musasabi journal

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428号 2019/7/21
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
梅雨寒がようやく終わったと思ったら、この蒸し暑さ。上の写真はアルバニアの海岸なのですが、撮影当日は39℃であったとのことであります。本日は参議院選挙、札幌でシンゾーの街頭演説にヤジを飛ばした市民が警察に排除されたんですって?何を考えているのでしょうか。

目次

1)MJスライドショー:モノクロの世界
2)「二大政党」が消えた?
3)保守主義の危機
4)「人間は生まれつき善」?
5)どうでも英和辞書:inept
6)むささびの鳴き声


1)MJスライドショー:モノクロの世界
むささびが中学生だったころ(65年も前!)、父親からカメラを借りて写真を撮っていました。そのころは写真といえばモノクロだった。撮り終わると近所のDPEショップに持って行って現像してもらうのですが、受け取るときにはワクワク・ドキドキだった。それが、いつの間にか写真といえばカラーになり、あっという間にデジカメになり、最近ではスマホで撮るのが当たり前のようになっている。もちろんカラーが普通だし、印画紙で見るものではない。"Black and White Street" というタイトルのサイトを見ると、プロが写したモノクロ写真がわんさか出ています。どれを見てもカラー写真にはない現実味と迫力がある。それとどうしてモノクロ写真は見ていても疲れないんですかね。

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2)「二大政党」が消えた?


ティリザ・メイが保守党の党首を辞任すると発表したのが、ざっと2か月前(5月24日)、明日(7月22日)、約16万人の保守党党員による郵送投票の集計が終わり、あさって(英国時間7月23日)には新党首が発表される。新党首=新首相なのですが、新首相が正式に就任(女王に就任を報告)するのは7月24日(水曜日)ということになっている。実はその次の25日が議会の最終日で、それ以後9月まで夏休みに入るというスケジュールになっています。


10 Downing Stにある首相官邸のドア

新首相はボリス・ジョンソン前外相になることが確実視されているのですが、この人はEUとの合意などなしで離脱することも構わないという強硬離脱論者として知られている。英国とEUの間で交わされた合意では、離脱日が10月31日と決まっている。それ以前にひょっとすると選挙があるかもしれない。労働党が議会最終日の7月24日に新政権に対する不信任案を提出、これが通ってしまうとそのまま選挙になだれ込むこともないとは言えない。いずれにしても英国の政治は当分BREXITに振り回されることに違いはない。世論調査機関であるYouGovによる政党支持率調査(7月17日)によると次のような結果になっている。約2500人の成人に「もし明日選挙があるとしたらどの党に投票するか?」と問いかけたものです。

政党支持率調査(7月17日):% 

このグラフを見るとBREXITを機に政界の図式が変わってしまったことが明らかです。本来、二大政党と言われた保守・労働党ともに過半数には遠く及ばない。代わって支持率が上がっているのがBREXIT党と自民党です。前者がはっきりしたBREXIT支持、後者がはっきりしたBREXIT反対なのですが、BREXIT党支持者の大半がもとはと言えば保守党支持者、自民党支持者がかつては労働党の支持者だった。英国の二大政党制もおかしくなっているということかもしれない。

BREXIT党は、かつてのUKIP(独立党)の党首として国民投票における「離脱」の勝利に貢献したナイジェル・ファラージが設立した新党です。ファラージの考え方はいわば「極右」なのですが、離脱後の英国にとって、頼みの綱はアメリカのトランプです。ナイジェル・ファラージとトランプは「大の仲良し」だからジョンソン新首相は彼を無視することは全くできないことになってしまった。


ファラージBREXIT党党首

支持率グラフをBREXITを中心に見ると、保守党支持者のすべてがBREXIT支持者と仮定すると、BREXIT党の支持者と併せて44%が離脱を支持、労働党支持者のすべてがこれに反対だと仮定すると、自民・緑の党と併せて49%がこれに反対ということになる。要するに世論分裂という事態は全く変わらないということです。

▼上のグラフは2016年6月にEU離脱か残留かを問いかけた国民投票から2019年4月までの英国世論の推移です。国民投票は「51.09 v 48.11」で「離脱」が上回ったのですが、その後の3年間で「残留54.3 v 離脱45.7%」と逆転してしまった。「だから国民投票をやり直せ」という声がある一方で「最初の投票の結果を尊重しろ」という声も強い。はっきりしていることは、このような世論の状況の中で強硬離脱派のボリス・ジョンソンが首相として国をまとめていかなければならないということです。

