musasabi journal

home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
第40号 2004年9月5日
9月1日付けの東京新聞に「アテネ五輪放送・記者座談会」という記事が掲載されていました。オリンピック期間中のテレビ放送についてこの新聞の記者がいろいろと論評をするという企画でしたが、使われている見出しだけでも中身が分かります。即ち「感動押し売りに閉口」「なれなれしさが不快」「日本一色、ちょっと変」ときて「"長嶋ジャパン"の連呼うんざり」で締めくくりというわけ。はっきり言って全て(特に最後は)当っていると思います。

目次

@正しい英語って何?
A「補償文化の蔓延」をめぐる侃々諤々
B祝祭日増加キャンペーン
Cマスター由の<南部体験ルポ前編・ナッシュビルにて>
D短信
E編集後記


@正しい英語って何?

「英国籍を取りたい外国人は英語を知らなければならない」という移民法の規則について最近のThe Economistに面白い記事が出ています。この規則によると非英語圏から来た外国人は英語の試験を受ける必要があるのですが、オーストラリア、ニュージーランド、カナダのような英語圏から来た「外国人」については「責任ある人間」(裁判官、学校の先生など)によって英語力が証明される必要があるそうなのです。

問題なのは英国で使われている英語と、これらの国で使われている英語が必ずしも同じでないということ。 例えば英国英語でhooliganはニュージーランド英語ではhoon、foodはkai、「信頼できない」というunreliableはshonkyというのだそうです。英国英語のvomit(嘔吐)はオーストラリアへ行くとchunderという具合。それから英国版芥川賞みたいな文学賞でBooker Prizeというのがありますね。最近の20人の受賞者のうちいわゆる「英国人」(英国英語を使う人という意味)は、たったの8人。残りは非英国人なわけです。

The Economistが言いたいのは英国籍を取るのに英語を云々するのは無理であるということです。オーストラリアへ移民したい英国人に対してオーストラリア英語の試験などしないのだから。それにこうした「外国人」の英語力を証明する人の英語力だって分かったもんじゃない。だいいち今でも地方議員は英語が話せなければならないという決まりはどこにもないし、現にマンチェスターには通訳をつけている議員もいるらしいのです。

なるほど・・・日本国籍を取得するのに日本語の力って問題になるんでしょうか?多分ならないですよね。
back to top

A「補償文化の蔓延」をめぐる侃々諤々

英国の保険会社、ノリッジ・ユニオンの調査によると、多くの英国人が、最近の英国は補償文化(compensation culture)の国になりつつあると考えているそうです。補償文化なんて聞きなれない言葉ですが、要するに何かというと被害を訴えて補償金をとろうという傾向が強いということで、およそ100億ポンドというお金が毎年「補償金」という形で支払われるそうです。訴訟社会の到来ということなのでしょうね。

特に顕著に増えているのが、政府の医療保健サービス(NHS)が絡んだ医療ミスについてのクレームへの払いで、1974年当時100万ポンドであったものが、2003年には4億7700万ポンドにまで上昇している。30年間で470倍!ちなみに4億7700万ポンドあると2万3000人の看護婦を雇える数字なのだとか。学校による補償金の支払いも年間2億ポンド。これだけあれば8000人の教師を新たに雇用できるそうです。

こうした傾向について、保守党・幹事長のデイビッド・デイビスという人が雑誌に投稿したエッセイの中で「余りにも些細なことでの補償争いが多い」として「諸悪の根元は政府が作った人権保護法(Human Rights Act)にある」と主張しています。学校の敷地にあったおが屑の上で転倒した教師が学校を訴えて5万5000ポンドを勝ち取ったケースとか、キャンプで料理をしていた少女がソーセージの油が飛び散って指をやけどしたという理由で3500ポンドの補償金を受けた・・・などという例を挙げています。

こうした意見に反対する人も当然います。ある教師の場合、30年勤めた学校で重いコンピュータを持ち上げようとして怪我をして、それがもとで4ヶ月の休みを余儀なくされた。再び出勤して来たらまたまた非常に重い荷物を運べ、と学校に命令された。彼女の言い分によると、これは学校側が彼女を辞めさせようとしたいやがらせにすぎない、というわけで訴えた結果、2万2000ポンドの補償金を勝ち取った。

