1)ロンドン五輪:案外潤わない?ホテル業界
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来年(2012年)はロンドン五輪の年です。会期は7月27日~8月12日。オリンピックというと経済効果が云々されるけれど、11月12日付のThe Economistによると案外潤わないのが観光業界らしいですね。欧州観光業協会(European Tour Operators Association :ETOA)という業界団体によると、1992年のバルセロナ五輪以来どのホスト市についても期間中は外国の観光客は減っており、2008年の北京五輪の期間中、北京のホテルの予約件数は前年比で39%の減であったのだそうです。
昨年(2010年)の夏、観光目的でロンドンを訪れた人は外国人が420万、英国人が300万であったのですが、ETOA加盟の業者を対象にしたアンケート調査によると、2012年夏のロンドンのホテルの予約件数は今現在、2010年よりも5分の1ほど少ない。ホテル自体が五輪期間中に宿泊料金を高くしていることも理由として挙げられているのですが、バルセロナやアテネにおけるホテルの部屋数は13,000~16,000で、五輪期間中にこれが埋まることはなかったということを考えるとロンドンの部屋数は12万5000なのだからタイヘンですよね。
ロンドンはヨーロッパでいちばん訪問客が多い町(Europe’s most-visited city)なのですが、その理由は他のヨーロッパの都市に近くて行き安いからです。ただシドニーと北京のオリンピックを見に来た客は、アテネのときよりも長くその町に滞在したという数字があるのだそうです。それはアテネという町がシドニーや北京に比べると他の観光都市への距離が短いということが理由だった。
つまりロンドン五輪についていうと、これまでに売れた競技見物の入場券(約350万枚)の95%は英国人が買ったものだそうです。この人たちの中でロンドンに泊まる人はあまり多くないはずですよね。レストランはともかくホテルにとってはあまり多くを期待できないわけです。
▼東京がオリンピック開催都市として名乗りを上げているのですよね。でも審査されるときに放射能の問題とか首都直下型地震の可能性などはどうなるのでしょうか。政府などが「安全宣言」などやっても放射能は消えるわけではないし、地震は起こり得るのですよね。
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2)経済危機と経済学の関係
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経済的な問題を抱える国の政府に限って、財務大臣が大学で経済学を専攻した人物であるケースが多い・・・11月初めにベルリンで開かれたDahrendorf Symposiumというシンポジウジウムでロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics:LSE)のJoachim Wehner とベルリンにあるHertie School of Governanceという大学のMark Hallerbergという二人の学者さんが発表したのだそうです。
この両教授は1973年以後のヨーロッパ27カ国および11カ国のOECD加盟国の政府の主要閣僚の学歴を調べたのですが、それによるとギリシャの財務相の69%、ポルトガルの財務相の55%が経済学の博士号の所有者であったのだそうです。英国の場合は現在のGeorge Osborneも含めてそんな人はゼロであるとのこと。
平均すると調査対象となった国の財務相の31%が経済学で大学院以上の高等課程(advanced degree)を修了している。英国の財務相(Chancellor
of the Exchequer)で経済学の学士課程(大学4年)だけを修了しているのはわずか7%、ギリシャは56%、ポルトガルは64%となっています。
ということは、経済学という学問そのものが、国の経済・財政危機の根源かもしれないと思いたくなるけれど、Hallerberg教授によるとそれは違う。実際には反対で、国の経済がおかしくなってしまった国々が「市場からの圧力(pressure from the markets)」で大臣に専門家を迎えるケースが多いのだとか。
経済的に安定しているような国(英国、ドイツなど)の場合は経済学の知識よりも「熟練した政治家(skilled politician)」であることの方が重宝される傾向にある。英国のゴードン・ブラウンはブレアの労働党政権下で10年間も財務大臣を務めたけれど専攻は歴史学だった。EU加盟国の財務相についていうと、OECD諸国に比べて経済よりも法律の専門家が多いのだそうで、LSEのWehner教授は「EUにおける決定事項を見ると、経済的な面よりも法的な面に焦点を当てたもの多いのは、各国指導者の学歴と関係しているのかもしれない」として、
While it is true that ministers sit atop ministries with many trained staff, in crisis situations where time is short these differences could have an effect on the decisions leaders make.
