musasabi journal

2003 2004 2005 2006 2007 2008
2009 2010 2011 2012 2013 2014
 2015 2016 2017      
366号 2017/3/5
home backnumbers uk watch finland watch green alliance
美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
BBCなどによると、キリンの数が劇的に減少しているのだそうですね。国際自然保護ユニオンの調べでは、約30年前の1985年には15万5000頭だったのが、2015年には9万7000頭にまで減っているのだとか。密猟もさることながら、アフリカ各地における紛争のおかげで棲息地が消えてしまっていることも原因であるとされている・・・。3月になりました。埼玉県のことしの冬はいつもより乾燥してお日さまが強くて明るい感じだったのですが、なぜか「夕焼けに映える富士山」をあまり見なかったですね。おそらくあっという間に桜の季節が来て、それも行ってしまうのでしょうね。

目次
1)MJ スライドショー:オーロラ
2)英国の武器がイエメンを破壊している
3)Brexitの次はScoxit?
4)社会が壊れている、か?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)MJ スライドショー:オーロラ

むささびの個人的な思い出話ですが、10数年も前にあるフィンランド人と会う機会があった。開口一番その人の口から出たのは「フィンランドといってもオーロラだけじゃありませんからね」という言葉だった。それに対してむささびの口から出たのは「えっ、フィンランドにオーロラがあるんですか!?」というものだった。むささびが、「フィンランドといえば”森と湖の国”じゃありませんか」と言ったら、怪訝な顔をしていましたね。その人は、「外国人はフィンランドといえばオーロラだけが売りものだと思っている」と信じ込んでいたらしい。

ウィキペディアによると、オーロラ(aurora)というのは、ローマ神話に出てくる女神「アウロラ」に由来する呼び方で、あのガリレオ・ガリレイが名付けたという説もあるのだそうですね。北米やスカンジナビアでは「北の光」(northern lights)と呼ぶのが普通であるとのことです。「日本でも観測されている」と書いてあるけれど、いずれにしてもむささびはまだ見たことがありません・・・。実物を見たら圧倒されてしまうでしょうね。

back to top

2)英国の武器がイエメンを破壊している

2月12日付のThe Observerの社説が、英国の武器輸出の問題を取り上げています。


社説が特に取り上げているのが、中東諸国への武器輸出です。中東における「アラブの春」民主化運動が始まったのは2011年ですが、社説によると英国による中東・北アフリカ地域への武器輸出は2011年を境に急速に増えている。「アラブの春」以前は年間平均で、小火器4130万ポンド、弾薬700万ポンド、戦車類が3430万ポンドだった。それが2012年以後になると小火器5890万、弾薬が1400万、戦車類が5960万ポンドという具合に劇的な増加を記録している。

「アラブの春」のドラマチックな出来事の一つにエジプトにおけるムバラク政権の崩壊がありましたよね。ムバラクにとってかわり、選挙で選ばれたはずのイスラム同胞団の政権が軍によるクーデターで転覆したわけですが、それ以後、英国からエジプトへの武器輸出は年間250万ポンドから3470万ポンドへと飛躍的な増加を記録している。英国の武器輸出の3分の2が中東向けなのだそうですが、過去2年間で次のような商談を成立させている。
  • アラブ首長国連合:3億8800万ポンド
  • カタール:1億7000万ポンド
  • オマーン:1億2000万ポンド
  • バーレーン:2400万ポンド

が、何と言っても英国の武器輸出にとっておいしい市場はサウジアラビアだそうで、一昨年(2015年)には何と武器輸出の83%がサウジ向けで金額も9億ポンドと、桁違いの大きさです。同じ時期に英国はサウジから9億ポンド相当の石油を輸入している。さらに2015年には33億ポンド相当の武器輸出に許可を出しているのですが、それはサウジによるイエメン爆撃が始まった年でもある。国連の推定によると、イエメンでは1200万人が飢餓に瀕しており、10分間に一人の割合で子供が栄養不良で死亡、栄養不良に陥っている人口は約50万とされている。さまざまな団体がイエメンへの支援アピールを行っているけれど資金が集まらないのだそうです。一方でサウジによる空爆の結果として「アラビア半島のアルカイダ」のようなテロ組織が勢力を拡大している。


