musasabi journal

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441号 2020/1/19
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BREXIT 美耶子の言い分 美耶子のK9研究 むささびの鳴き声 どうでも英和辞書
昨日(1月18日)、埼玉県飯能市は雪でした。積もるような降りではなかったけれど、この冬初めて(?)白いものが空から落ちてくるのが見えました。一方、山奥では2週間ほど前から蝋梅が咲いています。

目次

1)カルロス・ゴーン独演会?
2)クルド人、流浪の歴史
3)女王が苛められている?
4)どうでも英和辞書
5)むささびの鳴き声


1)カルロス・ゴーン独演会?


日本を脱出したカルロス・ゴーン氏がレバノンで記者会見を行ったのが1月8日。あれから長い間経ったような気がするけれど、まだ10日しか経っていないのですね。会見が行われたのと同じ日付のThe Economistのサイトがこの会見について論評しています。それによると、記者会見におけるゴーン氏のパフォーマンスは「人の心を動かし(compelling)、説得力さえあった(convincing)」のだそうです。ゴーン氏の言葉によると彼は日本の司法と検察によって「乱暴この上ないやり方で自分の世界から強引に引き離され」(brutally taken from my world)たのだということになる。


The Economistによるならば
  • 真実を求めるよりも自白を強要する(日本の)制度の下でゴーン氏にできたのは、保釈中に姿をくらますこと以外になかったということなのだ。Jumping bail was his only choice in a system apparently designed to force a confession rather than seek the truth.
となる。

ゴーン氏によると、独房で長時間、誰にも会わずに過ごし、弁護士なしの取り調べが8時間も続く、かと思うと妻との連絡も許されない自宅監禁が続く・・・。しかもその後の訴訟プロセスは5年もかかる可能性があるとくれば、ゴーン氏が「希望なし」(hopeless)と考えるのも不思議ではない。日本の裁判における有罪率(conviction rate)は99%を超えるという数字もある。


ゴーン氏の会見後に日本の検察が発表した声明によると、ゴーン氏は「自分自身の行動については全く無視、日本の刑事訴訟制度に対する一方的な非難を繰り返している。これは到底受け入れられるものではない」(completely ignore his own conduct, and his one-sided criticism of the Japanese criminal justice system is totally unacceptable)ということになる。

自白が頼りという(日本のような)制度においては、ゴーン氏のようなケースが裁判でどのような判決に繋がるのか見当もつかないけれど、ゴーン氏が会見で行った説明を聴く限りにおいて、彼に対する告訴内容そのものが「全くはっきりない」(far from clear-cut)とThe Economistは指摘します。


が、ひょっとすると日本の検察は彼の日本脱出を「見て見ぬふり」(turned a blind eye)したのではないかとさえ思えてしまう、とThe Economistは言います。何故なら彼がこれからも、日本において抵抗活動を続ける限り、日本の司法制度に対して外国からの厳しい監視の眼が注がれ続けることになるのだから、と。

The Economistは記事の最後の部分で次のように書いています。
  • はっきりしていることは、日産という企業が、情けないとしか言いようがない企業ガバナンスの下で、(ゴーンという)オールマイティともいえるボスのやることをうかつにも見逃してしまったということだ。その意味で日産自体が有罪とも言えるのだが、いずれにしても、日産もゴーン氏も自分たちの評判を回復するという仕事が待っているのである。 What does seem clear is that Nissan was guilty of lamentable corporate governance and supine oversight of an overmighty boss—and because of that, both the company and Mr Ghosn will have a job to restore their reputations.

▼1月13日付のヤフーニュースで、ジャーナリストの江川紹子さんが「日本の当局はなぜ効果的な反論ができないのか」というかなり長いエッセイを書いています。その中で彼女は、ゴーン氏による日本の検察批判に対して日本の検察は「公の場できちんと説明して物事を伝える広報活動に消極的で、国外での情報流通についても軽視してきた」と言っている。

▼「広報活動に消極的」ということは、検察が「自分たちの行動についてはいちいち説明などする必要がない」と考えているという意味ですよね。なぜ必要がないと考えるのか?自分たちのやっていることは正しいに決まっており、誰も異論など挟む余地がない、と考えるからですよね。

▼江川さんは「(検察は)国外での情報流通についても軽視してきた」とも言っている。「軽視してきた」というより、その必要性がなかったということなのでは?ゴーン氏のような有名外国人(欧米人のこと)が絡むような事柄に関係したことがなかったから。「英国ではテロの容疑者でさえも検察が拘禁できるのは最長で14日なのに、日本ではスリの容疑者でも23日間も拘禁できるのはおかしいんでない?」と言われてちゃんと説明できるんですか?「ここは日本なのだから日本のやり方で・・・」などという程度のことしか言えないのでは?

