1)衰退?する泥棒産業
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昔は盛んであったのに、今はすたれつつあるという職業がいろいろとありますね。米屋、豆腐屋、チンドンヤ、紙芝居・・・。最近のThe Economistによると、英国でとみに衰退の一途辿っているのが泥棒(住居に押し入って盗みを働く、あれ)だそうです。英語で言うとburglaryなんだそうですが、break-inという方がピンときます。
英国犯罪学会によると1993年には全国で約180万件であったのが、2003年には約100万。つまり殆ど半減というわけです。一つには盗むモノに魅力がなくなった。住居の中にあるものといえば(例えば)ビデオデッキ、DVDプレーヤー、パソコンなどがあるけれど、どれも値段が安いので盗んでも殆どお金にならないのだそうです。
テレビも盗みの対象にはなるけれど、大型テレビでないとさしたるお金にはならない。 最近では現金、クレジットカード、携帯電話などが好まれるわけですが、これらはどちらかというとポケットに入れて歩いてスリにあうというケースの方が多い(ちなみみスリとひったくりは減ってはいないそうです)。
泥棒産業衰退の原因として、もう一つ言えるのは、「質のいい労働力」が少なくなったということもあげられています。つまりプロがいなくなっているということ。昔のプロはというと全国を股にかけて、専門分野(テレビ専門とか”宝石しかやらない”とか)を持って仕事をしているプロが多かったのだそうです。プロが減った理由の一つに警察当局の情報網の充実がある。
つまり、しっかりした仕事をやって捕まって、数年「臭い飯」を食って出所するプロたちにはかつてよりもはるかに発達した監視網がついている。密告屋もたくさんいる。それが最近は若いアマチュアが泥棒に入るケースが多く、用意周到でないから直ぐに捕まってしまう。つまり引退でもするしかないわけです、職人さんは。
若手の泥棒には麻薬をやっている「ふとどき者」も多いそうです。内務省によると、泥棒や万引きはどちらかというとヘロインに凝っているという傾向がある。一方、スリ、ひったくりはコケイン常習者が多いのだそうです。それから活動も「全国股にかけて・・・」というカッコイイものではなくて、自宅の近所でやってしまう。いずれにしてもプロのような計画性も経験もないので、直ぐに捕まってしまうのだとか。なるほど、これでは泥棒産業がすたれるのも仕方ないですね。
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2)ガーデニングにも理屈をつけたがる人のために
英国に王立園芸協会(Royal Horticultural Society)という組織があるのをご存知ですか?ガーデニングの普及とこれに関連した啓蒙活動などを行っている組織で、今年で創立200周年なのだそうです。最近のThe Economistによると、会員の数が過去20年間で7万から34万5000人に増えている。殆ど5倍。
ところでアメリカで出版された英国のガーデニングについての本が結構話題になっているそうです。A Little History of British Gardeningというタイトルの本で、著者はJenny Uglowという人。 英国人が何故これほどまでにガーデニング好きなのかについて、著者はまず国土面積の狭さを挙げて「人々は常に”自分の土地”において自己表現を行い、自らの社会的な地位をも誇示する」ことをしてきたということを挙げています。
著者によるならばガーデニングは「英国らしさ」を表現するものでもある。英国は約300年前の1707年にスコットランド連合法(Act of Union with Scotland)なるものができて、イングランドとウェールズ、スコットランドを併せてGreat Britainという一つの国となったわけですが、その当時のガーデニング雑誌の代表とされたのがSpectator(現在は保守派のオピニオンマガジン)。同誌は庭園のスタイルについて、フランスやオランダの庭園とは異なる「英国らしさ」を強調しました。
ヨーロッパ大陸における庭園と英国の庭園との違いについてSpectatorは、前者がテラス、バルコニーなど人工的なものを採用して「自然は人間が管理・見下ろすもの」という捉え方をしていたのに対して、英国の庭園は「人間が自然の中を動いていくもの・自然を体験するもの」という捉え方をしていたのだそうです。この著者は「人間は庭の面倒を見ていると考えるかもしれないが、実際には庭とか植物が人間の面倒を見てくれているのだ」と語っている。
私自身はガーデニングとは無関係な人間ですが、この著者の言うように、英国人が庭作りを通じて自然を「体験」(管理ではない)することに楽しみを見出していたのだとすると、どこか日本人との共通項を感じます。 ちなみにA Little History of British Gardeningという本は256ページというかなり厚い本で値段は35ドルだそうです。「だそうです」というのは私自身読んだわけではないから。最近読んだThe Economistの書評欄に出ていたのを受け売りしただけ。でも「ガーデニングを通して英国人らしさを考えよう」という理屈好きには面白そうな本ですよね。
同じ欄に出ていたのが、先月のAmazon.comの集計による世界のフィクションのベストセラーリスト。一番はDan Brownという人の書いたサスペンスもの(らしい)のThe Da Vinci Codeなる本(ペーパーバックで何と454ページ)。で、2番は何かというと日本語版のハリーポッター:不死鳥の騎士団(Harii Pottaa to Fushichoo no kishidan)だそうです。売れた部数は書いていません。
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3)マスター由の<シリーズ「カウンセリング心理学者への道」>
