フランスとオランダの国民投票でヨーロッパ憲法が否決されたことについて、英国のストロー外相は「悲しい事態だ」とのコメントを発表していましたが、The Economistの6月4日号によると英国の政府関係者は実はウハウハで、シャンペンでも抜いているに違いない(you could almost hear his officials popping champagne corks behind Jack Straw)と書いています。
そりゃそうですよね。欧州統合は時代の流れであり、英国も乗り遅れるわけにはいかないと分かっていても、The Economistによるとヨーロッパの政治統合は歓迎しないし、ドイツとフランスが中心勢力になることも嫌がっているのが英国なのですから。これで一挙両得ということになったのですよ。しかも英国が悪いんじゃない!これまでややもすると欧州諸国から「ヨーロッパに非協力」と冷たい目で見られていた英国にしてみればフランスが「ノー」と言ってくれたのだから実にあり難い。
英国における反EUといえばサッチャーさんですが、The Economistによると彼女とブレアさん(欧州主義者とされている)の間には一つだけ共通点があるのだそうです。それは二人ともEU拡大歓迎論者であるということです。何故EUが拡大するといいのかというと、加盟国が多くなるとフランスやドイツの支配も難しくなるからです。
勿論英国政府は公式にはそんなことは言いませんよね。ブレアもサッチャーも「東欧諸国(かつてのソ連圏)のEU加盟を認めるのはヨーロッパの道徳的な義務(moral imperative)である」というのが公式な見解です。 それから加盟国が増えれば増えるほど、EUの公式言語としての英語の力が増しており、これもフランスにとっては実に認めがたいことなのだそうです。 The Economistは1980年代に英国で流行った政治コメディー"Yes, Minister"の中であるお役人が大臣に向かって言う次のようなセリフを紹介しています。
- Britain has had the same foreign-policy objective for at least the last 500 years: to create a disunited Europe. The more members it has, the more argument it can stir up, and the more futile and impotent it becomes.
英国の外交政策の狙いは過去500年間同じであります。即ち団結できないヨーロッパを創りだすことです。加盟国が多ければ多いほど議論百出でまとまらず意味のない・無能な存在になるのであります。
現在まさにこの大臣の言う状況になりつつあるわけですよね。あながち冗談とは言えないかもしれない。