The Observerによると、「アラブの春」以来の英国の中東政策は、中東における未開発地域の発展を助けようとする国連の動きとは別に、もっぱらこの地域を「商売上の利益」(commercial advantage)という視点でしか見ようとしなかった。イエメンの悲劇は、英国を始めとする欧米諸国のそのような姿勢の結果として起こっていることである、と。英国でサウジアラビアを擁護する保守勢力は、サウジが対テロ戦争にとっての重要な情報提供者であり、英国にとっては貴重な石油の供給元でもあること、さらに中東にはイランの野望という不安材料もあること、英国の防衛産業は極めて多くの英国人に職場を提供していること等々、いろいろと理由を付けるけれど、結局は現在の英国政府の姿勢の背後にあるのは「金(かね)」である、というわけです。

英国では2月初めに武器輸出反対キャンペーン(Campaign Against Arms Trade)という団体が、英国によるサウジへの武器輸出はイエメンにおける国際人道法(International Humanitarian Law)違反だとする訴えを高等裁判所に起こして争っています。

 SIPRI Arms Transfers Database 

一方、この社説とは直接関係ありませんが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が最近発表した世界の武器輸出についての報告書(2016年:Trends in International Arms Transfers)によると、2012年~2016年の世界シェアの点では米ロがダントツで、以下中国・フランス・ドイツ・英国と続いています。ただその前の4年間(2007年~2011年)におけるシェアと比較すると、ロシア、フランス、ドイツがマイナスであるのに対して、中国の輸出は74%もの増加を示している。またサウジアラビアへの武器輸出という点では英国が群を抜いている。

SIPRI Arms Transfers Database 

防衛産業の専門誌のサイトによると、英国のEU離脱は防衛産業にとっては追い風になるのだそうです。まず英国防衛省がEUの規約に縛られることなく武器調達を行なえるようになるので、英国のメーカーのものを重点的に購入するようになる。また離脱にともなってポンド安になる可能性が高く、英国製の武器の価格競争力が高まるということ。現在英国の武器産業で雇われている人の数は17万人とされているけれど、彼らにとってはBREXITは歓迎するべき事態なのかも・・・?

back to top

3)Brexitの次はScoxit?
 

英国がEUを離脱するのはBREXIT、ではスコットランドが英国(United Kingdom)から「独立」することは何というのか?2月18日付のThe Economistによると "Scoxit" というらしい。読み方は「スコクジット」かな?EU離脱についての昨年(2016年)の国民投票は、英国全体では51.89%対48.11%で離脱派が勝利したけれど、スコットランドでは62%:38%で「残留」票の方が多かった(イングランドは53.4%:46.6%で「離脱」が勝利)。スコットランド人の中には、自分たちはEUに残留したいのに、イングランド人たちが離脱したいという理由だけで無理やりEUを離れなければならないのは不公平であると考える人たちも多くいる。同じことが北アイルランドについても言える。


だったら「英国」(UK)から独立、スコットランドという国としてEUに加盟しよう・・・というわけで囁かれているのが2014年に実施して否定されたスコットランド独立に関する国民投票の再実施です。この場合、「国民投票」と言ってもスコットランド人だけが行うものなのですが、2014年に実施したときは55.3%対44.7%で独立反対派が勝利したのですよね(むささびジャーナル302号)。


3年前に国民投票を実施して「独立」を呼びかけたのはスコットランド民族党(SNP)で、現在も政権の座にあるのですが、独立投票を再びやるのは当面は難しいとされてきた。二度目の投票を実施して敗れるようなことがあったらスコットランド独立の夢は当面は消滅すると言われていたからです。が、The Economistによると、スコットランド政府はすでに国民投票の実施に向けて法案を準備しており、世論調査などでも独立を支持する声が高いそうなのです。