▼離脱の期限は今年の10月31日。おそらくそれまでに選挙があるでしょう。福祉政策とか対米関係など争点がいろいろあって、BREXITのみを争点にするわけにはいかない。とはいえBREXITが最大の争点の一つであることは間違いない。保守党支持者に離脱賛成が多いのは想像がつくけれど「多い」と言っても4割にも届かない程度なのですね(YouGov調査)。


▼問題は労働党です。離脱賛成は13%しかおらず、反対が40%を超えている。コービン党首率いる党の公式見解は「国民投票の結果を尊重するが、離脱によって労働者が経済的に苦境に陥るようなことがあってはならない」という立場です。離脱すれば一時的とはいえ経済が苦しくなる、でもEUの管理からは自由になれる・・・というのが常識だと思うけれど、労働党はどっちもイヤだと言っている。いわばどっちつかずです。DK(分からない・賛成でも反対でもない)がどちらへ転ぶかによって変わってくるのですが、かつてのトニー・ブレアのような党内右派(離脱には絶対反対)から党首が出て選挙となると、ジョンソン政権など吹き飛んでしまう可能性もある。労働党支持者で離脱に賛成というのは、コービンのような昔ながらの社会主義者かアメリカでいうとリベラル嫌いのトランプ支持層と似ている「庶民層」です。

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3)保守主義の危機


7月4日付のThe Economistが"The global crisis in conservatism"(保守主義の世界的な危機)と題する社説を載せています。前回のむささびジャーナルで「リベラリズムは死んだ」というプーチンの言い分を紹介したけれど、あの議論の中で彼は「伝統的な価値観は、リベラリズムなどに比べてはるかに安定しており、多くの人間にとって大切なものとなっている」と主張している。これはどう見ても「保守主義者」の言葉ですよね。同じことが "Make America Great Again" と叫ぶトランプにも言える。自分たちが長年にわたって慣れ親しんできたものを大切にしようとする姿勢・・・それを「保守主義」というならば、この二人は現代の保守主義の代表格ともいえる。

保守主義の否定

が、The Economistの社説は次のようなイントロで始まっている。
  • Today’s right is not an evolution of conservatism, but a repudiation of it 最近の「右派」は保守主義を進化させるのではなく、これを否定しようとしている。


ここで言う「右派」とはトランプやプーチンのことであり、英国で言うとBREXITを推進するボリス・ジョンソンのような政治家のことです。この3人に共通しているのは、政治的には「保守」であることを自認していると同時に自国第一主義を掲げていること。The Economistによると、この3人は保守主義の否定(repudiation)勢力である、ということになる。どうなっているのか?

「保守主義」って何?

The Economistの社説は保守主義について、「主義というよりも気質」(not so much a philosophy as a disposition)であるとして、英国の保守主義哲学者の代表格のように言われたマイケル・オークショット(Michael Oakeshott:1901 - 1990)による「保守的」ということの定義を紹介しています。
  • 保守的ということは、未知のものより慣れ親しんだものを好むことであり、未だに試されてもいないものよりすでに試されたものを好み、ミステリーではなくて事実を、可能性よりも現実を、無限よりも有限を、遠くのものより近くのものを好むということである。To be conservative…is to prefer the familiar to the unknown, to prefer the tried to the untried, fact to mystery, the  actual to the possible, the limited to the unbounded, the near to the distant.


個人が先か社会が先か?

要するに保守的であるということは、何事にも慎重で頭でっかちの急進論や狂信的な態度を避けたがるということです。保守主義と並んで現代の政治思想のもう一つの主流といえるのが「リベラリズム」です。The Economistという雑誌は「リベラル」を自認しているのですが、リベラリズムと保守主義は「社会秩序」(social order)に対する姿勢で根本的に異なる。リベラリズムによると、社会秩序はそれを構成する個々人の自由意志と自発性から生まれる。


それに対して保守主義者は、家族・教会・伝統行事のような「権威」(authority) に依って立つ「社会秩序」がまずあって、それから個人が存在すると考える。「社会秩序」を抜きにした個人などあり得ない。保守主義者とはいえ世の中の変革を否定するものではないけれど、「社会秩序」を保ちながら変革することで人間のコントロールが効いた着実な変革が可能になるということです。

The Economistに言わせると、このような「ゆっくり保守主義」的な考え方そのものが否定されつつあり、しかも否定しているのが左翼ではなく右翼の側である、と。それは社会変革というよりも、社会そのものの破壊に繋がるものであり、その代表格がトランプだということになる。

ジョンソンと心中する?

