musasabi journal

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278号 2013/10/20
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美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書

急に寒くなったと思ったら、もう10月が終盤なのですね。いつの間にかセミの声が聞こえなくなり、虫の音もぐっと少なくなって・・・。間もなく冬ですね。狂暑よりはマシかもしれない。寒くて我慢できなければ厚着して布団にもぐりこんでいれば何とかなるのですから。でも、やはり「冬」と聞くと身構えますね。

目次

1)ラウンダバウトとフェアプレイ精神
2)左利きは早死にする!?
3)放射能より心理的ストレスの方が怖い?
4)国際比較で一喜一憂・・・いい加減に止めません?
5)どうでも英和辞書
6)むささびの鳴き声


1)ラウンダバウトとフェアプレイ精神
 

英国におけるクルマ生活では当たり前の光景ではあるけれど日本では見られないものの一つに「ラウンダバウト」(roundabout)があります。上の図のようなもので、要するに交差点に信号をつけて交通規制する代わりに、交差点そのものを回廊のようにして、ドライバーは自分の出たい出口を出ることで、結果的に交差点を通過したのと同じことになるという仕掛けであります。日本でいうと「ロータリー」というのがこれに近いかもしれない。

ラウンダバウトにさしかかったら右側から来るクルマに注意する。右方面から来るクルマに絶対的な優先権があるので、それをやり過ごし、自分の番がきたら回廊の中に入る。上の図(五叉路)の場合、最初の出口を出るということは、普通の交差点でいう「左折」、二番目が「直進」、三番目が「やや右折」、四番目が「右折」ということになる。どの出口を出るにせよ、ラウンダバウトを出るときは常に「左折」であり、回廊の中には信号の類はない、というより必要がない。ラウンダバウト自体が常に時計回りで終わりのない一方通行だからです。対向車がない。

英国で最初のラウンダバウトは、1909年にロンドン郊外のLetchworth Garden Cityという町に出来たものだとされているのですが、英国全体でどのくらいの数のラウンダバウトがあるのかはネットを調べても出ていませんでした。どなかたご存じの方は教えてください。ただ10月5日付のThe Economistによると、現在世界中にあるラウンダバウトの数はおよそ6万か所だそうです。1997年当時は3~4万か所だったのだから、ここ10数年でほぼ倍増ということになる。全体の半数がフランスにあるのだそうですね。アメリカでも10年前までは数百か所だったのが、今では3000か所にまで増えている。

信号式十字路で信号が赤の場合、他のクルマが一切来ないと分かっていても一応信号が青になるまで停止していなければならないけれど、ラウンダバウトだとそのような無駄はない。右方向を見て、クルマが来ない(もしくは来ていてもはるか向こうである)場合は運転手の自己判断で入ることができる。信号式十字路の信仰者からすると、「運転手の自己判断なんてとんでもない」ということになる。しかし米国運輸省によると、信号式十字路をラウンダバウトに変えたところ、車同士の衝突事故が35%、傷害事故が76%、死亡事故が90%も減ったという数字が出ている。The Economistは、運転手の自己判断が幅を利かせる世界では「協力が対立に勝利する」(triumph of co-operation over confrontation)ようになるのだと言っている。運転手同士の譲り合いが生まれるのだということです。
  • 但しラウンダバウトがうまく稼働するためには、ドライバーが「英国流の美徳」であるフェアプレイの精神を守り、それなりのルールを順守する必要がある。残念ながら必ずしもそういう場合だけではない。
    Yet roundabouts tend to work only when motorists observe the British virtues of fair play and stick to the rules. Alas, this is not always the case.
譲り合いの精神が発揮されないとラウンダバウトは渋滞の原因にもなる。その例としてケニアの首都、ナイロビにあるラウンダバウト(4か所ある)がある。とにかくしょっちゅう渋滞なので交通整理の警官が出動したりしており、雨が降ると警官が持ち場を離れて雨宿りしたりするから余計に渋滞がひどくなるらしい。The Economistによると、いわゆる発展途上国では交通量が多い大都会のど真ん中にラウンダバウトが作られたりすることがあり、運転手同士のケンカが起こったりするし、通行人にとっては信号式交差点よりも危険な場合が多いのだそうです。

