埼玉県飯能市では梅の花がしっかり咲いています。皆さまのところはいかがでしょうか?むささびジャーナルはことしで15年目に入ったわけですが、今回で365回目です。隔週刊だから15年目ですが、これが日刊だとようやく一年が終わるという数字なのですね。ところで、サイが水を飲んでいるように見える上の写真は、アイスランドにある玄武岩なのだそうです。
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目次
1)「反トランプ国際戦線を結成しよう」
2)「グローバルな英国」という幻想
3)オンライン署名:意味はないけど人気はある
4)シンゾー、フロリダの「ホールインワン」?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声
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1)「反トランプ国際戦線を結成しよう」
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Spiegelのサイト(1月20日)に「西側の価値観を守る」(Defending Western Values)というタイトルのエッセイが出ています。書いたのはウルリヒ・フィトナー(Ullrich Fichtner)という国際ジャーナリスト、1965年生まれだから、今年で52才になる。むささびはドイツのメディア状況のことは全く知らないのですが、ウィキペディアによると、この人はSpiegelの
"reporter at large" となっていいる。つまり一応この雑誌に所属しているけれど、実質的にはフリーランスで活躍している国際的なオピニオン・リーダーのようであります。
このエッセイには「反トランプ国際戦線結成のとき」(Time for an International Front Against Trump)というサブタイトルがついているように、アメリカに誕生した自国中心・孤立主義政権に対抗するためには西側諸国が結束してかかる必要があると呼びかけている。さして長いエッセイではないので、いつものような要約ではなく全文をそのまま紹介させてもらいます。 |
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今や我々は次のことに備えなければならない。すなわち地球上で最強の力を持った人物が、自分と同様の億万長者たちを引き連れて、これまで国際社会が営々として築き上げてきたものを台無しにしてしまおうとするという事態である。トランプ軍団が温室ガス低減のためのパリ協定に縛られるなどということを誰が考えるか?ホワイトハウスの誰かが、動物・海洋・森林の保護に気を配るなどと考える人間はいるか?トランプにとっての優先事項が金儲け以外にあるなどと考える人がいるか?文化保護、女性の権利強化、少数者への配慮、資本主義の限界・・・こんなことにトランプがアタマを使うなどと誰が考えるか?そんなこと考えるはずがないのだ。 |
孤立と利己主義と
ひとたびISを退却させたら、アメリカもなるべく遠いところへ引退して、世界の警察官であることなど務めなくても済むようなところへ引っ込んでしまう・・・トランプのアメリカが考えているところであろう。アメリカの歴史には同じようなことがあった。孤立と利己主義の時代である。そして我々はいまやそちらの方向に向かって歩みつつあるのだ。これまでアメリカは常に欧米的価値観の担い手であった。いつもいつもそれに忠実であったわけではないにしても、だ。が、今やアメリカはそれらの価値観そのものを冬眠させようとしている。これからはトランプが孤独な夜を過ごすうちにツイッターに手を出して、中国を侮辱したり、インドを挑発したり、ヨーロッパを愚弄したりするようなメッセージを発信しないとも限らない。これからの国際情勢は、そのようなリスクさえはらんでいると言えるのだ。
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弱肉強食の時代に
そんなことになったら楽しいはずがない。アメリカの外交政策は、アメリカがまだ最強である世界において弱肉強食の時代を作ろうという新しい欲求に基づいている。トランプ政権は、地球規模での妥協を目指すのではなく、個々の国との交渉において取れるだけ取ろうという姿勢なのである。トランプは国連、EU、G20のような国際機関の弱体化のためなら何でもするだろう。それによって何事も二国間交渉にゆだねようというわけである。まさにロシアの姿勢と同じである。そのことによって、トランプはほんのちょっとした「経済的な奇跡」を達成することができるかもしれない。が、それ以外の多くの国々は大きな犠牲を払うことになるのだ。そして出現するのが、地球規模での不平等であり、とめどなき気候変動であり、何よりもトランプ自身の国自体がとげとげしい緊張感いっぱいの国となるであろう。そのとげとげしさはトランプによって社会の片隅に追いやられた少数派の人びとが醸し出すものなのである。