実は前回の国民投票の際、キャメロン首相(当時)を始めとする独立反対派は、その理由の一つとして、「英国」の一部として残らないと、独立・スコットランドのEU加盟は困難だろうという議論を展開した。その理由として、UKから離れたスコットランドのEU加盟には、カタロニア地方の独立という問題を抱えたスペインが強硬に反対するであろうということが挙げられていた。ところが昨年のEU離脱に関する国民投票の結果、スコットランドは望んでもいないEU離脱を強制させられることになった、あのとき独立しておけばEU離脱を強制されることもなかった、というわけです。
ただ・・・それではスコットランド政府がすぐに独立を問う国民投票を行なうか?というと、必ずしもそうではない。その理由は、最近のスコットランド経済の成長がかつての勢いを失っているということです。「過去5四半期のうち2四半期において成長がゼロという状態にある」(In two of the past five quarters it has failed to grow at all)というのですが、その主なる理由はスコットランド経済が頼りにしているエネルギー(石油・ガス)と金融という二つの業界の不振がある。前者は北海油田における石油・天然ガスからの収入なのですが、3年前の2014年の原油価格が1バレル110ドルであったものが、いまでは55ドルにまで下落、税収も当初期待していた年間83億ポンドの1%にも届かないのではないかとさえ言われている。北海における石油やガス生産に伴うビジネスで盛んだった首都・エジンバラの金融業界も昨年の平均給与が5%下がるなどしてあまり明るい話題はない。


スコットランドの人口は500万、そのような国にとって二大主要産業が不振というのでは、UKからの独立も危険な賭けとなってしまう。が、ややこしいのは、EU離脱については単一市場へのアクセスも求めないという強硬離脱の路線を進む「英国」に残るよりは、独立してEUに加盟した方がスコットランド経済にとっては得策という考え方も成り立つということです。ただ仮にEUが独立スコットランの加盟を認めたとすると、現在イングランドとスコットランドの境界線になっているところは、本当の意味での「国境」ということになる。となるとスコットランドからイングランドへの「輸出」にも関税がかけられることになる。現在のところスコットランドからイングランドへの「輸出」は、対EU輸出の4倍に上っているのだそうですね。

2014年の独立をめぐる国民投票のときにUKに残る方に投票したスコットランド人は、主として経済的な損得を考えて「残留」を選んだ。UKの一部であり続ける限りEUへの市場アクセスは確保されていた。そのUKがEUの一部ではなくなる。だとすると、いつまでもUKと一緒にいる必要性も薄れる。いっそEUと一緒にいることを選んだ方がスコットランドの将来にとって賢明なのではないか?という思いがある。でも、その一方でUK全体のGDP成長率(2015年10月~2016年9月)が2.4%であるのに対してスコットランドのそれは0.7%だったことを考えると、やはりUKの一部であり続ける方が得策かも・・・ということにもなる。


まあ、常識的には300年以上も一緒にやってきたUKから独立することのリスクを考えてしまうけれど、そのUKがEUの一員であることを拒否したのは、自分たちが選んだわけではないリーダーたちによって、自分たちの運命が決められてしまうことへの反発が原因であったとするならば、同じことがスコットランドとUKの関係についても言える、とスコットランド人が考えたとしても不思議ではない。The Economistの記事は
  • BREXITによってスコットランドの独立はより害の多いものになってしまったけれど、可能性はより高くなったともいえる・・・そのことは警戒すべき事態であると言える。
    The alarming result is that Brexit has made Scottish independence more harmful - and more likely.
という結論になっている。つまりUKからの独立はスコットランドにとって利益にはならない、にもかかわらずそちらの可能性が高くなっている・・・実に奇妙な状態であるわけです。

▼「国」という日本語を英語に直すと "nation" というのと "country" というのがありますよね。前者は文化的に繋がりのある人々の集合体であり、後者は地理的に同じ場所という意味ですね。曲者なのが"nation"の方で、愛国心(nationalism)のような情緒が絡んでくる。スコットランド独立は"nation"としてのスコットランド抜きにはあり得ない発想です。北アイルランドにおけるトラブルも同じです。BREXITを"nation"という観点から考えると、どう考えてもあれはイングランド人によるナショナリズムの発露でしかあり得ない。それもこれも、"nation"の集まりであるUKという集合体が抱えるどうにもならない矛盾を何とかしない限り常に付きまとうことになる。できれば次なるむささびでそのあたりのことを書いたエッセイを紹介したいと思っています。

back to top

4)社会が壊れている、か?