政府省庁のトップに座っている大臣の下には有能なスタッフが大勢いることは間違いないが、時間が限られている危機的な状況においては、大臣の専門性が政策決定に影響を与える可能性はあるだろう。 |
と言っています。つまり経済危機の克服に財務相に経済に強い人物が坐ることは悪いことではないってことのようであります。
▼と言われて日本の財務(大蔵)大臣はどうなのかと思って調べてみたら、経済博士どころか大学で経済を専攻した人でさえ殆どいませんでした。と言っても極めてざっと当たってみただけなので、本当は博士がいるのかもしれないけれど。あえて例外と言えば野田さん(政治・経済学部出身)くらいかも。
▼いまの安住さんは早稲田大学社会科学部、その前の野田さんは同じく政経学部、菅さんは東工大の応用物理だった。自民党の谷垣さんも財務相であったけれど出身は東大・法学部、宮沢(喜一)さん、福田(赳夫)さんも同じ、池田勇人も法学士(京大)ときて、一万田尚登さんも東大法学部・・・。やたらと東大法学部が多いということは、大臣になる前は大蔵官僚だったってこと? |
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3)英国全体が利己主義に走っている?
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どちらかというと左派系のオピニオン雑誌、New Statesmanのサイト(12月7日)にBritain gets a little more selfishという記事が出ています。selfishは利己的とか自己中心的ということですね。British
Social Attitudesという英国人の意識調査の最新版(2010年)によると、
The public are increasingly individualistic and less concerned with inequality and climate change than they were a decade ago.
10年前に比べると英国人はますます個人主義的で、不平等や気候変動のような問題を気にしなくなっている。 |
というわけで、「左派が直面する問題の大きさを浮き彫りにしている(highlights the scale of the challenge facing
the left)」と言っています。British Social Attitudesは英国社会問題研究所(NatCen Social Research)が1982年以来、毎年続けている意識調査で、この種の調査としては最もよく知られています。
最も目立つのは税金と公共政策の問題で、健康、教育、社会保障のための財源としてなら増税しても構わないという意見が2002年には61%であったのに今では30%にまで落ちているということです。社会保障のためなら増税もありというのは(New Statesmanによると)ブレアの労働党政権の考え方であったのだから、いまやこれが否定されたということになる。ちなみに国民保健サービス(National Health Service: NHS)について満足しているという意見が70%なのですが、これはこの調査始まって以来の高い数字だそうです。つまりこれからは NHSを如何に効率的(無駄なく)運営していくかということに重点を置くべきだということになる。
例えば社会における不平等について「大きすぎる(too large)」と考える人が74%いるのだから殆どの人がこれを認めているとは言えるのですが、10年前(2000年)の調査ではこれが82%であったのだから、不平等に非を鳴らす人が減っているということが言える。さらに言うと、不平等を正すために政府が富の再配分政策を推進すべきだと考えている人がわずか34%しかいない。もう一つ言うと、失業者が受け取る社会保障手当の額が大きすぎると考える人が10年前の37%から55%へと上昇している。
New Statesmanによると、現在のように節約政策が幅を利かせている時代には、人々は社会的に守り指向(保守的)であると同時にどちらかというと経済的には自由主義的な傾向があるのだそうです。
In pressing times people are more likely to be concerned with protecting what they have rather than tackling shared problems.