これらの悲劇がどこまで進んでしまうかは、反対勢力が如何に迅速に結成できるかにかかっている。アメリカ大統領の権力といえども無限ではないし、トランプは誰に対する説明責任も負っていない絶対的な支配者というわけではない。いずれトランプも市民社会の力、反対勢力の知恵、アメリカ国民の勇気などに直面するだろう。この大統領の場合、ホワイトハウスを追放されるのが怖さに、ほんの少しのミスも許されないと思い込んでいる。
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EUに新しい存在価値が
トランプがホワイトハウスから追放されるまで、アメリカ以外の国々は、国際的な基準に対抗しようとするアメリカの陰謀をブロックし、不公正なアメリカの経済的な欲望を止めさせ、世界的な合意事項を守るために努力をしなければならない。そのために必要なのは、「反トランプ戦線」とでも言うべきものであろう。
そのために国連は、特に弱いとされる加盟国の言い分を保護する努力をすることだ。EUはトランプの出現によって新しい存在価値を持つことになったのであり、最大限に効力を発揮するようにしなければならない。以前には考えられなかったことではあるが、トランプの出現によって、場合によってはヨーロッパと中国が協力し合うことも考えられる。そんなことあるわけがない・・・我々はそのように考えてきた。しかし今やトランプの世界の夜明けである。我々は否応なしに自分たちの利益と原理・原則を擁護するしかない状況に追い込まれてしまったと言えるのだ。 |
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▼短いエッセイですが、いくつか重要な言葉が含まれていると思います。例えば、トランプが狙っているのは、自分たちがまだ強い間に「弱肉強食の世界」を作るという部分。TPPのような多国間の協定などには反対、それぞれの国と二国間の「自由貿易体制」を作るというわけですが、そうすることで相手に自分の要求をのませやすくなりますよね。中国なども領土問題でもめたりすると必ず「二国間で解決」と主張する。「強い者が勝ち」というゴリ押しの論理です。
▼EUの価値。トランプの登場によって、「弱肉強食」の反対を目指すEUの存在価値がこれまで以上に強くなったということ。EUはトランプが嫌う多国間体制の見本のような存在ですからね。BREXITの推進者もゴリ押しの論理の推進者であると言えるけれど、彼らにとっての悲劇(喜劇?)はトランプのアメリカや中国と違って、実際には強くはないということでしょうね。弱いと見られるのが気に入らない・・・というのは言いすぎかもね? |
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2)「グローバルな英国」という幻想
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歴史を語りながら政策提言も行う "History & Policy" というグループのサイト(1月28日)に、EU離脱後の英国についてのエッセイが出ています。書いたのはエセックス大学のマシュー・グラント講師(Matthew
Grant)で、見出しは次のようになっています。
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1月にアメリカを訪問した際にメイさんは、共和党議員の集まりに出席、EU離脱後の英国の進路について、世界をリードする「グローバルな英国」(Global Britain)という構想を打ち出したのですが、このエッセイの筆者によると、それはメイさんが勝手に描いている幻想(fantasy)に過ぎないとなる。
メイさんのいわゆる「グローバルな英国」の中心になるのがアメリカとの親密な関係であり、その根拠としてメイさんが引用したのが
- 我々(英米両国)は同じ言語を使い、同じ祭壇にひざまずき、かなりの部分同じ理想を追っている。
We speak the same language, kneel at the same altars and, to a very large extent, pursue the same ideals.