英国におけるEUからの「合意なき離脱」もゆっくりした保守主義を否定する動きの一つであると言える。合意がないままEUを離脱するということは、スコットランドや北アイルランドの英国離脱を招きかねない、英国にとってまさに「未知の世界への身投げ」(a leap into the unknown)であるにもかかわらず、英国では「未知」に対しては慎重であるはずの保守党の新党首に就任することが確実視されているボリス・ジョンソンらは正に「身投げ」方向に固まりつつある。保守主義者はビジネスを尊び、賢明なる経済のかじ取り役であるはずなのに、トランプは貿易戦争に明け暮れているし、英国保守党の議員の中には「EU離脱のためなら英国経済に深刻な影響が出るのもやむを得ない」などと発言する者もいる。



これまでの穏健な保守主義者が極右化しているには理由がある。一つにはそれまでの「保守」を支えてきた家族、教会、労働組合のような「権威」が衰退していること。もう一つ、2008年の金融危機、緊縮財政、イラクやアフガニスタンにおける終わりなき戦争・・・これらが一緒になって従来の政党に対する信頼性を失墜させている。大都市の外で暮らす人びとは「都会のエリート野郎」(urban sophisticates)たちへの反感を募らせており、中には外人嫌いの政治家(xenophobia of political entrepreneurs)に拍手を送る人間もいる。

保守とリベラルが支え合う

極右勢力が力を増しているとはいえ、何から何までそれらの勢力の都合のいいように動いているわけではない。例えば英米でこの種の思考をするのは、大体において白人で高齢者と決まっている。大学では極右勢力が支配力を増しているという話は聞かない。アメリカにおける世論調査を見ても、21世紀になってから有権者となった人間の約6割が民主党寄りの考え方をしている。共和党支持者は3割ちょっと。ただ70才以上の高齢者となると民主党が43、共和党は52%。若い層がこれから右寄りになっていくのかははっきりしない。


ただ新右翼勢力が昔ながらの穏健保守を凌駕しつつあることは否定できない。そのことはThe Economistのようなリベラル勢力にとってもうれしくない話である、と。保守とリベラルは多くの点で意見を異にするけれど、(例えば)社会主義のような「大きな政府」に対して疑問を持っている点では似ている。保守的な人間は、リベラルに比べると「道徳」を重視する傾向が強いけれど、自由と民主主義を推進しようとする点ではリベラルも同じである、と。これまでは保守が急進主義に走りがちなリベラルを抑え、リベラルが保守の「独りよがり」(complacency)を叩くことで相互に影響し合ってきた部分もある。

左右ともに極端化

最近の英国とアメリカの政治の世界では、極右勢力が伸びることによって、本来のリベラルもしくは左派グループ(民主党と労働党)が極端に左寄りになるという傾向が見られる。有権者にとっての選択肢が極右と極左に分かれてしまって「真ん中」がいないという状況になっている。フランスのマクロン政権は、その「真ん中」であると言えるけれど、世の中は「真ん中」でありさえすればいいというものではないし、「真ん中」ばかりが続くというのも民主主義にとっては不健全である言える。その意味で、極右に走っているとしか思えない英米の保守主義を元の位置に引き戻す必要がある、というわけで・・・
  • 保守主義の強みは物事を安定化させる影響力を持っているということだ。理にかなっていて賢明でもあるし、能力や競争力を重視しながらも決して急ぎはしない。そのような保守主義の時代は終わってしまい、穏健右派勢力は火だるまになっている。危険な状態である。At its best conservatism can be a steadying influence. It is reasonable and wise; it values competence; it is not in a hurry. Those days are over. Today’s right is on fire and it is dangerous.
とThe Economistは言っている。