ラウンダバウトを作るには当然のことながら、それなりの面積の土地が必要であるし工事費もかかるのですが、信号式交差点の場合、信号機の維持費と電気代で(アメリカでは)一か所年間10万ドルかかるところもあるのだそうです。場所によってはラウンダバウトの方が安上がりということもあるかもしれない。


上の写真は、南東イングランドにあるSwindonという町の近くにあるラウンダバウトの標識看板です。「マジックラウンダバウト」と呼ばれているのですが、5つの小さなラウンダバウトが円形に繋がって大きなラウンダバウトになっている。看板を見るだけで車酔いしそうです。どうせ出口が5つであることに変わりはないのだから、大きなもの一つでいいのでは?何が面白くてこんなもの作ったんですかね。

ちなみに(ラウンダバウトの有無とは直接関係はないけれど)英国は国際的に比較しても交通事故による死者数が非常に少ない国なのですね。WHO(世界保健機構)によると、人口10万人およびクルマ10万台あたりの交通事故死者数は次のようになっています。いずれも2010年の数字です。

10万人あたり 車10万台あたり
スウェーデン 3.0 7
英国 3.7 5.1
ドイツ 4.7 7.2
日本 5.2 6.8
フランス 6.4 9.57
アメリカ 10.4 15
韓国 14.1 23.4
中国 20.5 36

▼知らなかったのですが、日本にもたった一か所ですがラウンダバウトがあるのですね。長野県飯田市が今年(2013年)3月に完成させた東和町交差点(写真左)がそれです。飯田市ではもう一か所作る計画らしいですね。このラウンダバウトのことを伝える読売新聞が、ラウンダバウトの「不安材料」について次のように書いています。
  • 従来の交差点では、止まるか進むかの判断は信号機任せで良かったが、ラウンダバウトになれば、交通法規に従ってドライバーが判断しなければならない。
▼そうなんですよ、ラウンダバウトは自己判断が幅を利かせる世界のハナシであり、それを嫌がるということは「警察任せ」の方を好むという意味でもあるわけですよね。ネットを見ていたら警察庁の数字として、日本国内の交通信号の数が20万基(2008年)と出ていました。英国の場合は2011年現在で2万5000基です。何を基準に比較すればいいのか分からないので、判断はできないけれど、日本の信号の多さ加減は半端ではないと思いません?警察が大きな顔をしすぎているということです。せめて田んぼの真ん中みたいなところは、この際ラウンダバウトにした方がいいんでないかい!?

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2)左利きは早死にする!?
 

左利きの人の平均寿命は右利きのそれよりも9年短いなんてハナシ聞いたことあります?私はありませんでした、最近(9月3日)のBBCのサイトに出ていた記事を見るまでは。
というタイトルの記事で、これを書いたハンナ・バーンズ(Hannah Barnes)という記者は、両親と兄が左利きなのだそうです。バーンズ記者が気にするのは、1980年代末から90年代初めにかけてダイアン・ハルパーン(Diane Halpern)とスタンレイ・コーレン(Stanley Coren)というアメリカの心理学者がNatureとNew England Journal of Medicine(NEJM)という科学と医学の専門誌に掲載した記事です。

そのうち1991年4月4日付のNEJM誌が掲載した記事(というよりも二人の学者が編集長宛てに送った手紙)によると、南カリフォルニアの二つの郡(counties)においてそのころに死亡した住民2000人の死亡証明書に基づいて遺族や親せきを追跡調査して、それぞれが右利きだったか左利きであったを聞いて回ったのだそうです。そのうち調査に使えそうな回答は987件だったのですが、平均寿命は右利きが75才で左利きが66才だった。つまり9才の差があるというわけです。この調査結果については、同じ日付のNew York Timesがロイター発信の記事として掲載しているのですが、その見出しは
というものだった。いくらmay beという婉曲的な表現を使ってもDangerous To Lifeなどと言われれば左利きの人はあまりいい気持ちはしなかったでしょうね。

