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Panelist:あなたのような平和主義者(pacifist)はISISの問題に対してどのように対処するのか? |
Drewery:まずはっきりしていることは、暴力は良くない(violence is wrong)ということであり、ISISの問題についても暴力(武力行使)によらない方法を探ることだ。 |
Q:もう少し具体的に言ってほしい。 |
A:爆撃はISISの活動に参加しようとする人の数を増やしこそすれ減らすことには繋がらない。ISISに参加しようとする人間の数を減らしたいのであれば、そのような人びとがいま抱える問題そのものにしっかり取り組むことだ。英国では多人種同士のつながりを促進したりするような変革が必要なのだ。いわゆるイスラム恐怖症を掻き立てたりするのは誤りだ。 |
Q:あなたはISISに参加するような人びとが抱える問題の解決に取り組むことが大切だというけれど、ISISは「殺し屋集団」のようなもので、「問題解決」もなにもないのではないか?話し合うような相手ではもちろんない。そのような集団を相手に平和主義者はどうしようとしているのか? |
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A:彼らも自分たちと同じ人間であることを忘れないようにしたいと思っている。彼らの使う過激な言葉(レトリック)に惑わされて、彼らから遠ざかってはならないということだ。 |
Q:「ISISも人間だ」と認められるあなたの能力は結構だが、そのような考え方を広めるということは、彼らによって殺害される人びとが増えるということだ。あなたのような態度こそ不道徳(immoral)だと思うが・・・。 |
A:だからと言って爆撃すればことは解決するというのか。時間がかかるかもしれないが、私たちのようなやり方によって、ISISやその同調者と私たちとの間の橋渡しをすることが大切だ。 |
Q:彼らは、我々が普通に考えるような不満や不平(grievances)を持っているわけではない。ISISのような集団が相手では、「橋渡し」とは彼らに降伏・服従しろと言っているのと同じなのですよ。彼らの関心事は、自分たちの気に入らない人間を殺すことと領土の拡張だけなのだから。 |
A:私はそのようには思わない。我々はいずれにしても最後には非暴力による問題解決の方法を見つけなければならなくなるのだ。爆撃のようなやり方は問題の解決にはならない。 |
Q:あなたがISISのような集団を相手にも「人間性」を認めるべきだなどと言っていい気持ちになっている間にも、あなた以外の人びとが殺人者たちと戦い、命を落としている。そのおかげであなたは自由で平和な生活を送ることができている。自分を偽善的だとは思わないのか。 |
A:アフガニスタン、イラク、リビアにおける暴力的な状況のおかげで、私たちは平和的にも自由にも生きることができないでいるではないか。しかもそれらの暴力は我々(欧米)が引き起こしてきたともいえるのだ。いまこの国(英国)がやろうとしていることは、事態を悪化させこそすれ、改善するようなものではない。 |
Q:あなたは一方で「暴力は良くない」(violence is wrong)という「道徳論」を語り、もう一方では「爆撃ではことが解決しない」(bombing
doesn't solve anything)という「現実論」(プログマティズム)を語っている。どちらが本当のあなたの姿勢なのか? |
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A:道徳と現実は切り離しては語れない。暴力は人を傷つけ、怒りと憎しみを生む。それらがさらに次なる暴力を生む。暴力と憎しみはお互いに繋がり合って人間に危害を及ぼす。それを止めようとすれば道徳論と現実論を切り離すわけにいかない。 |
Q:英国は第二次大戦でナチと戦った。「暴力」なしにどうやってナチと戦えたと思うのか? |
A:第二次大戦の種は第一次大戦を終わらせたベルサイユ条約が調印された時点で蒔かれていたというのが、歴史学者の大方の意見だ。敗戦国ドイツに苛酷な負担をしいたことが後のナチズム台頭に繋がった。つまりもっと早く、対処していればヒットラーの台頭もなかったということだ。 |
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Q:いずれにしても1939年の時点でヒットラーと武力で戦うことを決めていなければ、今頃英国はナチによって支配されていたとは思わないか。 |
A:私はあなたの言う年を時代の転換点(moment of history)として受け取ろうとは思わない。平和のための努力はそれよりも早い時点で行われなければならなかったのに、それをしなかったことがヒットラーの台頭につながったということだ。戦争の種を早い時期に摘み取ってしまえば、平和的な手段で物事を解決することができるということだ。揉め事を解決するのに平和的な手段(tools of peace)が戦争のそれ(tools of war)より弱いとは思わない。平和的なやり方の方が多少時間がかかるだけだ。 |
Q:クエーカーのあなたは、キリスト教徒がISISに虐殺されているかもしれないと心配になることはあるか? |
A:キリスト教徒であろうとなかろうと、戦争によって誰かが誰かに虐殺されるということは心配に決まっている。 |
Q:軍隊における「利他主義」(altruism)のことを考えたことはあるか?自分以外の人やもの(国も含めて)のために自分の命を投げ出すという行為のことだ。戦場における兵士の行為は利他主義の見本のようなものだと思うが、そのような行為のことを平和主義者であるあなたはどのように評価するか? |
A:自分が信ずるもののために命まで投げ出すということ自体は称賛に値することだと思う。しかし戦場であれ、どこであれ、自分が信じてもいない人やもののために命を投げ出す人もいるし、利他主義は必ずしも軍人のものだけではない。また大きな戦争に参加した平和主義者の兵士たちの中には武器を持たずに戦場へ赴いた者もいる。私はその平和主義者たちは称賛されるべきだと思っている。 |