しをめぐって厳しい質問攻めにあっていました。つまり米英軍によるイラク人捕虜の虐待とか未だに見つかっていない大量破壊兵器の問題など等。 英国の政治に興味がないとおっしゃる方のために説明させていただくと、ブレア党首が率いる労働党の内部にはかなりの数のイラク戦争反対議員がおり、殆ど内部分裂の様相を呈していると言われています。
英国下院の議席数は659、うち労働党は408議席と圧倒的多数(野党第一党の保守党は163)を誇っていますが、ことイラク戦争となると、労働党内部の3分の1が明確に反ブレア、次の3分の1が「(戦争に)かなり懐疑的、はっきりブレアを支持しているのは残りの3分の1・・・というのが最近のThe Economistが伝える勢力分布です。
で、BBCのインタビューです。このブレア支持派の議員は、ティム・セバスチアンとうい英国版・田原総一朗みたいなインタビュアー((幾らなんでももう少しはマシか!?))による質問攻めに遭いながらも「何のかんの言っても、サダム・フセインというひどい独裁者からイラク国民を解放したのだから・・・」という趣旨の発言を繰り返して懸命にブレアさんを擁護しておりました。
最近(といっても5月15日付け)のThe Economistが「ブッシュに肩入れして損したブレア」というニュアンスの記事を掲載しています。フセインという「悪者」をやっつけたのだという「正義の戦争」も、イラク人をあそこまで虐待していたのでは正当化が難しいわけですが、英国民の間でブレアが最大の不評を買っているのがアメリカ政府と余りにも近寄りすぎているということで、戦争そのものは支持する英国人の間でも「ブッシュ政権に対する嫌悪感は強い」とのこと。ブレア首相は「ブッシュのプードル犬」とからかわれながらも、世界のどの国の指導者よりもブッシュの信頼を勝ち得てきたことは間違いない。が、「彼(ブレア)のアメリカ政府とのフレンドシップは、実際にはブッシュ止まりで、実際に戦争を動かしているチェイニー(副大統領)やラムズフェルド(国防長官)にはおよんでいない」とThe Economistは言っています。
チェイニー、ラムズフェルドこそが戦後のいろいろな混乱の責任者であるわけで、ブレアの影響力がこの二人にまで届いていないということで、結果として「英国は戦後の間違いについて殆ど際限もなく責任を負わされたにもかかわらず、その見返りとしては殆ど得るものがなかった」という情けない状態であるというわけです。
ただ、それではブレアを引きずり下ろそうという動きが労働党内にあるのかというと、これもないのだそうです。ちなみにイラク戦争についての最近(5月10日)の世論調査によると「正しかった」が43%、「間違っていた」が49%となっています。昨年4月の頃の数字(正しい:66%、間違い:29%)とはかなり違います。また「いま選挙が行われたらどの党に投票するか」というアンケート(5月中旬)によると労働党が34%・保守党37%・自由民主党20%となって、保守党が最近では珍しく第1位になっています。
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4)マスター由の<シリーズ「カウンセリング心理学者への道」>
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僕がむささびジャーナルへのデビュー当時「頼まれもしないのに」書いたプロフィールを読んだ方は、おそらく「カウンセリング心理学って何ぞや」と思われたことでしょう。少なくとも僕の知る範囲ではカウンセリング心理学という分野は、日本ではあまりなじみのない学問かもしれません。
現在僕がここアメリカでいったいどんなことをしているのかを皆さんにより良く知っていただくためにも、これからカウンセリング心理学という学問そして職業について、僕のこれまでのワシントン州立大学大学院での経験を参考にしながら紹介したいと思います。結論から申し上げると、アメリカでプロのカウンセリング心理学者になるのは生易しいことではありません(自分で言うのもなんですが)。それこそいくつものハードルを乗り越えなくてはなりません。
ハードルその1:コースワーク(授業) カウンセリング心理学のプログラムでは、カウンセラーの仕事に直接関係のある心理学のクラス(カウンセリング理論、心理テスト、カウンセラーの倫理・法律、異文化間のカウンセリング)はもちろんのこと、心理学の研究に必要な知識に関するクラス(統計学、研究方法論など)、あるいは他の心理学の分野の授業(生物心理学、社会心理学、認知心理学、精神病理学など)といったさまざまなクラスを盛り込んだカリキュラムを終了することが義務付けられています。
このコースワークを終えるのには、通常4年間かかります。修士号をすでに取得している人は、場合によっては授業のうち何科目かを免除してもらえるので、多少はこの期間を短縮できるかもしれません。ちなみに僕はカウンセリング心理学の修士号を別の大学でとったため、コースワークは3年目の今年、無事終了することができました。だいたいどのクラスでもテストやペーパー、プロジェクト、プレゼンテーションなどの課題をこなさなくてはなりません。
しかし、さすがに博士課程のレベルまでくると通知表の成績よりも、これらの課題を通して何かを学んだかどうかのほうがより重視されるようです。 おっと、そうこうしているうちに時間がきてしまいました。ちょっとイントロが長すぎましたね(これはいつものことだが)。次回は「ハードルその2:Preliminary Examination (予備試験)」について書きますのでお楽しみに!