厳しい時代になると、誰もが現在持っているものを守ろうとして、皆に共通の問題に取り組もうとは考えないものだ。 |
ということです。労働党のミリバンド党首がやらなければならない挑戦は、人々が利己的になっている時代にあって「より平等な社会を目指す」という意見で勝つということである(The challenge facing Ed Miliband is to win the argument for greater equality in an increasingly selfish society)とのことであります。
▼英国の政治メディアの記事を読んでいて気になるのは「左派(the left)」とか「進歩派(progressives)」という言葉がかなり頻繁に使われるということです。日本でも昔はそうだったですよね。革新都政とか保革伯仲などという言葉が実に頻繁に使われていたと思うのですが、いつの間にか消えてしまいましたね。英国ではこれがいまだに使われている。昨年(2010年)の選挙で敗れた労働党が模索したのが自民党(Lib-Dem)との間の「進歩派連立政権(Progressive
coalition)」だった。 |
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4)キャメロンの「華麗なる孤立」はどこまでもつのか
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12月9日付の英国の新聞各紙のサイトはどれも前日のEU首脳会議で独仏主導による新しいEU基本条約の改正にキャメロン首相が、欧州首脳ではただひとり「ノー」と言ったというニュースがトップを飾って大騒ぎでありました。
そもそもキャメロンはEU条約改正のどの部分にノーと言ったのかをおさらいしておくと、今回のユーロ危機を乗り切る過程においてフランスやドイツは金融取引税を導入するなどして、金融業界への規制を強めようと主張しており、条約改正にもそれが盛り込まれることになっている。キャメロンは首脳会議を前にして何度も「英国の国益を守る」ことを最優先すると言明していたのですが、彼のいわゆる「英国の国益」とは「ロンドンの金融業界の利益を守る」ということであったわけです。
英国の場合、新聞によって政治的なスタンスを明確に示す傾向にあります。例えば保守派でEUから距離を置くことを良しとするTelegraphは、キャメロンが一人になっても英国の利益保護を主張したのは「栄光ある孤立」(splendid isolation)だと言っているし、同じく保守派のThe Timesは「キャメロンの道は正しい(The Right Path)」としています。
キャメロンのやったことに批判的なのはGuardianです。「キャメロン首相は国よりも党を重要視した(Instead of putting Britain first, the prime minister prioritised the Conservative party)と言うGuardianの社説を簡単に紹介します。社説は
To stand alone against the world can sometimes be an act of heroic defiance. At other times, however, it can merely be proof of tragic foolishness.
たった一人で世界に立ち向かうという行為は場合によっては英雄的な反抗になることもあるが、そういでない場合、それは単に悲劇的な愚かさの証明でしかないということにもなり得るものなのだ。 |
という書き出しで始まっています。キャメロンのやったことは、保守派の新聞が言うような英雄的な行為ではないというわけですね。
Guardianによると、今回のEU首脳会議が示したのは、統一通貨を維持するためには加盟国間の財政面でのコーディネーションが不可欠であり、そのことが国よっては嬉しくない事態になることもあり得るということを加盟国がここに至ってようやく認めたということである。そしてそのことは20年前(1991年)のマーストリヒト条約(EUの創設を定めると同時に統一通貨ユーロの導入も謳った)が作られたときに分かっておくべきであったことなのだ、と言っている。ただ独仏主導の「新条約」は今回の危機を克服するには不十分であることは国債市場の反応でも明らかであり、キャメロンが拒否をしようがしまいが、ユーロ圏17カ国の間でさえもうまくいくとは限らない、としています。
が、それはともかくとして、キャメロンが「保護する」と主張したロンドンの金融業界(the City)は、そもそも保護しなければならないような業界なのか?仮にそうだとしても条約改正そのものに参加しないという姿勢がthe Cityの保護に繋がるものなのか?EU首脳会議がユーロ圏の解体を防止できないとしても英国が孤立することで危機の管理に役立つのか?答えはいずれもノーであり、
Not even Margaret Thatcher made that mistake. She may have been destructively wrong about Europe, but she always believed in sitting at the top table.
