musasabi journal

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405号 2018/9/2
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
とうとう9月になりました。この夏、暑さに「恐怖」を感じようとは思いませんでした。これから少しはまともな気温になってくれるのでしょうか?夜になると虫の音がはっきり聞こえるし、柿の木には実がなり始めている、埼玉県の山奥の畑では赤とんぼが飛び始めている。あ、もう一つ、月見草が咲いていました。彼らにとっては普通の季節の移り変わりなのかもしれないけれど、「摂氏38度」なんて絶対に普通じゃない。

目次

1)スライドショー:イングランドの秋
2)メイ政府のホームレス対策
3)声を出すホームレス
4)容疑者のプライバシー
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1) スライドショー:イングランドの秋

寒くて暗い冬、楽しさを予感させる早春、日本ほどではないけれど、それなりに暑い夏・・・いろいろな季節に身を置いたことがあるイングランドですが、むささびが唯一直接知らないのが秋のイングランドです。"England in autumn" というキーワードでインターネットを当たってみたら美しい風景写真がたくさんありました。絵葉書コレクションという気がしないでもないけれど、スライドショーにしてみました。それにしても・・・今年の日本は、あの美しい秋が本当に来るのか、ちょっと自信がなくなってきた。

▼"Autumn in England"というキーワードを入れると、出てくる写真の多くが樹木を中心にしたロングショット(遠景)なのに、「日本の秋」という言葉を入れると、樹木もありますが、ススキ、月、食べ物のようなモノでクローズアップの写真が結構出てくる。日本の秋の方が少しだけバラエティに富んでいるかもしれない。

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2) メイ政府のホームレス対策


去る8月13日、メイ政府が、ここ数年増加の一途を辿るホームレスについての対策を発表、これから2年間で約1億ポンド(ざっと140億円)を投じて2027年までにはこれを一掃する計画なのだそうです。が、The Economistによると、英国政府は外国におけるホームレス対策として効果を上げている方法があるのに、あえてそれを見過ごしているのではないかと批判的です。

 英国におけるホームレスの数の推移

そもそも英国には何人くらいのホームレスが存在するのか?政府の推定(2017年)によると、無作為に選んだある一日(季節は秋)におけるホームレスは4700人で、2010年の約1800人に比べるとかなりの増加となっている。専門家によっては4700人どころか8000人に達するとする人もいる。

「まず住宅を」

The Economistによると、英国のホームレス関係者が一様に主張するのは「フィンランドに見習え」ということなのだそうです。アメリカ、カナダ、デンマーク、フランスなども見習っているフィンランド方式のホームレス対策を一言で言うと「まず住宅を」(housing first)という発想にある。ホームレス支援というと、これまでは簡易宿泊施設(シェルター)のようなところを地方自治体が提供、その次に一時的な住まいに移り、それからアパートのような普通の住居(永住場所)へ移動するというやり方が一般的だった。フィンランド方式(housing first)の場合は路上生活者がいきなり永住のための住宅で暮らし始めるということになるのですが、日常生活を始めるに際して必要となるサポートをソシアル・ワーカーたちが提供する。


フィンランド方式は英国でも10か所以上の町でパイロット計画として進められており、それなりにうまく行っている。少なくとも路上生活者を減らす役には立っている。The Economistが紹介する30才になる女性(マンチェスター在住)はつい最近までホームレスだったのですが、チャリティ組織の助けもあってフィンランド方式で「ちゃんとしたエリア」(decent area)のワンルームのアパートに入居することができた。彼女の場合、精神不安定、躁うつ病などを抱えている上に(あるいはそれが理由で)麻薬常習者でもあった。

平均寿命は43

そのような彼女にとって地方自治体が用意する「ホームレスのためのホステル」で生活するのはタイヘンなのだそうです。そこで暮らす人びとの中には精神病状態の人も多くて一緒に暮らすのは難しい。2016年に行った調査では、ホステル運営者の7割以上がホームレスの入居を断るという数字もある。その理由は、ホームレスは他の施設利用者やスタッフに危害を及ぼす可能性が高いということ。そうなると彼女はどこにも行き場がないのだから「あのままだったら死ぬしかなかった」(if I were out there I’d be dead)。英国におけるホームレスの平均寿命は43才なのだそうです。