▼間もなく首相の座を降りるティリザ・メイですが、7月17日、ロンドンの国際問題研究所(Chatham House)で首相としての最後の演説を行った。その中で彼女が強調したのは、昨今の政治の世界における議論が思想的な純粋さを貫こうとするあまり「絶対主義」(absolutism)に陥っているということだった。「相手の立場に立って、必要に応じて妥協するという姿勢に欠けている」ということで、ディベートというより悪意に満ちた「けちの付け合い」(rancour)に終始しているというわけ。Guardianによると、これはボリス・ジョンソンを初めとする強硬離脱派に対する暗黙の批判であったとのことですが、正統派保守主義者による絶対主義批判ですね。ここをクリックすると演説を聞くことができます。

▼ティリザとは関係ありませんが、保守的ということを個人的な態度の問題として考えると、「未知のものより慣れ親しんだものを好む」ことが保守的ということになる。となると・・・日本の憲法改正に関連して、むささびは自分が「保守」なのではないか?と考えてしまう。現在の憲法を「守る」ことに賛成だからです。「変える」のはイヤなのです。これって「保守的」なのでありましょうか?でもアタイが保守的だとしたら、シンゾーは「革新的」ってこと?まさか!

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4)「人間は生まれつき善」?

 
かなり古いけれど今から10年前の2009年2月2日の"Slate"というアメリカの評論サイトに"How Good Are We, Really?"(本当のところ、人間はどの程度善なのか?)というエッセイが出ていました。その一か月ほど前の2009年1月に出版された"Born To Be Good"(生まれつき善)というタイトルの本についての書評エッセイです。記事としては古いけれど、語られているテーマはほぼ常に新しいと思うので紹介したいと思います。


この本を書いたのはカリフォルニア大学のデイシェル・ケルトナー(Dacher Keltner)という心理学の教授です。本のタイトルだけ見ると、人間は生まれつき善なる存在だと言っているようで、何やら非現実的という印象を持ってしまうけれど、サブタイトルが"The Science of a Meaningful Life"(有意義な人生の科学)となっている。人間性善説を科学的に証明しようというわけです。

この本が出版され、書評エッセイが掲載される約半年前(2008年9月)にリーマン・ショック(国際金融危機)なるものが起こり、世界の金融市場と経済が危機に直面しています。トランプもBREXITもまだ話題にはなっていなかったけれど、世の中かなり騒然としており、人間に対する不信感のようなものが世界を覆いつつあった時代です。


チャールズ・ダーウィン

「人間性」というものを考えるとして、あなたは次の3つのうちどれが最も正解に近いと思います?
  • 1. Born To Be Good:生まれつき善
    2. Born To Be Bad:生まれつき悪
    3. Born To Be Good or Bad:善もしくは悪
実は "Born To Be Good" という本が出版された2009年は、あの進化論のチャールズ・ダーウィンの生誕200年、彼の『種の起源』(On the Origin of Species)という著書が世に出てから150年にあたる年だった。ケルトナー教授による "Born To Be Good" が検討課題としているのは、ダーウィンによる「適者生存」(Survival of the Fittest)という理論の善し悪しでもある。ご存知かも知れないけれど「適者生存」という発想はダーウィンのオリジナルではなくて、英国の哲学者、ハーバート・スペンサー(1820 - 1903)が自著の中で使ったものを、後になってダーウィンが『種の起源』の中でも使ったものです。


いずれにしてもダーウィンの言う「適者生存」とは、この世に存在する生物は常に生存競争(struggle for existence)を行っており、最も環境に適した形質をもつ個体が「自然の選択」(natural selection)によって生存の機会を保障されるということですよね。それが現代では、特に経済競争の世界で「弱肉強食・強いもの勝ち」と同義語として語られている。アメリカを中心とする現代資本主義体制においては、自由な経済競争と適者生存こそが人間を説明する最強の武器となっている。この種の人間論の味方とされるのが、ダーウィンの進化論であるということになっている。

ケルトナー氏よによると、そのような人間性悪説的な見方はダーウィンをまともに読んでいない人間の考えるところなのだそうです。人類が生物としてこれまで生きて進化を遂げてきたのは、人間だけが自分たちの持っている破壊的かつ敵対的本能(destructive and hostile impulses)を自分たちで制御する能力を与えられ、それによってお互いを守り合い、助け合うような能力を持つようになったからである、と。人間は生物学的にそのような能力を備え持って(biologically equipped)いるだけでなく、持たされている(wired)のだ・・・となる。世の中ではダーウィンの理論について「適者生存」のような表現が使われているけれど、彼の理論をもっと正確に言うならば「優しき者が生き残る」(survival of the kindest)ということになる。

