musasabi journal

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435号 2019/10/27
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
台風と大雨、皆さまのところはどうでしたか?我々が暮らす埼玉県飯能市近辺も降りました・降りました。自宅にはこれといった被害はなかったのですが、いつもワンちゃんを遊びに連れて行く山奥の場所が道路崩落だの土砂崩れだのでアウトになって往生しています。

目次

1)天皇を「無意味」にしているもの
2)楽観主義と悲観主義
3)社会が壊れている・・・か?
4)来るところまで来た?BREXIT
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)天皇を「無意味」にしているもの


10月22日の天皇の「即位の礼」の5日前(10月17日)のThe Economistが「日本の天皇は自らの宮殿で捕らわれの身となっている」(Japan’s emperor is a prisoner in his own palaces)という見出しの記事を掲載しています。イントロが記事のメッセージを伝えています。
  • Stifling bureaucracy and ritual are making Naruhito irrelevant to his subjects 頑迷な官僚機構と儀式のおかげで、徳仁天皇が国民にとっては意味のない存在となる
というわけです。記事によると、天皇がオックスフォード留学時代の思い出を綴った“The Thames and I”(テムズとともに -英国の二年間-)という本を出そうとした際に宮内庁(Imperial Household Agency)が抵抗したのだそうですね。その理由はこの本が皇室に対する「無遠慮とからかいを呼び起こす」(it would invite familiarity and ridicule)かもしれないということだった。

▼アマゾンのサイトによると『テムズとともに』は中古本で価格は「9850円より」となっており、英語版はペーパーバックで1863円(ハードカバーは8011円!)となっている。

The Economistによると、宮内庁の役人はまた1990年に秋篠宮が結婚式を挙げた際に、あるカメラマンが、新郎の眼に入った髪の毛を新婦が振り払う様子を撮影したということを理由に皇居への出入り禁止にしてしまった。その理由は正式なポーズをとっていない写真撮影を禁止していたにもかかわらずそれを守らなかったということだった。問題の写真ではないかと思われるものが、今年の2月11日付の東京新聞の朝刊で使われているようです。

この写真を撮ったカメラマンが宮内庁から出入り禁止を食らった!? 東京新聞に出ているということは、カメラマンも東京新聞の人だったということ?だとしたらさすが東京新聞です。

The Economistはまた、宮内庁による諸々の支配に対して、日本のメディアは「大体において従順」(by and large respectful)であるとしています。例えば1993年の徳仁皇太子と小和田雅子さんとの婚約さらには雅子さんのうつ症状などを最初に報じたのは外国メディアだったのだそうですね。日本には英国のような猥雑な大衆紙が皇室のラブロマンスをすっぱ抜くというような慣習がない。もちろん日本のメディアも妻や娘にあたる人物が皇室としての義務違反(shirking their duties)のようなことをすると、それなりの批判はするけれど、英国の大衆紙のような大騒ぎはやらない。

皇室の個人財産は「比較的限られたもの」(relatively limited)であり、「遊び人のプリンスや派手好きのプリンセス」などの出番はほとんどない。日本の皇室が持っていた資産は、そのほとんどが第二次大戦後に没収されてしまっており、宮殿だの御料地のようなものは国家の財産となっている。ある専門家によると、明仁上皇が平成時代の天皇であった頃に自分で自由に使えたお金は1年間で約500万円にすぎず、昭和天皇が1989年に死去した際に遺した土地の価格は20億円にも満たないものだった、とのことです。


皇室の動きは何から何まで宮内庁の官僚によって見張られており、官僚たちは皇室のメンバーによる公的な発言が憲法上の「象徴」の範囲を逸脱しないように目を凝らしている。天皇も皇后も、他の国の王室と同様に、外国へ親善旅行に出かけたり、国内でも被災地や学校訪問などをするけれど、日本の伝統主義者は天皇の仕事を古ぼけた時代遅れの神道の儀式(performing obscure Shinto rituals)を行うことであると考えている。

平成時代の天皇・明仁はナショナリストが死守しようとする慣習に抵抗することがたびたびあった。2011年の東日本大震災のときは歴史上初めてテレビを通じて演説をし、さらには二人で被災地を訪れ、被災者と床に膝をついて歓談した。明仁上皇はさらに安倍首相による平和憲法の改正に疑問を持っているようにも見える。2001年には記者会見において、朝鮮からの祖先について触れることで日本人の民族的な純粋さを有難がるナショナリストたちに反抗した。そして最後には政府の反対を押し切って退位した。



