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305号 2014/11/2
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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

11月になりました。一年中で最も目立たない月であります。12月のための準備期間という感じで哀れな気がしないでもない。でも空がとても高く見える月でもあるのですよね。

目次

1)大使館の値段
2)生活満足度の国際比較
3)北星学園大学問題:Guardianの報じ方
4)おとり取材の人権侵害?
5)どうすりゃいいんだ、UKIP
6)テレサ・メイの研究②:サッチャーかメルケルか?
7)どうでも英和辞書
8)むささびの鳴き声
*****
バックナンバーから

1)大使館の値段

むささびはロンドンにある日本大使館(上の写真)には行ったことがないのですが、ピカデリー(Piccadilly)というところにあるのだそうですね。SPEAR'Sという英国の雑誌がロンドンにある外国大使館の不動産価値なるものを調べて特集しているのですが、日本大使館は同誌が評価する「1億ポンド以上クラブ」(£100,000,000-plus club)の一つなのだそうであります。要するに最も値段の高い地区に存在するという意味なのですが、この「クラブ」の会員国と所在地区は次のようになっております。

Australia Australia House Strand WC2B 4LA
Canada Macdonald House 1 Grosvenor Square W1K 4AB
Germany 23 Belgrave Square/Chesham Place SW1X 8PZ
Japan 101-104 Piccadilly W1J 7JT
Netherlands 38 Hyde Park Gate SW7 5DP
Russia 13 Kensington Palace Gardens W8 4QX
Saudi Arabia 30 Charles Street Mayfair W1J 5DZ

1億ポンドは現在のレートでいくと177億円ということになる。これはそれぞれの大使館の建物を住居として売り買いした場合の値段のことです。もちろんこんなことで驚いちゃいけません。アメリカ大使館が現在新築中の大使館なんか6億ポンドですよ、アンタ。文句あっか!という感じですね。今のところはグロブナー・スクエア(Grosvenor Square)という場所にある。これを5億ポンドで売却、バタシー(Battersea)地区のNine Elmsに巨大な建物を新築しているのですが、なんと「お堀」(moat)までついているってんだからすごいじゃありませんか。2017年に完成の予定だそうです。

失礼ながらいちばん安いところにあるのがガナーズベリ(Gunnersbury)というエリアにある北朝鮮大使館で75万ポンドと見積もられている。ウィンブルドンには英連邦の一つであるツバル(Tuvalu)共和国の領事館があり、価格は北朝鮮と同じく75万ポンドなのですが、これはこの国の借金の11%にあたるのだそうで、The Economistなどは「国富に対して最も不釣り合いな金額かもしれない」(least proportionate to national wealth)と言っている。

東京・千代田区一番町にある駐日英国大使館の敷地面積は約1万坪(3万5000平米)だそうですが、この土地の地主は日本政府で、英国政府は借地人なのでありますね。で、昨年末の報道によると、この敷地の2割(2000坪:7000平米)が日本側の所有になる。つまり英国大使館としての敷地が2万8000平米と小さくなるということです。

▼朝日新聞の記事によると、日本政府の所有となる約7000平米の路線価格は140億円。ということは、日本政府は英国政府からの借地料(年間約8100万円)が入らなくなる代わりに140億円相当の土地を所有することにもなる。これを高値でどこかのホテルに売れば・・・結構な収入になりますよね。また英国側は560億円相当の土地の持ち主となるわけです。3億3000万ポンドです。ロンドンの「1億ポンド以上クラブ」なんて、可愛いものであります。
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2)生活満足度の国際比較

社会問題を人びとの意識を通じて研究するアメリカのピュー・リサーチ(Pew Research)については、むささびでも何度か取り上げてきましたが、最近(10月30日)の発表の中でThe Economistなどが注目したものに43カ国の人びとを対象にした生活満足度(Life Satisfaction)についての調査結果があります。詳細についてはここをクリックすると見ることができるのですが、最も顕著な傾向を一言でいうと
  • 生活満足度の点では新興経済国の国民が先進経済国の人びとの意識に追いつきつつある。
    People in Emerging Markets Catch Up to Advanced
となります。ここでいう「先進経済国」とは欧米、日本、韓国など10カ国であり、「新興経済国」には中国、ベトナム、インドネシアなどのアジア諸国、メキシコ、ブラジルなど南米、それにロシアやエジプトなど全部で24カ国、さらに発展途上国としてエルサルバドル、ケニア、バングラデッシュなどの9カ国が調査対象になっています。調査期間は今年の3月から6月、対象となった人数は合計で約4万8000人です。


「生活満足度」という、どちらかというと個人的な感覚の領域に入るのではないかと思われる事柄をどのようにして数値化したのか?ピュー・リサーチでは、調査対象となった一人一人に自分の生活レベルを低い順から0~10の段階に分け現在どの地点にいるかを質問し、7~10と答えた人びとを「満足度が高い生活」を送っていると想定したのだそうです。そしてそれぞれの国にそのようなレベルの意識を持った人びとが何パーセント程度いるのかを調べて比較したわけです。それが上のグラフなのですが、2007年と2014年を比べるとそれぞれ次のように変化していることが分かる。
  • 先進国(advanced economies):57%から54%に下がっている。
  • 新興国(emerging markets):33%から51%へ上昇している。
  • 発展途上国(developing economies):16%から28%へ上昇。
満足度が高い人の割合が、2007年の時点では先進国と新興国の間の差が24ポイントもあったのに、2014年ではこれが3ポイントにまで縮小しているのが目立ちます。最近の新興国の経済がやや停滞気味であり、かつて囁かれたような先進国との「合流」(convergence)の可能性が遠くなったと言われているけれど、そうは言っても新興国の人びとは満足度が高いとThe Economistは言っている。