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●ハードルその3:Preliminary Examination(予備試験)
予備試験というのは、通常博士課程の2年目終了後、または3年目の始めに行われます。これまで学生がどれだけ学んできたか、そしてこれからも大学院のプログラムに在籍し続けるのにふさわしいか、の2点を審査するのが予備試験の主な目的です。予備試験の方法は、プログラムの分野によってさまざまです。僕の所属しているカウンセリング心理学のプログラムでは、2年ほど前までは筆記試験の形式をとってきました。この筆記試験では、これまでとってきたコースワークの分野から何問かずつ小論文形式の問題が出され、その出来によって合否が決まるというものでした。
筆記試験の場合、通常3、4日間続けて行われ、学生はその期間は1日中拘束されるという過酷なものでした。僕が入学した年からはこの形式が改正されたため、僕とその同期生は、コースワークの内容を全部復習、暗記する、そして3、4日間まるまる拘束されるというまさに「アメリカ版受験地獄」からは逃れることができました。代わりに、我々はカウンセリング心理学における次の4項目のCompetency(能力)を証明することを課せられました。
- 1.Research Competency(研究能力):これは心理学者としての研究能力をみるもので、要するに研究方法論などのクラスの知識をどれだけマスターしたかを試されます。我々のプログラムでは、自分の研究分野についての文献精査を30−40ページのペーパーにまとめて発表するか、学術雑誌に出ているような記事のフォーマット(つまり文献精査だけでなく、イントロ、方法論、結果と考察も含めた)で自分の研究の一部をペーパーにまとめて発表するかのどちらかを選択します。
2.Empathy Competency(エンパシー能力):Empathyというのは日本語では「共感」「感情移入」というらしいですが、カウンセラーとしていかに正確にクライアントの心をあたかも自分が経験しているかのように理解、表現することができるかという能力です。カウンセラーにとって、このエンパシーというのは非常に重要な能力です。我々のプログラムでは、いかにこのエンパシー能力が上達したかを証明するために、クライアントとのやりとりを録音したテープを審査員の教授3人に提出することになっています。
3.Assessment Competency(心理テスト能力):自分の受け持つクライアント1人に、2種類の心理テストを実施し、その結果を分析、解釈してペーパーにまとめるという課題です。心理テストにも、性格診断テストから知能テスト、適性テストなどいろいろあり、そのうちの2つのうち適当なものを選ぶことになっています。
4.Theory Competency(理論応用能力):カウンセリングの理論、方法論にもいろいろあり、フロイドの精神分析学がもとになっているPsychodynamic Therapy、人間の思考と行動の関係を重視するCognitive Behavioral Therapy、人間は本来良いものであるという考えがもとになっているPerson Centered Therapy、どちらかというと哲学的、特に実存主義的なアプローチのExistential Therapy、対人関係、特にクライアントとカウンセラーとのカウンセリング中の関係、あるいは両親や兄弟との関係を重視するInterpersonal Process Therapyなどさまざまです。
僕らの仕事は、これらのセオリーのうちの2つを選んで、いろいろな要素を統合させて自分のカウンセリング方法論としてまとめる、そのセオリーをもとにしてカウンセリングを行う、カウンセリングの結果、批評をペーパーにまとめる、そしてそのカウンセリングを録音したテープを審査員の教授3人に提出することです。 この4つの課題に合格することが、いわゆる筆記試験を受ける代わりに義務付けられています。僕らのプログラムでは、この4つの課題に合格しないと、次の段階、すなわちインターンシップに応募する資格をもらうことができません(インターンシップについては次号で述べる予定です)。
ちなみに僕は、プログラムの3年目終了時現在、エンパシー能力、およびリサーチ能力の2つは合格しています。今年の11月にはインターンシップへの応募を始めなくてはいけないため、何とか残りの2つを新学期が始まる前に終えてしまおうと、現在夏休み返上で(?)頑張っております。
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4)短信
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チョイスの多さがストレスを生む
スーパーで売っている商品の品数が多すぎて現代人のストレスの原因になっているそうです。アリック・シグマンという英国の心理学者が行った調査の結果明らかになったもので、この学者の調査によると一つのスーパーに「シャンプー83種類・シャワージェル68種類・朝食用のシリアルが87種類も並んでいる」と言います。この先生の報告書「The Explosion of Choice: Tyranny or Freedom?」は、余りにも多くの選択肢があると人間はホッとするよりも「(チョイスに)押し潰される」と感じるとしています。この先生の言い分が面白い。"Humans now have to make more decisions in a single day than a caveman did in a lifetime."(現代人が一日に行う決定は、洞穴で生活していた原始人が一生の間に行う決定よりも多い)。なるほど・・・面白いこと言う人ですね。私も奥さんと買い物に行くと、彼女が選ぶのを待つストレスを感じます。彼女も「待たれている」というストレスを感じるのだそうです。でも日本のスーパーにはこんなにチョイスはないですよね?