The Economistは、憲法上は天皇は「国家および国民の団結の象徴」(the symbol of the state and of the unity of the people)とされているけれど、古ぼけた皇室制度の中では単なる遺物(relic)になりかねないとして、
  • 徳仁天皇は、父親と同じように国内旅行の際などは肩の凝らない姿勢で国民に接する。犬をあやしたり、学童と話をしたりもする。しかしながら現在の日本の若年層の皇室への関心は低い。そして皇室もまたその存在をより意味のあるものにするためにできることは制限されてしまっているのだ。 Much like his father, Emperor Naruhito is relatively informal when touring the country, petting dogs and chatting with schoolchildren. But younger Japanese seem to have little interest in the royal family—and the royal family has scant leeway to make itself more relevant.
と書いている。

▼The Economistは「天皇という存在が日本人にとって意味のない存在になっている」と言っているのですが、キーワードは "irrelevant" です。日本語では「意味のない」となるかもしれないのですが、Cambridgeの辞書によると、この言葉は次のように定義されています。
  • not related to what is being discussed or considered and therefore not important 
▼「現在話し合ったり、考慮されていたりするものと関係していない、従って重要ではない」というわけ。"irrelevant" を "meaningless" と置き換えることもできるのだろうと思うのですが、それだと現実の世界との接点という意味がいまいち薄い気がする。"meaningless"が周囲の事情とは無関係に意味がないという意味なのに対して"irrelevant"は、今の現実には即さない・関係がない、と。日常会話で使われる「アンタは関係ねえんだよ」が"irrelevant"かもな。むささびが思うに、皇室関係のニュースとなると、途端に使われ始める敬語とか謙譲語のような言葉は止めた方がよろしいのでは?まさに"irrelevant"です。

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2)楽観主義と悲観主義



むささびが好んでクリックするサイトに "Our World in Data" というのがあります。世の中のさまざまな現象をデータ化して語ろうとするもので、スローガンとして
  • 世界の問題に調査とデータで挑戦する research and data to make progress against the world’s largest problems.
と書いてある。主宰はオックスフォード大学で経済を研究するマックス・ローザー(Max Roser)という人なのですが、この人は1983年生まれというからまだ36才です。サイトに収容されているデータのテーマは今年の9月現在で300件、グラフは3000件に上っている。


そのサイトに "Optimism & Pessimism" というセクションがあります。人間が感じる楽観主義や悲観主義はどこから来るのか、どこまで正当なものなのかを数字で語ってみようというわけです。過去何千年、何百年という歴史を通じて人間の生活はどう見ても向上してきていますよね。かつてに比べれば病気、戦争、飢餓などで死ぬ人の数は減ってきているし、昔に比べれば教育の機会も向上している、民主主義も拡大したり…というわけでかつてに比べれば人類の生活は「健全」(healthier)になっている。なのに…
  • なぜ人間(特に先進国の)はこれまでの世界の変化を否定的に見ようとするのか?なぜ我々は人間全体の未来についてかくも悲観的な見方をしてしまうのだろう? So why is that we – mostly in the developed world – often have a negative view on how the world has changed over the last decades and centuries? Why we are so pessimistic about our collective future?
というわけです。


個人的には楽観、社会的には悲観

ユニバシティ・カレッジ(ロンドン)のタリ・シャロット(Tali Sharot)という心理学者によると、人間には自分個人の生活については楽観主義が刷り込まれている(built into)のだそうです。例えば新婚のカップルに「将来離婚することはあり得るか?」と質問すれば「離婚なんてするわけない」という答えが返ってくる。なのに現実には英国における結婚の40%が離婚に終わるという数字が出ている。タバコを吸う人間に癌に罹る可能性の話をしても、自分だけは例外という態度をとる。権威ある医者が作成した統計を見せても同じ。

EUが主宰する世論調査にユーロバロメータ(Eurobarometer)というのがある。1995年から現在までの自分の仕事状況(job situation:職場が確保されているかどうか)について調査したところ約60%が「将来も変わらないだろう」と答え、20%が「事態が良くなっているだろう」と答えている。つまり80%が「楽観的」な見通しを持っており、職を失うなどと考えていない。