▼江川さんのエッセイによると、ゴーン氏の会見に出席が許された日本のメディアはテレビ東京、朝日新聞、小学館だけだったらしい。これも大して不思議ではないよね。彼にしてみれば、日本の世論よりも国際世論の方が大事なのだから。「テレビ、新聞、雑誌からそれぞれ一社」というのがゴーン氏側の言い分らしいのですが、テレビがNHKではなくてテレ東というのはにくいですね。

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2)クルド人、流浪の歴史



国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のサイトによると、昨年10月に亡くなった緒方貞子さんが国連難民高等弁務官として初めて仕事をしたのが、1991年、サダム・フセインのイラクが隣国クェートに侵攻した湾岸戦争のときだったのですよね。このときにイラクに住むクルド人が武装蜂起し、制圧しようとするイラク軍から逃れるため、わずか4日間のうちに180万人のクルド人がイランやトルコの国境地帯に逃れた。


あれから約30年が経つ。最近ではシリア北部で暮らすクルド人に対するトルコ軍の攻撃が話題になっている。シリア、イラン、イラク、トルコなどがざわついてくると、ほぼ必ずと言っていいほど「クルド難民」のことが話題になる。けれどむささびはこの人たちについては何も知らない・・・とやや歯がゆい思いをしていたら10月15日付のBBCのサイトに"Who are the Kurds?" という見出しの記事が出ていました。非常に長い記事なので、そもそもなぜクルド人は現在のような苦境の中で暮らすことになったのか?、何故トルコがクルド人をそれほど敵視するのか?という「そもそも」が分かりそうな部分だけ使わせてもらいます。


人口はサウジと同じ

クルド人は、中東でもヨーロッパに近いエリアのトルコ、イラク、シリア、イラン、アルメニアの5か国と国境を接する山岳地帯に住む人たちで、古代文明の地であるメソポタミア平原とそれにつらなるトルコ南東部、北東シリア、北イラク、北西イラン、南西アルメニアにまたがる高原地帯の土着民族の一つです。クルドの人口は2500万~3500万と推定されるのですが、これは中東諸国の中でも4~5番目の大きさで、サウジアラビアに匹敵する人口です。にもかかわらずはっきりした、自分たちの「国」(nation state)というものを持っていない。クルド人の多くがイスラム教スンニ派とされているけれど、必ずしもスンニ派だけがクルドの宗教ではない。

ここでいう「国」(nation state)は(ネット辞書によると)「国民国家」とか「民族国家」などと言われるけれど、特定の文化や歴史を長い間共有する民族集団あるいはその構成員の一部によって支配される国家のことを指します。クルド人の場合、「民族集団」としては存在しているのに地理的に一か所にまとまるだけの場所がないということです。

なぜクルド人には「国」がないのか?20世紀初頭においては彼らの間で「クルディスタン」(Kurdistan)という名前の国を作ろうという動きはあった。第一次世界大戦(1914~1918年)の終了とオスマントルコ帝国(現在のトルコの前身)の崩壊(1922年)という、世界史における西欧の勝利を象徴するような出来事の結果として、西欧の連合国がクルド人の国家を作ろうとする姿勢を見せたことがある。それが1920年に連合国とオスマン帝国との間に締結されたセーヴル条約で、連合国はこの中にクルド人国家の樹立に関する項目を取り入れた。セーヴル条約によってオスマン帝国が広大な範囲の領土を失う一方でクルド人は自分たちの国を手に入れる状況が現出したわけです。


セーヴル条約→ローザンヌ条約

が、クルドの国家を作るという希望はセーヴル条約から3年後の1923年に破られる。この年、連合国とトルコの間でトルコの国境を定めるためにローザンヌ条約というものが結ばれるのですが、その際に3年前のセーヴル条約で謳われていたクルド人国家の樹立の項目は無視されてしまった。おかげでクルド人は、トルコおよびトルコと国境を接するアルメニア、イラン、イラク、シリアのような国々に散在して「少数派」として暮らさざるを得なくなってしまった。それからの約100年間、クルド人が国家を作ろうと試みるたびに鎮圧されてここまで来てしまった。

