1月なんて、あったんでしたっけ?という感じで2月になってしまいました。我が家の近所でも梅の花がきれいに咲いています。でも西の方角を見ると秩父連山には雪が積もっているようなのです。きらきら光りながら流れていく入間川を見ていると、春が近いようにも見える・・・まさか、ね。これからが寒さの本番なのかも? |
目次
1)「ピーター・ノーマン」って誰?
2)トランプの入国を拒否!?
3)民主主義・台湾:中国とのこれから
4)核武装と「ジャパニーズ・オプション」
5)つぎはぎだらけの英国政治
6)どうでも英和辞書
7)むささびの鳴き声
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1)「ピーター・ノーマン」って誰?
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上の写真(クリックすると大きくなる)、むささびと同年配の人なら絶対見たことがあるはず。今から48年前の1968年、メキシコ・シティで開かれた夏のオリンピックにおける表彰式で、黒人の選手がこぶしを高く上げて「ブラック・パワー」を主張しているシーンです。サンフランシスコ・グローブという新聞のサイトを見ていたらこの写真にまつわる裏話が掲載されていたので紹介します。
1968年という年はアメリカ現代史の中では忘れられない年の一つであろうと(むささびは)思います。大統領選挙が行われて、共和党のリチャード・ニンクソンンが勝利した年なのですが、泥沼化するベトナム戦争を背景にアメリカ国内でも反戦運動が盛んであった年です。さらにその年のアメリカでは黒人の地位向上のための運動が盛んに行われていた。「ブラック・パワー」というのが流行言葉にもなっており、過激派とされるブラック・パンサーという政党まで現れたりしていた。マーチン・ルーサー・キングとロバート・ケネディが暗殺されたのもこの年だった。
そのような雰囲気の中でアメリカの隣国、メキシコで夏のオリンピックが開かれ、200メートル走でアメリカ・チームを代表して走った黒人選手二人が金メダルと銅メダルを獲得した。表彰式でこの二人の黒人選手はアメリカ国歌が流れる中で顔を下に向け、黒い手袋をはめたこぶしを空に向かって突き出すというジェスチャーで「ブラック・パワー」を主張、この写真は世界中のメディアに配信され使われた。
ただ、サンフランシスコ・グローブ紙に掲載された記事の主人公は、二人の黒人アスリートではなく、彼らの左側に立っている銀メダリストの白人ランナーです。この人はオーストラリア代表のピーター・ノーマンという選手だった。この200メートル走における3人の記録は金メダルのトミー・スミスが19秒83の世界新、「銀」のピーター・ノーマンが20秒06、「銅」のジョン・カーロスは20秒10だった。ノーマンの記録はオーストラリア新で、これは未だに破られていないという画期的な記録だった。
レースが終わって、表彰式までの時間、アメリカの二人の黒人選手が表彰式でブラックパワーによる抗議の意思表示をするつもりでいる・・・という話が選手たちの間で広がった。この二人のところへノーマンがやってきて「僕も君らと一緒にやるよ」(I’ll stand with you)と告げた。これを聞いて驚いたのは二人の黒人選手です。金メダルのスミスなどは「なんだこのオーストラリアの白人は!?」(Who is this white Australian guy?)と思ったのだそうです。「銀メダルをとったんだから、それで充分ではないか」というわけです。
アメリカ黒人の二人は知らなかったけれど、その当時のオーストラリアは、南アフリカ以上の厳しいアパルトヘイト社会で、有色人種に対しては厳しい移民制限があったし、現地人のアボリジニなども何かというと差別的な待遇を受けていた。町ではこれに対する反対デモなども起こったりして、アパルトヘイトが故の社会的な緊張感のようなものがあった。ピーター・ノーマンは陸上競技のランナーとして有名であったけれど、自国における人種差別政策には大いに疑問を抱いていた。
表彰式での意思表示のための黒い手袋は1ペアしかなく、それを黒人二人が一つずつはめ、白人のピーター・ノーマンは表彰台で「人権のための五輪計画」(Olympic Project for Human Rights)という文字の入ったバッジを身に着けることで二人に対する連帯の意思を表明することにした。そして写真のような表彰式となった・・・。表彰式後、アメリカ人の二人はただちに米選手団から除名され、五輪村からも追放されてしまった。が、その後のアメリカ社会の変化もあって彼らの名誉は回復されて、現在ではサンフランシスコ近くのサンノゼという町の大学構内にあの表彰式の様子を伝える銅像が立っている。しかしその銅像にはあのオーストラリア人は含まれていない。
ブラックパワーの銅像 |
一方、オーストラリア人のピーター・ノーマンは、この行動のせいで故国では冷遇され、本来なら選手として出場してもいいはずのミュンヘン五輪(1972年)には選考会にさえ呼ばれなかった。また2000年のシドニー五輪などはオーストラリアの組織委員会のメンバーとして呼ばれてもよかったのにそれもなかった。さらにアスリートとしてのまともな仕事にも就くことができず、オーストラリア社会においてよそ者(outsider)扱いされてしまった。そしてうつ病とアルコール依存症に悩まされる中で、2006年に心臓麻痺で急死することになる。享年64才だった。ノーマンの葬式には、1968年以来の付き合いであったあのアメリカの黒人の仲間2人が参列、ノーマンの棺を担ぐ役を担った。
ノーマンの棺を担ぐブラックパワー |
そして2012年、オーストラリア議会がようやくピーター・ノーマンへの謝罪動議を可決した。彼の死後6年、あのメキシコ・シティのオリンピックからは44年が経っていた。動議の文章は、1968年のメキシコ・シティ五輪におけるノーマンの「勇気」(bravery)を称賛し、ノーマンがたびたび資格があることを証明したにもかかわらずミュンヘン五輪に参加させなかったことは「オーストラリアが犯した過ち」(the
wrong done by Australia)であることを認めている。
1968年に金メダリストとしてブラック・パワーのデモンストレーションを行ったトミー・スミスは、サンフランシスコ・グローブの記事の中で、
- あのときのノーマンの行動は、単に我々黒人の運動を助けようというジェスチャーではなかった。実はあれは彼自身の戦いだったのだ。
It wasn’t just a simple gesture to help us, it was HIS fight.