一方、それぞれの人びとが属している国の経済状態について尋ねると、殆どの人が「悪くなる」か「変わらない」という答えをしている。こちらの悲観主義については、実際の国の経済状況を反映している部分もあるけれど、共通しているのは、国レベルの状態が「悪い」ものであっても、個人レベルでは「良い」とするケースが圧倒的に多いということです。

先進国の衰退論

悲観論・楽観論と似たような現象としていわゆる「先進国」の人間に共通しているかに見える現象として "declinism"(衰退論) というのがある。自分たちの国が衰退の道を辿っているという感覚です。トランプの「アメリカを再び偉大な国にしよう」(Make America Great Again!)というスローガンは、アメリカがかつてに比べると落ち目であることを認めているわけですね。この現象に関しては英国も負けていない。かつての大英帝国の栄華を顧みながら「昔はよかった」とため息をつく。歴史家のデイビッド・エジャトン(David Edgerton)によると
  • 衰退論によると、もし英国がうまくやっていたら、世界の舞台で今よりもはるかに大きな地位を占めていただろうということになる。 Declinism holds, implicitly but clearly, that if Britain had done better it would have remained a much larger player on the world stage.
ということになる。

子どもたちの時代には自分の国の経済状態が・・・

ただ「衰退論」を唱える人間の問題点は、自分の国の「衰退」が地球規模の変化の一環であることを見逃して、英国自身が別の道を歩めば「衰退」することがなかったかのような考え方をすることである、と。さらにこの考え方の誤りは、いわゆる「衰退」が絶対的なものというより相対的なものに過ぎないことを見逃しがちであるということにある。特に経済における衰退論には誤解が多いのだそうです。例えばEU加盟国の中でも新しい加盟国の人間は将来に対して楽観的なのに、独・仏・英・伊などの経済的な主要国では悲観論が幅を利かせているという具合です。

最後にアメリカのPew Researchが27か国の成人を対象に、自分の世代と将来世代を比較して将来世代の方が経済的に良くなっていると思うかを聞いてみたところ、いわゆる先進国では悲観論が圧倒的だったそうです(上のグラフ参照)。

▼自分の将来には楽観的だけど、自分の国の将来には悲観的・・・つまり自分のことになると「希望的観測」(wishful thought)が入ってしまうということですよね。本当に楽観しているというより「そうあって欲しい」と思っている。

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3)社会が壊れている・・・か?



社会が壊れている 「強いリーダー」願望
政治家不信 移民は要らない
専門家不信

前々号のむささびで職業別信頼度についての国際調査のことを紹介しましたが、あの調査を行った英国の世論調査機関であるIPSOS-MORIがもう一つ面白い意識調査を行っています。それは英米日など27か国の人びとが自分の国や社会についてどのように感じているのかを比較するというものです。


社会が壊れている

IPSOS-MORIによると、殆どの国において多数の人びとが「社会が壊れている」(society is broken)と感じている。自分たちが暮らす社会が「壊れている」とはどのような感覚なのか?それまで「常識」とされてきたことが「非常識」となり、「非常識」とされてきたことが当たり前になってしまうと人間は「世の中、狂っとる」という感覚を持つ。それですかね。

社会が壊れていると思うか?

上のグラフで日韓英米だけを比べると、英米人の方が「壊れている」と感じる人間が多く、「壊れていない」とする人が少ないのですね。日本人が「壊れている」が一番少なくて、「壊れていない」が一番多い。別の言い方をすると、自分が属している社会の現状に居心地の悪い思いをしている英米人が多くて、日本人の方が居心地の悪さを感じているケースが少ないということ、かな?

調査対象になった27か国のうちで自分たちの社会が壊れていると感じている人が最も多いのはポーランドで、84%がそのように感じているのですが、「壊れてはいない」と感じている人間はたったの7%しかいない。ポーランド社会は欲求不満でいっぱいってこと!?そのように感じている人間が最も少ないのはサウジアラビア(24%)なのですが、この国で「壊れていない」と思う人間は45%もいる。イスラエル人も似たような反応を示す。一方がイスラム教でもう一方がユダヤ教、宗教が極めて強い影響力を持っていることが、この二つの国に共通している。


政治家不信

世界平均でもほぼ7割 (66%) の人びとが政治家に対する不信感を持っているようなのですが、その感覚が特に激しいのは南ア(78%)とメキシコ(76%)です。ヨーロッパではフランス人とスペイン人(75%)も厳しいけれど、英国人もかなり厳しい。英国人の場合、ここ数年このように考えている人が増えているのが特徴です。

政治家は自分たち(国民)のことなど考えていないと思うか?