人間が馬に勝つ
このほどウェールズのある町で行われた人馬競争マラソン大会で、27歳の男性が馬を破って2万5000ポンドの賞金を獲得したそうです。25年間続いているこの大会の歴史上初めての快挙だそうであります。マラソンは22マイルのクロスカントリースタイルで行われ、人間が2時間5分19秒で馬より12分早かったそうです。22マイルを2時間5分というのがどのようなスピードなのか、よく分からないけれど、とにかく馬よりも早いというのはタイヘンなものです。
ミニをピンクに
値段が1万ポンドのクルマ、ミニ・クーパーを購入した、チェシャーに住むジャネット・ハンソンというご夫人が、「自分だけのクルマを」というわけで色をピンクにしてもらった。この料金が1万ポンドで、普通のミニよりも約1万4000ポンドほど高くついたそうです。何故このクルマをピンクに塗りたかったのかというと、彼女の持っているピンクのハンドバッグがお気に入りで、「これにぴったしの色じゃなきゃ・・・」というのが理由。こんな色のミニは余り走っていないと見えて「私がクルマで外出すると、皆、映画俳優でも乗っているんじゃないかというわけで、私に手を振るのよ!」とご満悦だそうです。ちなみに彼女のハンドバッグは20ポンドの品物だとか。ペイント代こみで2万4000ポンドの請求書を受取ったダンナさん、怒ったのかと思ったら、とんでもない。彼女のクルマにG3NETという個人用のナンバープレートを買ってあげたのだそうです。
カップル旅行は初日・二日目に注意
休暇で旅行に出かける英国のカップルのうち3組に1組が旅行中に大喧嘩をする・・・という殆どどうでもいいような調査結果が発表されました。調査・発表したのは旅行会社の大手、トマス・クック社で、800組の旅行カップルを対象に調査した。これを報道したサン紙によると、喧嘩がイチバン起こりやすいのは旅行初日か2日目。カップルがようやくノンビリするのは3日目からだそうなのです。何故喧嘩が多いのかというと、要するに仕事上のストレスとか普段の夫婦関係のストレスが尾を引いて・・・というケースなのだそうです。英国心理カウンセリング協会のフィリップ・ホドソンというカウンセラーは、この調査結果について「要するに仕事から遊びに気持ちの上でのモードが切り替わっていない時に喧嘩がおこる。心理上のジェットラグですな」(It's a kind of jet lag of the spirit)と、これも面白くもなんともないコメントをしています。
殺人犯もモーツアルトで心が和らぐ?
メキシコの刑務所に収容されている最も危険な犯罪人たちの心を和らげるために当局が行っているのが、モーツアルトの音楽とアロマセラピーなんだそうです。モーツアルトの音楽もアロマセラピー香りも各牢獄に通じる管を通して流される。Ciudad Juarezという国立刑務所が行っているのですが、これを提言した地元の医者グループによると「世の中にショックを与える重罪を犯した犯人はいずれも心理面・身体面・感情面でそれぞれキズを負っている。この企画は彼らの心を和ませるユニークなものだ」と絶賛しています。「殺人犯をモーツアルトとサンダルウッドの香りでやっつけよう」と皆さん張り切っているようです。
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5)編集後記
で、気になって(私もヒマ人ですよね)、その「英語特区」なるもののサイトを開いてみたのであります●笑ってしまったのは「国語以外は全て英語で授業をする」のだそうです。社会・理科・音楽などなど。例えば日本史に出て来る「関が原の合戦」はBattle
of Sekigahara・・・かな?鎌倉幕府はKamakura Regime? ●「国語以外は全て英語で授業」ということは、授業の時間だけ言うと、国語が今の英語みたいな扱いを受けるわけ!?気が狂ったとしか思えませんね。国語を英語で教えるよりマシかもしれないけれど・・・。 |