現在のところ彼女のようなホームレスは、まずは自治体が提供するシェルターのような仮住まいで暮らしながら(例えば)禁酒、麻薬の利用中止のような「努力目標」をクリアしなければならない。「フィンランド方式」なんてその先のハナシである、と。しかし精神病、麻薬中毒のような問題を抱えるホームレスがこれらの試練を乗り越えることは至難の業で、半数が途中でギブアップして路上生活に逆戻りしてしまう。

サポート体制の拡充


しかしさまざまな問題を抱えるホームレスも最初から「自宅」と呼べるような場所に住むと、8割方が1年以上定住するのだそうです。もちろんそれを達成するためには他者によるサポートが絶対必要で、これにあたるチャリティのスタッフは正に「何から何まで面倒見る」(everything job)覚悟が必要なのだそうです。


もちろんホームレスが定住する住宅を見つけること自体タイヘンです。2017年、生活困窮者のために用意された「社会住宅」(social housing)の数はイングランド全土で約30万戸だったのですが、これらを必要とする家族は115万世帯にのぼった。全く足りない、なのに政府がこの種の住宅建設を増やそうという計画はない。

社会経費の節約に繋がる

ホームレスの更生をサポートするスタッフの数も絶対的に不足している。フィンランド方式の「まずは住宅を」制度を取り入れようとしても、そこで生活するホームレスのためのサポートが余りにも不足している。

しかしホームレスが少なくなれば、彼らの存在によって必要としていた社会経費(刑務所・病院・専用避難所などに要するお金)が節約されることは目に見えている。マンチェスターで路上生活をしていたある男性の場合、2年間で逮捕が54回、収監が24回もある。なのに住宅を与えられてからというもの、彼は一度も警察の厄介になったことがない。住宅を与えられたからといって、誰も彼もが禁酒に成功するわけではないし、麻薬を止めるわけでもない。しかしそれでも全体的なホームレスの数は確実に減少する・・・というわけで
  • フィンランド方式を採用しないかぎり、2027年までにホームレスを一掃するというメイさんの約束が実現される可能性は低い。
    Unless England moves to the Finnish model, Mrs May’s promise to end rough sleeping by 2027 is unlikely to be met.
とThe Economistは主張しています。

▼フィンランドの公共放送YLEのサイト(英文版)に、2008年に始まった"Housing First"というホームレス対策のことが詳しく出ています。その中で5年前に離婚して住む場所を失ったある男性の話が出ています。最初のうちは友人の家を泊まり歩いたり、ホームレス用のシェルターのようなところに寝泊りしていたのですが、"Housing First"の活動に取り組むNPOのはからいでヘルシンキ市内のアパートで暮らせるようになった。

▼その最初の朝、起きて冷蔵庫を開けてジュースの缶を取り出しながら嬉しさに泣けて泣けて仕方なかった(I cried tears of happiness)のだそうです。「自分の家」(your own home)と呼ばれるものを持つことの大きさを実感した。今夜はどこで寝ようかと心配する必要がない生活の素晴らしさということです。

▼フィンランドでは2009~2016年の7年間でホームレスの数が約18%減った。必ずも"Housing First"だけのせいではないかもしれないけれど、この活動が始まった時期とほぼ同じくしてホームレスの数が減っている。EU加盟国の中でフィンランドは唯一、ホームレスが減っている国なのだそうです。ただ現在でも6500人程度のホームレスは存在する。人口が500~600万の国であることを考えると決して少ない数ではない。人口1億2000万の日本でさえも5534人(2017年)となっている。おそらく計算方法が違っていたり、「ホームレス」の定義が違うというような理由があるのではないかと思いますが・・・。