「補償文化」の蔓延を嘆く声そのものを「インチキ」と決め付ける人もいます。こうした補償関係のある弁護士は「反補償文化キャンペーンが保険会社によって行われていることに注意した方がいい」として、彼らの狙いは、一つには補償を求めること人々の信憑性を損ねることでなるべくこれを保険会社としてお金を払わなくて済むような風潮を作ろうということであり、もう一つは「補償社会」を宣伝することで「保険金そのものの吊り上げを狙っている」ということらしい。
back to top

B祝祭日増加キャンペーン

英国で「祝日を増やそう」というキャンペーンが行われています。日本における祝祭日は(私の計算に間違いなければ)1年に14日。EU諸国の平均が11日で一番多いのはキプロスの16日、一番少ないのは英国で「キプロスの半分」(BBC放送)なのだそうです。確かに少ない。

というわけで「祝祭日増加運動」に取り組んでいるのが、労働組合会議(TUC)で、政府に対して祝祭日を3日増やすことを考慮するよう働きかけています。 これに対して英国産業連盟(CBI)などからは「経済活動に悪影響が出る」という声も出ていますが、TUCは「休日が増えればその分だけ消費も増えるから小売業界・観光業界などはかえってうるおうはず」と反論しています。

TUCによると英国全体では1年で、仕事がらみのストレスで労働者が身体を壊すなどして、44億ポンド相当の損になっているそうです。 TUCでは現在インターネットで「新たな祭日人気投票」なるものを行っていますが、それによると、現在のところ一番人気は10月下旬の41%だそうです。次いで4月23日(聖ジョージの日:イングランド)、11月30日(聖アンドリュースの日:スコットランド)、3月1日(聖デイビッドの日:ウェ−ルズ)などが続いているそうです。

かつてヨーロッパ(英国も含めて)の人たちは日本人を「ワーカホリック」だとか言って非難したのですが、英国人は結構「働き中毒」ではあるということです。

Cマスター由の<南部体験ルポ前編・ナッシュビルにて>
「音楽の街」として知られるテネシー州ナッシュビルに降り立ったのは7月末の金曜の夕方。飛行機を降りた瞬間、日本の夏を思い出させるようなむっとした蒸し暑さを肌で感じた。宿に着いたのが、もうすぐ日が完全に沈もうとしている頃。車を降りた時、蒸し暑さと共に飛び込んできたのが、ジャングルのように生い茂った緑の木々、そして耳を劈くような虫や蛙の鳴き声。いずれも日本の夏そのままであった。

ワシントン州からの長旅の疲れも知らずに、その夜は早速ナッシュビルの街へ。カントリーミュージックのメッカとして知られるナッシュビルとだけあって、だいたいどこのバー、ライブハウスからも聞こえてくるのはカントリーソングであった。ちょうど映画俳優を目指す人がハリウッドに来るのと同じように、カントリーシンガーを目指す人が来るのがここナッシュビルである。 おそらくダウンタウンのライブハウスで歌っている人たちは、いつか一流のシンガーとして有名になろうと思ってここにやって来たのではないだろうか。中にはライブハウスではなく、路上でギターを弾きながら歌っている若者もいた。

ところで、僕自身はカントリーなんて田舎者の聞く音楽だ、と馬鹿にしていたところもあり、この種の音楽には今までほとんど興味がなかった。ただこの歳になって(?)ラップやヒップホップばかり聴くのもいかがなものかと思い「よし、テネシーにいる間だけは南部の音楽、文化にどっぷりつかろう」と心に決めた。 そこで次の日に行ったのが、ナッシュビルでは有名なグランド・オール・オプリーという場所で行われたカントリーのコンサート。午後6時半から9時までの2時間半にわたるショーで、のべ15人のシンガーたちの歌を聴いた。彼らの音楽を聴きながら「おやっ」と思ったのは、カントリーのノリが何かを思い出させたのである。

そういえばこのノリ、毎週通っている教会で歌っているゴスペルソングによく似ている。 僕の通う教会はサザンバプテストと呼ばれる会派なのだが、このサザンバプテストも、テネシーを中心とするアメリカ南部で発祥しただけあって、やはり南部で発祥したカントリーミュージックへの影響は強いのだと思う。