英国がEU離脱を決め、自国中心主義のトランプが大統領に選ばれ、ヨーロッパ諸国では右翼の台頭が伝えられるなど、いわゆる「先進国」はどこを見ても、これまで「良し」とされてきたことが否定されるような状況です。そんな折からちょっと興味深い世論調査の結果が出ました。IPSOS=MORIという英国の調査会社が5大陸・23か国の成人(65才以下)を対象に、それぞれの国における公的な機関(public institutions)への信頼度を調査したものです。ここでいう「公的機関」というのは、必ずしも「お役所」とか「政府機関」だけではなく、マスコミ・銀行・大企業のように多くの人びとの生活に影響を与える機関という意味です。



まず23か国全体で見ると、公的な機関への不信感がかなり強いのですね。「信用している」が過半数に達した機関は皆無、どれも「不信」が過半数を超えている。相対的に言って司法・金融・国際機関は少しは信頼されているけれど、政党や政府は全く信用されていない感じ。これらの意識形成にあたってはマスメディアの影響が非常に大きいと思うのですが、そのメディア自体への信頼感が3割以下であるということは、メディアも含めた「既存の大きな組織」に対する不満・不信が渦巻いているということになる。

いくつかの分野における23か国の平均値と英国・アメリカ・日本・韓国・ポーランドの数字を比較してみます。ポーランドを入れたのは、かつての社会主義国における人びと意識を欧米やアジアと比べてみたいと思ったからです。この調査が行なわれたのは、昨年(2016年)10月21日~11月4日の約2週間、調査が行われた頃にこれらの5か国が置かれた状況を数行で説明しておきます。
  • 英国:4か月ほど前(6月23日)にEU離脱の国民投票が行われ、離脱派が勝利。
  • アメリカ:大統領選挙の直前というタイミング、「まさか」と思われていたトランプの勝利が「もしかすると」という感じになっていた。
  • 韓国:10月24日、朴槿恵大統領の親友である民間人の女性が国政に関与していたというので大騒ぎになり、大統領の支持率10%台に急落していた。
  • ポーランド:2015年秋の選挙で極右政党が圧勝、現在のポーランドは、欧州におけるリベラルと反リベラルという民主主義の2つのモデルが衝突する最前線となっている(東洋経済2016年2月14日)。
  • 日本:読売新聞の『2016年日本の出来事』というサイトにリストアップされている出来事の中から主なものだけ取り出すと「民進党が発足」、「シャープ、鴻海が買収」、「オバマ米大統領が広島訪問」、「東京都知事に小池百合子氏」、「天皇陛下、退位のご意向」などが挙げられます。


政府は信用できない
平均で見ても7割の人が政府を信用していない。これは健全と見るべきなのか、不健全と考えるべきなのか・・・?政府に対する信用度が最も低いのはメキシコで90%が「信用していない」と答えている。トランプの壁に反対するためにはちょっと低すぎる?韓国も低いのですね。いまの大統領の信頼性もあるのであろうと思うけれど、84%というのはメキシコ、スペインに次いで第3位です。日本は下から4番目とかなり低い・・・つまり政府を信用できないという人の数が相対的に少ないということになる(絶対数では6割が不信感を持っている)。実はアメリカ(下から6番目)も英国(同9番目)も、政府に対する信頼感は相対的にはそれほど低くはないのでありますね。


政党は信用できない
どこも似たようなもので、政党は全く信用されていない。スペイン(94%)、メキシコ(92%)、ハンガリー(90%)が低信用度のトップ(ボトム?)3で、「信用していない」という人の数が比較的少ない国はインド、トルコ、日本などとなっている。とはいえ、これらの3国でさえ6割以上が政党を信頼していないと答えている。おそらく世論調査をやると「支持政党なし」という意見が圧倒的に多いということなのでしょうが、むささびの意見によると、これは政党が悪いのではなくて、人びとの政治への参加意識が低いということであり、むしろ「人びと」の方を責めるべきかもしれない・・・?