あのマーガレット・サッチャーでさえも(孤立というキャメロンが犯した)過ちは犯さなかったではないか。サッチャーのヨーロッパに対する考え方は破滅的に誤っていたが、彼女は常に主賓席に座っていることの大切さを信じていたのだ。 |
というわけで、キャメロンの「拒否権行使」は国際的な政治指導者のやることではなく、国内向けの政治的な動きにすぎず、保守党内の反ヨーロッパ分子に受けるためにチャーチルやサッチャーのようにふるまっただけなのだそうであります。つまりキャメロンは「英国のことより保守党のことを第一に考えた(instead
of putting Britain first, Mr Cameron prioritised the Tory party )と批判しています。
ただGuardianは、今回のキャメロンの行為は一人の政治家による過ちであると考えてはならず、最近の英国が持っている文化や制度が犯した過ちであると考えるべきなのだとして、真の意味での英国の国益が三つの大きな力によって封じ込められている(Britain's true national interest has become the prisoner of three inexorable forces)としています。
一つ目はユーロ導入計画そのものが経済よりもEU内の政治がリードするという誤った概念で行われたということであり、少しでも英国が係わっていればより良い制度の構築が可能であったかもしれないということ。
二つ目は英国内における余りにも大きな金融業界の支配と製造業の破壊という構造です。その結果として首相という地位にある人物が金融業界の利益にすぎないものを「国益」扱いするという「猥雑」(obscenity)としか思えないような行動をとるようになってしまった。
そして三つ目は、
And the third is the destructive Europhobia of the past 35 years, which -- fed by the rightwing press, the financial sector and political parties that were terrified of offending either of them -- has fanned a mood of contempt towards everything about a European project with which Britain should be fully engaged rather than sneering uselessly on the sidelines.
これまでの35年間におよぶ破壊的な反ヨーロッパ主義である。この反ヨーロッパ主義は右翼的報道機関と金融業界、それとこの二者を怒らせたくない政党によって醸成され、ヨーロッパに関係したものといえば何でも反対というムードを煽りたててきたのである。英国がフルに係わるべき計画に対しても傍らでせせら笑って見ているという役立たずの態度をとり続けてきたということである。 |
▼どちらかというと大衆紙に近い保守派のDaily Mailは、首脳会議後にサルコジ大統領と握手を交わそうと手を差し出すキャメロンをサルコジが無視する場面をとらえた連続写真を大々的に掲載している。これを見れば英国人ならほぼ誰でも「サルコジ野郎、ふざけやがって」となってしまうような報道ぶりです。
▼この件についてThe Timesが行った世論調査の結果が紹介されています。それによるとキャメロンの拒否権発動を支持する意見は57%で反対意見は14%、29%がdon’t knowとなっています。また53%が、今回の行動によって「キャメロンは英国のために立ち上がる気がある」(Cameron is willing to stand up for Britain)ことを示したと考えている。
▼今回のキャメロンの行動によってヨーロッパにおける英国の影響力が低下するという人は56%だから、半数以上が「影響力が低下してでも英国の立場を主張したキャメロンはよくやった」と思っているという結果になっているわけです。また私の英国の友人も「いま選挙をやったら間違いなくキャメロンが勝つだろう」と言っています。つまり今のところはGuardianのいわゆる「右翼メディアによる扇動」が功を奏しているということになる。
▼ただこれはあくまでも「今のところ」ということで、前回のむささびジャーナルでも紹介したとおり、これまでの英国経済があまりにも金融業に頼り過ぎているという意見、製造業の復活による輸出促進を主張する意見が強くなっているのでキャメロンの「金融業界益=国益」論がどこまで持つのかは疑問です(というのはむささびの意見ですが)。CBI(英国版経団連)なども製造業の復活を訴えています。もちろん親EUの立場が鮮明であった自民党(Lib-Dem)と保守党の連立がどのようになるのかもよく分からない。