クルド人は散在する国ではそれなりに存在感を持ってしまっている。例えばシリアにおけるクルド人は全人口の7~10%を占めているし、イラクやトルコでは人口の15~20%はクルド人です。特にトルコで暮らすクルド人は1920年代におけるクルド人の反乱以来、トルコ政府によって敵視されており、クルドの民族衣装は禁止、クルド系の名前も禁止、言語も制限。クルド人とは呼ばれず「山岳トルコ人」(Mountain Turks)と呼ばれたりしている。

 

▼ウィキペディア情報ですが、日本で暮らすクルド人の数はおよそ2000人なのだそうです。特に蕨市や川口市を中心とした埼玉県南部には、1990年代にトルコ政府の迫害を恐れたクルド人たちが友人を頼って来日し、トルコ国籍のクルド人の難民約1300人が集住しており、蕨市周辺はワラビスタンとも呼ばれているのだそうです。ただ日本政府のクルド人(特にトルコ系)に対する態度は冷たい。それは日本政府が、自国内のクルド人をテロリスト扱いしているトルコ政府との関係を重視しているから。日本クルド友好協会のサイトを見るといろいろ出ています。

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3)女王が苛められている?

1月8日にエリザベス女王の孫にあたるハリー王子と妻のメーガン妃が、王室の主要メンバーから外れる意向をInstagramへの投稿という形で公にして以来、英国内が大騒ぎというわけです。Instagramへの投稿はメーガン妃ではなくて、王子の方が行ったのですが、騒ぎを呼んだのは次の個所です。
  • We intend to step back as ‘senior’ members of the Royal Family and work to become financially independent, while continuing to fully support Her Majesty The Queen. 私たちは英王室の「主要」メンバーから外れて経済的に独立するべく仕事をする、その一方で女王陛下を全面的に支え続けるつもりであります。

 

この意向表明が女王らの王室関係者とは何の相談もなく行われたことが問題になった(らしい)のですが、エリザベス女王が息子のチャールズ皇太子、孫のウイリアム王子そしてハリー王子の4人で家族会議を開いた後で、1月14日に彼女の名前で声明を発表したわけです。これも日本のメディアでも大いに取り上げられていたと思うのですが、むささびが(生意気にも)大いに感銘を受けたのは声明文の平易さです。非常に短い声明なのですが、一か所だけ引用すると
  • My family and I are entirely supportive of Harry and Meghan's desire to create a new life as a young family. Although we would have preferred them to remain full-time working members of the Royal Family, we respect and understand their wish to live a more independent life as a family while remaining a valued part of my family. 若い家族として新しい生活を作り上げたいというハリーとメーガンの望みについては、私の家族も私自身も、全面的にこれを支持するものです。彼らには、できればフルタイムで活動する英王室の一員であり続けて貰いたいと願いはしますが、私たちは、私の家族の大切な一員であり続けながらもより独立した生活を送りたいという彼らの望みを尊重し、理解もしています。
女王にしてみれば当たり前かもしれないけれど、むささびとしては、"My family"とか"Harry and Meghan's"のような部分が、非常に「普通」で気に入ったわけです。ただBBCの王室担当記者によると、この文章は、女王の声明にしては「非常に率直かつ形式ばらず、殆ど個人的」(remarkably candid and informal, almost personal)なものなのだそうです。またハリーとメーガンの望みについて「全面的にこれを支持する」(entirely supportive)などと言っているけれど、女王の気持ちは「残念」(regret)に尽きるのだそうです。
 

で、ハリー王子夫妻に英王室の主要メンバーから退く決意をさせた理由の一つに挙げられているのが、英国の大衆紙によるメーガン妃についての報道ぶりが挙げられています。特にThe SunとDaily Mailで、後者についてはメーガン妃が父親に宛てた個人的な手紙を紙面で暴露したことで、裁判沙汰になったりしている(むささびジャーナル434号)。今回の夫妻の行動については、1月9日付のThe Sunが社説で、「二人の行動は王室と納税者の寛容さと善意を裏切るものだ」(Prince Harry and Meghan Markle’s obnoxious behaviour betrays royalty and abuses the generosity and goodwill of taxpayers)と決めつけています。