メディアは信用できない
この部門のトップはハンガリーの87%。ほぼ10人中9人なのだから、新聞も放送も殆ど信用されていないということになる。英国は8割近くがメディアを信用できないとしており全体の第5位、かなり高いですね。日本は17番目だから、他との比較ではメディアが信頼されている国ということになる。メディアを信頼していないと考える人が最も少ないのはインドで約4割(39%)です。断り書きはないけれど、ここでいう「メディア」は新聞・放送のような従来型の「マスコミ」のことである(とむささびは理解しています)。


銀行は信用できない
トップ10のうち8つがヨーロッパの国です。銀行が信用されていないということもあるかもしれないけれど、むしろ経営者が極端に金持ちであるとされて、格差社会のシンボルのように報道されているということもあるのでは?銀行不信の数字が最も低いのはインド(18%)なのですが、日本(35%)は下から3番目だから銀行に対する不信感は低い方です。


裁判所は信用できない
ここではなぜかアルゼンチン(84%)、ペルー(84%)、メキシコ(83%)と南米がトップ3となっている。韓国は全体の5位で、裁判所は信用されていない。日本(32%)は23か国の中でも裁判不信が最も低い国となっている。それから英米もかなり信用されているのですね。韓国における不信感の高さは何が背景にあるのか?


大企業は信用できない
何故かスペイン(82%)がダントツで大企業が信用されていないのですが、それに次ぐのが韓国で、ほぼ8割の人が信用していない。これはなぜなのでしょうか?日本(46%)は下から3番目だから、ドイツ(72%)や英国(68%)よりもかなり企業が信用されている(と言ってもほぼ半数が信用していないのですが)。


国際機関は信用できない
国連やEU、WTOのような機関ですが、最も信用していないのはスペイン人で、ほぼ8割がそのように答えている。EU離脱の英国はほぼ6割が「信用できない」としている。日本は下から5番目だから、かなり国際機関を信用しているということになる。


以上、「政府」「政党」「メディア」を始めとする「公共」に対する不信感を数字化したものなのです。どの分野においても日本は米・韓・英・ポーランドよりも不信感が低いという数字が出ているけれど、数字自体は日本でも決して低いものではない(例えばざっと10人に7人がメディアを信用していない)。一方、「公共」に対する不信感との関連で、IPSOS=MORIの意識調査には「あなたは”社会が壊れている"(society is broken)という意見に賛成ですか?」という問いが含まれている。


世界平均で約6割の人びとが「自分たちの社会が壊れている」と感じているという結果になっている。6割という数字を大きいと見るべきなのか、大したことないと見るべきなのか・・・?日本の31%は調査対象国の中でも最低です。一番高い国がポーランド(79%)で、以下スペイン(78%)、ブラジル(77%)、メキシコ(76%)などが続き、韓国の72%は23か国中8番目に高い数字です。英国もアメリカもざっと真ん中あたりと言ったところですが、半数以上が「自分たちの社会が壊れている」と感じている。何を称して「社会が壊れている」というのかがいまいちはっきりしないけれど、常識的に考えて、それまで良しとしてきたことがそのように思われなくなり、信用していたものの信頼性が揺らいている・・・という感覚のことを言うのだとすると、韓国と日本の差がやたらと激しいと思いません?