ちょっと興味深いのは、ここでも日本人の対政治家不信の低さです。48%というのは27か国中最低です。日本以外ではスウェーデン(50%)とイスラエル(49%)も政治家がそれほど悪く思われていない国のようであります。ただ日本の場合、積極的に政治家を評価しているかというと、必ずしもそうではない。

経済政策が金持ち有利に進められていると思うか?


専門家不信

「専門家は私のような人間の生活を分かっていない」(experts don’t understand the lives of people like me)と思うか?という問いかけにおける「専門家」(experts)を別の言葉で言うと「知的エリート層」(intellectual elites)となる。その中には学者や役人も入っているけれど、ジャーナリストが入っていることは間違いない。「知的エリート層」に対する不信感が高い国のトップはアルゼンチン(75%)なのですが、それに続くのがメキシコ、フランス、スペイン、チリという具合でフランス以外はすべてスペイン語の国が来ているのは何か理由があるのか?

専門家は自分たちの生活のことなど分かっていないと思うか?


「強いリーダー」願望

「ポピュリズム」という言葉がメディアの間で使われ始めて久しい。それが何を意味するのかについては必ずしもはっきりしていないけれど、それぞれの社会を支配しているかに見えるエリート層(金持ち・権力者)に反発する「庶民層の感覚」とでも定義しておきます。不思議な気がするのは、現代の庶民たちはエリート層に反発する一方で「この国は強いリーダーを必要としている」(country needs a strong leader)という感覚も共有しているということです。「エリートたち」には反発するけれど「強いリーダー」には反発どころか、これを必要とするとさえ思っているということですよね。

社会を自分たちの手に取り戻すために
強いリーダーが必要だと思うか?

IPSOSの調査によると「自分たちの国をエリート層から取り戻すためには強いリーダーを必要と考える」人間が最も多いのはインド(80%)、メキシコ(79%)、ペルー(74%)ですが、英国(70%)も27か国中の第5位だから決して少ない方ではない。そのように考える層が最も少ない国としては、日本(46%), スウェーデン(41%)、ドイツ(38%)が挙げられている。

自分たちの国をエリート層から取り戻すために
規則違反も厭わない強いリーダーが必要だと思うか?

では「自分たちの国をエリート層から取り戻すために規則違反も厭わないようなリーダーが必要だと考える」人間はどの程度いるのか?日韓英米の数字で(むささびには)興味深いのは「規則違反もオーケー」と考える人が一番多いのが韓国、一番少ないのがアメリカであるということです。しかも「規則違反もオーケーとは思わない」が最も少ないのが韓国で、多いのがアメリカであるということです。韓国が最も革命的で、アメリカが保守的ということ?世界的に見ると、最も「革命的」なのがフランス(77%)で、最も保守的なのがドイツ(22%)という数字が出ています。

移民はすべて受け入れた方が世の中良くなる


移民は要らない

日本ではポピュリズムほどには話題にならないけれど、欧米では "nativism" という発想もかなり力を持っています。「自国民中心主義」とでも訳すべきなのか?「移民はすべて受け入れた方が世の中良くなる」と積極的に評価する国は、最高でもインドの35%。どの国もおしなべて移民受け入れには消極的なのですが、特に移民に拒否反応を示しているのはセルビア(5%)、ロシア(6%)、ハンガリー(7%)のような旧ソ連の国です。これらの国ではほぼ8割の回答者が「移民は受け入れない方がいい」と答えている。日本の場合、移民を積極的に評価する意見は11%と低いけれど、拒否反応も47%で最も低い国の一つです。またトランプが大統領になって以来、反移民政策が進められているようですが、それでもアメリカ人の移民に対する意識はインド、サウジに次いで開放的であることは救いです。

▼「社会が壊れている」から「政治家は俺たちのことなど考えていない」に至るまで、どれをとっても日本は英米日韓の中でも数字が最も低い。つまり世の中の現状に対する怒りの感情のようなものが最も低い国である、と?ただ日本についてもう一つの特徴として「どちらでもない」という意見が非常に多いということっがある。この4か国の中では日本は常にトップです。これはどのように解釈するべきなのか?