で、両親と兄が左利きというBBCのハンナ・バーンズ記者が抱える「不安」についてでありますが、Right Hand, Left Handという本の著者であるユニバシティ・カレッジのクリス・マクナマス(Chris McManus)教授は、30年前にアメリカの学者が専門誌で発表した「左利きの寿命は右利きのそれよりも9年短い」という説には「見えにくいけれど重大な誤り」(a very subtle error)があると主張しています。
  • 彼らの過ちは死者だけしか見なかったということだ。
    Their mistake was that they only looked at the dead.
と言うのです。

マクナマス教授のよると、19世紀、ビクトリア朝時代に左利きは子供のころに矯正されて右利きになるのが普通であったのだそうですが、20世紀初め(1900年)でも人口の約3%という超少数派だった。これが現在の10~11%にまで増えたのは1976年のことだそうです。

アメリカの二人の学者は、1990年に南カリフォルニアの二つの郡の役所に提出された死亡届2000件を全く無作為ピックアップして遺族にアンケートを配って生前の死者の利き腕を調査したわけですが、死者の中には高齢者もいるし若くして死んだ人もいるけれど、右利きの平均年齢は75才であったということは、1915年生まれの人が多かったということでもありますよね。この年の左利きの割合は女性が3%強で男性は4.5%程度です。1000人あたり3~4人です。死亡者の利き腕を調べていけば、高齢者になればなるほど右利きが多くなり、左利きがいたとしても、数の上で圧倒的に少数であり年齢も若くなるのは当たり前・・・とマクナマス教授は言っている。

左利きの人が利き腕が故に早死にするというのではなく、人口が少ないことから来る統計上のマジックのようなものだということです。つまり死んだ人の死亡年齢を基に「平均寿命」を出すのは利き腕に関する限り無理であるということになる。マクナマス教授によると、寿命を9才縮めるためには毎日のようにタバコを120本吸い続けたうえに様々な別の危険に身をさらす必要もあるとのことであります。

この二人のアメリカ人心理学者は、大リーグの選手2271人の平均寿命(選手としての寿命ではなく人間としてのそれ)を利き腕別に調べたことがあるのですが、その結果、右利きの方が9か月長生きすることが分かったのだそうです。

▼NEJM誌へのアメリカ人心理学者の投稿を読んで不思議な気がしたのは、左利きと右利きの「平均寿命」は出ているけれど、平均値の根拠となった数字が全く出ていないということです。2000人へのアンケート中、987件が有効回答であったのであれば、そのうちの何人が左利き・右利きだったのか、それぞれの最高年齢・最低年齢などを全く書いていない。いきなり「平均寿命」と言われてもねぇ。もっと不思議なのは、どうしてこの程度の情報をNew York Timesがわざわざ記事にしたのかということです。

▼英国の左利きのための組織Anything Left Handed (ALH)のサイトには、左利き関連の情報がいろいろ掲載されています。左利きの有名人(Famous left-handers)を見ると、いろいろな分野の人物が出ています。アレキサンダー大王、ナポレオン、ジュリアス・シーザーからバラク・オバマ、ウィンストン・チャーチル、マリリン・モンロー、ボブ・ディラン、ポール・マッカートニー等々。ビクトリア女王も左利きだったのですね。

▼日本人の左利きというと、私などはプロ野球選手を考えてしまう。え~と、打者では金田正泰、田宮謙次郎、並木輝男、遠井吾郎、投手では江夏豊・・・というので、みんな50年前のタイガースばかり。それ以外では、イチローは右投げ・左打ちですが、本当はどちらなのでしょうか?張本勲は生まれつきは右利きだったんですね、知らなかった。

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3)放射能より心理的ストレスの方が怖い・・・
 

10月15日付のThe Guardianのサイトに福島の原発事故現場で働く人々についてのかなり詳しい現場報告が掲載されています。記事を書いたのはジャスティン・マカリー(Justin McCurry)という記者で、かなり多くの関係者に話を聞いて記事にしたもののようです。
という見出しがあって、
  • 最前線で働くスタッフは健康問題に悩まされる一方で自分たちの将来についても怖れている、と内部の人々が打ち明けている
    Staff on the frontline of operation plagued by health problems and fearful about the future, insiders say
というイントロで始まっています。