という言葉だった。これは1941年のクリスマス・イブにチャーチルがワシントンのホワイトハウスから世界に向けて読み上げたメッセージです。その約2週間前に日本による真珠湾攻撃が行われたことを受けて、チャーチルがルーズベルト大統領を訪問、その際にホワイトハウスにおけるクリスマスツリーの点灯式に参加したチャーチルが読み上げたものです。「同じ祭壇にひざまずき」というのは、英米ともにキリスト教の国であるということです。
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マシュー・グラントによると、アメリカとの「特別な関係」を謳い上げるのは1950年代からずっと続いている英国政府の習慣のようなものであり、メイさんもその線に沿ったに過ぎないのですが、グラント氏はメイ演説には二つの目的があったと言っている。一つはアメリカの新政権が様々な国際問題に取り組む中で英国が望む方向で共同歩調をとってくれるように念押しをすることであり、この中には対シリア、対イランの政策やEU離脱後の英米貿易関係も含まれる。
共和党の関係者を前に英米特別関係について語ったメイ首相のもう一つの目的とは何か?それは(彼女自身がそれを意識していたかどうかは別にして)EU離脱後の英国がどのような国を目指しているのかを打ち出すことにあった。国際社会における英国のアイデンティティを明確にするということです。そこで彼女が打ち出したのが「さらにグローバルな英国」(even
more global Britain)という構想です。「これまでもグローバルな存在であったけれど、これからはもっと世界をリードする国になる」という意味であり、その根拠となっているのが、「常にアメリカと共に歩むことで世界をリードしてきた国」というイメージです。メイ自身の言葉を借りるならば
- 一度ならず現代の世界を形作ってきたのは、我々(英国)とアメリカの関係なのです。
Time and again, it is the relationship between us that has defined the modern world.
ということになる。
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が、グラント氏によると、それこそがメイ自身が陥っている「歴史の幻想」(historical fantasy)であるということになる。例えば、第二次世界大戦における英米の「連携」についてメイさんは次のように述べている。
- アメリカは第二次大戦で英国側に参戦するということで日本による真珠湾攻撃に応じ、太平洋地域のみならずアフリカやヨーロッパにおけるファシズムを破ったのだ。
You responded to the Japanese attack on Pearl Harbour by joining Britain in the Second World War and defeating fascism not just in the Pacific but in Africa and Europe too.
マシュー・グラントによると、メイさんの歴史認識は完全にチャーチルが書いた "The Second World War"という本から引き写しなのだそうですが、実はこの本自体が第二次大戦でドイツを破るにあたってソ連の赤軍が果たした役割を全く軽視してしまっていることで評判が悪いらしい。まるで英米だけでファシズムを倒したような言い分であるということです。
さらに冷戦についてメイさんは、あたかも米英が連携して共産主義に勝ったようなことを言っているけれど、当時は実際には英米よりも西ドイツとアメリカの連携の方が対ソ連には力があったのだと言っている。共産主義との対決については、英国はメイさんが言うほどには熱心でなかったのだそうです。
マシュー・グラントによると、メイさんのような歴史認識は誤っているだけでなく、英国自体にとっても危険な見方なのだそうです。彼女のいわゆる「よりグローバルな英国」は「世界的な力を持っていた時代の英国」を思い起こさせるけれど、そのイメージ自体が幻想にすぎないということ。かつての英国が有していた(とメイさんが考える)力そのものが実際には存在しないということです。第二次大戦を終わらせた「ビッグ・スリー」(英米露)の中で英国は実際には弟分(minor partner)にすぎなかったし、冷戦中の英国の軍事力や外交的な力も他国には及ばなかった。
メイさんはまた英国が有していた「正義のために戦う」という道義的な影響力について触れている。確かに20世紀において英国が戦った独裁者は数多く存在する。その意味では道義的な国であった部分もあるけれど、かつて英国自身が自分たちの植民地で行った暴虐を考えると、簡単に自画自賛するわけにはいかない・・・というわけで、マシュー・グラントのエッセイは次のように締めくくられています。
- (メイ首相の演説から見える)EU離脱後の英国のビジョンは、とっくの昔に消えてしまったか、そもそも存在さえしていなかったものを基盤にしている。その意味からもEU離脱後の英国は後ろではなく常に前を向いている必要があるのだ。
A post-Brexit Britain needs to look forward, not back. If only because the vision of Britain it rests on is not only long gone, it never really existed in the first place.