とコメントしています。
▼この話、あなたは知っていましたか?むささびは全く知りませんでした。ざっと50年も前にこの写真を見たときは、こぶしを突き上げる黒人選手には目が行っても横に立っている銀メダリストには全く注意が行きませんでした。ピーター・ノーマンは1942年生まれだから、むささびより1才若かったのですね。
▼ここをクリックすると、1968年のメキシコ・シティにおけるこの3人の200メートル走の模様を見ることができます。優勝したトミー・スミスもさることながら、終盤に猛烈な追い込みをかけて2位に食い込んだピーター・ノーマンの走りは見ものです。 |
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2)トランプの入国を拒否!?
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日本にはオンラインによる国会請願という制度はあるんでしたっけ?署名活動を行った結果集まったものを紙の形で国会に届けるというのはあるけれど、オンラインというのはないと思う。英国では2011年から行われています。どのようにやるのかというと、まず自分で「請願」を思いつき、賛同人を5人用意する。そして下院にある「請願委員会」(Petitions Committee)がこれを審査して合格の場合は下院のサイトに公表されて6か月間にわたって署名募集が行われる。
署名が1万人を超えたものについては政府が何らかの反応(response)をしなければならない。さらに10万を超えた「請願」については、議会がこれを審議することを「考慮する」(consider)ことになっている。審議することが義務なのではないけれど、ほとんど場合、実際に審議されるのだそうです。もちろんその結果、請願どおりの法律ができたり、政府がアクションを起こすとは限らないけれど、請願内容は公表され、メディアで取り上げられたりもするので、それなりのインパクトはある。
で、最近のオンライン請願で話題を呼んだのは、アメリカ共和党の大統領候補、ドナルド・トランプに関するものです。請願のタイトルは "Block Donald J Trump from UK entry" となっていて、文章は次のようになっている。
- この請願への署名者はドナルド・トランプの英国への入国は禁止されるべきであると信ずる。
The signatories believe Donald J Trump should be banned from UK entry.
そしてトランプ氏の入国拒否を請願する理由について、英国はこれまでもヘイト・スピーチを行ったことのあるような人物の入国は禁止してきたのだから、トランプ氏にもこれが適用されるべきであるという趣旨の文章が書いてある。この請願を提案したのは、スコットランドのアバディーンに住む女性で、これが受け付けられてサイトに公表されたのが2015年12月8日。その直前にトランプ氏が「イスラム教徒の米国への入国禁止」と発言して問題になったばかりだった。
下院サイトでの署名募集は公表開始から6か月行われるから、この場合も2016年6月8日まで署名募集が行われることになる。しかし1月26日の段階ですでに577,669の署名が集まり、議会で審議される10万をはるかに超えてしまった。というわけで規定により、1月18日に下院で3時間にわたってこの問題について審議が行われたのですが、発言する議員の口から出るのは "buffoon"(あほ)、"demagogue"(扇動屋)、"wazzock"(あほなトラブルメーカー)など悪口雑言ばかりだったわけ。
今回の請願について国会で投票が行われるわけではないのですが、議員はこの請願については「誠実に考慮する」(duly consider)ということで合意している。また政府を代表して内務省の移民担当大臣(Immigration Minister)という立場の人が答弁に立ち、「ヨーロッパ憲章における人権の尊重と表現の自由という観点に立って(トランプ氏の立場を)考慮する」(considers a person’s right under article 10 of the European convention on human rights and thier freedom of speech)というテレサ・メイ大臣の意向を伝えています。要するに「いろいろある人間だけどそれが理由で入国拒否というわけにはいかない」ということです。
トランプ氏については「入国拒否」を主張する請願と同時に「入国を許すべきだ」というのと「トランプ氏を国会に招いて演説してもらおう」という請願も行われたのですが、前者への署名は4万4000人、後者については100人しか賛同者がいなかったのだそうです。ドナルド・トランプの入国に関する審議についてはここをクリックすると動画で見ることができ、こちらをクリックすると文字で読むことができます。
ちなみにこのオンラインによる国会請願にトランプ氏のこと以外にも最近では次のようなものがあります(カッコ内は賛同者の数)。
- ISISが敗れるまでは英国の国境を閉鎖し、移民の入国はすべて拒否する(46万人)
Stop all immigration and close the UK borders until ISIS is defeated.