それぞれのグループを詳細に見ると、先進国の中で人びとの満足度ナンバーワンはイスラエルの75%、次いで米(65%)、独(60%)、英(55%)となっており、日本は10カ国中で9位の43%、最下位はギリシャの37%となっています。ただこれらの数字を7年前(2007年)のものと比較すると、ドイツは47→60=+13と最も大きな伸びとなっている。2位はイスラエルの69→75、3位が日本で41→43でいずれもプラス傾向になっているのですが、スペインが66→54と12ポイントも下がっている。

先進国では2007年との比較でドイツとスペインが極端な増減を示しているけれど、そのほかの国は大して変わらないという数字が出ているのに対して、ドラマチックとも言えるのが新興国でトップ5がいずれも20%以上の増加となっています。
インドネシア 23→58%(+35)
中国 33→59%(+26)
パキスタン 19→51%(+22)
マレーシア 36→56%(+20)
ロシア 23→43%(+20)

インドネシアや中国、マレーシアではほぼ6割の人が「7年前に比べると生活が良くなった」と感じているということで、それ自体すごいことですが、そのように感じている人の数の増え方を見ると、特にアジアの新興国の人びとの生活水準が実感として劇的に上昇しているということが分かります。

ピュー・リサーチでは、そのほか、それぞれの国について一般的な傾向として
  • 高所得層の方が低所得層よりも満足度が高い。
  • モノをたくさん持っている層の方が少ない方よりもより幸せ。
  • 男性より女性の方が幸福感が高い。
  • 未婚・非婚者より既婚者の方が幸福度が高い。
  • 将来について最も楽観的なのはアジア人、いちばん悲観的なのは中東の人びと。
などが言えるとしています。

▼日本人の生活満足度はずいぶん低いのですね。経済が理由なのでしょうか?ビートルズの曲に"Money can't buy me love"というのがあったいけれど、ピュー・リサーチの調査結果についてThe Economistは、"Money can buy me love" というのが正しいというのが現実世界だと言っています。
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3)北星学園大学問題:Guardianの報じ方
 

10月13日付のGuardianに
という記事が出ています。イントロは次のように書かれている。
  • 学者をターゲットにした脅迫キャンペーンが行われる中で自民党の政治家に対して極右勢力とは距離を置くべきだという声が出ている。
    Calls for LDP politicians to distance themselves from extremists come amid campaign of terror targeting academics
自民党の高市早苗、稲田朋美、山谷えり子の各議員が極右勢力と親密な間柄であり、反韓国人団体の幹部と記念写真を撮ったりして顰蹙を買っている・・・という内容なのですが、イントロで言っている「学者をターゲットにした脅迫キャンペーン」(campaign of terror targeting academics)というのは、むささびジャーナル302号でもちらっと紹介した北星学園大学の元朝日新聞記者に関係しています。この人を辞めさせろという脅迫が大学当局に殺到しているという、あの件です。

最近の報道では、北星学園大学は結局、この人を雇うことを止めることに決めたのですよね。Guardianの記事はこの件について上智大学の中野晃一教授、 法政大学の山口二郎教授のコメントを掲載しています。中野教授は、
  • 右翼修正主義者による憎悪犯罪に対して現政府は曖昧な態度で臨んでいる。政府が北星学園大学脅迫の音頭をとっていることはないにせよ、右翼による脅迫についての政府の態度は批判される必要がある。
    [The government’s] lukewarm attitude towards hate crimes by the revisionist right is in itself a reason why we need to criticise the government’s handling of this [intimidation] issue, even if it isn’t directly orchestrating what is happening.
と語っています。また山口教授は
  • 安倍首相と政府関係者の態度が、右翼勢力が日本の帝国主義の歴史に批判的な人間を厳しく攻撃することを奨励しているようなものだ。
    Abe and other leaders’ outlook is encouraging the rightwing to conduct even harsher attacks on those who are critical of the history of the Japanese empire.
と語り、北星学園大学が右翼勢力に屈してしまえば、学問と言論の自由が犯されることになるという趣旨の警告をしています。

この記事に出てくる中野、山口両教授によるコメントは、おそらく10月6日に東京の外国人特派員協会で行った両教授による記者会見からとったものなのではないかと思います。この記者会見の動画はここをクリックすると見ることができますが、使用言語が英語です。会見の抄訳はここをクリックすると日本語で読むことができます。