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4)来るところまで来た?BREXIT
 

昨日(10月26日)の朝、BBCのサイトを見たら、サジク・ジャビド財務大臣が「10月31日のEU離脱は無理」(the 31 October Brexit deadline "can't be met")と発言したと伝えられ、月曜日には下院で選挙の可能性に関する討議が行われるという趣旨のことが書いてありました。要するに未だに何だか分からない状況が続いているということです。

その一方で10月24日付のGuardianのサイトに気になる記事が出ていました。いわく
「EU離脱派も残留派も、自分たちの主張する結果を勝ち取るためであれば暴力もやむを得ないと感じている」という世論調査結果が出たというわけですよね。この記事について教えてくれたむささびのSNS仲間(英国人)が「こうなることを一番恐れていたのに」(This is what I have feared most for sometime)と嘆いている。この調査はウェールズのカーディフ大学とスコットランドのエディンバラ大学の政治学の教授が "Future of England" というタイトルで行ったものです。何故かイングランドの大学が入っていない。なのに調査の名前は"Future of England"となっている。調査対象になったのは、北アイルランドを除く英国人約4000人で、それぞれ2016年の国民投票で「離脱」か「残留」に投票した人びとです。


それによると「離脱」に投票したイングランド人の7割、スコットランド人の6割、ウェールズ人の7割が、離脱実現のためには下院議員に対する暴力行使も「やってみる価値がある」(price worth paying)と答えたのだそうです。「残留」を望む人間の場合は、イングランド人とウェールズ人の約6割、スコットランド人の5割強が同じように答えている。つまり両派ともに、過半数が自分たちの目的達成のためには「力ずくもあり」と考えているということです。

さらに、ウェールズ人の47%、イングランド人の52%、スコットランド人の61%が「英国がEUを離脱すると、英国自体の解体に繋がる可能性がある」(the UK’s departure from the EU would likely lead to the breakup of the UK)と答えたのだそうです。調査をリードしたカーディフ大学のリチャード・ジョーンズ教授は、EU離脱をめぐる分断の激しさに「心底驚いた」(genuinely shocked)として、このような分断を抱えたまた選挙を行うことへの憂慮の念も明らかにしています。

▼考えてみると全くどうかしていますよね。2016年に結論を出したのに、3年間もそれを実行できずにいるのですから。どうなってるの?と聞いてみたくもなる。とはいうものの現在の行き詰まりの責任は、2016年の国民投票で勝利したことを根拠に一切の話し合いも拒否するという姿勢をとっている「離脱派」にあるとしか思えない。あの時は「離脱」が勝ったとはいえ、票数からすると51.9% vs 48.1%という差にすぎなかった。しかも北アイルランドとスコットランドでは「残留」が勝っている。再投票が考慮されたって何の不思議もないはずなのに、一度投票で決めたことは絶対という発想が大勢を占めているように見える。

▼EUから離脱すると、英国の経済には悪い影響を与えると言われている。この見方については「離脱派」でさえも賛成している。離脱グループの中では「それでも離脱を望む」という意見が7割を占めているのだそうです。EUから独立することで、具体的にどのようないいことがあるのか?離脱派が口癖のように繰り返すのが「自由な英国」「EUに縛られない英国」という言葉です。あまりにも抽象的です。それでは3年経ってもラチがあかないのは当たり前かもな。

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5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 


nanny state:過保護国家

"nanny" は「乳母」とか「ばあや」のことですよね。お金持ちのお嬢ちゃん、お坊ちゃんの世話をする女性。こんな人まだいるのでしょうか?"nanny state"は「乳母のような国家=過保護国家」というわけです。で、最近英国保健省の医療アドバイザーであるサリー・デイビス(Sally Davies)という女性(70才)が、英国の子どもたちの肥満防止対策として行った提案が「過保護国家の見本だ」としてThe Sunのような大衆紙には大いに批判されている。

彼女の提案は「公共の乗り物の中でものを食べることを禁止する」(to ban all food and drink on trains and buses)というものだった。彼女によると、英国の小学生の3人に一人が30年前に比べると「危険なほど肥満」(dangerously fat)なのだそうで、その理由の最たるものが派手に宣伝されている糖分過多のジャンクフードにある。それがこれ以上広がらないためにも糖分税(sugar tax)を徴収し、それによって得られる税収を果物や野菜のような健康な食べ物の普及のために使うべきだと言っている。

