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美耶子の言い分 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
 第60号 2005年6月12日
これは世間から忘れ去られたくないと思っている老人による皆様への挨拶状のようなもの・・・ということで、2003年2月23日に第1号を出してから、 むささびジャーナルも60号を迎えてしまいました。 道楽とはいえ、60回も出したとなるとタイヘンなものでありますよね。 なにがどうタイヘンなのか、自分でもよくわかりませんが。最初から、あるいは途中からお付き合いを頂いている皆様、どうも有難うございます。

目次

@フランスの欧州憲法否決と英国
A高すぎる「垣根」は法にひっかかる
B短信
Cブレアと宗教
D編集後記


@フランスの欧州憲法否決と英国

フランスとオランダの国民投票でヨーロッパ憲法が否決されたことについて、英国のストロー外相は「悲しい事態だ」とのコメントを発表していましたが、The Economistの6月4日号によると英国の政府関係者は実はウハウハで、シャンペンでも抜いているに違いない(you could almost hear his officials popping champagne corks behind Jack Straw)と書いています。

そりゃそうですよね。欧州統合は時代の流れであり、英国も乗り遅れるわけにはいかないと分かっていても、The Economistによるとヨーロッパの政治統合は歓迎しないし、ドイツとフランスが中心勢力になることも嫌がっているのが英国なのですから。これで一挙両得ということになったのですよ。しかも英国が悪いんじゃない!これまでややもすると欧州諸国から「ヨーロッパに非協力」と冷たい目で見られていた英国にしてみればフランスが「ノー」と言ってくれたのだから実にあり難い。

英国における反EUといえばサッチャーさんですが、The Economistによると彼女とブレアさん(欧州主義者とされている)の間には一つだけ共通点があるのだそうです。それは二人ともEU拡大歓迎論者であるということです。何故EUが拡大するといいのかというと、加盟国が多くなるとフランスやドイツの支配も難しくなるからです。

勿論英国政府は公式にはそんなことは言いませんよね。ブレアもサッチャーも「東欧諸国(かつてのソ連圏)のEU加盟を認めるのはヨーロッパの道徳的な義務(moral imperative)である」というのが公式な見解です。 それから加盟国が増えれば増えるほど、EUの公式言語としての英語の力が増しており、これもフランスにとっては実に認めがたいことなのだそうです。 The Economistは1980年代に英国で流行った政治コメディー"Yes, Minister"の中であるお役人が大臣に向かって言う次のようなセリフを紹介しています。
  • Britain has had the same foreign-policy objective for at least the last 500 years: to create a disunited Europe. The more members it has, the more argument it can stir up, and the more futile and impotent it becomes.
    英国の外交政策の狙いは過去500年間同じであります。即ち団結できないヨーロッパを創りだすことです。加盟国が多ければ多いほど議論百出でまとまらず意味のない・無能な存在になるのであります。
現在まさにこの大臣の言う状況になりつつあるわけですよね。あながち冗談とは言えないかもしれない。

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A高すぎる「垣根」は法にひっかかる
英国の田舎をドライブしていると左のような景色をよく見かけますよね。このような樹木のことをhedgerowというのはご存知ですか?要するに土地と土地の境界線の役目を果たしている樹木のことで、垣根みたいなものです。大体において常緑樹が使われるのだそうです。そうすることによって一年中目隠しになるというわけ。

ところで最近、このhedgerowの高さが問題になっております。この写真(私が写した)の場合はそうでもないけれど、異常に背の高い樹木を囲い用に使用する人が沢山いて、景観を害するばかりか、お隣さんとの間で「日照権」争いにまで発展しているらしい。HedgelineというNPOによると、中には高すぎるhedgerowに腹を立てた人が勝手に切って逮捕されたりというトラブルも起こっているのだとか。 で、最近ではhedgerowの高さは最高2mとされ、命令されても切らないと場合によっては1000ポンド(約200万円)の罰金もありうるとなったのだそうです。2003年に制定された迷惑行為防止条例(Anti-Social Behaviour Act 2003)の成果なのだとか。


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B短信
I deeply regret

最近、英国のCambridgeshire警察の署長が女性警官を侮辱、セクハラ疑惑で辞職に追い込まれてしまった。全国警察官大会なる会合に出席していたのですが、その際にある女性警官に「不適切な発言」(inappropriate remarks)を言ってしまったらしい。どういかがわしいのかというと、例えば「ベッドルームに一緒に行こう」などの「それを思わせるようなこと」で迫ったってことです。この署長は53歳で4人の子持ちなのですが、辞任にあたって「自分の一瞬の愚かな行いによって、自らの尊厳を疑われるようなことをしてしまい、まことに申し訳ない」と言っています。この人の辞任についてCambridgeshireの会長は「マスコミではいろいろと言われているが、はっきりさせておきたいのは、Mr Lloydに対する正式な抗議書は提出されていないということであり、辞任はあくまでも本人の個人的な決定であり、我々もこれを尊重し支持するものである」とのコメントを発表しています。
  • どうってことないニュースです。分かっております。この際、日本のマスコミなどでよく使われる表現を英語で何というのかだけでも覚えておくのは悪いことではないかも・・・。というわけで次の和文を英訳せよ。@不適切な発言、Aまことに申し訳ない。答:@inappropriate remarks、AI deeply regret…やはり掲載する価値はなかったですかね!?I deeply regret that I presented a totally useless story!
羊のおしっこが役に立つ?