福島第一原発の現場で働く作業員の過酷な作業環境や労働条件をこと細かく報告しているのですが、非常に長い記事であるだけでなく、書かれている内容は福島原発の現場報告としてこれまでに日本のメディアでは大いに報道されてきたことなのではないかと思います。そこで、むささびが気になった二か所だけ紹介させてもらいます。両方とも福島原発の現状について英国人がコメントした部分です。

最初のコメントは、最近安倍さんが日本で開かれた科学者の国際会議に出席して、福島における廃炉作業のこれからについて、「日本は海外の科学者の知識と専門技術を必要としている」(My country needs your knowledge and expertise)と訴えたことに関連しています。

マカリー記者は、安倍さんのこの訴えだけを聞くと、日本が外国からの支援に対してオープンな態度で臨んでいるように響くが、実際には福島原発の廃炉作業が「本当の国際的な事業」(genuinely international effort)となる可能性は低いとして、ロンドンに本拠を置く放射能関係のコンサルタントであるイアン・フェアリー(Ian Fairlie)という人の次のコメントを紹介しています。
  • 日本の官僚は支援を求めるが、東電と政府は「事態は深刻だ。助けに来てほしい」などと言うつもりはないのだ。
    Japanese officials ask for help, but Tepco and the government are not in the business of saying: 'This is serious, please come and help us.
このコンサルタントのコメントをそのまま解釈すると、役人は外国の専門家からの支援を頼もうとしているのに、政府と東電がこれに反対しているという風にとれます。そしてThe Guardianのマカリー記者は
  • 廃炉作業について東電は自分たちの能力に対するゆるぎない信念を持っており、その信念がゆえに意味のある協力というものが全て阻害されてしまっている。日本政府の官僚たちとの協力でさえも、である。
    Tepco's unshakable belief in its ability to complete the decommissioning operation rules out any meaningful co-operation, even with Japanese government officials.
と書いている。

もう一つ紹介しておきたい英国人のコメントは、作業員が浴びたとされる放射線量に関するロンドンのインペリアル・カレッジのジェリー・トーマス(Gerry Thomas)教授の言葉です。この人は分子病理学なるものを研究している専門家だそうです。

東電が今年初め、福島第一原発の作業員1973人(下請けも含む)が甲状腺の放射線量が100ミリシーベルトを超えたと推定されると発表したことがあります。100ミリシーベルトというのは、多くの医療関係者によると、ガンを発症する危険が高くなるとされているレベルである・・・というわけですが、トーマス教授は「100ミリシーベルトというのは、健康被害につながる(ガンの発症など)かもしれない放射線被ばくの中でも最も低い放射線量にあたるものだ」としたうえで、
  • (放射線被ばくよりも)私がはるかに大きな心配をするのは、作業員たちが喫煙したり、放射線によって自分たちがどうなるのかということへの恐怖から来るストレスを感じるであろうという部分だ。人間の健康への影響という意味ではそちらの方がはるかに大きい。
    I would be far more worried about these workers smoking or feeling under stress due to the fear of what radiation might do to them. That is much more likely to have an effect on any person's health.
と語っている。

▼二つ目のロンドン大学の教授のコメントをむささびなりに言い換えると「放射能被ばくについて不必要に騒ぎ立てることによる心理的被害の方が心配だ。本当は大したことではないのに・・・」ということになる。「100ミリシーベルト」というのが何を意味するのかについては、私などの知識をはるかに超えた世界の話です。ただ、この教授の言う「心理的なストレスから来る健康被害」というのは実にあり得ることであり、そのような被害の要因の一つ(すべてではないにしても)にメディア報道があることも事実ですよね。

▼世の中に対して「警鐘を鳴らす」のがメディアの役割であることはそのとおりですが、その「警鐘」のお陰で追い詰められたような気持になるかもしれない作業員に対してメディアは無罪なのですかね。そのあたり、非常に気になる。ジェリー・トーマス教授のような考え方がWorld Nuclear Newsというサイトに出ていました。「彼らは業界寄りだから」というだけでは議論にならない。教授の見解が正しいかどうかではなく、メディア報道が心理的圧力になるかもしれないということが問題なのだから。