- 難民の受け入れを増やし、英国内における支援をさらに充実させる(45万人)
Accept more asylum seekers and increase support for refugee migrants in the UK.
- 大麻の生産、販売、使用を合法化する(24万人)
Make the production, sale and use of cannabis legal.
▼あなたは、この「オンライン請願」という制度をどう思います?議会と政府による現在のオンライン請願のサイトが開かれたのは2011年8月のことですが、それより5年前の2006年に当時のブレア首相の肝いりで首相官邸のサイト上にこれが開設されたことがある。それが現在では見当たらないところを見ると、おそらくブレアさんの「発明」が現在のものに引き継がれたということなのでしょうね。ただブレアさんのシステムについては賛否両論だった(むささびジャーナル105号)。開設したブレアさんによると、これこそ国民の意見が政治に反映される「直接民主主義」の見本のようなものということだった。
▼一方、The Economistなどは、このやり方は複雑な問題を「賛成か反対か」という単純なやり方で片づけてしまうものであり、「人々を政治に参加させるやり方として最悪の方法の一つ」(one
of the worst possible ways of drawing the public into the political process)だと言っています。またブレア首相がやっているのは「国民の意見に耳を傾ける政府(listening
government)」のふりをしながら、実は世論操作をしているにすぎないとこきおろしています。
▼The Economistの言い分はもっともです。ブレアのやったオンライン請願システムの場合、請願に参加する人は自動的にメールアドレスが首相官邸に知られてしまう。例えばブレアさんが、自分の意に反して「イラク戦争に反対する」という署名を提案、それに参加した人たちのメールアドレスを入手して、彼ら一人一人にイラク戦争は如何に正しいかという説得のメールを送ることだってできるんですからね。むささびの想像によると、安倍さんを囲む人たちの中にオンライン署名活動を推進したがっている人が少なからずいるはず。そう思いません? |
むささびジャーナル関連記事 |
オンライン署名活動の是非 |
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3)民主主義・台湾:中国とのこれから
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1月16日に行われた台湾の総統選挙について、1月23日付のThe Economistが社説で論評しています。見出しは "Taiwan’s
remarkable election: Dear prudence"となっている。"remarkable" は「特筆すべき」という意味であるのは分かるのですが、"Dear
prudence" というのがいまいち分からない。おそらく「思慮深さ(prudence)に敬礼!」のような意味かなと想像するのですが、イントロを読むと社説のメッセージが伝わってきます。
- 本来なら台湾は今日にでも完全な主権国となるべきだが・・・それがまだ無理であることを蔡英文は受け入れなければならない。
By rights, Taiwan should be a fully sovereign country today; Tsai Ing-wen must accept that it cannot yet be one
社説はまず、今回の選挙によって現在の台湾という国が「成熟した民主主義国家」(mature democracy)であることが証明されたと主張します。活気みなぎる選挙運動、若い層の政治への参加意識、スムーズな政権移譲、そして何より蔡英文という人が「政治的エリート層」の出身ではない女性リーダーであることを強調している。彼女はアジア初の普通の女性リーダーであるということです。言われてみるとアジアには昔も今も女性をリーダーとする国は数多くある。現在の韓国、ミャンマー、かつてのフィリピン、インド、パキスタン等など。それらはすべて父親が政治家であったり社会運動家だったという背景を有しているのに対して、蔡英文という人は知的な意味でのエリート(国立台湾大学、コーネル大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)ではあるけれど、政治の世界のエリートではない。。
国民一人あたりの所得はポルトガルやギリシャを上回り、社会制度も安定している・・・そのような国に新しいリーダーが生まれたのだから諸外国がこぞって祝福のメッセージを送ったのも当然と言える。そして唯一の例外が中国である、と。中国にとって台湾は「裏切り者の村」(renegade province)にすぎず、必要とあれば力ずくでも「本国」に復帰させなければならない存在である。それに対して台湾の人びとは抵抗するし、民進党自体が中国からの正式な独立を志向している。ただThe Economistは、強引にそれ(独立)を進めることは台湾の将来にとって危険であるし、何よりも東アジアの平和をも揺るがしかねないとして
- 台湾国民が蔡英文氏に投票したのは、いわゆる「一つの中国問題」が理由ではない。自分たちの生活水準の向上という国内問題にある。成熟した民主主義の国では選挙民はそのように振る舞うものだ。
The Taiwanese, for the most part, voted for Ms Tsai not on the “one-China question” but to improve living standards at home, as voters in mature democracies tend to.