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3) 声を出すホームレス



BBCのサイトに "Homeless-by-sea" という特別企画記事が出ています。12人のホームレスを取材して彼らの言葉で、自分たちが路上生活を送るようになった経緯を語ってもらうというものです。これを読んでいると、誰でもホームレスになり得るということが分かる・・・とBBCは言っている。この中から3人だけピックアップしてみますが、特徴的なのはいずれも海辺の町でホームレス生活を送っているということです。BBCによると、英国内で最もホームレスが多いのはロンドンの中心部ですが、その次に多いのが、なぜかロンドンから離れた海辺の町なのだそうです。なぜそうなるのか?BBCにも分かっていないようであります。



路上はファミリー

海辺の町、ブライトンで路上生活を送るステイシーは38才、ルネッサンスと宗教改革時代の美術史を専門にする歴史学者だった。路上で暮らして2年になる。「結婚した男が悪かったのよ。I married the wrong man. 自宅も抵当に入って、下降線を辿りっぱなしだったけれど、「なるべく考えないようにしている。I try not to think about it all」とのことであります。


ブライトンに長居するつもりはなく、もっと西のデボンの方へ行こうと思ってバスに乗ってブライトンで降りたけれど、お金がなくてバスのキップが買えない、かと言って寝袋を持っていたわけではないので野宿もできない。救急車が止まっていたので、病院へ連れて行ってくれとせがんだら本当に連れて行ってくれた。その病院の急患用待合室のようなところで毛布にくるまって寝た、それが初のホームレス体験だった。でも翌朝になって追い出されてしまった。

次の日、ホームセンターへ行って、布団を分けてもらったので野宿も楽にできるようになった。いろんな人がいろんなものをくれる。例えばラジオをくれた女性もいる。食べ物をくれる人もいる。寒さに震えながら私のところへ来た人がいたから、自分がもらった食べ物をあげてしまった。自分が持っていればお金をあげて「温かいモノでも食べなさい」と言うことにしている。道端で暮らしていると、みんなファミリーのような気分になる。

私はここでハッピー、シェルターに入りたいなんて思わない。I don't want to use night shelters.正直言うと、屋内に入ることが嬉しくなくなった。お店に入るのも好きでないし、一晩屋内で過ごすというのもやりたいとは思わない。

ダメなのは人間から離れて過ごすこと。他の人と話をしないで自分のアタマの中だけで過ごしていると、鬱状態にかかりやすくなる。Depression is so easy to kick in. ここにいると鬱にかかる暇がない。しょっちゅう誰かが話しかけてくるから。中には別の場所へ連れて行ってくれる人もいる。



生まれた町で・・・

クリスが北イングランドのリンカンシャーにあるクリーソープス(Cleethorpes)という町(人口4万)でホームレス生活を始めて18年になる。と言っても18年間ずっと路上生活をしていたわけではない。彼自身がこの町の出身で、学校が嫌で16才で辞めてから刑務所を出たり入ったり・・・入っていないときはホームレスをやっている。
  • 慣れるもんだよ、こんな生活も。ほかに生活を知らないもんな。俺にとってはこれが人生というわけ。
    You get used to it. I don't know anything else really. It's just the way it is for me.

学校を辞めたときだって、何の夢もなかったし、自分が何になりたいのかさえも分からなかった。ただただ学校が嫌だっただけ。自分の地元ということもあって、クリスは普通のホームレスのように物乞いはやらない。自分がホームレスであることを町の人に知られたくないから。だから毛布を抱えてウロウロするということもやらない。身なりもなるべく普通の恰好をしている。
  • 何故こんな生活をしているのかと聞かれても答えらえないし、他人に分かってもらおうとも思わない。自分だって分からないんだから。
    Someone says ‘explain it to me’ - but I can't. I wouldn't expect people to understand - because I don't understand what's going on.”
ある朝、他人の家の前で寝袋に入って寝ていたら、その家の主人が足で蹴飛しながら「こんなところで寝るんじゃねえ」(Oi you. You can't sleep there.)と言ったので、すっくと起き上がったらクリスがまともな服装をしていたので「悪かったな」(Oh sorry mate)と驚いていた。
  • でもあいつは間違っているよ。もし俺がみすぼらしい身なりのホームレスなら蹴飛ばしてもいいってことか?いいわけないだろ。
  • But that's wrong. If I was a scruffy homeless person would it be OK to kick me and tell me to get out? No.
とクリスは主張している。