社説は
  • NO, Harry. No, Meghan. You can’t have it both ways. If you don’t want to be Royal, quit. In full, and for good. ダメだ、ハリー、ノーだよ、メーガン。両方ってわけにはいかないんだ。ロイヤル(王室)がイヤなら止めなさい。完全かつ永遠に、だ。
としたうえで、自分たちが有名になって人生を楽しんだ上に、王室とも一定の関係を保とう(remaining “within this institution”)などという我がままを女王に押し付けるとは、とんでもない話だと言っています。
 

社説はさらに、女王が93才になること、98才になる夫のエディンバラ公の健康が優れないこと、次男のアンドリュー王子がセクハラ疑惑に晒されていること・・・のような苦労に満ちた生活を送られている、そのうえ「アタマに血がのぼっている孫とその妻」(hot-headed grandson and his wife)によって、何の合意も話し合いもなしにこのような難問を押し付けられたのだ・・・と同情している。しかもこの若夫婦ときたらInstagramなどというものを利用して自分たちの希望を世間に明らかにしている、とカンカンに怒っています。

世論調査に見る英国人の意見

Yougovの調査より

YouGovによる上記の世論調査で気になるのは、最初の質問については「二人の行動を支持する」意見が多いのに、似たような質問である3つ目の質問に対しては「二人の行動に共感しない」という意見の方が多い。これは最初の質問では二人が王室メンバーから「離れる」(step back)と表現しているのに対して、3つ目の質問では王室を「去る」(walk away)という言葉が使われていることが理由なのではないかと(むささびは)思っている。"walk away"という言葉は、いかにも冷たいもんね!

王室の一員としての役割を果たすのがイヤで、進歩的な目的(“progressive” causes)をもった仕事をしたいと言うのなら、勝手に左翼的な政治の話でもしていればいい・・・が、そのためには王室から完全に身を引いて「プライベートなカップル」(fully private couple)とならなければならない、というわけです。The Sunの社説にはこのような「怒りのメッセージ」が延々と綴られているのですが、社説のメッセージと思われるのは、最後の方に書かれている次の文章なのではないか、とむささびは考えています。
  • 我々の歴史の中で最も長期にわたって君臨している君主(女王)をいじめ抜いて、王室を自分勝手な都合に合わせて作り変えようとするのは、サセックス公夫妻のするべきことではない。 It is not the Sussexes’ place to bully the longest-reigning monarch in our history into reinventing Royalty for their convenience.

▼今朝(1月19日)のBBCのサイトによると、バッキンガム宮殿からの発表として、ハリーとメーガンの夫婦はこれからは「正式に女王の代理となることはない」(no longer formally represent The Queen)となっています。さらに彼らの英国における住まいであるバークシャーのFrogmore Cottageと呼ばれるお屋敷のリフォーム費用(240万ポンド:約3億4000万円)は自分たちで払うことになった(らしい)。

▼女王が新たにコメントを出して「彼らはこれからも常に愛すべき私の家族の一員です」(They will always be much loved members of my family)と言っているようです。ただこれからはHRH(His/Her Royal Highness)のような称号を使うことは許されないのだそうです。BBCによると「これ以上きれいな絶縁は考えられない」(Harder to think of a much cleaner break)のだそうであります。

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4) どうでも英和辞書
A-Zの総合索引はこちら 
paternity leave:育休

「育休」は「育児休業」の略語なのですね。むささびは、てっきり「育児休暇」の略だと思っていました。男が取るから"paternity leave"、女性が取ると"maternity leave"(産休)ですね。環境大臣の小泉進次郎氏が2週間の「育休」をとるということがBBCのサイトでもニュースになっていた・・・というより、こんなことで国中大騒ぎするということがニュースになっていました。その記事によると、日本では子供が生まれると、女性も男性も最長1年間は休むことができるのに、男性の取得率はたったの6%なんですね(女性は82%)。

小泉さんによると、多くの人から「育休を取れない社会の空気を変えてほしい」という声をもらったことが、彼自身の育休宣言のきっかけなのだそうですね。「社会の空気」ですか・・・。日本若者協議会という組織の代表理事をつとめる室橋祐貴氏は、小泉さんのこの動きを歓迎しており、そのことを「若者世代から集まる期待」というエッセイの中で書いています。