と言っている。The Economistは蔡英文氏が中国との関係についてとるべき態度として、現在の中台関係を壊すつもりがないこと、優先課題は国内問題(住宅・年金・賃金など)への対処であることを伝えることだとしています。
もちろん中国との関係に目をつぶっているわけにはいかない。中国は台湾にとって最大の貿易相手国であり、蔡英文氏は選挙期間中、中国との貿易や投資については透明性を確保することを約束している。The
Economistによると、馬英九の国民党政権が不評だったのは、政治が「金とコネ」」(money and croynism)に任せて極めて不透明で、政権党としての「能力」(competence)に欠けていたことによる。蔡英文氏は台湾のTPPへの参加を約束しているけれど、The
Economistは、中国と一緒に加盟するように中国側に働きかけるべきだと主張しています。2002年にWTOに加盟したのも中台同時だったのですね。
とはいえ、The Economistによると、遅かれ早かれ中国は、台湾が中国の一部であるという意味での「一つの中国」という考え方を押し付けてくるだろうが、そのような「でっちあげ」(fudge)は現在の台湾人の感覚とは相容れない。台湾国民はますます自分たちを中国人ではなく台湾人であると考えるようになっている。そのような国民感覚を考慮に入れなければならない蔡英文氏は難しい立場に追い込まれざるを得なくなるだろう、と。
蔡英文氏は国民党の馬英九政権が手を付けた中国との融和政策を続けなければならないとするのがThe Economistの主張で、5月の正式就任の前に習近平氏と前提条件なしに会談すべきであるとして次のように結んでいます。
- 蔡英文氏にとってのキーワードは「忍耐」(patience)だろう。台湾にとっての完全な独立は、おそらく中国がよりリベラルな国家となったときにのみ可能といえる。そんなことが現在の暴力的中国(今でさえ人権活動家を拘束したりしている)にできるのか?できないとは言わせない。台湾はそれを成し遂げたのだ。
Throughout, her watchword should be patience. Real, de jure sovereignty for Taiwan can probably come only if a thuggish China, today persecuting rights activists, evolves into a more liberal state. Impossible? Taiwan has done it.
▼台湾の地震に関連した『台湾南部地震緊急支援募金(Yahoo!基金)』が設立されているようです。
▼台湾の選挙についてはGuardianも社説を掲載しているのですが、メッセージは "keep calm and carry on"(冷静に前進しよう)というわけでThe Economistのそれとほぼ同じなのですが、台湾の人びとが望む台中関係は「別居生活ではあるけれど正式な離婚ではない」(a separate life, but not a formal separation)とのことです。また蔡英文氏については「信頼のおける人物」(a steady pair of hands)であり、そのことについて中国は「大いに満足しなければならない」(ought to be content)と主張しています。蔡英文氏は若く見えるけれど59才なのですね。
▼The Economistは保守派、Guardianはどちらかというと左派なのですが、蔡英文氏への信頼感という点では共通しています。Shinzo
Abeに対する視線とはだいぶ違うと(むささびは)感じます。一方は「ともに話ができる」存在であり、もう一方は「何考えてんだか・・・」という感じ。英語の問題じゃない、資質の問題なんだな、分かる?シンゾー!
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4)核武装と「ジャパニーズ・オプション」
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筋金入りの反戦論者であるジェレミー・コ-ビンが労働党の党首に就任したことで、にわかに注目を集めているものに英国の核抑止の問題、特に英国海軍の原子力潜水艦に搭載されているトライデント核ミサイルの更新問題があります。
現在英国が保有する核戦力というと、「ヴァンガード級」と呼ばれる原子力潜水艦4隻、それに搭載されるトライデント核ミサイルおよび核弾頭から構成されており、全体を称して「トライデント・システム」と呼んでいるのですが、2020年代には稼働生命を終えることになっている。キャメロン政権としては、トライデント核ミサイルは英国の核防衛システムにとって欠かすことができないとして新しいものに置き換える必要があるとして、今年中にそれを決定することにしている。
英国は1960年以来、最小限の独立した核抑止力を保持するという政策をとってきた。そして1980年代初頭に、それまでの「ポラリス」と呼ばれるシステムに代わって現在のトライデントがサッチャー政権によって導入されている。そして2006年にはブレアの労働党政権としても、今後も核抑止力を維持すること、そのためにトライデントの更新を行うことを決定している。つまり核戦力の保持という点では保守党も労働党も一致していたわけです。
ところが昨年(2015年)9月のコービン党首の誕生によって事情が変わってしまった。今年(2016年)1月17日、BBCの時事番組に出演したコービン党首が、原子力潜水艦を新たに建造するのには反対しないが、それらの潜水艦が核兵器を装備することには反対であるという趣旨の発言をしたことが大いに話題になっているということです。言うまでもなく保守党としては、安全保障および国際社会における影響力の維持のためにも最低限の核抑止力(minimum nuclear deterrent)が必要という立場からトライデント・システムを更新して核兵器を搭載した潜水艦の建造を推進しようとしている。さらに労働党内にも核戦力の維持を求める意見もある。この場合は核戦力を廃止することに伴う職場の喪失および核開発技術そのものが失われることへの拒否反応がもとになっている。
そこで労働党の影の内閣で防衛大臣を務めるエミリー・ソーンベリー(Emily Thornberry)議員が「検討に値する」と言っているのが "Japanese option" です。「日本のやり方」ということですが、核開発の技術は有していても核兵器は持たないという姿勢のことです。