ホームレスを助けたい

ウェールズ第2の港町・スウォンジー(Swansea)で路上生活を送っていたアランの場合、生まれたのはロンドン郊外のライギット(サリー)というベッドタウンだったけれど、子供のころに両親は離婚、父親に育てられた。高卒後にプロのゴルフ・コーチの道に進み、一時は1週間に1000ポンド稼ぐところまで行ったけれど、今にして思うと、若いくせに金持ちになりすぎた。ロンドンのクラブへ通い始めたけれど、いつもポケットはキャッシュで一杯、それを振り回して遊びまくった。おかげで酒にまつわるトラブルに巻き込まれることも多く、社会性(socialisation)も身につかなかった。

ゴルフ・コーチからパブ経営へと転身する中で、結構な住宅街の3寝室のすごい家に住めるようになった。そんなときにある女性と知り合いになり、生まれて初めて「真面目な付き合い」(my first serious relationship)をするようになった。けれど7年間続いた挙句に酒がもとでアウト。彼女を取るのか、酒を取るのかと迫られて、酒の方をとってしまった。

別の女性との間に娘ができたけれど、ここでも同じことが起こる。相手の女性に「酒を取るのか、娘を取るのか」と言われて、酒の方を選んでしまった。人生で最悪の選択をしてしまった(it's probably the most awful thing I've ever done in my life)わけだ。



娘は今ごろ18になっているはず。連絡を取りたいと思うけれど、「娘さんに会いたいのならあなた自身がもっと精神的に強くならなければダメだ(get mentally strong)」と皆に言われる。自分もそう思う。I tend to agree with that.

女のことも娘のことも忘れて、ドーセットに引っ越した。友人がやっているパブで働くためだったけれど、それがつぶれて自分は一文無しで家も失ってしまった。つまりホームレス。今から12年ほど前のことだった。ドーセットにいたころに知り合いになった女性がウェールズの人間だったので、自分もここまでついてきたというわけだ。


2年ほど前に心臓発作を起こして倒れてしまった。その頃になって路上生活はとても続けられないと感じるようになった。身体で感じるのだ。そんな時に大げんかに巻き込まれて顔面を殴りまくられた。路上に倒れているところを警官に助けられて病院へ担ぎ込まれた。検査の結果、脳に問題があることが分かった。いつも喧嘩をしては殴られていたし、酔っぱらって道路に転倒することも度々だったので・・・。

有難いことに、現在はチャリティ組織の手配で部屋を与えられて暮らしているけれど、右半身がまともに動かない状態だ。2~3か月前にチャリティの人たちの手配で、私の母と弟に面会した。母親はただ黙っていた。おそらく情けなくて言葉も出なかったのだろう。I can understand that she might have been overwhelmed by it all.

アランは自分の人生のほぼ4分の1をホームレスとして過ごしたわけですが、現在の希望は自分を助けてくれたようなチャリティのスタッフとしてホームレス支援の仕事をすることだそうです。最近では自分がホームレスになってしまったスウォンジーの町へは近寄らないようにしている。再び知り合いに出会って誤った道に進んでしまうかもしれないから。I could be led up the wrong path. そして思うのは
  • もうそれだけは許されない
    I can't afford to do that any more.
ということだそうです。

▼英国にはホームレス関連のチャリティ組織がいろいろある。主なものだけ紹介しておきます。


▼BBCの記事とは直接関係ないけれど、8月31日付の西日本新聞の記事によると、北九州市に「生笑(いきわら)一座」というお笑いグループがある。元ホームレスが作っているグループで、活動の目的は子供たちの自殺防止にある。子供たちを相手に自分たちの人生経験を語ることで、子どもの自殺を食い止めようというもので、これまでに全国の小中学校などで94回の公演を開き、延べ約2万人の子供たちに語りかけてきた。メッセージはただ一つ「苦しかったら助けてと言っていいんだよ」ということ。