「後ろを向いても何もないのだから、前を向くしかない」と言っている。
このエッセイとは関係ないのですが、EU離脱の手続きを進めるには議会の審議と承認が必要という最高裁の判決が出たことを受けて、下院で審議が行われました。その中で保守党の重鎮であるケネス・クラークという政治家がEU離脱に反対する演説を行ったのですが、その中でクラークが述べた次のポイントは極めて重要です。
- 英国が1973年に当時のEECに加盟したのはなぜだったのか?戦後の世界において、かつての大英帝国が消えて行く中で、英国が世界で果たす役割自体も失われていくような状況にあった。そして経済的にも当時の英国は、戦争で疲弊したはずのヨーロッパ大陸諸国に大きく遅れをとって物笑いの対象になっていた。そのような状態から抜け出さなければならないというのが、英国がEECへの加盟を希望した最大の理由であったはずだ。
クラーク議員が主張しているのは、あの当時も現在も、英国はヨーロッパの一国としてのみ世界で自らの存在を示すことができるということです。
▼EU離脱の国民投票以後、Facebookなどでも賛成派と反対派が議論を繰り広げているのですが、それは「議論」というよりも、殆ど「怒鳴り合い」という状態になっている。そして離脱派の言葉の中にしばしば登場するのが「愛国心」とか「英国人としての誇り」という言葉です。かつての英国ではなかなか聞けなかった情緒的な言葉です。「論理」ではなく「感情」だけが支配する国になっている。
▼最後に紹介したケネス・クラークですが、保守党議員329人の中でただ一人離脱に反対票を投じている。国民投票前には少なくとも100人はいたはずなのですが、国民投票の結果は「国民の意思」(people's will)であり、これに従うのが民主主義だという意見が圧倒的に多い。これに対してクラークは「自分の良心に従う」としてあくまでも反対の姿勢を貫いたわけです。
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3)オンライン署名:意味はないけど人気はある
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前回のむささびで、メイ政権がトランプを国賓として英国に招待することになっているけれど、それに反対する政府・国会主宰のオンライン署名への署名が100万を突破していることを紹介しました。昨日(2月18日)調べたら「反対」の署名が185万を超えていた。この署名の文言は次のようになっている。
- ドナルド・トランプは米国大統領として英国への入国は許されるべきであるが、公式の国賓として招待されるべきではない。なぜならそうなると女王陛下にとって恥ずかしい事態となるからだ。
Donald Trump should be allowed to enter the UK in his capacity as head of the US Government, but he should not be invited to make an official State Visit because it would cause embarrassment to Her Majesty the Queen.
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ところでトランプの国賓訪問については、これに賛成する人たちによる署名活動も行われています。これに対する署名の集まり具合は、昨日現在で約31万となっている。国賓訪問に賛成する人びとの言い分は次の通りです。
- ドナルド・トランプは国賓として招待されるべきだ。彼は自由世界のリーダーであり、英国は言論の自由を支持し、自分たちの意見に反対する人間は叩かれるべきだなどと考える国ではないのだ。
Donald Trump should be invited to make an official State Visit because he is the leader of a free world and U.K. is a country that supports free speech and does not believe that people that appose our point of view should be gagged.
署名が10万を超えると、議会がこれを審議することを「考慮」することになっているのですが、2月18日のサイトには、賛否両論ともに「2017年2月20日に審議する」(Parliament will debate this petition on 20 February 2017)と書いてある。また署名が1万を超えたものについては政府が見解を示すことになっているのですが、この件については、賛成・反対両方の署名サイトに次のようなメッセージが掲載されている。
- 政府としては、米国大統領を完全な儀礼をもって国賓としてお迎えするべきであると考えており、トランプ大統領をお迎えする時期と詳細が決まり次第発表する。
HM Government believes the President of the United States should be extended the full courtesy of a State Visit. We look forward to welcoming President Trump once dates and arrangements are finalised.