地下鉄やバスの中で若者がこの種の食べ物を頬張っているのは見るに堪えないし、同じことがサッカーのようなスポーツ観戦の際に口にするハンバーガーやミルクセーキなどにも言えるというわけです。彼女の提言としては
  • 学校や幼稚園で子供たちに与えられる飲み物は水またはミルクに限ること
  • スポーツ・イベントやコンサート会場では不健康食品の広告を禁止すること
  • いわゆる「持ち帰り食品」(takeaway meals)のサイズに制限を設けること
などが含まれる。

彼女の提言は、大臣の求めに応じて提案されたものなのですが、首相のボリス・ジョンソンなどは「過保護国家が忍び寄っている」(the continuing creep of the nanny state)と批判しているとも伝えられています。
 
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6)むささびの鳴き声 
▼グレタ・トゥーンべリという16才のスウェーデンの女性が、国連の気候サミットで行ったスピーチが大いに話題になりましたよね。「人間が大量絶滅の危機に瀕しているというのに、皆さんはまだ永遠なる経済成長などというおとぎ話をやっている」としたうえで発したのが "How dare you!" という言葉だった。「よくもそんなことができたもんね!」という意味ですよね。彼女は締めくくりの言葉として "We will not let you get away with this" と言っている。「このまま逃げようったって、そうはいかないからね」ということ。

▼最近の台風だの大雨だのに接すると "How dare you!" とか "let you get away with..." という言葉が身に沁みますね。むささびがワンちゃんと出かける山奥を走る県道を通ると、あちこちで土砂崩れや道路崩壊が起こっています。「こんな山奥によくぞ道を作ってくれたもんだ」と人間の技術力に感心する一方で、グレタの言うことには黙って聞き入るしかない。

▼天皇の即位の礼なるものが行われた日(だったと思う)にテレビを見ていたら、作家の保阪正康さんが「内奏の様子の映像や写真が世に出ることは、歴代の総理大臣なら考えられない」と言っていました。「内奏」は、天皇に対して総理大臣のような人間が国政の報告を行うことをいうのだそうですね。シンゾーが新天皇に「内奏」を行う様子がテレビに出ていました。その画面を見ながら保阪さんは次のように語っていました。
  • (安倍)政権は天皇を元首にまつりあげ、国民を掌握する為の道具に利用している。もしこのまま政治の中に取り込まれるような事があれば、国民の信頼は薄れ、天皇不要論にまで発展しかねない。
▼「歴代の総理大臣なら考えられない」ということは、シンゾー以前の首相の場合はこんなこと(内奏の公開)はなかったということですよね。「公開」と言っても、単に冒頭のシーンだけを音無しで映すだけのことなのだろうと思うのですが、それだけでも宮内庁にとってはタイヘンな譲歩だったでしょうね。なにせ相手は総理大臣だから。

▼むささびの想像(多分当たっている)によると、内奏の公開というアイデアをシンゾーに持ちかけたのは、メディアを利用したイメージ作りの専門家を自称する広告代理店です。総理という立場を守るためなら何でもやる気のシンゾーは大喜びで宮内庁に圧力をかけることを約束、実行した。おかげでメディアを通じて「開かれた皇室」の推進役としての自分のイメージを振りまくことが出来た。このアイデアを提案した広告代理店の方はまさに「してやったり」でしょうね。これで総理大臣の信任を得たのですから。シンゾーは天皇を利用して日本人を操っているけれど、そのシンゾーは広告代理店のような企業に操られている。グレタ・トゥーンべリが「永遠なる経済成長などというおとぎ話」にうつつを抜かしている存在です。まさに"How dare you!"ですよね。

▼天皇の即位の礼に大統領の「親書」を持ってやって来た韓国の首相に対して、シンゾーが言ったのは、何とかの一つ憶えのような「1965年の日韓請求権協定を守れ」ということだけだったのですよね。その協定を交わした相手が、軍事クーデターによって政権についた朴正煕大統領だった。日本からの経済支援とこの大統領による経済成長政策のおかげで韓国は世界最貧国の層から脱した・・・シンゾーらに言わせれば、韓国の繁栄があるのは、日本による経済支援のおかげということになるけれど、現代の韓国人に言わせると"How dare you!"なのでは?あろうことか、そのシンゾーが「天皇陛下、バンザイ」などとやっている。むささびにとってはそれこそ"How dare you!"です。

▼本日の埼玉県飯能市は秋晴れです。お元気で!

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