▼Guardianの記事には読者からの投稿が出ているのですが、その中に記事を書いたこの新聞の東京特派員に対して「あんたは間違っとる!」という趣旨のことを滔々と述べているものがあります。というより、投稿欄がほとんどこの人の文章で埋められてしまっている。いわゆる右翼的な考え方の日本人からの投稿だと思うのですが、なぜか延々と日本語で書いてある。この人、英語もできるとしか思えないような文章(英語)も書いているのです。どういうつもりなのですかね。

▼「投稿」といえば、10月31日付のYahoo Newsというのに「元朝日記者、来年雇用せず」という北星学園大学の決定に関する記事が出ていたのですが、その記事に対する投稿欄は、この記者対する悪口雑言で埋め尽くされているという感じでしたね。「身から出た錆だから同情の余地はない」「学生のことを思えば、もっと早く、自分から身を引くべきだったのでは?」「学生にロクでもないこと吹き込んでいるんじゃないかと勘繰るよ」等など。Yahoo Newsへ投稿される意見を見ているとみんな同じなのですね。

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4)おとり取材の人権侵害?

ちょっと古いけれど、上の写真は9月27日付のサンデー・ミラー(Sunday Mirror)の第一面です。
  • TORY MINISTER QUITS OVER SEX PHOTO
という白抜きの見出しがほぼ全スペースを占めています。「保守党大臣、セックス写真で辞任」というわけです。この人はブルックス・ニューマーク(Brooks Newmark)という人で、「市民社会担当大臣」(Minister for Civil Society)という地位にあった。この人は市民社会担当大臣として、女性の議員の数を増やそうという "Women2Win" というキャンペーンに取り組んでいたのですが、このスキャンダルのおかげで大臣職の辞任のみならず来年(2015年)の国会議員の選挙にも出馬しないことを表明しています。

何があったのかというと、この人に「ソフィー」と名乗る「女性」からメールで接触があり、いわゆるソシアルネットワーク(SNS)を通じて交際を始めたのが今年の7月のこと。その後のやりとりの中でニューマーク大臣は自分自身のものも含めた性的にいかがわしい写真を送りつけるなどして交際を続けた。メールでは「ソフィー」は保守党の活動家だと名乗っていたのだそうです。ところがそのいかがわしいやりとりがサンデー・ミラーにすっぱ抜かれてしまい、政治家としての地位を棒に振ることになってしまったということです。ソフィーというのは仮の名で、実はこれがフリーの記者(男性)で、国会議員によるSNSの利用をテーマに「取材」をする中でニューマーク大臣と接触するようになり、「スクープ」のネタまで入手してしまったというわけです。

この記者は、このネタを最初はThe Sunに持ち込んだのですが断られ、最終的にはサンデー・ミラーへの売り込みに成功したということですが、ミラー紙はこの記事を自社の記者の名前を使って掲載したのだそうです。だから実際の記者の名前はいまだに分かっていない。この情けないスキャンダルが故に人生を棒に振ることになってしまった(というのは大げさか?)ニューマーク氏は5人の子供がいる家庭人(56才)なのですが、この件についての彼のコメントは読むだに痛ましい。
  • 延々と続くメディアによる自分の個人生活にまつわる過去のエピソードへの侵入によって家族は耐えられないような負担を負わされている。
    The continued media intrusion into past episodes in my personal life is placing an intolerable burden on my family.
  • メディアに対して再度訴えたい。私の家族のプライバシーを尊重すること、自分の過ちが故に彼らが負ってしまった心の傷を癒やすためのチャンスを私に与えて欲しい。
    I again appeal to the media to respect my family’s privacy and to give me a chance to try to heal the hurt I have caused them.
  • すべては私が悪いのであり、自分がやったことについては全責任を負うつもりである。
    I have no one to blame but myself and take full responsibility for my own actions.
ただ・・・むささびがこの話題を紹介するのは、「いい年をしたスケベ親父のなれの果て」を話題にしたいからではありません。「こんな取材のやり方が許されるのか?」という素朴な疑問を皆さまにぶつけてみたかったからです。まずサンデー・ミラーですが、編集長のロイド・エンブリー(Lloyd Embley)が
  • 市民社会担当大臣であり、女性の政治参加を促進しようというWomen2Win活動の創立者でもあるというニューマーク氏の立場からしても、(今回の報道は)明らかに公共の利益にかなっていると強く信じている。
    We strongly believe there was a clear public interest because of Mr Newmark’s roles as Minister for Civil Society and co-founder of Women2Win, an organisation aimed at attracting more Conservative women to parliament.
というコメントを発表している。

一方、保守党議員のマーク・プリチャード(Mark Pritchard)は、今回のミラーのやり方は明らかに「罠」(entrapment)であり許されるものではないとして
  • 彼ら(サンデー・ミラー)の行動を徹底的に調査することこそ公共の利益にかなっている。
    It is in the public interest that their actions are fully investigated.
と語り、メディア取材に関する苦情処理機関である「独立報道基準機構」(Independent Press Standards Organisation:IPSO)に訴えると言っている。英国にはこの種の苦情処理組織としてPress Complaints Commission(PCC)というのがあったのですが、何年か前に新聞記者による電話盗聴事件が起こったときに新聞業界に対して弱腰であるという批判を受けて独立機関のIPSOにとって代わられた。マーク・ピチャード議員は、今回のサンデー・ミラーの報道についてIPSOがどのような判断を下すか試金石になるだろうと言っている。