▼東電も政府も外国からの支援を受けることに乗り気でないという英国人コンサルタントのコメントですが、100ミリシーベルト云々よりも、私などにはこちらの方が気になる。追及していけばおそらく東電も政府も外国からのアドバイスは大歓迎だと言うでしょう。なのにこのようなコメントをする外国人専門家がいる。どこに行き違いがあるのか?ひょっとすると英国人コンサルタントの側に誤解もしくは落ち度のようなものがあるのかもしれない。いずれにしてもこのコンサルタントは何を根拠にこのようにコメントするのかを伝えて欲しい。

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4)国際比較で一喜一憂・・・いい加減に止めません?

 

OECD(経済協力開発機構)が実施する教育関連の国際比較調査というと、15歳の生徒を対象とするPISA(Programme for International Student Assessment:学習到達度調査)が有名ですが、今度は同じOECDが加盟国における成人(adults)の「社会生活に必要な能力」(毎日新聞の表現)を比較調査したPIAAC(Programme for the International Assessment of Adult Competencies)なるものの調査結果が発表された・・・ということは日本のメディアでも大いに報道されていたようであります。

PIAACが何であるかについては10月8日付の毎日新聞のサイトに出ていますが、かいつまんで言うと、読解力(literacy)、数的思考力(numeracy)、情報技術活用力(IT skills)の3分野における成人(16~65才)の習熟度を調査したもので、日本の成人は読解力と数的思考力でトップというわけで、産経新聞などは「世界で突出」と言っています。

で、英国なのでありますが、16才から24才の若者の「読解力」は24カ国中で22位、数字的思考力では21位というわけで、新聞にも「英国の若者は世界の後塵を拝している」(England's young adults trail world)とか「先進国で最悪(Lowest In Developed World)というような見出しが並んでおります。さらにマシュー・ハンコック技能向上担当大臣(Skills Minister)などは「これらの若い成人は労働党時代に教育を受けた子供たちだ」(These are Labour's children, educated under a Labour government)とまで発言している。ほとんど八つ当たりという感じです。

ちょっとくどいけれど、下の表を見てくれません?今回の調査結果を示すランキングの一例で「読解力」に関するものです。左側は「ヤングアダルト」に限ったランク、右側は年寄りも含めた順位です。

16-24才の
読解力ランク
成人全体の
読解力ランク
1 フィンランド
2 日本
3 韓国
4 オランダ
5 エストニア
6 豪州
7 スウェーデン
8 ポーランド
9 チェコ
10 ドイツ
11 オーストリア
12 スロバキア
13 デンマーク
14 フランス
15 カナダ
16 ノルウェー
17 アイルランド
18 スペイン
19 英国
20 米国
21 イタリア
22 キプロス
1 日本
2 フィンランド
3 オランダ
4 スウェーデン
5 豪州
6 ノルウェー
7 エストニア
8 スロバキア
9 ベルギー
10 カナダ
11 チェコ
12 デンマーク
13 韓国
14 英国
15 ドイツ
16 米国

17 オーストリア

18 ポーランド

19 アイルランド

20 フランス

21 スペイン

22 イタリア

日本の場合、16-24才という若者たちの読解力が第2位で、成人全体(16-65才)の平均ではトップです。大して変わらない。興味深いのは韓国で、成人全体(16-65才)の平均読解力は13位で、あまり高いとは言えないのに、ヤングアダルトのそれは第3位と高い。年寄りたちよりもいまの世代の方がはるかに読解力が高い・・・ということは、時代・世代とともに能力が急激に向上しているということになる。英国は反対です。成人全体が14位で若者が19位・・・ということは時代とともに読解力が落ちているということになる。同じことが「数的思考力」にも言えて、韓国は若者が5位、成人全体は15位であり、英国は若者が21位、成人全体が16位です。