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ところで2月3日付のThe Economistのサイトが、政府・国会主宰のこのオンライン署名について「殆ど意味がないけれど人気はある」(popular if mostly pointless)と言っています。この署名サイトが設けられたのは2015年7月のこと、以来ざっと2万6000件の署名活動が行われたのですが、そのうち政府による公式のレスポンスがあったのは371件、国会審議の対象になったのはわずか48件というわけです。
ここをクリックすると署名サイトにアクセスできるのですが、読んでいると結構面白い。例えばサイト開設以来これまでに10万人以上の賛同者を集めた署名活動をいくつか紹介すると:
- 現在は福祉手当をもらっている親だけが利用できる無料の育児サービスを、両親が共働きの場合、誰でも利用できるようにする。賛同:133,921人
提案者(女性)によると、夫と自分は懸命に働いているが、子供の養育サービスに要する費用が余りにも高すぎる。現在の無料児童養育サービスは両親が低所得で福祉に頼る生活で、仕事もしていない家庭にのみ提供されている。両親が仕事をしていないのであれば、養育サービスそのものが不要ではないか・・・と言っている。これに対する政府の回答は、「現在の制度では低所得家庭の2歳児の児童養育サービスを無料にしている。両親の仕事の有無ではなく、所得そのものが低いということを条件にしている。低所得者にこのサービスを提供しないと学齢に達した時点で他の児童とのギャップが大きくなりすぎるからだ」となっている。
- 警察犬・警察馬に「警察官」(Police Officers)と同じ地位を与える。賛同:126,617人
これは犯罪現場に駆けつけなければならない犬や馬については、警察官と同じ保護が与えられるべきだというもので、アメリカなどではそのような法的な規定があるのだそうです。この提案については政府から「警察の仕事に従事する動物に対する攻撃をした場合、最高10年の懲役刑にする」という反応があった。
- テレビの視聴料は廃止するべきで、その支払いを法的に義務付けるのは止めるべきだ。賛同:82,003人
これは現在進行中の署名活動なのですが、提案者は「テレビの受像機そのものが高額なのに、年間130ポンド以上もの視聴料金まで徴収するのはおかしい」(TV is expensive enough without the added extra worry of £130+ A year)と言っている。この署名の締め切りは5月9日、それまでにどのような数字になっているのかが注目される。
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トランプに話を戻すと、大統領選挙中だった昨年(2016年)6月には「トランプの入国禁止」を求める署名活動が行われ、586,930人が署名、議会での審議も行われたのですが、さすがに「入国禁止」を認めるまでには至っていない。
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▼オンライン署名とは別件ですが、トランプの国賓待遇について下院議長が文句をつけて物議を醸しています。ジョン・バーコウという人なのですが、下院議員を前に演説し、トランプが国賓として訪問することになったとしても、議会における演説には反対することを明言したわけです。国賓は誰でも議会で演説するというわけではないのですが、比較的最近の例としてはバラク・オバマ、ネルソン・マンデラ、アウン・サン・スーチー、ローマ法王などが議会に招かれて演説しています。トランプの演説についてバーコウ議長は
- 下院に関する限り、自分としては人種差別や性差別に反対し、法の下の平等と司法の独立を支持するという我々の姿勢は強く意識せざるを得ない。
I feel very strongly that our opposition to racism and to sexism and our support for equality before the law and an independent judiciary are hugely important considerations in the House of Commons.
と述べている。
▼彼のこの発言については議長の政治的中立を理由に批判する声もある。実際どうなるのかは分からないけれど、オンライン署名といい、議長の発言といい、メイさんにとってはアタマの痛い事態が続きます。 |
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4)シンゾー、フロリダの「ホールインワン」?
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安倍・トランプ会談について、BBCのサイト(2月14日付)が
という見出しの記事を掲載しています。もちろんフロリダで二人がゴルフを楽しんだことにひっかけているのですが、「ホールインワン」だから、殆ど奇跡的な大成功というわけですよね。安倍さんが読んだら泣いて喜びそうな記事ですが、何がそんなにすごかったのか?
この記事を書いたのは、フロリダまで二人に同行して取材したBBCのターラ・マケルビー(Tara McKelvey)という記者なのですが、Shinzo Abeが本領を発揮したのは、ゴルフを終えた二人が、北朝鮮によるミサイル発射という事態を受けて急きょ開いた記者会見の場だった。上の写真がすべてを物語っているのだそうです。すなわちこの会見の主人公は安倍さんで、トランプは黙ってシンゾーの言葉に耳を傾けるという感じであったということです。
この会見における安倍さんについてマケルビー記者は
- 国際的な安全保障の問題や国際政治については、明らかに安倍首相はトランプよりも慣れているという感じだった。態度も物静かで、大統領はもっぱら援護役という印象だった。つまり安倍首相が外交のやり方についてトランプに教えを垂れていたということなのだ。
Abe was clearly more at ease in the world of international security issues
and geopolitics than Trump. Abe had a calm manner, and the president played
a supporting role. In this way Abe gave Trump a lesson in diplomacy.