新聞業界の専門媒体であるPress Gazetteによると、IPSOが定める「編集者規範」(Editors’ Code)は「誰でも自らの個人生活・家庭生活が尊重される権利がある」(Everyone is entitled to respect for his or her private and family life)としたうえで、おとり取材については次のように定めています。
  • 不正告知や身分の虚偽行為(代理人もしくは仲立人による行為も含めて)は、公共の利益にかなう場合で、しかも他の手段では(報道)材料を得ることができないという場合においてのみ許されるのが一般的である。
    Engaging in misrepresentation or subterfuge, including by agents or intermediaries, can generally be justified only in the public interest and then only when the material cannot be obtained by other means.
むささびの翻訳がひどすぎて何のことだかよく分からないかもしれないけれど、要するに「おとり取材」は場合によっては許されるという意味に取れますよね。少なくとも「絶対悪」ではない、と言っている。

▼「おとり取材」は違法ではないようなのですが、そうだとしてもサンデー・ミラーのケースはちょっと趣味が悪いんでない?

▼ちょっと可笑しかったのは、グーグルの検索に「おとり取材」という言葉を入れたら最初のページ出てきたのは殆どが英国のメディアによるものだったということ。「おとり取材で八百長が発覚」、「FIFAの理事、おとり取材にひっかかる」、「おとり取材でオックスフォード大学への裏口入学が暴かれる」etc。日本のメディアはどの程度この方法を使うのでしょうか?
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5)どうすりゃいいんだ、UKIP
 

ロンドンからクルマで東へ1時間ほど走ったところにロチェスター(Rochester)という町があるのですが、いま英国の政治メディアの注目が、11月20日にこの町で行われる補欠選挙(by election)に集まっています。むささびジャーナルでも何度か触れた英国独立党(UK Independence Party:UKIP)の候補者にどのくらいの票が集まるのかということです。この補欠選挙は、それまでは保守党の議員であった人物が9月末にUKIPに鞍替えすると発表したことが原因で行われるものです。

まずUKIPという政党を簡単に説明しておくと、設立は約20年前の1993年、当の綱領には「民主的かつ自由主義的政党」(democratic, libertarian party)と書いてあるのですが、「自由主義的」というのが "libertarian" という英語をむささびが勝手に日本語にしただけである点にご注目を。libertarianというのは、政府に対する個人絶対主義のような発想ですよね。アメリカでは共和党の右派がこの種の考え方をしていると思うけれど、英国の場合は保守党の右派がそれにあたる。具体的な政策としてはっきりしているのは、英国のEUからの離脱促進です。

実は約1か月前の10月9日にも東イングランドのクラクトン(Clacton)という町で補欠選挙が行われ、保守党を離脱したUKIPの候補者が圧勝、UKIP初の国会議員が誕生するという結果となっています。この選挙におけるUKIPの得票率はほぼ60%(21,000票)で保守党の候補者の25%(約8700票)、労働党の11.2%(4000票)を大きく引き離して勝ってしまった。

クラクトンの補選は議員が所属政党を変更したことによるものなのですが、同じ10月9日、北イングランドのヘイウッド(Heywood)という町で行われた補欠選挙は、それまでの国会議員(労働党)が死亡したことによるものだった。その結果、11,633票を獲得した労働党の候補者が勝つには勝ったけれど、第2位のUKIPの候補者も11,016票を獲得、文字通り「首の差」の勝利だった。クラクトンの補欠選挙の場合は保守党の地盤で行われたもので、有権者が保守党に嫌気をさしたという説明がつくのですが、ヘイウッドは労働党の地盤だった選挙区で、そこでもUKIPが善戦したことが注目されたわけです。

10月25日付のObserverが伝える世論調査結果によると、自分の選挙区でUKIPが勝てる可能性があるのならこれに投票するという人が31%にのぼっている。「勝てる可能性があるのなら」ということは、自分が投票しても勝てない「死に票」(wasted vote)になるのはイヤだけど、そうでないのなら支持してもいいということですよね。世論調査によると、保守党支持者の33%、自民党支持者の25%、労働党支持者の18%がこのような意見を持っている。つまりいちばん痛手を受けるのは保守党かもしれないけれど、労働党支持者の中にもほぼ2割のUKIP支持者がいるということですよね。

英国メディアは来年5月に向けて選挙モードに入っている感じなのですが、最近の政党支持率は
  • 労働党:33%
  • 保守党:33%
  • UKIP:18%
  • 自民党:6%
  • 緑の党:4%
となっている。際立つのはUKIPの台頭と自民党の退潮ですが、ロチェスターにおける補選でUKIP候補が勝ったりすると(その可能性はかなり高い)保守党からの鞍替え候補者が今後も出てくる可能性もあり、キャメロンとしては頭の痛いところであります。いまのところ保守党と労働党は全く肩を並べているのですが、党首の人気という点ではキャメロンが労働党のミリバンドを引き離している。2015年の選挙では、結局保守党が勝つかもしれないけれど、単独過半数というわけにはいかず、数年前には思ってもみなかった保守・UKIPの連立ということもあり得る。