日本生産性本部の調査によると、2017年度の男性新入社員の79.5%が「子供が生まれたときには育児休暇を取得したい」と回答したのだそうです。が、東京都が昨年実施した「男性の家事・育児参画状況実態調査」で男性の育休取得状況を調べると、「育休等を希望通りに取得できなかった」が79.1%に上り、「育休等を希望通り(又は希望以上)所得できた」は16.2%にとどまったというわけです。そして希望通りに育休を取れなかった最大の理由として挙げられたのが「職場が取得できる雰囲気ではなかったから」で、これが最も多くて43.4%だった。
 
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5)むささびの鳴き声 
▼知らなかったのですが、鳩山由紀夫元首相が新しい政党を立ち上げようとしているのだそうですね。昨年10月25日に「第1回共和党結党準備会」なるものを開いたのだとか。鳩山さんは東アジア共同体研究所という組織を主宰しており、新党準備会においても「周辺諸国と仲良くし、国民の幸せを追求する政治システムをつくることは言い続けたい」と強調しています。ここをクリックすると鳩山さんの頭の中が少しは見えるかもしれない。尤もこの集会には現役の国会議員は一人も参加しなかったのだそうです。

▼実はむささびは今から1年半も前の2018年7月24日の「論座」という朝日新聞のサイトに出ていた鳩山さんとのインタビュー記事(鳩山元首相が語る新たな政治・行政改革とは)をコピーして保存してありました。この中では新党立ち上げなんてことは言っていないけれど、政治の現状とこれからに対する彼なりの思想・理想を語っていました。一か所だけ抜き出します。
  • コミュニティーの中で一人ひとりがどう協力しあい、よりよい生活、「共通善」を求めて行動していくかを考えていますが、これは自分のことばかり考える安倍政治への大きなアンチテーゼになると思っています。
▼彼の言う「共通善」(common good)ですが、ブリタニカ国際大百科事典では次のように説明されている。
  • 共同体の成員によって達成すべく合意された普遍的価値ないしは集合的目標をさすが,しばしば支配の正統性の根拠とされる政治思想史上の概念である。
▼つまり場合によっては、支配者によって「善」とされるものが「共通善」ということにされてしまうこともあるということですよね。鳩山さんは「共通善」に基づく政治を「自分のことばかり考える安倍政治」へのアンチテーゼになると言っているのですが、安倍さんは安倍さんで、自分のやっていることは、日本というコミュニティの成員にとっての「普遍的な価値」を提供するものだと思っている(かもしれない)。という風に考えていくと「共通善」などというものが追求するだけの価値のあるものなのか、分からなくなってきません?ただ・・・

▼いまの日本は、政治と政治家を否定・批判する言動で溢れかえっていますよね。シンゾー政権のダメさ加減について口を極めて非難する一方で「ダメな野党」についてもしかめっ面をするだけ。どいつもこいつもアホばかりだ、と毒づきながら結局のところは「ま、しゃあないんじゃない?」と現状を受け容れることで何となく納得している。でも本当には納得も何もしておらず、欲求不満だけが蓄積されていく。この種の社会こそが最も極端なテロ思想のようなものを生むのでは?

▼シンゾーに対して「ノー」と叫ぶのであれば、何に対して「イエス」と言うのか、シンゾーのような政治がダメだと言うのであれば(むささびはそのように思っている)どのような政治が可能かつ望ましいのか?ということについても少しは語る必要がある。鳩山さんの「共通善」という考え方がそれに当たるような気がしないでもない。

▼「共通善」などという言葉を使おうものなら、すぐに「甘い」とか「現実性がない」という言葉が飛んできそうだし、言葉だけを見ると「甘い」ように思えるけれど、それを追い求める姿勢そのものを否定するのは止めた方がいい。むささびは次の言葉で表される鳩山さんの現状認識は当たっていると思います。
  • 今の安倍晋三政権の最大の特徴は、官邸があらゆる面でトップに立ち、すべてを牛耳っていること。国会は軽視され、司法も行政の言いなり。一種の独裁国家、全体主義国家の様相を呈しています。
▼もう止めます。早く春が来ないかなぁ!

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