サザンバプテストというのは、キリスト教の中でもどちらかというと保守的な宗派として知られており、ナッシュビルでもこの宗派が多数を占めているとか。保守的な場所とだけあって、やはり共和党およびブッシュ支持者が多いそうである。「ブッシュはアホだ」などのようなコメントが多数を占めるカリフォルニアやワシントンとはえらい違いである。 政治の話はここまでにして音楽の話に戻ると、教会のゴスペルソングもカントリーソングも、ノリは非常に似ているのだが、カントリーの場合歌詞はほとんどが「女」「お母ちゃん」「酔っ払う」「飼い犬」「ピックアップトラック」についてなのだそうである。

カントリーソングは、歌詞のストーリーが理解できて初めて楽しめるものなのだそうだ。なるほど、でも飼い犬やトラックのストーリーなんて何が面白いのか、とつい首を傾げてしまう。
back to top

D短信
太ることへの執念

すでに130キロという重量のアメリカのある女性が200キロを超えるまで徹底的に食べまくるというプロジェクトに取り組んでいるとか。Daily Mirrorが伝えているもので、ニッキー・マクロバーツ(年齢不詳)という女性は、「毎週体重を増やしたい」という、よく分からない熱意に取りつかれていて、毎日14000カロリーの食事を取っているそうです。夫のティムによると「彼女は朝食のシリアルを食べる前にポテトチップスを一袋食べてしまう」と語っています。ニッキも、元はといえば約60キロという普通の体格であったのですが、食欲に任せて食べまくるうちにこうなってしまった。で、何故200キロを超えるまで食べ続けるのかというと「ギスギスに痩せている女性を見てひらめいてしまった」と言っているそうです。 l この記事、原文ではキロではなくstoneという単位が使われています。ニッキーの現在の体重は25stoneなのだとか。辞書によると1stoneは約6キロだから、130キロってことになる。

● アホなこと止めとけ、と言いたい。

芸術品か、だたのゴミか?

ロンドンのテイト美術館で芸術作品がゴミと間違えられて捨てられてしまった。ドイツの前衛芸術家のグスタフ・メゲランドの個展の中の作品で、見かけ的にはダンボール箱と紙切れが透明のビニールのようなものでくるまれて個展の入口付近に置かれていた。それをゴミと勘違いした清掃員が捨ててしまったというわけ。美術館の館長は弁償するつもりらしいのですが、作品の値打ちについてはコメントを避けています。ちなみに作品のタイトルは「自動的破壊芸術の最初の公のデモンストレーション」(First Public Demonstration of Autodestructive Art)というらしい。

●何のこっちゃ、それ!?

スコットランドの境目で

スコットランドとイングランドの境界にBerwick-upon-Tweedという名前の町があるのですが、これまでスコットランドに入るのかイングランドに属するのかがよく分からなかったのが、先ごろ言語学の専門家が調査した結果、町の住民の英語はあきらかに「北イングランドなまり(Geordie)が主流になっている」との結論に達したそうです。そもそもTweed川沿いの町にはスコットランドと北イングランドの英語の訛りを一緒にしたようなTweedsiderなる独特のアクセントがあるらしい。が、最近これがだんだん北イングランド風になりつつあることが分かったそうです。何故そうなったのかというとスコットランドが独自の議会を作ったことをきっかけにして、イングランド魂のようなものが強くなってしまって、これが英語にも影響しているのだそうです。

●複雑ですよね。私、実は前々から思っているのですが、英国における地方分権には民族感情も絡んでいるので、余り日本には参考にならないのでは?
back to top


E編集後記


●9月になって急に朝の明けるのが遅くなったような気がします。2002年に日英グリーン同盟なる企画があって、いろいろな所にオークという木が植えられたのをご記憶で?いくつかの植樹場所の人たちが「その後のオーク」の写真を送ってくれます。その全体像については、OAKをクリックしてください。 ●次に北海道余市町というところが取り組んでいる「気長な写真撮影10年計画」YOICHI  をクリック。オークは見えないけれど子供たちは明らかに大きくなっています。 ●ついでに樹齢200年くらいと思われるイングリッシュオークの写真はbig oak をクリックしてください。本場のオークです。ひょっとしてこれを見たら2002年に植えた人はしみじみ後悔するかもしれない・・・。こ、こんなに大きくなるんですかぁ!? ●この夏、二人で英国へ行ってきました。その報告は下記に掲載しましたが、これは無理にクリックの必要はありません。他人の海外旅行のみやげ話ほど退屈なものはない。そのあたりのことを覚悟して下さい。

back to top

←前の号 次の号→


message to musasabi journal