それにしてもUKIPの支持者とはどのような人びとなのか?"Revolt on the Right" という本は最近の英国政治における「ラディカル右派」について語っているのですが、UKIP支持者が保守党の現状に嫌気がさしている保守的な人びと(例えば退役軍人とか)だけと考えるのは全くの間違いで、世の中の最近の変化についていけないでいる人びと(victims of social and economic change)なのだそうです。
  • 典型的なUKIP支持者は白人、ブルーカラー、そして白髪頭なのだ。すなわちUKIPはほかのどの政党と比較しても労働階級に支持基盤を持っている。
    The typical Ukip supporter has a white skin, a blue collar and grey hair; indeed Ukip’s social base is more working class than that of any of the major parties.
ということです。

▼英国という社会が1980年代に経済基盤を製造業からサービス産業へと移行してから長いのですが、その間にそうしたトレンドについていけない人びとの声を代表するような政党がなかったということですね。労働党はブレアによって明らかに「ミドルクラス」の党になってしまった。サッチャリズムというのがあるにはあったけれど、彼女も結局のところは庶民的な存在ではなかった。UKIPのファラージ代表は写真に写るときは必ずと言っていいほど、パブでビールを飲んでいる。間違いなくイメージ戦略です。

むささびジャーナルの関連記事
英国独立党の不気味
UKIPの台頭とEU離脱の可能性

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6)テレサ・メイの研究②:「サッチャー」か「メルケル」か?
 
前号に続きキャメロンのあとの保守党党首になる(かもしれない)テレサ・メイの研究です。メイは「サッチャー以来最もパワフルな保守党の女性政治家」と言われているのですが、この際、マーガレット・サッチャーと比較してみます。

9月末に行われた保守党の党大会の模様を伝えるDaily Mailのサイトは次のような書き出しで始まっています。
  • 本日、テレサ・メイは、イスラム過激思想から英国の価値観を守ることを、断固として保守党支持者たちに訴えた。まさにマーガレット・サッチャーを彷彿とさせるものであった。
    Theresa May today echoed Margaret Thatcher with a stark rallying cry to Tory activists to defend British values from Islamist extremism.
Daily Mailは、ちょうど30年前の1984年の保守党大会で、サッチャー党首が行った演説と2014年のメイの演説を並べて比較しています。

1984:MARGARET THATCHER 2014:THERESA MAY

動画

動画
我が国は最近の中でもおそらく最も試練に満ちた時代に直面しています。過激主義者とそうでない人びとの間の戦いということです。我々はこれまでと同様に強者のみならず弱者のためにも戦うのです。
The nation faces what is probably the most testing crisis of our time, the battle between the extremists and the rest. We are fighting, as we have always fought, for the weak as well as for the strong.

我々は偉大にして善なる主義・主張のために戦うのです。我々はそのような主義を打ち破ろうとする勢力の力と権力に対抗して戦うのです。我が政府が弱体化することはありません。この国はそのような挑戦を受けて立つのです。民主主義は勝利します。
We are fighting for great and good causes. We are fighting to defend them against the power and might of those who rise up to challenge them. This Government will not weaken. This nation will meet that challenge. Democracy will prevail.
圧倒的多数の英国民が自由を望んでいることを我々は知っています。危険からの自由、恐怖からの自由、偏見からの自由、差別からの自由、そして宗教の自由であり、自分たちの生活を続ける自由です。
We know the overwhelming majority of British people want to be free. Free from danger. Free from fear. Free from prejudice. Free from discrimination. Free to practise their religion... Free to get on with their lives.

我々は隔離主義やセクト主義と対決しなければなりません。あらゆる形態の過激思想にも直面しなければなりません。自分たちの価値観のために立ち上がるのです。なぜならこれまでと同様に、そうした価値観、英国の価値観こそが最終には勝利を収めるからです。我々は勝利するのです。
We must confront segregation and sectarianism. We must face down extremism in all its forms. We must stand up for our values. Because, in the end, as they have done before, those values, our British values, will win the day, and we will prevail.

サッチャーが「断固戦う」と言っている過激主義者(extremists)はあの当時盛んだったIRA(アイルランド共和国軍)という「テロ集団」のことであり、メイが「宗教の自由」と言っている相手はイスラム過激派のことです。両方とも自由とか民主主義という「英国の価値観」(British values)が「勝利する」(prevail)と言い切っている点では言葉遣いが似ていることは確かですね。