コービン党首はこの問題を「反戦・非核武装」というアングルからのみならず雇用問題としても考えている。トライデント・システムの更新には原子力潜水艦の建造費も含めて約310億ポンドかかるとされており、これに全面的に反対するということは310億ポンド相当の仕事をキャンセルするのと同じ。これには労働党の支持母体である労働組合も乗り気ではない。そこで出てきたのが「核兵器を生産する能力は持っているのに作らない」という「ジャパニーズ・オプション」ということに・・・。
「原子力潜水艦および核の能力を保持しながらも実際に稼働可能な核兵器は持たない」(to maintain submarines and nuclear capabilities without actually having operational nuclear weapons)ということは、要するに「核武装をしない原子力潜水艦」ということなのですが、これには仲間内からも疑問の声が出ている。原子力潜水艦の造船所がある町を地盤にしている労働党議員は「抑止能力を持たない抑止システムというのは、壊れた銃を与えられ、弾薬も与えられない軍隊のようなもの(army with broken rifles and no ammunition)で、実際には成り立たない」と言っている。
また緑の党のキャロライン・ルーカス議員は英国の核非武装運動(Campaign for Nuclear Disarmament)のリーダーなのですが、その彼女でさえも「核兵器なしの原子力潜水艦」という発想が「居心地の悪い妥協の産物」(really
uncomfortable compromise)であり、職場の確保政策にしてはコストがかかりすぎる(310億ポンド)と批判しています。
ところで英国人は核兵器を保有していることについてどのように考えているのか?トライデント・システムを新しいものにするかどうかについての最近(と言っても2009年ですが)の世論調査によると「コストのいかんにかかわらず更新すべき」という積極派が32%、「コストを抑えるのなら更新もよし」とするのが34%というわけで、「核兵器を廃棄すべきだ」という反核派の20%をかなり上回っています。コストがこれ以上は低くならないとした?と聞いたところ、「それでも更新すべき」がほぼ6割に上っています。
▼妙なところで「ジャパニーズ・オプション」なんてものが出てきたものですね。核兵器を「作らず、持たず、持ち込ませず」という非核三原則のことを言っているのでしょうか?日本独自で核兵器を持ちたがっている安倍さんらにしてみれば、英国の労働党はとんでもない思い違いをしているということになる。それと核武装の問題を雇用問題と絡めて考えようというコービンの発想は無理ってものだと思いません?失業者が出ると困るから兵器産業を守らなきゃという感じなのですからね。
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5)つぎはぎだらけの英国政治
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"muddling through"という英語を聞いたことあります?オックスフォードの英語辞書には次のような例文が出ています。
- While the children were young, we managed to muddle through.
文章の意味は「子供が小さかったころは、いろいろ大変だったけど、何とか切り抜けた」ということですが、この中の「何とか切り抜けた」が"muddling through"です。「いつも右往左往しながら、それでも何とか切り抜ける」という行動様式のことです。1月2日付のThe Economistの政治コラムが "muddling through" という言葉を使って昨今の英国の政治について語っています。
2016年は英国にとって重要な政治イベントが目白押しであり、どれをとっても英国にとっては「嵐」を予感させる激しいものなのだそうであります。いくつか簡単に紹介すると:
- スコットランド独立機運が再燃?:スコットランド議会の選挙が5月5日に行われるのですが、独立推進派で現在の政権政党であるスコットランド民族党(SNP)が勝てば(多分勝つであろうと言われている)独立を是非を問う国民投票が再び行われることはほぼ間違いないと言われている。
- ロンドン市長選:これも5月5日に行われるけれど、選挙そのものよりも、ロンドンと地方の格差が改めて認識されるイベントになる。
- EU加盟継続を問う国民投票:キャメロン首相の約束は「2017年末までに」行うということであったけれど、それがぐっと早まって2016年6月という声も聞こえてくる。
- 労働党の行方:むささびジャーナルでも何回か触れたとおり、いまのジェレミー・コービン労働党党首は、鉄道や電気通信企業の再国営化やISISへの空爆反対など、「過激左翼」というイメージが強くて、保守党はもちろんのこと労働党議員の間でも政権担当などできっこない人間とされているのですが、二大政党の一方の側である労働党の今後は、英国政治にとっては無視することができない話題であるには違いない。
The Economistの政治コラムが語っているのは、これらの政治イベントそのものより、これらに共通する「英国的」なるものの今後についてです。その昔、英国にウォルター・バジョット(Walter Bagehot:1826年~1877年)という知識人がいた。The Economistの編集長も務めたことがある人なのですが、そのバジョットが英国人の国民性を表現するときに(どちらかというと批判的に)使ったのが "muddling through" という言葉だった。しっかりとした原理・原則に従って一直線に進むというスタイルの正反対だと思えばいい。The Economistのコラムは、その "muddling through" というスタイルが政治にも見て取れると嘆いているわけです。
例えばスコットランドの独立問題。1997年に登場したブレアの労働党政権が、目玉政策の一つとして推進した「地方分権」(devolution)の結果、スコットランドのみならずウェールズにも北アイルランドにもそれぞれの議会が出来たりして、それまでよりは中央集権ではなくなったけれど、本来であればそれぞれを「国」(nation)として扱って英国全体としては「連邦」(federal)という形にしておくべきであったというわけです。それを根本的な仕組みを変えずに「地方分権」という中途半端なやり方で切り抜けてしまった。すなわち"muddling through"というわけ。