▼繰り返しになるけれど、これまで社会的な信頼感のシンボルのように思われていたはずの機関や組織に対する不信感がどの国でも高いのですよね。比較すべき過去の数字がないので、この傾向が昔からあるものなのか、最近の傾向なのかよく分からないけれど、いずれにしてもほぼどの分野においても不信感を抱えている人が半数を超えている。ただ、いわゆる「先進国」の中でちょっと変わっていると思うのが日本です。ほぼどの分野においても従来の権威に対する不信感は決して低くはないのですが、他国に比べれば不信感が低いのです。つまり日本人が「権威」とか「既成の体制」といわれるもの対して抱いている怒り・反感・反発の度合いが他国の人びとに比較すると低いように見えるということです。その意味では、英国のBREXIT、アメリカのトランプ現象、ヨーロッパ諸国の右傾化などを生んだとされる「ポピュリズム」なるものがはびこる社会心理、「自分たちは忘れられている・無視されている」という欲求不満のようなものは薄いのかもしれない。それは日本人にとって喜ぶべきことなのでしょうか?

▼韓国では100人中70人以上が「国が壊れている」と感じているのに、そのように感じている日本人は30人程度。何なのですかね、この違いは?たまたまこの調査でこのような数字が出ただけってこと?実はこの調査には「自分の国が衰退していると感じますか?」という問いもある。自分の国が「衰退している」と感じている日本人は4割なのに、韓国では7割以上がそのように思っている。ただ・・・自国の衰退を感じる韓国人の半数が「将来、盛り返せる」(will recover)と答えているのに対して、日本人は4人に一人しかそのようには感じていない。かなり悲観的なのであります。確認しておくと、これらの数字はその国の人びとが「思っている」「感じている」ことを表したものであって、実際に国が壊れている状態にあるかどうかとは別の話であるということです。

back to top

5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 

life expectancy: 寿命

2月22日付のBBCのサイトによると、2030年までには韓国が世界最長寿国となり、韓国人女性の平均寿命が世界で初めて90才を超えるのだそうですね。ロンドンのインペリアル・カレッジと世界保健機構(WHO)が先進35か国の寿命を調査・分析した結果、そのような予測になった。インペリアル・カレッジのエザッティ教授によると、韓国はさまざまな面で「物事がうまくいっている」(a lot of things right)国なのだそうであります。例えば社会的な平等が確保されストレスが低く、肥満率も世界で最も低い。反対に日本は長寿ランキングにおいては下落の一途を辿るのだそうで、男性の平均寿命は現在の第4位から2030年には第11位にまで下がるものとされている。


2030年の平均寿命 

先進国の中で平均寿命が最も低くなると予想されるのがアメリカで、男性が80才、女性は83才と予想されるのですが、これはメキシコやクロアチアと同じような数字なのだとか。エザッティ教授はアメリカについて「韓国のほぼ正反対」(almost opposite of South Korea)であるとして、社会的な格差の大きさや国民皆保険制度の欠落などを挙げている。アメリカはまた先進国としては唯一、身長の伸びが停まる国になるものとされており、その理由として幼少時の栄養不足が挙げられている。ちなみに英国は2015年から2030年の間の15年間で、男性の平均寿命が79から82才へ、女性のそれが83から85才まで伸びると予想されています。

back to top

6) むささびの鳴き声
▼4番目の「社会が壊れている」という記事にこだわってみたい。特に韓国。政府・政党・メディア・大企業・裁判所などどれをとっても、日本との比較は言うまでもなく、国際的な水準からしても既成の権威のようなものに対する「不信感」が高く、その結果として自分たちの社会が「壊れている」と感じる人の割合は100人中70人強にものぼっている。また日本のメディアを通じて伝わってくる韓国の政治状況(北朝鮮問題も含む)を考えると、韓国の人びとがかなりのストレスを抱えながら生きているように思われる。

▼が、「どうでも英和辞書」に出ている「平均寿命」に関する記事によると、韓国社会は「物事がうまくいっている」というお墨付きをもらっている。平等でストレスが少なく、肥満率も低い国というわけで、世界の国々がお手本にしたくなるような国であるというわけです。残念ながらむささびは韓国へ行ったことがないし、韓国人の友人がいるわけでもないので直接には全く分からない。不思議だ、としか言い様がない。