話を進める前にもう少し二人について類似点と相違点をリストアップしておきます。
  • 生まれた場所サッチャーが生まれたのはロンドンの北約250キロにあるグランサム(Grantham)という町ですが、メイは南イングランドの海岸の町、イーストボーン(Eastbourne)に生まれている。経済的には明らかにメイの方が豊かな地域の出身です
  • 家庭環境:サッチャーさんは乾物屋の娘、メイは教会の聖職者の娘(一人っ子)として生まれている。ただサッチャーさんの父親は聖職者ではないもののかなり厳格なメソジスト派のキリスト教徒ではあった。メイの父親はAnglican(英国国教会)の聖職者だから、いわば典型的な「いい家庭」であったということができる。
  • 教育:サッチャーさんは普通の公立小学校を経て、中学・高校は公立ではあるけれど秀才が通う地元の女子校(グラマースクール)に進み、オックスフォード大学へ。メイの場合、どの略歴を見ても、幼少の頃から公立・私立の両方の教育を受けていることが特筆されている。彼女もまたグラマースクールからオックスフォードへ進んでいる。オックスフォードにおけるサッチャーさんの専攻は化学、メイは地理。二人に共通しているのは大学の保守協会(Oxford University Conservative Association)という政治団体に所属、将来は政治家になることを志していたという点です。
英国という国や社会に関心のない人には分かりにくいかもしれないけれど、「英国の価値観」を掲げる点では似ていても、このふたりはかなり「似て非なるもの」同士であると(むささびは)思います。サッチャーさんが労働者階級から身を起こし、刻苦勉励の末に一流大学にまでたどり着いたのに対して、メイの方は世間的にも恵まれた暖かい家庭でぬくぬく・のびのび育ち、頭も良くて、ごく当たり前にオックスフォードへ進学したという感じです。サッチャーのことを「労働者階級」という場合、必ずしも父親が工場労働者であったとか、労働党の支持者であったとかいうことを言っているのではありません。「庶民」という表現のほうがピンとくるかもしれない。

サッチャーさんは25才のとき(1950年)初めて国会議員に立候補(落選)するけれど、メイが立候補(落選)したのは36才のとき(1992年)だからメイの方がかなりの遅咲きのように見えるけれど、メイの場合は国会議員の前に30才のときに区議会議員になっているのだから政治の世界に身を置くことになった年齢は大して変わらない。

でもむささびが多少の想像も含めて語りたいと思うのは、この二人の女性政治家の年齢差です。メイは1956年生まれでサッチャーさんは1925年だからほぼ30才違うのですね。私が注目したいのは彼らが自分の人生において眼にしてきた「英国」という国や社会の違いです。

サッチャーさんが20才のときに第二次世界大戦が終わっている。おそらく彼女が社会的な事柄に関心を持ち始めたであろう14~15才のころ英国はアメリカと肩を並べる世界の大国として、「肩で風を切る」ような存在であっただろうし、英国人もそのように思っていたであろうと想像するのです。しかし彼女が国会議員に立候補するころの英国は大国の座が揺らぎ、それまで支配していたエジプトからの撤退(1956年)さえも受け入れざるを得ない状況だった。英国人が超大国の人間としての自信を失い始めたころにサッチャーさんはオックスフォードを卒業し、政治の世界に身を置くことになる。

と、そのころにテレサ・メイが生まれている。彼女が10代半ばから21才でオックスフォードを卒業、金融関係の職場で働いた10年余りの間に、英国は「念願の」欧州共同体入りを果たす一方で、経済力は確実に低下してドイツや日本のような敗戦国の後塵を拝して、「英国病」だの「欧州の重病人」などと揶揄される存在になる。そしてテレサが19才のときに(1975年)サッチャーが保守党の党首に就任、4年後にはサッチャー政権が誕生している。戦後の英国が築いてきた体制(大英帝国から福祉国家へという道)を真っ向から否定するような政治家(しかも女性)をリーダーとする体制が始まった。テレサが生まれてこの方見てきたのはそういう英国だった。

テレサに関する記事はたくさん出ているのに、サッチャーとの比較とか彼女自身のサッチャー観のようなものはほとんどない。「格が違う」ということなのかもしれないけれど、7月27日付のObserverに出ていたテレサ・メイ論のような記事の中で、ある保守党議員が「匿名」を条件に
  • (テレサ・メイは)女性であることを武器にすることがない。サッチャーにはあらゆる場面でそれがあった。テレサはほとんど「性別なし」なのだ。
    She doesn't use sex as a weapon. Thatcher did, by all accounts. Theresa is almost asexual.
と言っているのが例外のような感じです。この匿名議員は政治家としてのテレサ・メイについて「成熟、賢明、経験、有能などの言葉があてはまるが、暖かさとか個性のようなものに欠けている」と言っています。

「女性」といえば、サッチャー語録の中に「ウーマンリブに借りはないわ」(I owe nothing to women's lib)というのがありましたよね。サッチャーは保守党史上初の女性党首であったし、英国史上初の女性首相であったのだから、本人がそれを意識しようがしまいが、常に「女性」ということがついて回っていた。「ウーマンリブに借りはない」というのは、首相として「女性のために」仕事をすることはないという意味で言ったことなのだろうと思います。

反対にテレサ・メイは、女性の保守党議員を増やすためのキャンペーンを立ち上げた際に女性運動で知られるFawcett SocietyのTシャツを着て記念撮影したりしているし、保守党の幹事長時代に、男世界で知られる保守主義者のクラブ組織(Carlton Club)の名誉会員になることを拒否したこともある。


彼女の同僚議員の多くがテレサと似ている政治家として挙げるのはドイツのメルケル首相です。「頼りになる」存在ということなのですが、「感情を表に出さない」(stolid)が難しい決定を下すために必要な「明確な見通し」(clear-sighted)能力にも恵まれているということなのだそうです。