EUへの加盟継続にしても、1973年に当時のECの加盟を決めた時点で「欧州の中の英国」という国のあり方についての国民的な議論があまりにも不足していた。で、今頃になって「出ていきたい」などと言い始めているわけですが、本当にEUを離脱するようなことになると、過去40年以上も保ってきた「ヨーロッパのリーダー国」(a leading European power)を自ら放棄することになる。
これらの政治課題のどれをとっても「嵐の予感」ばかりで、同盟国としてもどうしたらいいのか迷ってしまう状況で、ニューヨーク・タイムズなどは次のように表現している。
- 英国は一種の神経衰弱(ノイローゼ)状態にあると言える。英国の友人たちとしては、何か言ってあげるべきなのか、目をそらしてほっておくべきなのか・・・どうしていいのか分からない状態だ。
Britain is having a kind of nervous breakdown, and its friends aren’t sure whether to say something or just look away.
The Economistによると、そうした状況は急に出てきたものではなくて、長い間にわたって積み重ねられてきたものなのだそうです。どの国にも「病理」(pathology)というものはある。英国のそれは "muddling through" ということになるのですが、社会改革にしても、それまでの制度を完全に廃止して全く新しいものに置き換える "abolishing and remaking" というのではなく、とりあえず不都合な部分だけつぎはぎ的に手直しする "patching and fudging" の方が好まれるわけです、英国では。だから社会のあちこちが「絆創膏だらけ」ということになる。
ただ"muddling through"は必ずしも悪いことだけではない。理念先行型の「純真無垢なる理想主義」(wide-eyed ideas)を信用しないということは、極端に走ることがないという意味でもある。だから共通通貨「ユーロ」導入のようなリスキーな計画にはなかなか乗らない。ロンドン駐在のあるドイツのジャーナリストは、英国人のこのような傾向を海洋国家としての歴史のなせる業であるとしている。彼によると英国人は考え方が「柔軟」(flexible)であると同時に「慎重」(cautious)であり、大陸のヨーロッパ人に比べると直線よりジグザグを好み、その時の風向きにあわせて進むことを好むのだそうです。
とはいえ(The Economistのコラムによると)「その場しのぎ」にはそれなりの問題がある。重要な問題の解決を先送りしてしまい、後になって英国らしからぬ極端に走らざるを得ないということです。サッチャリズムによる極端な経済改革は、彼女の登場以前に手を付けていなければならなかった改革をぐずぐず先送りしていたことへの反動だった。そのサッチャリズムなしには、EU離脱などという発想は出てこなかったはずであるというわけです。
The Economistのコラムは、これまでの "muddling through" の思考・行動様式のおかげで英国が直面せざるを得なくなっている「激変」(upheaval)は英国にとって必要なものだと主張します。EU離脱をめぐる国民投票は、EUに対する英国の関わりをこれまで以上に自己主張の強いものにするであろうし、スコットランド独立の動きによって統治機構としての連邦制の導入がこれまで以上に真剣に考えられるようになるだろう、と。
さらにこれまで余りにも遅れていたイングランドにおけるロンドン中心主義からの脱却(非中央集権化)も加速することになることが期待される。1980年代のサッチャリズム全盛期に、地方のことをそっちのけにしてロンドンの経済的繁栄に奔走してしまったおかげで、英国内の首都と地方の格差がとてつもない規模にまで広がってしまった。労働党について言うと、もともと穏健な社会民主主義者とラディカルな「反資本主義者」の二つの党が存在するのと同じ内部事情を抱えていた。ラディカルなコービンが党首となっている現在、党内の穏健派はぐずぐずしていないで別の党を作ることを考えるべきだというわけです。
シェイクスピアの劇に“The Tempest”というのがあるけれど、The Economistのコラムはこの劇に見られる知恵から学ぼうというわけで、「嵐は破壊を招くかもしれない。が、嵐はまた救いをももたらす可能性がある」(storms may be destructive, but they can also bring redemption)と呼びかけています。
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▼このコラムが挙げている「その場しのぎ」の悪例の一つにロンドンの国会議事堂(Palace of Westminster)の修復工事があるのだそうです。この建物は第二次大戦で爆撃を受けてかなり傷んでしまったのですが、その際にかなり急場しのぎ的な修復工事で済ませてしまった。それをいま修復しようとすると、巨額の工事費が必要になる。The
Economistによると、この建物を修復して使い続けるか、国会そのものを別の場所に新しく作るかの審議が間もなく国会で行われるのだそうで、その場合は国会議員は「新しい国会議事堂へ引っ越す」という案に賛成すべきだとThe
Economistのコラムは申しております。
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6) どうでも英和辞書
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smoking:喫煙
最近、道端でたばこを吸う人を見かけなくなりましたね。厚労省の調査によると、1989年(平成元年)における70代の男性の喫煙率は34.5%だったけれど2011年では14.5%にまで下がっている。20才~70代の平均では55.3%から32.2%にまで落ちている。
雑誌 "Spectater" に出ていたエッセイによるとアメリカの作家、マーク・トゥエイン(1835~1910年)はかなり愛煙家であったとみえて
- 禁煙ほど簡単なことはない。私は何千回も禁煙したことがあるのだ。
Giving up smoking is the easiest thing in the world. I know because I've done it thousands of times.