と表現している。
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英国のDaily Mailが「トランプ、安倍を暖かく歓迎」(Trump welcomes Abe with warm White House
embrace)という記事と一緒に使った写真の一つ。BBCの記者は、このときの安倍さんの様子を「トランプがテーブル越しに友人と声高に話をしている横で静かにテーブルのうえで手を組んでいた」と表現している。 |
安倍首相との会談前のトランプは、日本の不公正貿易や防衛費の負担についての文句ばかり並べていたわけですが、ハーバード大学のケネス・ロゴフという経済学者によると、トランプの日本批判は根拠に欠けるし、日本のことを全く分かっていないのではないか(his understanding of Japan and the markets was fuzzy)というわけで、「トランプという人物がどの程度教育可能な人間なのかが分からない」と語っていたのだそうです。つまりトランプと会談する安倍さんの使命は「この大統領を怒らせることなく教育する」(to educate the president without making him mad)ことにあったのだ、とBBCの記者は書いている。で、その使命は達成されたのか?
コロンビア大学の伊藤隆敏教授のコメント:
- その目的は完全に達成したと私は思います。安倍とトランプは親友になったのであり、気が合うということが証明されたということです。
I think the goal was completely achieved. Abe and Trump became good friends and had good chemistry.
ジョージ・ブッシュ大統領時代に国家安全保障協議会のメンバーだったエリック・オートバック氏のコメント:
- ある意味(安倍首相は)これからアメリカの同盟国がトランプと付き合っていくための「やり方の定番」を設定してみせたということかもしれない。
In some ways maybe he's setting the template for how US allies can deal with Trump.
要するに識者の眼には「安倍さん、よくやった」と映ったということです。マケルビー記者は、北朝鮮の件についての記者会見のときの両者の態度なども含めて
- 安倍の(成功の)秘訣は、慎重に大統領との個人的な関係を築き、時には権威をもって振る舞いながらも相手に対する尊敬を示すことも忘れないということのようだった。
Abe's secret has been to carefully build a relationship with the president,
acting authoritative at times but also showing respect.
と書いている。
ここをクリックすると、フロリダにおける記者会見を動画で見ることができます。ホワイトハウスが制作したビデオで、タイトルは "Joint Statment
by President Trump and Prime Minister Shinzo Abe" となっている。「安倍さんとトランプによる共同声明」ということですよね。ところが実際には約2分30秒の「共同声明」のうち安倍さんが2分25秒くらいしゃべって、トランプは安倍さんのあとで
- The United States of America stands behind Japan, its great ally, 100%.
アメリカは、偉大なる同盟国である日本を全面的に支持するものであります。
とコメントしただけだった。マケルビー記者によると、普通なら北朝鮮によるミサイル発射のような場合、アメリカの大統領がかなり長めの声明を発表するものなのだそうですね。実際、あの会見でもスティーブ・バノン大統領上級顧問が「大統領発言」(POTUS remarks)と書いたペーパーを持って部屋に入ってきたのにビデオを見る限りにおいて、安倍さんのトークを後ろで見守るトランプの手にはそのペーパーがない(としか思えない)。そして大統領の口から出てきたのは「我々は安倍さんを全面的に支持しております」というニュアンスのコメントだけだった・・・。