▼この一座を主宰しているのが「抱樸(ほうぼく)」というNPOなのですが、そのNPOの理事長をやっているのが、むささびでも紹介した牧師の奥田知志さんで、元ホームレスによる一座結成の理由について「自殺と隣り合わせの路上生活を生き抜き、笑って過ごせるようになった人々の体験や言葉の中に、自殺を思いとどまらせるヒントがある」と言っています。

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4) 容疑者のプライバシーと英国人

むささびと同じような年令の皆さんはクリフ・リチャードという名前のロック歌手のことを聞いたことがあるのではありませんか?ウィキペディアによると1950年代末から60年代にかけて活躍したというから、むささびが中学生から高校生だったころの人なんですね。年令はむささびとほぼ同い年ですが、現在はサー・クリフ・リチャードと呼ばれるなど、社会的にも確立した「名士」のようであります。


そのクリフ・リチャードのことが、8月15日付のBBCのサイトに出ていたのですが、歌手活動とは無関係で、クリフ・リチャードがかかわった(かもしれない)性犯罪に関するBBCの報道をめぐる訴訟沙汰に関する記事だった。

今から4年前の2014年、バークシャーにあるサー・クリフの自宅が警察による捜索を受けたことがある。それ以前にささやかれていた彼の過去の性犯罪に関係する捜索だった。家宅捜索があるという情報を得ていたBBCがヘリコプターを飛ばしてその様子を空から取材・報道した際に(当然のことながら)それがサー・クリフ宅の捜索であることを視聴者に伝えた。


が、結果からいうと、家宅捜索は空振りにおわり、サー・クリフは逮捕されることも告発されることもなかった。サー・クリフはBBCの報道がプライバシーの侵害にあたるとして裁判所に訴えた結果、彼の言い分が認められた。BBC側は、サー・クリフの性犯罪の嫌疑について取材・報道することは「公共の利益」(public interest)に合致するものであり、裁判所の判決は表現の自由(freedom of expression)の侵害にあたるとして上告する動きを見せていた。が、結局これを断念するという結論に達した・・・というのが8月15日付のサイトに出ていたニュースだった。

BBCの記事によると、メディアの世界では報道の自由という観点からBBC側の言い分を支持する意見が多く、普段はBBCについて批判的な新聞でさえもこれを支持する意見が多かったのだそうです。なのにBBCが上告を取り下げたのは「世論のかなりの部分がBBCの言い分を支持していない」(a significant section of the public did not agree with the BBC position)ことが明らかになったからであると言っている。


メディアの世界ではBBCが支持されているのに、世論が支持していない・・・ということでむささびが思い当たるのが、世論調査機関のYouGovのサイト(7月23日)に出ていた
という見出しの記事だった。メディアによる関係者の氏名公表はどの時点で許されるのか?という調査だったのですが、結果は次のようなものだった。

逮捕はされたが告発はされていない人間の氏名を
公表(報道)することは許されるか?

BBCの記事では、サー・クリフの「性犯罪」なるものについて詳しく書かれていないけれど、彼が「捜査対象になってはいるが逮捕も告発もされていない」(not been arrested or charged)ケースであることは明らかで、この世論調査に関する限り、8割を超える英国人が、名前を公表(報道)するのは間違いだと考えていることになる。

▼むささびは(情けないけれど)司法だの警察などのことに全く弱い。なのに大いに関心はある。例えば日本のある新聞サイトに出ていた次のような記事:
  • 意識不明の女性をホテルに放置したとして、兵庫県警有馬署は26日、保護責任者遺棄の疑いで神戸市灘区森後町、土建業、安田正容疑者(56)を逮捕した。「通報する10分前まで生きていた」と供述し、容疑を否認している。
▼安田正という人は「保護責任者遺棄」という罪を犯したと警察に疑われて逮捕されたのですよね。この記事が掲載された時点では「疑われている」というだけで、実際にその罪を犯したのかどうかは分からない。つまりこの記事はある人物が「警察に疑われた」ことをニュースにしているのですよね。それでも人物の実名・年齢・職業から現住所まで明らかにしている。