現在のところキャメロン後の保守党党首の候補者として噂されているのは、テレサ・メイ、ボリス・ジョンソン(現ロンドン市長)、ジョージ・オズボーン(現財務大臣)の3人なのですが、世論調査による人気度はジョンソン(32%)、メイ(30%)、オズボーン(18%)の順になっている。

▼テレサ・メイが保守党の党首になるということは、キャメロンが来年の選挙で負けてクビになるということですよね。誰に負けるのかというと、エド・ミリバンドの労働党です。ただ保守党内部でどのような勢力がキャメロン降板に動くのかとなると、これが案外単純ではない。普通に言われるのは右派グループです。キャメロンの対EU弱腰姿勢とか、彼のどちらかというと進歩主義的な部分が気に入らないと思っているグループです。ではその人たちがテレサ・メイという、キャメロン以上に進歩主義的なリーダーを担ぐだろうか?という疑問です。彼らが担ぐのはロンドン市長のボリス・ジョンソン(50才)でしょう。

▼しかし・・・選挙で労働党が勝つということは、英国人の意識がサッチャー的な戦闘的保守主義から離れているということではないか、とむささびは思うわけです。メディアの世界ではUKIPのような右寄り路線が受けているように見えるけれど、英国人が求めているリーダーはテレサのような賢いタイプの人間なのではないかと思うわけです。
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7)どうでも英和辞書
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kawaii:カワイイ


10月22日付のBBCのサイトに英語辞書のCollins English Dictionaryの2014年版が発行されたという記事がでているのですが、それによると最新版の収容言語総数は72万2000語で一冊の英語辞書としては最も大きいのだそうです。その72万なにがしの中には今回初めて収容された新しい「英語」が5万語ある。そのうちの一つが "kawaii" で、説明は次のように書かれている。
Collinsの英語辞書は1819年にスコットランドのグラズゴーで出版されたのが最初らしいのですが、"kawaii" 以外にどんな日本語が収容されているのかと思ったら "umami", "kaizen", "koban"(「小判」という意味と「交番」という意味がある)等などいろいろあります。もちろん "tsunami" はあるのですが、「津波のような」という意味で "tsunamic" というのがあるのは知らなかった。「津波のように大きな波」は "tsunamic wave" となる。それから "otaku" の説明として「コンピュータ好き」(a computer enthusiast)以外に
  • a person absorbed in a very particular technical hobby who is generally considered to be socially inept
というのがあったのにはちょっと笑えましたね。「技術を要するような特殊な趣味に没頭してしまっている人」としたうえで「一般的には社会性がないと考えられている」(generally considered to be socially inept)ということです。
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8)むささびの鳴き声
▼6つ目に紹介したテレサ・メイとマーガレット・サッチャーですが、この演説を行ったとき、サッチャーは59才、メイは58才。偶然とはいえほぼ同じ年齢です。それぞれの「動画」を見てもらうと分かると思うのですが、確かにサッチャーが政治家という感じなのに対して、メイは校長先生という気がしないでもない。さらに注目すべきなのはこの演説をしたときのサッチャーの表情です。保守党大会における演説が行われたのは1984年10月13日午前9時半頃なのですが、前日(10月12日)の午前3時頃、サッチャーら党幹部が宿泊していたブライトンのホテルが爆破され、サッチャー本人は難を免れたのですが、幹部2人が殺された。この演説は爆破の翌日に行われたものであることを知った上でサッチャーの表情を見て欲しいと思うわけです。

▼この爆破はアイルランド共和国軍(IRA)がサッチャー殺害を目的として仕掛けたものであることは後日のIRAによる犯行声明でも明らかです。英国による北アイルランド「占領」に抗議するという内容の声明だったのですが、「これからも同じことをやるからそのつもりでいろ」という内容になっていた。さらに英国内でもサッチャーによる炭鉱の閉山政策などに反対するグループからは「唯一残念だったのはサッチャーが難を免れたことだ」というコメントが出たりしています。

▼3番目の「北星学園」ですが、記事下のコーナーで触れたようにYahoo Newsの記事に対する読者からのコメントを読んでいて、心底、寒々とした気になった。これがいまの日本人のアタマの程度なのか・・・。中にはこの大学で教えることができなくなってしまった元朝日新聞の記者に対して、「ちゃんと表に出て説明する事が大事なんじゃないの?」というのもありました。ここまでさんざ袋叩き(リンチ)にしておいて「ちゃんと表に出て説明しろ」ですか?まずリンチについて謝罪してから要求してみてはいかがでしょうか?念のためにお知らせしておくと、「負けるな北星!の会」という組織があるようでして、ここをクリックするとサイトがあります。文字がうすいので非常に読みづらいサイトです。

▼2番目の「生活満足度の国際比較」ですが、日本人の満足度が非常に低いですよね。その理由は何だと思います?NHKの夕方のテレビを見ていたら作家の五木寛之さんが自分の人生を語っていました。今年で82才だそうですね。むささびはこの人の作品は一つも読んだことがないのですが、話を聞いていて面白いこと言うなぁと思いましたね。「孤独死」について語っていたのですが、
  • 人間、生まれる時も死ぬときも独りなんですよ。家族に囲まれて死ぬとしても本人は独りなんです。最近、絆とか人と人との繋がりとかいうことを言い過ぎるのではありませんか?あたかも独りでいることが悪いみたいに言うのはおかしい。