と言っている。彼の場合、葉巻を月に300本も吸っていたのだそうですね。一日10本ということになる。むささびは葉巻というものを吸ったことがないので分からないけれど、ニコチンの量からするとフィルター付きの普通のたばこの10~20倍程度になるのだそうですね。トゥエインは健康への害という観点から禁煙を説いて回る人たちを敬遠していたようで、1893年に書いた "The Moral Statistician"(道徳的統計学者)というエッセイの中で次のように書いている。
- あんたらはタバコを吸うことで、人間がどれほどの快適さ、落着き、そして快楽というものを人生で味わっているかを考えようともしないのだ。それはおそらく吸わないことで節約される金の額の10倍にものぼるだろう。またたばこを吸わないことによって失われる幸せの程度についても考えようともしない。
マーク・トゥエインは、国家による個人の生活への関与を猛烈に嫌っており、喫煙に関するエッセイも「おせっかい国家」(nanny state)によって雇われている統計学者たちへの反発から書かれていると言っています。
それはともかく世界保健機構(WHO)による135か国の喫煙率比較では、男性で最も高いのはキリバスの67%、2位はインドネシアの67%、3位はロシアの59%となっている。キリバスはオセアニア地方にある人口約10万の国です。日本は63番目で34%、英国は105位で22%となっています。135か国の平均は33%だから日本人(男性)はちょうど「平均」あたりというわけですね。日本の女性の喫煙率は11%で51位で世界平均と同じ。英国の女性は22%(24位)だから男と同じということになる。でも世界平均から見るとかなり高い。ちょっと興味深いのは中国で、男性の喫煙率は47%と上から数えて15番目なのに、女性のそれはたったの2%で106位。順位はともかく喫煙率の男女差はすごいですね。
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7) むささびの鳴き声
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▼昨日(2月6日)、TBSの『報道特集』を見ていたらアメリカの大統領選挙のレポートをやっており、民主党の指名争いで「社会主義者」と言われるバーニー・サンダースが健闘していることが伝えられていました。英国のメディアではジェレミー・コービン労働党党首と民主党のサンダースを比較する記事が目立ちます。サンダースはむささびと同じ1941年生まれの74才、コービンは1949年生まれの66才。『報道特集』でインタビューされていた青木さんという女性ジャーナリスト(在米歴が長い)が、サンダース人気の理由について、アメリカ人が常に「新鮮さ」を求めることを挙げていました。つまりヒラリー・クリントンはもはや「新鮮」ではない、と。
▼バーニーとジェレミーが一種のブームを起こしているのは、アメリカ人も英国人も「既成の政治」に拒否反応を持ち始めているからだ・・・という意見があり、確かにそのような側面はあると思うけれど、では「既成の政治」の何がそれほどダメなのか?ということについては、それほどはっきりした説明がない。むささびにとって印象的だと思うのは、それまでの労働党や民主党の主流だった人びと(ブレアとオバマもしくはクリントン)に対する国民的不信感のようなものをメディアが完全に見落としていたということ。コービンなんて昨年の党首選挙の前までは殆ど話題にならなかった。アメリカのメディアをいつも見ているわけではないけれど、「バーニー・サンダース」なんて名前、聞いたことなかった。つまりメディアがカバーすることがなかったということ。
▼アメリカも英国もメディア自体が「既成勢力」(establishment)の一部になっているようなところがある。だから「彼らが見落としたもの=世の中に存在しないもの」というのが現実ですよね。ブレアの右寄り労働党がファンファーレとともに誕生したのが1997年。あれから20年、メディアの側でもそれに慣れきってしまった。英国のリベラル・メディアなどはコービンの登場によってまごついてしまっている。
▼むささびの直感によると、日本の政治においても似たようなことが進行している。一方に甘利大臣をクビにしたような「純粋右翼」勢力があるけれど、もう一方では「自民独占も困るけど民主党もダメだから・・・」という政治メディアの常識のようなものが嫌われているということです。どっちもダメと言いながら実際には既成の勢力に味方している物知りたちに対する拒否反応のようなものです。
▼(大統領選とは全く関係ないけれど)2月1日付の毎日新聞のサイト(夕刊)に、電柱を地下に埋めることを促進する動きがあるという趣旨の記事が出ていました。自民党が「無電柱化推進法案」なるものを国会に提出することを検討しており、安倍さんも大いに乗り気なのだそうです。現在、日本国内に立っている電柱は約3500万本、今でも年7万本のペースで増えているのだそうです。記事によるとロンドンやパリはほぼ100%地中化しているのに、東京は23区内で7%なのですね。
▼毎日新聞の記事によると「70年代以降、景観面などから地中化の必要性が指摘された」にもかかわらずこれがそれほど進まなかった。東大大学院の松原隆一郎教授は「日本では電柱のない道路を『公共財』と見ない意識が強かった」と言っている。つまり日本人の間では、道路は皆のものという意識が薄かったから電力会社などが好き勝手に電柱を立てるのを誰も規制しなかった・・・ということ?