英国のStagecoachというバス会社が、バスから出る排気ガスによる空気汚染を減らす対策として、排気ガスに羊の「おしっこ」を利用するという方法をテストしているそうです。と言っても、おしっこそのものではなく、これを純粋の「尿素」したものを使うという意味なのですが、ひょっとするとグリーンテクノロジーの決定版になるかも、ということで注目されています。有害排気ガスに尿素を噴霧して有害ガスを水と窒素ガスに分解させる装置をつけて走るのですが、ハンプシャー議会もこの実験を後押ししています。羊のおしっこは羊毛飼育業者から買い付けているのだとか。
  • 議会が後押しともなると、真面目なんですね。そういえば羊がノンビリと草を食むというのは英国の田舎におけるお決まりの風景ですよね。
政治家は重量挙げテストに合格しなければ

国内が政変でもめているキルギスタンでは中央・地方議会の議員となるための条件として、走力・跳躍・重量挙げなどのテストでしかるべき成績を収めなければならないことになったらしいですよ。新しく大統領に就任したクルマンベク・バキエフ氏の命令によるもので、これ以外に射撃テストなどもあるそうです。バキエフ大統領はキルギスタンを「身体強靭な国家」にすることを目標にしており、そのためには「政治家が模範にならなければ」と語っています。
  • 確かに身体が強靭なのはいいことだけど、それを国是にまですることはないんじゃありませんか?しかも射撃や手榴弾投げまでテストに含まれているとなるとおかしいですよね、これは。私なんか絶対ダメですね。

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4)マスター由の<「マスター由」というペンネームについて>
むささびジャーナルでのデビューに伴い「さて自分のペンネームは何にしようか」と考えておりました(そう、格好だけは1人前なのです)。実名の春海由ではあまりにも芸がない。イチローのようにファーストネームをカタカナで「ユー」ではちょっと短すぎる。むささびJ、むささびMにならって「むささびY」または「むささびU」、うーん、僕の顔はどう逆立ちしてもむささびには見えないし、だいいち僕が「むささび」を名乗るなんて恐れ多くてとてもできない。

「グレート春海」「タイガー春海」というとまるでどこかのタレントかプロレスラーみたいでとても自分の柄には合わない(といいながらも自分にはタレントの才能があると周囲に豪語している僕ですが)。博士課程にいるということで「ドクター由」なんかいいかも。でもまだ博士号をとっていないのに自分をドクターと呼ぶなんておこがましい。だいいち僕は、博士号をとってからでも人からは「ドクター春海」とか「春海先生」「春海博士」なんて呼ばれるのは絶対に嫌なのです。何だかそれっていかにも「雲の上の存在」として普通の人とは距離をおくみたいで、いろいろな人と友達になりたいという僕にはどうも合わない。

それこそ日本だったら「春海さん(君)」「由さん(君)」、アメリカだったら「ユー」のままでいたい。 ところでペンネームの話に戻ると、僕の場合博士号はまだ取得していませんが、修士号だったら持っているので、「マスター由」はどうだろう、ということになりました。マスター、というとまるでどこかのバーテンみたいですが、まあそのほうが親しみがあっていいんじゃないですか?「マスター、ジントニック1杯!」なんてね。ということで「マスター由」として、近所のバーのカウンターで飲みながらこの原稿を書いております。「マスター、ビールもう1杯!」(あっ、日本語通じないんだっけ…。)

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 5)短信
 
水牛誘拐 
Asian News Internationalという通信社によると最近インド中部で水牛(バッファロー)泥棒が流行っていて警察を悩ませているそうです。1週間で何と213頭もの水牛を泥棒の手から解放したとか。「盗んだ水牛を返して欲しければ身代金をよこせ」というケースが多いそうで、泥棒というよりも誘拐ですね。被害にあったラム・シャライというお百姓は「あたしの牛を3頭盗んで1万ルピー(約2万円)よこせと言いやがった。断ったけどね」とコメントしています。断って水牛はどうなったのか?そのあたりのことは書いてありません。