▼最後に、ロンドンに戻ったキャメロンが12月12日の下院で、今回のことについて説明するステートメントを発表しています。その模様はここをクリックすると見ることができます。最初から与野党のヤジがうるさいことおびただしく、議長がたびたび注意しています。キャメロンのステートメントの文字起こしはここをクリックすると読むことができます。
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5)どうでも英和辞書
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A-Zの総合索引はこちら |
splendid isolation:華麗なる孤立
キャメロン首相がEU首脳会議で、独仏主導のEU基本条約改正に「英国の国益を守る」ということで反対し、27のEU加盟国の中で孤立した翌日の新聞(Daily Telegraph)が見出しで使ったのがsplendid isolationという言葉だった。もちろんキャメロンの行動を称賛する言葉です。splendidは「素晴らしい」とか「華麗な」というような意味ですよね。a splendid successは「素晴らしい成功」であり、a splendid sceneは「華麗な光景」というわけです。
ただ(ご存じの方も多いと思うけれど)英国でsplendid isolationというと歴史上の特殊な意味を持って使われる言葉です。ウィキペディアによると「19世紀後半におけるイギリスの非同盟政策を象徴する言葉」となっています。当時の英国は南アフリカにおけるボーア戦争で苦戦を強いられており、国際的には孤立傾向にあったのですが、カナダの議会で、たとえ英国が外交的に孤立してもカナダは英国を断固として支持するという趣旨の発言があったことを伝え聞いた当時のジョゼフ・チェンバレン植民地相がsplendid isolationという言葉を使って国民の士気を高める演説を行ったことから流行語となったのだそうです。日本語では「栄光ある孤立」とか「光栄ある孤立」などと訳すひともいるようです。
その後、孤立政策の続行が困難になった英国がついにsplendid isolationを捨てて外国との同盟を組むことになり、その相手となったのが日本であり、1902年に結ばれたのが日英同盟であったというわけです。いずれにしても英国が世界に冠たる「大英帝国」であったころに流行った言葉が21世紀の今日でも使われるということは、英国人のアタマの中にはまだ19世紀の英国が残っているということかも?
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6)むささびの鳴き声
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▼ちょっと古くて、前沖縄防衛局長のオフレコ不適切発言ですが、記者たちと酒を飲みながらの発言だったのですか?知らなかった。12月8日付の毎日新聞の「発信箱:沖縄失言から何を学ぶか」に書いてありました。つまり酒が入ってつい口から出た言葉だったってことのようなのです。知ってました?私がメディアを通じて見聞した範囲では「オフレコの懇談」の場での発言のはずだった。つまりそれなりにマジな場所での発言ということです。酒を飲みながら「局長、ま、一杯」とか言いながら「ところで局長、例の沖縄の件だけどさぁ」と絡まれて、つい・・・だとすると、それを取り上げてキャンキャン騒ぎたてるのはアンフェアという気がしません?私はそう思うけど。
▼「発信箱」を書いた布施さんという記者はまた「報道機関たるもの、前局長の失言を女性への侮辱だ沖縄蔑視だと非難するだけでなく、では沖縄のために自分たちは何をしてきたのかと問うべきではないか」とも言っています。彼によると、日本のメディアはアメリカ政府には文句を言わないと批判する声もあるのだそうです。
▼この指摘は尤もだと思います。「犯す前に・・・」という発言を不適切だとしてメディアがいきり立ったお陰でこの役人はクビになってしまったわけですが、それが沖縄の人々にとってどのようないいことをもたらしたのでしょうか?この局長がクビになろうがなるまいが沖縄の人が米軍の存在に悩まされる続けていることに変わりはない。防衛大臣の「問責決議案」も同じことです。沖縄の少女が暴行されたのも、元をただせば自民党(と一部は公明党)が長年進めた沖縄政策のお陰で起こったこと。その事件のことを「詳しくは知らない」と言った大臣と自民党、どっちが本当に沖縄を痛めつけたと言えるのか?