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5)短信
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ピザの定義
英国のPA通信が伝えるところによると、イタリア農務省がピザの定義をはっきりさせるための規則作りをやろうとしているのだそうです。背景には最近のイタリアで増えている「ピザまがい(pizza pirate)」を取り締まろうという意図がある。農務省が検討中の規則によるならば、ピザがピザと呼ばれるためには、@ヘリが1-2cmで中心部の厚さが3ミリ以上であること、A直径は35センチを超えてはならない、B450℃の温度で焼かなければならない・・・の3点がクリアされていなければならないのだそうです。 なるほど・・・私、比較的ピザが好きなのでありますが、やたらと薄いピザがありますね。あれ、どうも好きになれない。ピザはピザらしくぼってりしろよ、と言いたくなる。
ラザーニャ・ブーム
もう一つイタリアの食べ物の話題。今度はラザーニャが英国でも一番人気の食べ物になりつつあるのだとか。かつてのトップはインド料理のティカマサラを抜いてしまった。英国のスーパーの大手、セインズベリーによると昨年1年間で売れた出来合い惣菜としてのラザーニャの数は1390万切れだった。第2位はかなり差をつけられてチキンティカマサラで740万食。同じくスーパーのテスコの数字ではラザーニャが980万、ティカマサラは630万となっています。何故ティカマサラが負けたのかというと、最近販売されたものの中に染料が入っているものがあるという警告がなされてから人気ガタ落ちになった、ということもあるけれど、トマトとオリーブオイルを使っているラザーニャは「地中海風の健康食」というイメージで得しているらしい。 ラザーニャ、嫌いではない。けど・・・とても健康食とは思えない。
鉄道職員のボイス訓練
ミドランド・メインラインという英国の鉄道会社がスタッフ73人の特別「声だし訓練」を行っています。と言っても自社内ではなくて外部のプロのアナウンサーに仕込んでもらうもので、一番大切なのは「はっきりとアナウンスすること」なのだそうです。「特にプラットフォームにおけるアナウンスは、明確に発音することで乗客を効果的に誘導することができるようになる」のだとか。「こうすれば乗客がホームで迷って、電車の遅れの原因になることもなくなる」と同社では言っています。 最近、東京の地下鉄でも車内で英語のアナウンスをするところが出てきたのを知ってます?ただこれが(私には)結構聞き取りにくいんです。「次はXX・・・丸の内線は乗り換えです」という意味の「Please here for the Marunouchi line」は何度聞いてもPlease change your board for Marunouchi・・・としか聞こえなかったのであります。
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6)短信
今を去ること30年も前に私が英国大使館なるところに就職した時に、紹介されたスティーブン・ゴマソールという広報副部長さんに「私、英国のことも大使館のことも何も知りませんので、よろしくご指導ください」とかいう趣旨のことを言いました。これ実際にそうであったので、特別へりくだったというわけではない●で、ゴマソールさんが言うのにはOh,
don't worry. We are all in the same boat!というわけ。言われた私はというと、何を言われたのか、はっきり聞き取れなかったのですが、Yes,
yesとか言って、その場をつくろいました。何がイエスなんだ自分でも分からない●しかし、確かにsame boatということを言っていたよな・・・というわけで、辞書を見たら出ていました。Being
in the same boatというのは、言ってみれば「皆仲間なんだから仲良くしていきましょう」ということであったわけです●というわけでbeing
in the same boatは私が英国大使館というところに入ってから初めて覚えた英語表現となったのであります。 |