 
ダーウィンの言葉
生き残るのは、最も強いものではないし、最もアタマのいいものでもない。生き残るのは変化への適応に最も優れているものである。

この書評エッセイによると "Born To Be Good" という本は、最近のアメリカ心理学において台頭しつつある “positive psychology” という考え方を色濃く反映したものなのだそうであります。それはこれまで支配的であった人間についての「好ましからざる側面」(less-admirable features)を強調する学問的な傾向への反論であるとも言えるとのことです。人間の「善」なる側面に注目しようというわけですね。

▼最後に出てきた “positive psychology” ですが、心理カウンセリングの専門家に聞いてみたところ、人それぞれの「個性」「強み」「長所」というものにスポットライトを当てて、それをもっと伸ばしていこうとするやり方で、最近のアメリカの心理学界ではむしろこれが主流なのだそうです。ではこれが主流になる以前の「主流」はどのようなものであったのかというと、人間の心理や精神を「医学的なモデル」(medical model)として考えようという姿勢だった。
  • うつとか不安、あるいは精神・身体の障害を「病気」「治すべきもの」として考えることが一般的だったのですが、最近ではむしろそれを「個性」「違い」「特性」として見るようになっている。
▼そうなると心理カウンセリングの姿勢も「病気を治す」というより、それぞれの個性とか長所を伸ばすというやり方に変わってきているとのことであります。なるほど・・・人間が生きているということを「適者生存」(別名:弱肉強食・強い者勝ち)という側面でのみ考えようとすると、現実的なようでいて実際にはそれからは程遠いということになる。

▼ちなみに最初に書いた人間性の本質について、この書評の著者は "Born To Be Good or Bad"(善くもあり悪くもあり)というのが正解ではないか、と言っている。まあ、無難といえば無難かもしれないけれど、単なる思考放棄であるともとれないことはない・・・などと二重否定を使うというのも自信のなさの表れかも・・・。

▼ところでダーウィンの進化論ですが、10年前の調査によると、英国人の半数(50%)がこれを「正しい」としているのに対して、アメリカ人の(何と)80%が「人類の起源と進化には神が関与している」(つまり進化論には否定的)と考えているのだそうです(むささびジャーナル156号)。

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5) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 
inept:役立たず・無能

Cambridgeの辞書によると"inept"は "not skilled or effective" と説明されており、例文として
  • Dick was socially inept and uncomfortable in the presence of women ディックの奴は、女がいると非社交的で落ち着かなくなったものだ。
というのが出ています。

ワシントン駐在の英国大使が、ロンドンの本省に送った極秘文書の中で、あろうことかドナルド・トランプのことを「役立たずのアホ」呼ばわりしたときに使ったのがこの言葉だった。その極秘文書が、7月6日付の日曜紙、Mail on Sundayにリークされて大問題になってしまったというわけ。すっぱ抜かれたのはつい最近ですが、2017年から現在までにワシントンからロンドンに送られた機密文書の中にこれが含まれていたということのようです。例えば次のような文章:
  • As seen from here, we really don't believe that this Administration is going to become substantially more normal; less dysfunctional, less unpredictable, less faction-riven, less diplomatically clumsy and inept.  ワシントンで見ていると、トランプ政権がより正常な状態に近づくなどとは信じられない。さらに(トランプ政権の)機能不全や予見不可能性、派閥の分裂状況、そして外交的なまずさや無能さなどがこれから改善されるとは思えない。
この部分は"clumsy and inept"という二つの言葉で締めくくられているけれど、"clumsy"も"inept"と似たようなものです。外交についてトランプ政権は「ヘタクソで無能」と言っているわけ。ただ、Mail on Sundayの記事で疑問なのは、目を惹きそうなイントロのところで
  • Britain's man in the US says Trump is 'inept' 英国の駐米大使がトランプを無能呼ばわりした
と書いているけれど、実際には「無能」なのは「この政権」(this Administration)であると言っているにすぎない。トランプ個人を無能と言っているわけではない。イントロを書いたのは、この新聞の編集担当であって大使ではない。トランプが怒っているのは、大使が自分のことをアホ呼ばわりしたことについてです。記事をよく読めばそれは彼の誤解であることは明白なのに・・・それをやらないのだからやっぱ利口じゃない、か?
 