▼日本では「実名報道それ自体は違法とはならないという考え方で一貫している」のだそうですね。その人物の名前は「犯罪ニュースの基本的要素であって、犯罪事実自体と並んで社会の重要な関心事である」というのがその根拠なのだとか。上の記事の場合も「安田正」ではなく「56才の土建業者」では、ニュースとしての基本的な要素を欠いたものになるということですよね。実名こそが「公共の利害に関する事実」である、と。裁判官がメディアに協力的なのですね。

▼むささびは、その種の発想をどうしても好きになれないけれど、「世間様」の常識はそのようになっている。百歩も千歩も譲って実名報道が「公共の利益」にかなうものであるとします。それにしてもむささびが受け入れられないのは「~容疑者」という呼び方です。法律的には「被疑者」というのをメディアでは「容疑者」とするのですね。なぜこのような呼称をつける必要があるのか?警察や裁判所が安田正氏のことを「安田被疑者」とか「安田被告」と呼ぶのは仕方ないとしても、公的な権力も何もないはずのメディアが「安田正容疑者」と呼んだりする権利はどこから来るのか?

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5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 
 

daylight saving time: サマータイム


2020年の東京五輪の時だけ日本でも導入しようとか言っている、あれですよね。"daylight saving time" (DST) は「米語」で、「英語」は "summer time" らしい。英国を含むヨーロッパでは幅広く行われてきた。2018年の場合、英国では3月25日(日)から10月28日(日)までの約7カ月がサマータイム。3月25日の午前1時に時計を1時間進めて2時とし、終了時(10月28日)には午前2時に1時間遅らせて午前1時とする。

サラリーマンの勤務時間が9時~5時であることはサマータイムが始まっても同じ、ということは、冬時間でいうところの8時~4時が勤務時間ということになる。早く始業して早く終業するわけですが、ヨーロッパの夏は夜の9時半ごろまで明るいから、仕事が4時に終わると冬に比べると長い時間「明るさ」を楽しむことができる。日本ではむささびが小学生だった頃(1948年~51年)に行われたのですね。

このシステムを最初に提唱したのは、アメリカの政治家、ベンジャミン・フランクリンで1784年だそうですが、実際に採用されたのは第一次世界大戦(1914~18年)のころだった。つまり100年間続いてきたということです。それがEUに関する限り、どうやら今年(2018年)が最後で、来年からはなくなるらしい。欧州員会が加盟国の460万人を対象にしたアンケートを実施した結果、サマータイムを廃止すべきとする意見が84%を占めたのだとか。正式に廃止するためには、加盟28か国と欧州議会議員による賛同が必要なのですが、おそらく2018年が最後になるであろうとされています(BBCの記事参照)。

むささびも一度だけ体験したけれど、あんなことやって何が面白いのか?と思いましたね。夕方の6時になる。まだ明るい。7時になっても8時になっても明るい。当たり前です、それまでは5時であり6~7時であったのだし、夏になれば日が延びるのです。だから人間は季節を感じるのではありませんか。

東京五輪の際にこれを採用するなどという発想を誰が思いついたのか知りませんが、断固として真夏の開催を回避することを主張すべきだったのを「言ってみても通らないだろう」という如何にもお役人的な感覚による小手先だけの変更案であり、「それ、やろう!」と賛同したのがシンゾーというのも、何やら2020年五輪の哀しい現実を象徴していますね。
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6)むささびの鳴き声 
▼兼好法師という僧侶が「徒然草」というエッセイ集の中で「物言わぬは腹ふくるるわざなり」と言ったのが今から680年以上も前のことだそうですね。「言いたいことを言わないのは不愉快だ」というような意味ですよね。700年も前にこんなことを言う文化人がいたんですね、日本には。すごい国ではありませんか?というわけで、むささびも兼好法師に見習うことに・・・。