    という趣旨のことを言っていた。
▼と、これを聴いていてむささびは「生活満足度の国際比較」のことを想ってしまったし、北星学園問題に関する日本人のコメントのことも考えてしまったわけでありますよ。ピューリサーチによると「未婚・非婚者より既婚者の方が幸福度が高い」らしいけれど、それはあくまでも「統計」の話であって自分個人の話とはいちおう無関係です。なのに最近やたらと「絆」を声高に言って喜んでいる人たちが多いとむささびは思うわけよさ。北星学園のことで悪口雑言を吐いている人たちは、自分が「統計」「群衆」の一部にならないと不安で仕方ない人たちなのかもしれない。

▼五木さんがもう一つ言っていたのでありますが、「人間は幸福であるべきだ」というのは西洋的な発想であり、必ずしも正しくない。「日本人は昔から悲しさを抱えて生きることを知っていた」という趣旨のことを、どちらかというと暗い顔でおっしゃっていたのですね。彼によると、それが演歌の世界であるとのことだった。なるほどね。「着てはもらえぬセーターを 寒さこらえて 編んでます・・・」(都はるみ)なんぞはにくいんじゃありませんか?この感じがないのですよ、ブルースには。

▼10月26日に外交評論家の岡崎久彦さんが亡くなりましたね。1930年生まれだから84才だった。安倍さんの外交ブレーンであったと報道されています。ウィキペディアによると、「アングロサクソンとの協調こそが日本の国益とアジアの平和につながる」という考え方の人であったそうですね。5月19日付のハフィントンポストのサイトにこの人とのインタビュー記事が出ています。テーマは東アジアの安全保障だったのですが、次のような発言が掲載されています。
  • 東アジアの安全保障というのがね、日中関係、米中関係なんてものはないです。中国対日米同盟、このバランスで全部考えなきゃいけない、共同で行動することを考えないかぎり、日本の安全は今考えられない。
▼つまり日本はアメリカと一蓮托生でこそ生き延びることができるのだ、ということですよね。彼のいわゆるアメリカとかアングロサクソンというのはどのような「もの」なのですかね。安倍さんは「戦後レジームの見直し」をどうのこうの言っていますよね。「レジーム」なんてカタカナを使われるとよくわからないけれど、要するに「考え方」「もののやり方」ってことですよね。でしょ?安倍さん。それを見直すということは、取りも直さずアングロサクソン的なものを「見直す」(はっきり言うと捨て去る)ということですよね。でしょ?晋三さん。そうやって見直した先に何があるのか分からないけれど、少なくともアメリカ的なものでないことは確かです。でも岡崎久彦という人は「親米保守」であり、安倍さんのブレーンの一人であった・・・。どうもよく分からない。

▼とか言い始めると、いつまでたっても終わらないので、止めておきます。失礼しました。
 
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むささびへの伝言
バックナンバーから
2003
ラーメン+ライスの主張
「選挙に勝てる党」のジレンマ
オークの細道
ええことしたいんですわ

人生は宝くじみたいなもの

2004
イラクの人質事件と「自己責任」

英語教育、アサクサゴー世代の言い分
国際社会の定義が気になる
フィリップ・メイリンズのこと
クリントンを殴ったのは誰か?

新聞の存在価値
幸せの値段
新聞のタブロイド化

2005
やらなかったことの責任

中国の反日デモとThe Economistの社説
英国人の外国感覚
拍手を贈りたい宮崎学さんのエッセイ

2006
The Economistのホリエモン騒動観
捕鯨は放っておいてもなくなる?
『昭和天皇が不快感』報道の英国特派員の見方

2007
中学生が納得する授業
長崎原爆と久間発言
井戸端会議の全国中継
小田実さんと英国

2008
よせばいいのに・・・「成人の日」の社説
犯罪者の肩書き

British EnglishとAmerican English

新聞特例法の異常さ
「悪質」の順序
小田実さんと受験英語
2009
「日本型経営」のまやかし
「異端」の意味

2010
英国人も政治にしらけている?
英国人と家
BBCが伝える日本サッカー
地方大学出で高級官僚は無理?

東京裁判の「向こう側」にあったもの


2011
悲観主義時代の「怖がらせ合戦」
「日本の良さ」を押し付けないで
原発事故は「第二の敗戦」

精神鑑定は日本人で・・・

Small is Beautifulを再読する
内閣不信任案:菅さんがやるべきだったこと
東日本大震災:Times特派員のレポート

世界ランクは5位、自己評価は最下位の日本
Kazuo Ishiguroの「長崎」


2012

民間事故調の報告書:安全神話のルーツ

パール・バックが伝えた「津波と日本人」
被災者よりも「菅おろし」を大事にした?メディア
ブラック・スワン:謙虚さの勧め

2013

天皇に手紙? 結構じゃありませんか

いまさら「勝利至上主義」批判なんて・・・
  
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