▼で、日本はどうなのか?「社会が壊れている」と感じる人は100人中30人しかいない。韓国とは極端に違う。この数字は社会が壊れていると「感じる人」の割合であって、実際に社会が壊れているような状況なのか(政治的な汚職がはびこっている・殺人事件が急増している・離婚率が高いetc)どうかとは別の数字です。韓国人は、それほど社会が壊れているわけでもないのに、そのように感じてしまうほど「敏感」なのに対して日本人は社会状況に対して「鈍感」なのかもしれないよね。本当は壊れているのに、そのように感じないということ・・・。

▼・・・ということとまんざら無関係とは思えないのが「森友学園」のハナシですよね。おそらくむささびの見落としであろうと思うけれど、安倍さんと森友学園の問題について英国メディアが取り上げたのは2月24日付のGuardianのサイトだけで、見出しは下記のようなものだった。
▼英国ではないけれど、Irish Timesもこの話題を取り上げているのですが、見出しは "Japan’s Shinzo Abe under fire over ultra-right school" ということでGuardianのそれと殆ど同じです。両方ともこの問題を安倍さんと極右翼勢力との関係という視点から取り上げている。用地の問題も背景説明として書かれてはいるけれど主なるポイントではない。

▼日本のメディアはどうか?これもむささびの印象にすぎないので間違っていたら謝りますが、もっぱら土地の取得に絡む学園と安倍夫妻や政治家の関係で大騒ぎになっているのではありません?でも(むささびの感覚からすると)本当の問題は、子供に「教育勅語」なるものを朗唱させるような幼稚園・学校が存在しているということ、しかもそれを「素晴らしい」と考えている人物が首相の座に坐っていることにある。ネット情報によると、日本では昭和22年に教育基本法が制定され、その翌年に衆参両院で「教育勅語の排除」が決議されている。「戦後レジームの見直し」を掲げる安倍さんは、その教育勅語を復活させようとしている学校法人を素晴らしいと思っていた。けれど日本人の大多数がまさか安倍さんが教育勅語の復活まで考えているとは思わなかった。

▼「社会が壊れている」と感じる日本人は100人中30人いるけれど、圧倒的多数である70人はそのようには感じていない。森友学園の問題について、土地の値段を8億もまけてもらいやがって、と怒る人はいるけれど、「子供らに教育勅語なんぞ教えやがって!」と怒る人はどの程度いるのか?そもそも圧倒的多数が、「自分の社会は壊れていない」と感じるような社会は人間が生きる場として健全(sane)と言えるんですかね・・・?

▼森友学園は、児童の両親あてに「在日韓国人、支那人に近づくな」という「指導」をしていたのですよね。悲しいことではあるけれど、中国人のことを「支那人」と呼んで喜んでいたのは森友学園だけではないのですよね。あの「元東京都知事」も同じだった。アメリカ南部で白人が黒人のことを「ニガー」呼ばわりするのは、白人の劣等感のようなものが深層心理として働いている(と言われる)。「元都知事」も中国に対するコンプレックス(劣等感)に凝り固まっているということよね。

▼その中国コンプレックス症患者が、先日、豊洲問題を語るべく日本記者クラブで記者会見をやっていましたよね。「結局は責任逃れなのか」(毎日新聞社説)、「責任逃れではないか」(東京新聞)、「石原氏は責任を回避するな」(読売新聞)という具合で、メディアの人びとの反応はさんざんという感じだった。朝日新聞や日経は社説で取り上げることもしていなかったのでは?笑ってしまったのは、毎日新聞の社説で「会見は石原氏の希望で行われた」と書いてあった。読み方によっては、「自分勝手に俺たちの場(日本記者クラブ)に乗り込んで来たくせに、何なんだよ、これは!」というメッセージともとれる。

▼お元気で!
back to top
←前の号 次の号→
むささびへの伝言