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北朝鮮のミサイル発射を受けて行なわれた会見用にバノン上級顧問が用意した大統領のコメント原稿。ロイターのカメラマンが写したものであるとBBCが伝えているのですが、いずれにしても動画を見る限りにおいてはトランプは使わなかったとしか思えない。 |
ところで(ここからはBBCの記事から離れるけれど)イスラム圏の国からの移民制限に関する大統領令というのが物議を醸していますよね。この件について安倍さんはトランプとの共同会見で次のようにコメントしています。
- それぞれの国々が行っている入国管理につきましては、また難民政策、移民政策につきまして、その国の内政問題ですのでコメントすることは差し控えたいと思います。
安倍さんの前にトランプと会った英国のメイ首相は帰国後のロンドンで次のようなコメントを発表している。
- アメリカの移民政策はアメリカ政府の問題だが、我々はこのようなアプローチには賛成しないし、我々ならそのような方法はとらないであろう。
次に安倍さんの後にトランプと会談したカナダのトルドー首相はトランプとの共同会見で
- カナダとしては門戸開放政策をこれからも継続していく。
と述べた後で、ニュアンスとしては「自分たちのやり方をアメリカに押し付ける気はない」という意味のことを述べている。
三者三様ですが、トルドーとメイのコメントには移民・難民問題とトランプの大統領令を「他人ごと」とは思っていない切実さを(むささびは)感じます。安倍さんの「これはアメリカの国内問題だ」というコメントは、如何にも移民・難民問題に直面していない国の首脳の発言だと思うわけです。本当は「これはアメリカの国内問題」と言って済まされるようなことではない。
▼BBCのターラ・マケルビー記者の記事を読んでいると、安倍さんとトランプがフロリダにいる間に、よくぞ北朝鮮がミサイルなど発射してくれたものだ・・・というのが安倍さん一行の正直な感想なのではないかと思えてくる。確かにフロリダの会見におけるトランプはひどすぎた。北朝鮮のミサイル発射はアメリカに向けられたものであると言われている。なのに彼の口からでたのは「日本を全面的に支持」という見当違いの言葉だった。
▼トランプは1946年生まれ、学生から社会人になる20~30才だったころの日本なんて物の数にも入らないアジアの国だった。そんな国からやって来る首相なんてどうやって迎えればいいのか分からない。「とりあえず夕食会でもやって、別荘へ連れて行ってゴルフでもやって、そんなところでいいよな?」というつもりだった。なのにあの北朝鮮のアホどもが!
▼フロリダにおける記者会見の動画の最初の部分で安倍さんを写しながら字幕が出るのですが、Prime Minister Shinzo(晋三首相)と書いてあります。ホワイトハウスの制作担当者がやっちまったんですよね。ま、愛嬌・愛嬌!それとシンゾーは会見でトランプのことを「大統領」と「ドナルド」の両方で呼んでいましたね。ホワイトハウスのサイトで
"Donald, President, you are excellent businessman..." とやっていた。でもトランプの方は安倍さんを「シンゾー」呼ばわりはしていなかったのでは?安倍さんはプーチンのことを「ウラジミール」と呼んだけれど、プーチンは安倍さんのことを「安倍首相」としか呼ばなかったのでは?相手をファーストネームで呼ぶかどうかなんて、本当にどうでもいいことなのに・・・。 |
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5) どうでも英和辞書
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upside down:さかさま状態で
本来は上に来る部分(upside)が下(down)に来ている・・・すなわち「さかさま」になっている状態を表す副詞です。
- Tsuami turned a house upside down.
The airplane was flying upside down at high speed.