▼はるか昔のことですが、私、東京の英国大使館に勤務しておりました。1980年代の初めのことだったと思うけれど、ある英国企業が日本へ電線を容易かつ安価に地中に埋める機械というのを売り込みに来た。大使館のスタッフがそのビジネスマンを建設省(当時)へ連れて行って話をしたところ「日本は地震が多いから電線の地中化にはなじまない」という趣旨のことを言われてがっかりして帰ってきたのを記憶しています。地震が起こったら地中の電線が切れてしまうってこと?!
▼毎日新聞の記事によると、1995年の阪神大震災では約8100本の電柱が倒れて救助や復旧の妨げになったとのことですが、倒れた電柱の下敷きになった車や人間だってたくさんいたのでは?その神戸市における電線の地中化は2%しか進んでいないということは、「美しい景観」を確保するということが、市の開発事業の中において優先順位が低いってことですよね。
▼ちなみにむささびが暮らす埼玉県飯能市の場合、飯能駅前の大通りには電線が走っていません。が、ちょっと中心からはずれると空をかきむしるように電線が走っており悲しくなりますね。それから我々夫婦が約1年暮らしたイングランドの小さな村の場合、電線は地中ではなく空を走っていました。でもなぜか飯能のそれに比べるとごく細い電線でそれほど気にはならなかった。それでも電線の地中化運動をする人たちはいたのですが、それに伴って住民が負担しなければならないコストの点で十分な賛同者を得ていなかった。
▼日本の場合、40年ほど前の1970年代にすでに電線の地中化を叫んでいる人たちがいた。おそらく現在に比べれば国の財政も大いに潤っており、これに税金を使おうと思えば使えたし、現に地中化を実現した場所もある。でもその頃の日本人は電線の地中化による景観向上よりも、高速道路やトンネル、橋梁の建設による経済成長の方が大事だと考えたのですよね。だから英国から電線の地中化システムを売り込みに来たビジネスマンを「日本は地震国だ・・・」とかいう適当な理由をでっち上げて追い返したってこと?
東日本大震災の被災地の復興事業の中でこの問題はどの程度意識されているのでしょうか?
▼(大統領選にも電線にも無関係ですが)いまさらそんなことに怒るなんて、と笑われることを覚悟で・・・。清原の覚せい剤問題を伝えるテレビ番組には心底腹が立ってしまった。司会者のような人がやたらと深刻な顔をして「タイヘンなことをしてしまったですねぇ、XXさん」と言うと、ゲストのXXさんが「残念ですよね、子供たちのヒーローだったんですからね」と返す。「YYさんは、どう思われます?」と振り向けると「ビックリしました。まさかって感じです」と答える。スタジオ中に深刻な顔が並ぶ、背後には同じビデオが繰り返し流される・・・むささびが何故これに腹を立てるのかというと、他人(ひと)の不幸が嬉しくて嬉しくて仕方がないくせに深刻ぶって見せる井戸端会議の醜さを見せつけられるように思うからです。
▼「まさかあの清原が・・・」のあとに、口では「覚せい剤だなんて・・・」という言葉を使うのですが、本音は「視聴率がとれそうな事件を起こしてくれた、有難いこっちゃ!」と内心ニコニコ、出演者に対して「は~い、ここは"深刻な顔"でお願いしま~す!」と、それに腹が立つわけ。腹立つのなら見なければいいし、実際見ていません。でもテレビをつけっぱなしにしておくと音が聞こえてくるもんね。
▼この問題を清原個人のことではなく、覚せい剤犯罪の問題として語ってもらいたい。もう一つ、現役を引退したプロ野球選手たちの生活はどうなっているのかという視点からも。いずれにしてもNHKの9時のニュースが、北朝鮮によるミサイル発射関連のニュースの前に「清原」を放送したのには呆れてしまった。
▼長々と失礼しました!もうすぐ春、かな? |
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むささびへの伝言 |