女性差別発言で裁判官が辞任  
New York Postが伝えるところによると、アメリカのニューヨーク州にあるハンタービレッジという村の裁判所の裁判官が「DV(家庭内暴力)事件は裁くだけ時間の無駄。何故かというとたいていの場合、女の方がぶたれたがっているのだから」というニュアンスの発言をしてクビになってしまったとか。あるDV事件の裁判にあたって女性の被害者に対して「女はたいてい乱暴されたがっておる」発言をやってしまった(とされています)。これが問題になって裁判官資格審査会が開かれようとしている矢先に自ら辞表を出して辞めてしまった。「どうせパートタイムの裁判官だし、無理に続けたいとは思わない」というのが弁護士を通じた彼のコメント。

きれいな女性に口笛を吹くとセクハラ  
きれいな女性が歩いていると口笛を吹きたくなることってありますね。オランダのDe Telegraafという新聞が伝えるところによると、ロッテルダムの電車の駅で女性に口笛を吹いた男は場合によってはセクハラ行為として30ポンド(約6000円) の罰金を払わなければならないというとんでもない法律が出来たそうです。尤も女性が「不愉快だ」と訴えればのことなので、必ずしも口笛即罰金ということではない。警察によると中央駅というのがイチバンこの手の「セクハラ」があるところなのだそうで、女性をからかうためにだけ中央駅に来る男が結構いるのだとか。中には口笛だけでなくて、女性への嫌がらせにまで発展するケースが多いとのこと。これまでに5人の口笛男が罰金刑に処せられているのだそうで゛、「犯人」の一人は「ただガールフレンドになってもらいたかっただけなのに・・・」とぼやいていると報じられています。「物言えばくちびる寒し・・・」とか言いますが、オランダに行く男の人は気を付けたほうがいいと思います。

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 6)むささびMの<WINGのスタート>

WINGとはWe Introduce Nihon-Go.の頭文字をとって付けた我々の新しい日本語グループの名称である。言葉を身に付けることは「翼(Wing)」を身につけるのと共通した何かがあるような気もしたのでグループ名を考えているときに思いついたこの名前は自分でも傑作だと自負している。

Wings(複数形)ではなくあくまでもWing(単数形)であるという点も実は「敢えて・・・」と言いたいし、TeachではなくIntroduceというところも実はこのグループの最大の特徴なのだと言いたい。 日本語を母国語としている日本人が、日本語を使って外国人に教えるいわゆる「直説法」というものに、以前から疑問を持っていることは既に書いたことがあるが、それだけではなく、日本語を教えるのは日本語のネイティブ・スピーカーである日本人が絶対だという、いわゆる「(逆)ネイティブ信仰?」を、私にはどうしてもそのまま飲み込むことが出来ないのである。

それで、自分が少し出来るようになった日本語を自分と同じ国の出身者に、共通の母国語を使って使い方や意味を紹介(Introduce)してもらう場として、外国人にも我々のこのWINGの場を活用してもらえたらと考えた。「日本人が教えるいっぽう」というこれまでの日本語ボランティア・グループの常識を、一度変えてみたいと思ったのである。それに、人に何かを教える事によって新たに気付く事もあるし、既に身に付いていることをより一層確実にできることも大いにありうることなので、どちらにしてもプラスではないかと考えたのである。

人の心を表現する言葉は一通りとは限らないだけでなく、100%正しい言葉使いや正確な文法知識を、日本に住む外国人の皆がみんな求めていると思い込むこと自体、余りにも一面的な考え方ではないか・・・。料理のレシピを教え合うように、言葉についても自分のレシピを紹介しあってみてはどうか・・・というのがこのWINGの発想なのである。従って当然WINGのメンバーにはいわゆる資格や権威というものは不要で、必要なのは唯一「自分のレシピを分けてあげたい」という気持ちなのである。

1月19日、いよいよWINGの具体的な活動が開始した。これからこの我々の実験的(?)な試みがどのように機能していくのか、じっくりと見てみたい。何よりも「楽しいと感じながら何かが身に付く・・・」をイチバンに心がけて行きたいと思っている。 

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7)編集後記
 で、そのウォーキングなんですが、何がイヤだったって、歩いている人たちの「健康さ」がイヤですね。中にはアタシに「おはようございます!」なんて明るく朗らかに声をかける人もいるんでありますよ。イヤですね・・・あのテの快活さ・健全さ。やってらんないな、はっきり言って●私がかねてより個人的にご尊敬申し上げておりました、あるジャーナリストなんか、そんな私の自己嫌悪に追い打ちをかけるかのように「健康を保つための歩き方」なるペーパーまで書いて送ってきて、「ウォークをするときは恥も外聞もない!」などとおっしゃる●そこで、私「オレだって人間なんだ、恥も外聞もあるっつうの!」と電話で怒鳴ってやろうかと・・・思ったんですが、それも出来なくて。多分明日も歩いているでしょうね、情けないけど●ではまた。

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