▼OECDの報告書によると、日本とフィンランドというトップレベルの国(top performing countries)では、テスト参加者の中で読解力でも数的思考力でも最高のレベルの人がおよそ20%いた。これはOECD 平均の2倍なのだそうです。ただこのような国においてさえも最も基礎的な計算ができない人が5%~12%もいるのだそうです。それ、むささびのことに違いない。

▼ランキングとか成績というハナシになると口をつぐんでしまうのが「むささび」なのでありますが、どうせもう永くないんだから言わせてもらうと、このようなランキングのことで一喜一憂するのはいい加減にしませんか?日本経済新聞の「春秋」というコラムが、"「これでまた日本人が自信を失う」という心配は杞憂(きゆう)に終わって、まずはめでたしと言おう"と書いているけれど、オリンピックやノーベル賞などの成績によって日本人全体が自信を持ったり失ったりという無意味な騒ぎはいい加減に止めた方がよろしいんでない?もちろんそれはどの国でもやっています。でも日本だけは止めた方がいい。この際、「お利口さんがたくさんいる国」になることなど目指すべきではない。
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5)どうでも英和辞書
 A-Zの総合索引はこちら 
slang:スラング

最近、ロンドンのある中学校が生徒を対象にスラングの使用を禁止する運動を始めたという記事がBBCのサイトに出ていました。学校を出た生徒たちがまともな社会人になるための教育の一環であり、言葉を正しく使う能力を身につけることで就職にも有利になるという意図もある。と言っても何から何まで禁止するわけではなく、生徒が最も頻繁に使うスラング10点が禁止言葉の対象になっています。いくつかを紹介すると:
  • ain't
  • 何かを否定するのに使う。I ain't got no money(金がない)とか。その昔、デューク・エリントンが作り、エラ・フィッツジェラルドが歌った曲にIt don't mean a thing, if it ain't got that swingというのがありました。日本語のタイトルは「スイングしなけりゃ意味がない」、誰がつけたのか、うまいこと訳すもんでんな。まあ聴いてみなはれ。
  • innit?
  • 「~でしょ?」というニュアンスで使われる。もとはisn't it?だったものが、なまって「イニット」となった。本来はThis book is yours, isn't it?という風に、isの念を押す表現であったのですが、現在ではWe all want to find good jobs, innit?という使われ方も当たり前になっている。なんでもいいから最後にinnit?を付ければ「でしょ?」とか「だべ?」という意味になる。便利でいいな。
  • coz
  • 「何故なら」というbecauseのこと。「ビコーズ」などと言っていると日が暮れてしまい、気の早いニワトリはタマゴを生んでしまう。
  • "you woz" "we woz":
  • wozはwasをそのまま発音したもの。you wasやwe wasが「文法的に間違っている」なんて言っても嘲笑われるだけです。
  • like
  • My dad was, like, "You get in here right now!"という文章の意味は「いますぐここへ来い!と親父が言ったんだ」です。普通ならもちろんMy dad said...となり、wasなんて全くおかしい。しかしもっと不可解なのは、この場合のlikeです。全くの無意味なのですが、「一息入れる」というニュアンスがあるのだそうです。
これらの言葉が使われるのは、いまに始まったことではないけれど、学校当局としては、誰と話をするときでも正しい言語を使うことで「自信があって礼儀正しい」(confidently and appropriately)態度を身につけて欲しいと言っております。

日本にもこの種の「若者言葉」はわんさかありますよね。「めっちゃかわいいやん」「ヤベえ」「うぜえ」等々、私などにはさっぱり分からない。聞いていて気持ち悪いのが「~じゃないですかぁ」というあれ。最後の「かぁ」というのをやめてもらいたい、カラスじゃないんだから。「新宿の次は新大久保じゃないですかぁ」などと言うのを聞くと、「だからなんなのさ」とアタイ(むささび)なんかは思うわけじゃないですかぁ・・・。
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6)むささびの鳴き声
▼3番目に紹介したGuardianに掲載された福島原発の現場報告。ちょっと古いけれど、9月2日付の毎日新聞「風知草」というコラムに、山田孝男記者が書いた『フクイチの社員に聞く』というエッセイが載っています。山田記者は
  • 汚染水をめぐる混乱は、第二次大戦における日本軍のガダルカナル作戦を思わせる。

    と言っています。
▼ガダルカナルでは補給の失敗で多くの日本兵が餓死したのですが、山田さんによると「失敗の原因は、敵を甘く見、己を過信したところにある」とのことです。福島原発における「敵」とは、(例えば)汚染水をめぐる混乱であるわけですが、山田さんは東電の「己を過信」する姿勢を語り、Guardianの記者は、東電が自分たちの能力に対する「ゆるぎない信念」を持っており、それが故に外国との協力ができないでいると言っている。似ていませんか?