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6)むささびの鳴き声 
▼ジャーナリストの田中良紹さんが「日韓貿易戦争と思っていたら日本側の説明が二転三転する醜態」というエッセイでシンゾーらのやり方を批判しています。有料の記事で、むささびも全部を読んだわけではないけれど、対韓国半導体材料輸出規制強化についての日本政府の説明がコロコロ変わり、「メディアがなぜかもてはやす"安倍外交"は醜態をさらし続けている」と言っています。

▼この問題についてのむささびの態度を言わせてもらうと、「徴用工」であれ「慰安婦」であれ、韓国政府の姿勢を「お話にならない」とするシンゾーの姿勢こそ「お話にならない」と思うことにしています。これといった理論的な根拠があるわけではなく、感情論と言われても仕方ないかもしれないけれど、むささびの「感情論」の根拠の一つになっているのが、7月12日に東京の経産省で行われた日韓事務レベル担当者による会合のテレビ報道だった。物置のような部屋に粗末なテーブルが置いてあり、日本側の役人二人がネクタイもしないワイシャツ姿で座っている。そこへ韓国の代表二人が背広にネクタイ姿で現れるという場面だった。田中さんによると、そのお陰で「日本側の極めて冷ややかな対応が日韓両国民に向けて放送された」結果となったのであり「戦争が始まった!」と感じたのだそうであります。

▼戦争が始まったのかどうかはともかく、あの場面を見てむささびが感じたのは、日本の役人たちの韓国に対する子供じみた「優越意識」であり、相手に対する無神経ぶりです。そしてあの場面を作ったのが経産省のお役人(広報担当も含む)であり、彼らをそのように仕向けたのがシンゾーらに対する「忖度」(ごますり)というやつです。シンゾーの方は忖度されたことなど全く気が付いていない。政治の世界における勝ち負けしか知らない(関心がない)シンゾーは、彼なりに役人の言うとおりにすることで政官の団結を保つ努力をしているだけ。誰も自分の確信で動いていることはない、なのに日本全体がある方向に向けて動いていく。その手助けをしているのがメディアというわけです。

▼札幌で選挙の街頭演説をやっているシンゾーにヤジを飛ばした市民を排除した警察官は、自分らなりに「職務に忠実」だっただけ。自民党以外の党首の街頭演説にヤジを飛ばしたからって、警察官に排除なんてされっこない。札幌の警官もシンゾーだからやったのですよね。それをやっても職場において咎められることがない、どころか「職務に忠実」ということで褒められる可能性の方が高い。

▼トランプが、自分に批判的な発言をしている民主党の女性下院議員(非白人)に対して、差別としか思えないメッセージをツイッターに書き込んで顰蹙を買っていますよね。あの件についてシンゾーは何か言いましたっけ?あの件が明るみに出たらティリザ・メイは直ちに報道官を通じて「全く受け入れがたい」(completely unacceptable)というコメントを出している。メディアにせっつかれてコメントしたのか、自発的にそうしたのかは分からない。で、シンゾーは?もし何もコメントしていないのだとしたら、何故なのか?誰かさん、おせえてくれません?

▼で、最初の日韓問題ですが、いまやメディアというメディアが「韓国はケシカラン」という意味の報道で埋まっています。「米国にも無視される韓国政府の"被害妄想"」の類です。かと思うと、あのトランプが「仲裁の用意がある」と発言したという報道もある。はっきりしていることは、日本のメディア報道は一切信用しないこと、とむささびが自らに言い聞かせているということです。何故ならメディアは(洋の東西を問わず)読者や視聴者が好みそうな報道をする傾向にあるから。となると、むささびは日本人の「好み」そのものを信用していないってこと?そういうことになりますです。

▼取り立てて韓国政府の言っていることを支持・支援しようとは思わない。両方とも好きにやったら?お互いにがなり合っていればいいんでないの?戦争するのなら勝手にどうぞ。日本人であるむささびがやるのは、参議院選挙には棄権しないってこととキムチご飯を食べたいってことだけ。ただ日韓関係についての韓国政府の姿勢が、日本人の反韓心を刺激して選挙で勝ちたいシンゾーには大きな味方になっていることは間違いないよね。

▼そうそう、忘れないうちに報告しときます。数日前に埼玉県の山奥でヒグラシが鳴くのを耳にしました。今年初めて。お元気で!

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