というわけなのですが、メチャクチャな混乱状態のことも "upside down" と言いますよね。"Someone
turned my room upside down" というと、留守中に誰かが自分の部屋に入って引っ掻き回して行ったというわけです。
上の英国国旗(Union Flag)の写真ですが、どちらかが「上下さかさま」(upside down)です。どちらでしょうか?答えは「右側がさかさま」です。正解である左の旗の左上隅にご注目を。斜めの白地(青地と併せてスコットランドを表す)に赤い斜め線(アイルランドを表す)が入っていますよね。その赤い斜め線が白地の下の部分に刷り込まれており、上の部分の方が白地の幅が広い。つまり赤い斜め線は白地の真ん中を走っているわけではない。四隅を見て、赤い斜め線が左の旗のように入っているように掲揚するのが正解ということです。さかさまに掲揚すると右のようになってしまう。
実にややこしいハナシで、まさかと思われるような場所で間違いを犯すこともある。上の写真は英国と中国の政府間協定の署名式のものですが、よ~く見ると英国国旗がさかさまですよね。「中国人はこれだから・・・」と言ってはいけません。2009年2月4日付のDaily
Mailに掲載されたこの写真はロンドンの首相官邸で撮影されたものであり、国旗を用意したのは英国人スタッフなのですから。YouGovという調査会社のアンケートによると、55%の英国人が国旗の正しい掲揚の仕方を知らなかったのだそうです。
日の丸は楽ですね。ネット情報の受け売りですが、白地の部分は横1に対して縦が3分の2、赤い円の直径は縦の長さの5分の3。例えば横3メートルの場合、縦は2メートル、赤い円は1.2メートル・・・赤い円は旗全体の中心に置く・・・これだけ。 |
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6) むささびの鳴き声
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▼今回載せた1)、2)、4)の記事を読むと、いまの「世界」が見えるような気がする。最初の記事が欧州大陸のドイツを代表する雑誌が「反トランプ戦線」を呼びかける一方で、2)と4)の記事は「西の島国」(英国)と「東の島国」(日本)が「トランプさまさま」路線を歩んでいることを示している。ただ二つの島国の間にも違いはある。イスラム圏からの移民を制限するトランプ路線について、「東の島国」が「アメリカの国内問題だからコメントはしない」と言っているのに対して、「西の島国」は(メイの帰国後とはいえ)「賛成しない」というコメントを発表している。
▼まだある。英国ではメイさんがやってしまったトランプの国賓扱いについて、国内では反発の声が強くて往生している。なのに日本では、シンゾーがトランプの訪日を要請したことについて反発の声など全く上がっていない。どころか安倍・トランプ会談については(日本にとっての)「満額回答」だったというわけで、シンゾーに対する支持率が上ったりしている。
▼さらに・・・。最初の「反トランプ戦線」を呼びかける記事が、ヨーロッパと中国の連携をも視野に入れているのに対して、日本のメディア(の多く)はというと「尖閣への日米安保条約第5条適用」が約束されたというので大喜びで、中国との連携なんてこれっぽっちもアタマに浮かんでいない風情であります。田中良紹というジャーナリストは「米国は他国の領土問題に関わって自国の国益を損ねるような真似は決してしない」と言っており、これは当たっているとしか言いようがない。つまり尖閣という「日本の領土」(とシンゾーたちが言い張っている)の防衛のために「米国民の税金を使うことも血を流すこともない」(田中氏)。 一方、英国はどうかというと、これからEUからは独立して「グローバルに生きよう」というのだから中国との親密な関係は絶対必要条件です。
▼一番最初に紹介した「反トランプ戦線」の記事ですが、英文の見出しは "Defending Western Values" となっていて、むささびは「西側の価値観を守る」としたけれど、"Western" という言葉に抵抗があるのですよ。「西側」という言葉は冷戦時代の発想ですよね。普通だと「欧米」で何とかごまかすけれど、「反トランプ」の場合、それは使えないよね。トランプが「米」の人なのだから。かと言って「西側」とやると、「東側はどこ?」と聞きたくなる。「反トランプ」の場合は"Defending European Values" と書いた方が正確で落ち着く気がするけれど・・・。そうなると、日本やオーストラリアやカナダは入らないのか?とか言われそうだし・・・。ソ連があったころは「東西冷戦」とかいう言葉がまかり通ったけれど、いまは"Western"に対抗するものって何なのですかね。
▼作曲家の船村徹が亡くなりましたね。このことを伝えるテレビニュースが必ず放送していたのが、「戦後初のミリオンセラー」である村田英雄の『王将』だった。だけど・・・忘れちゃ困るのが『柿の木坂の家』(青木光一)、『別れの一本杉』(春日八郎)、『あの娘が泣いている波止場』(三橋美智也)じゃありませんか?でしょ?『矢切の渡し』という作品についてウィキペディアに面白いことが出ています。元々ちあきなおみに提供した楽曲だったが、細川たかしが歌ったものがヒットし、第25回日本レコード大賞を受賞した。しかし、船村は「ちあきの歌は(楽曲のイメージの)手漕ぎの櫓で、細川の歌はモーター付の船だ」と」言っていたのだそうですね。ちあきの方がよかったということらしい。なるほど・・・。
▼お元気で! |
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むささびへの伝言 |