▼もう一つ、14年間、東電の社員として福島第一原発・第二原発で現場作業の管理業務をしたことがある吉川彰浩さんという人のFacebookを読むと、非常に細かくいろいろと書かれています。「著名人や新聞、TVなどで伝わることを全て事実だと認識してはいけない」と言っています。

▼4番目のOECDの「国際成人力調査」についてもう少し。英文の報告書はSurvey of Adult Skillsとなっているのですが、Adult Skillsを「成人力」としたのは文科省であり、新聞の記事もみんなそれにならっているようです。日本経済新聞のコラムは、Adult Skillsを「成人力」と訳したのはセンスが悪いと批判しています。確かに「成人力」では何のことだか分からないけれど、OECDの報告書を読むと、日経が言うとおり「人間の市場価値とか人材としての国際競争力とか、実利的なイメージ」が強い調査ですね。文科省が大好きな「21世紀の国際競争に勝てる能力」のことです。毎日新聞の記事によると、文科省の生涯学習政策局政策課主任社会教育官(漢字17文字!)という肩書の人が
  • 義務教育をはじめとする日本の教育の成果が大きく反映されており、企業の職員研修も影響していると考えられる。

    と分析しているのだそうです。
▼この調査結果と「ゆとり教育」(最近では「脱ゆとり教育」)はどのような関係になるのでありましょうか?いわゆる「ゆとり世代」にも定義がいろいろあるらしいのですが、そのうちの一つが「1987年度〜1995年度生まれ」だそうです。現在の年齢は18~26才ということになる。OECDの「ヤング・アダルト」とかなり重なりますね。つまりゆとり教育育ちの日本人はOECDの覚えがめでたいってこと?国際競争力だの実利的人材だのという点では、どう見てもゆとり教育の方が勝ると思うけど・・・いずれにしてもどこかの「お墨付き」を有難がるのはいい加減に止めましょう。

10月19日付の東京新聞のサイトに「お金使うべきは原発収束」という記事が出ていました。2020年の東京五輪とパラリンピックの成功に向けて政府に努力を求めた国会決議の採決に、参院議員の山本太郎さんが、衆参両院議員のうちただ一人反対したというものです。
  • 原発事故は収束していない。汚染水問題など、お金を使うべきところに使わず、はりぼての復興のために五輪をやろうとしている。うそまでついて招致したのは罪だ。

    というのが彼の言い分です常にまともです
10月7日付のFinancial Timesのサイトに安倍さんとの単独インタビューが掲載されています。インタビューしたのはこの新聞のコメンテイターでDavid PillingとJonathan Sobleというジャーナリストです。彼らの印象によると、いまの安倍さんにはconfidence(自信)を通り越してほとんどswaggerに近い雰囲気があるのだそうです。swaggerを別の英語で言うと
  • to walk or behave in an arrogant manner

    となる。
▼つまり傲慢な振る舞いをすることです。それが歩き方にまで表れているということ。とにかく朗報ばかり入ってくる(good news just keeps coming)のですから無理もないということで、東京五輪もその一つというわけですが、これに反対したのが山本太郎さんだけ。信じがたい知能状況ですよね。ロンドン五輪の場合はあの町の東側がすたれっぱなしであったものを開発したいという想いがあった。東京はこれ以上何をしようというのでしょうか?日本に元気を取り戻す、ですか?そんなこと、東京にやってもらいたくない。大阪都構想なるものを語っていた人たちはいま何を考えているのでありましょうか?

▼本日(10月20日)の埼玉県飯能市は雨・雨・雨。静かな日曜日であります。
 
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