▼8月28日付の毎日新聞のサイトに出ていた「視覚障害者を端の席に」という記事、読みました?名古屋のCBCテレビと名古屋市が共同開催したプラハ放送交響楽団のコンサートで、目の不自由な女性が購入していた席とは別の席に座らされ、歩行できるのに車いすで移動させられたという記事です。CBCは「不適切な対応だった」とホームページで謝罪したのだとか。記事によると、この人は会場の中央の席のキップを購入していたのに端の席で聴くことを余儀なくされたのだそうです。

▼むささびはクラシック音楽のコンサートには行ったことがないけれど、中央の席の方が端の席よりも高いのではないかと想像します。記事によると、5000円を追加で支払えば、中央でしかも車いすの席に座れると案内したとのことです。名古屋市は「女性との意思疎通に問題があった」とコメントしているらしい。「意思疎通に問題」ってどんな問題だったのか?要するに「あんたは目が悪いんだから端っこに坐るっきゃない。どうしても真ん中に坐りたいのなら5000円払って車いすに坐れ」と言っているのと同じですよね。

▼ぜひ知りたいのは、自分で歩けると言っている人間に車いすを強要し、端っこの席でコンサートを聴かせることにした「会場スタッフ」にそのように命令した人間の感覚です。スタッフの独断でそのようなことをするとは思えない。まさか、この女性にコンサートの料金は全額返したのでしょうね。「謝って済むことではない」を英語でいうと You cannot apologise です。

▼むささびにとっては雲の上のような存在である雑誌の編集長だった人が、Facebookで「独り言です」と断ったうえで「やはり、東京オリンピックなどやってる場合じゃない」と言っています。東北大震災からこの方、最近の西日本豪雨に至るまで日本は災害の連続です。オリンピックに投入するカネも人間も「被災地復旧に向ける決断が必要だった」・・・なのに最近ではアジア大会を機に、「無駄に元気を鼓舞」してオリンピック開催が至上目標であるかのような雰囲気作りが行われている、そんなことに苛立ちを覚えると言っている。全く正しい。

▼アジア大会で思い出したのですが、日本のバスケットボール選手が日本へ送り返されてしまった、というあの件。8月20日付のBBCのサイトに次のような書き出しの記事が出ていました。
  • Four Japanese basketball players have been sent home from the Asian Games for allegedly paying women for sex. 
    日本のバスケットボールの4人の選手が「女性に金を払って性行為をした」とされて日本へ送り返された・・・。
▼NHKのサイト(8月20日)は「バスケ男子選手が公式ウエアで深夜の繁華街に」という見出しで伝えています。他の日本のメディアの報道も「バスケ4選手を帰国処分 公式ウエアで歓楽街」(日経)、「公式ウエアで買春行為 山下団長が謝罪」(時事通信)などの見出しがあり、記事本文も「4選手が、公式ウェアで市内の歓楽街を訪れて買春していた問題で・・・」(朝日と読売が殆ど同じ)のような感じだった。どの記事も「公式ウエアで」を見出しもしくは本文の書き出し部分で伝えている。日本の全国紙では唯一、毎日新聞だけが「バスケ4選手が買春か JOC処分、帰国の途」という見出しになっていた。 BBCと同じです。これだとお咎めは「買春行為」ということになる。

▼NHKテレビのニュースが「日本代表の選手4人が、公式ウェアを着たまま繁華街に行き、女性とホテルに行くなど不適切な・・・」と伝えるのを耳で聴きながらむささびは、公式ウェアさえ着ていなければ、その種の女性とホテルにしけこんだとしてもお咎めはなかったのだろうか?と思いました。あるいは公式ウェアを身に着けていても歓楽街へ行っただけで買春をしなかった場合は?たかだかユニフォーム程度のことでキャンキャン騒ぐことはないでしょと怒鳴りたくなるわけ。中には「国民の税金でアジア大会へ行かせてもらったくせに」と非難している人もいたのには呆れてしまった。「国民・国民と偉そうに言うんじゃねぇ!」と言っておきたい

▼今朝(9月2日)の埼玉県飯能市はかなり涼しいです。雨が降っています。お元気で!

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むささびへの伝言