▼政治家や役人の「失言」をメディアが追及し、お陰で非難された方がクビになったりした例はたくさんある。最近では「放射能こわいぞー」なんてのもありましたね。これも「不謹慎」というわけで、発言した大臣は辞任せざるを得ない雰囲気になったけれど、それを演出したのはメディアです。それによって「不謹慎な大臣」が追放されて「言論の力」の怖さが十分に発揮されたけれど、放射能問題そのものの解決には何の役にも立っていない。
▼「女は産む機械」発言を追及して大臣を辞職に追い込んだこともあった。あのときのメディアによる「けしからん」キャンペーンのお陰で日本の女性の地位が少しは上がったのか?手元に主なるメディアが作っている、あるクラブ組織の会員名簿があったので、東京で手に入る普通の新聞でこのクラブの会員記者が何人いるのか数えてみました(私もヒマ人ですね)。全部で437人だった。そのうち女性は17人、全体の3.8%です。在京テレビ局の場合は合計243人で女性は16(6%強)人だった。
▼もちろんこのクラブの会員名簿に出ているのは、メディアで仕事をする人の中でもほんの一握りの方たちです。肩書きをみると多くの方が「長」とか「委員」などがついており、社内でもかなり上の方の人たちであることが分かる。だからこのクラブの会員ではないジャーナリストには女性もたくさんいるのかもしれないけれど、この組織に限るならば、女性の割合は100人中4~6人です。そんな世界に住みながら「女性蔑視」に非を鳴らすのですか!?
▼「原爆投下は仕方なかった」発言の大臣もメディアの袋叩きにあって辞めさせられました。でもメディアはこの大臣の発言の有無にかかわらずアメリカや世界に対して「原爆なんて許せない」と抗議でもしたのか?あの大臣発言の何十年も前に、記者会見という場で、天皇陛下が同じような「やむを得ない」発言をしたときに天皇を糾弾する論陣でも張ったのか?
▼というわけで、これらの政治家やお役人はメディアのリンチにあって消えて行ったけれど、あとに残るのは失言の対象になった状況には何の変化も進展もない虚しさだけ。メディアによる報道を目にし、耳で聴いて怒った、当事者ではない人々だけが溜飲を下げたかもしれないし、新聞やテレビは、それなりに存在感を示したつもりなのかもしれないけれど・・・。
▼鹿児島県・指宿で暮らす「むさとも」(「むささびジャーナルをお送りしている友人」の略)から頂いたメールに「関東大震災後の社会不安が太平洋戦争まで突き進んだように、今回の社会不安がどこまで行くのか、そのことが心配」と書かれてあったのを読んではっとしました。私は上に挙げた理由から、「社会不安」を引き起こす要素の大きな部分をメディアが占めていると考えています。
▼政治家や役人がダメだから震災復興が遅れている、というニュアンスの報道だけをやったあげく「XX政権を支持しますか?」と聞かれれば誰だってもろ手を挙げて支持しますとは言えない。で、日本人は、自分たちはダメな政府・政治家・役人しか持てないという不満だけを抱えるようになり、それが社会不安につながる。そうなると「XX維新の会」の出番ということになる。
▼そのような「不安」の源流を探っていくと新聞やテレビの報道に行き着くと思うのですが、そのような作業はメディアはやらない。自分たちは世の中の諸悪を告発する存在であって、自分たち自身が諸悪の根源(の一部)なのかもしれないとは思いもよらない(思いたくない)からです。内閣支持率を伝えるのもいいけれど、メディア支持率のような報道もやるべきですよね。
▼指宿の友人によると、大震災や原発事故の影響が指宿にも出てきているとのことで、旅館やホテルはいつもと違って満杯なのに「街の飲み屋に人影はあまりありません」とのことです。また沖縄でも同じようなことが起こっているとのことで、沖縄の人々は「一緒に悲しむ」ので飲みには出かけないのだそうであります。前沖縄防衛局長や彼と一緒に酒を飲みながら「不適切発言」を引き出したジャーナリストの皆さんはたぶん沖縄の人ではない!?
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